【なりそこないの四方山うる星ばなし09】10くらいからわかるうる星講座その6・まずは初期から読んでみよう!単発掲載期~クラマ姫~編
※【なりそこないの四方山うる星ばなし】とは……
令和の時代に新しくTVアニメ化された「うる星やつら」。自他共に認める高橋留美子主義者である私なりそこないが、2024年から始まる第2期までの間、「うる星やつら」についてざっくばらんに語っていく企画です。
(私の新アニメ「うる星やつら」への思いはこちらとこちらで。)
「10週連続連載」の「最終回」だった「さよならを言う気もない」は、週刊少年サンデー1979年21号(’79 4/25発売)に掲載されました。
それから無事大学を卒業、本格的に週刊連載が始まるのは週刊少年サンデー1980年15号(’80 3/12発売)からです。その間、実に約一年ほどのブランクが空いています。
実はその間に、高橋留美子は「少年サンデー増刊号」で新連載を始めているんです。それが令和版アニメ13話でもちらっと紹介した「ダストスパート!!」になるわけですが、こちらは1979年5月号から9月号までの5回で連載が終わっています。
高橋留美子先生によると、「うる星」の最初の集中連載(注:おそらく10週連載期のことを指しているのだと思われる)が終わる頃に、
編集部から「次はサンデーの増刊で何か連載を始めてください」と言われまして。当時はまだ学生でしたけど、増刊ペースでの連載なら大学に通いながらでもやれるだろうと思い、あまり後先考えずに始めさせていただきました。(2019年12月発行 漫画家本Vol.14「高橋留美子本」小学館 P34より)
ということで連載が始まったとのこと。そして、
――5回で終わったというのはやはり、ある段階から編集部に本誌の『うる星やつら』の連載に集中しろと言われた感じですか。
高橋 まあ、ぶっちゃけて言えばそうです。私は本当はもう少し続けたかったんですけどね。(同「高橋留美子本」小学館 P35より)
ということだったようです。
高橋先生としては、恋愛要素がほとんどない庶民的なドタバタSFであった「ダストスパート!!」をもっと描きたい気持ちがあったようですが、サンデー編集部としてはやはり「うる星やつら」のほうを推したかったようですね。そして当時の読者もそれを望んでいたのでしょう。
「ダストスパート!!」の連載が終わったのとほぼ同時に、週刊少年サンデー1979年37号(’79 8/15発売)に「うる星やつら」は再び帰ってきます。
そこから週刊少年サンデー1979年43号(’79 9/26発売)、週刊少年サンデー1979年48号(’79 10/31発売)、週刊少年サンデー1980年5-6合併号(’80 1/5?発売)と、ほぼ1ヶ月おきに「番外編」が掲載されることになるわけです。
というわけで、これから「初期」最後を飾った「番外編」たちを見ていきます。各話ごとに注目ポイントなどを箇条書きしていますので、読む際の参考にしてみてください。
※各話の収録データはオリジナルコミックス(新装版および電子書籍版)に基づいています。
※重要度は4段階評価で、S=★★★★ A=★★★ B=★★ C=★。Sは絶対に外せない最重要エピソードになります。いずれも私見に寄るものですので、あくまで参考程度に考えてください。(なお、これは話の傑作度ではありません。あくまでうる星の歴史を顧みた場合の重要性を評価したものです)
※記事内の引用画像は当ブログにて考察研究のために「うる星やつら(新装版)1巻~34巻」より引用しています。
■単発掲載期~クラマ姫~編
初期のメインゲストでした。後々色んな人と絡められて面白かった。義経と絡めたのは、九郎とCrowの言葉遊びと、鞍馬天狗の伝説から。クラマはカラスも従えていましたし。
クラマはとても面食いです。 (高橋留美子公式Twitter(現・X)【キャラクター小話】より)
●EP019;女になって出直せよ(02巻 PART07)(重要度:S★★★★)
◆あらすじ;林間学校の夜、大きな音とともにカラス天狗が落ちてきた。気つけのビールを飲まされ、酔っ払ってしまった彼はあたるを色男と勘違いし、クラマ姫の一夜の契りの相手に選んでしまう。天狗の娘と聞いていたあたるは最初は拒否していたが、コールドスリープに寝ている美女を見て喜び勇んで目覚めの口づけを交わしてしまう!
◆ポイント;クラマ初登場 温泉マーク再(?)登場
◆キーワード;一夜の契り アニマ光線
◆注目フレーズ;「くやしーっ!!うちにはろくにしたことがないのにーーっ!!」「他人のものとなると手に入れたくなる」「だれが座敷わらしだ!!」
◆解説
言わずと知れたクラマ姫初登場回。これから新連載が始まるまで、4回に渡って登場することになります。
ある意味、第3のヒロインと言ってもいいくらいの破格の扱いですよね。
考えてみるに、高橋留美子先生としては先の10週連載で「うる星」は一旦終わったと考えており、もう一度あたるとラムとしのぶの三角関係を繰り返すことはあまり考えていなかったのではないでしょうか。
だからここは番外編として、新たなヒロインを投入して四角関係のマンガにしようと目論んだのかもしれません。
クラマ姫といえば、なんといってもその特徴的な唇です。
こんなにぷっくり厚みのある唇を描いたキャラは他に見当たりません。
何しろ、はっきりと縁取りがされているくらいですからねw ミックジャガーも顔負けですよw
さらにボンテージファッションとでもいうのでしょうか、鋲付きの首輪に胸元が大胆にクロスになっている衣装が刺激的ですよね。うる星キャラの中でももっとも過激なファッションと言えるのではないでしょうか。(さすがに再登場の際には、もうちょっとシンプル?な衣装に変わっていましたが…)
もう一つ、彼女の特徴といえば「種族維持」や「掟」に囚われているということがあります。
つまり、クラマはラムやしのぶと違って、あたるに惚れているわけではないんですね。
あくまで種族繁栄のために「一夜限り」の契りを求めているだけなんです。
愛とか恋とかではなく、極めて合理的でドライな関係性がそこにはあります。
この設定が彼女たちの間に微妙な空気感を醸し出していくわけです。
そしてあたるも、その即物的で割り切った関係に惹かれている節があるのがポイントです。
それまでの三角関係とは違う、刹那的で背徳な香り。
クラマという存在が、うる星の根幹を揺るがしてきたわけです。
この回では、他にもポイントになる点がいくつかあります。
まず、温泉マークが再登場。「いまだ浮上せず」の時もそれらしい教師が登場していましたが、あの時は“温泉マーク”を着ていませんでしたからねw
今回でようやくキャラが定着したと言えるのではないでしょうか。(そしておそらく、本格週刊連載開始時に彼が再び登場する布石にもなっている)
さらに、ここではっきりと「友引高校」の名前を確認することができますね。「系図」では10年後の世界ででしたが、これであたるたちが通っている高校の名前が確定したわけです。
ちなみに林間学校ということで、ここで初めて「夏」が描かれます。(うる星第1回は1978年8月30日発売号から始まっているので、夏休み期間の話はこれまでなかったのです)
あと、余談ですが、九羅馬牧場(くらま牧場)となっているのが面白いですねw
クラマのUFOがこの場所に落ちたのは、この名前に導かれたからなのかもしれないw
さて、あたるは最初こそ「天狗の姫」と契ることを渋っていましたが、クラマのその妖艶な尊顔をみた途端、歓喜の雄叫びをあげます。まあ正直、男なら誰でも気持ちはわかるんじゃないでしょうかw
何しろ「一夜の契り」ですからね。結婚だ一生だと、ラムにまとわりつかれている彼にとって、それは甘美な響きに聞こえたに違いありません。
口づけしたあとに乗り込んできたラムとのやりとりはまさに修羅場でしたねw
「こんなところで浮気していたのけーーっ!!」「ラ、ラム!」
「なんだ?きさま!」「うちは、ダーリンの妻だっちゃ!!」
「にゃにい〜〜っ口づけ〜〜!?」「ダーリン…やったのけ〜〜?」「いや〜つい、フラフラと……」
なんかもう、犬も食わないってやつw
それでも、
これだけで済ませてしまうんですから、ラムも慣れてきたというか寛大になってきたというかw
電撃を受けているあたるも悲壮感がないですよね。むしろ、妻の嫉妬を喜んでいるようにも見えますw 目が笑ってるしw
そんな二人のやりとりを見て、クラマの目の色が変わります。
そして彼女はこうつぶやくのです。
「他人のものとなると手に入れたくなる」「性(さが)よのう……」
このクラマには後々の彼女にはない、ある種の人間臭さを感じさせますね。
要はラムに嫉妬しているとも言えるわけですから。
もしかしたら彼女は、掟とか種族に囚われないその「愛情」が羨ましく思えたのかもしれません。
ここからクラマ姫の、あたるを「男」にするための教育が始まるわけですが、
それをラムは
なんと「エロ写真」で妨害するんですよね。これは何気にすごいことだと思いません?
もはや彼女にとってダーリンの本性は十分わかっていて、あえてそれを矯正する必要はないということじゃないですか。(しかし、これらの写真をラムはいったいどうやって手に入れたんだかw)
結果的にあたるは、ここでさらに女性への執着心を強固なものにしていくわけで、クラマの教育はまさに主人公としてのあたるを作り上げたことにもなるんですね。
そんなあたるも、自分の精神構造を探られるとなると、とたんに拒否反応を示します。
まったく今更何を言ってるんだという感じですが、ここでラムに助けを乞うというのがすごいですよねw
よくもまあ恥ずかしくもなく、という気もしますが、まあ考えようによってはそのくらい彼女に甘えていると言えるのかもしれません。
ラムの「身から出たサビだっちゃ!!」がまさにその通りとしか言いようがないw
このあと、しのぶの方もちらっと見るあたるでしたが、当然彼女にも「ふーんだ」と拒否されますw
もっとも、彼の「女のことしか頭にはいってない」中身を見てアホ扱いするクラマに、
ラムとしのぶは、烈火の如く怒ります。
この構図は面白いですね。それでもやはり彼女たちはあたるを好きなわけです。ここがクラマとの違いなんですね。
そして彼女は、あたるの女性への関心を抑えるためにアニマ(女性的要素)光線を浴びさせようとします。
つまり、自分への関心さえもクラマにとってはどうでもいいことなんですよ。あくまで「一夜の契り」で種族が維持できればそれでいいわけです。
この割り切り方とラムたちとの対比がすごく印象的なエピソードかと思います。
☆なりそこないが選ぶこの一コマ
で、これがそのあたるの頭の中w
双六になっているのが最高じゃないですかw なにげにサイコロまであるしw(おユキさんの下)
でも、しのぶが「思ってたよりずっとマシだったわ!!」というのもちょっと分かりますね。
なんだかんだいっても「4のぶ」が一番中心で大きく占めていますし、酒池肉林のハーレムといった感じではなかったのは意外とも言えるのかもw
「ラ6」もしっかり存在感を見せているのも興味深いですよね。
…ていうか、よく見るとスタートもゴールもないんだがw
5の「フリダシにもどる」はどこに行けばいいんだよw
それぞれを結ぶ進路も入り組んでいるし(なぜか「弁10」だけその輪から外れているのがまた面白いw)、「6にとぶ」(ラム)や「4にもどる」(しのぶ)がまた意味深に感じられますね。
いやもう、なんだかずっと見てられますよw
これは時代ごとに更新した図も見てみたいですね。「前期」や「中期」、そして「後期」ともなると、マスも増えてむちゃくちゃ複雑な双六になっているんじゃないかなw
☆なりそこないがハマったギャグベスト2
出た、座敷わらしw
しのぶのツッコミがお笑いのそれになってるのが面白いw
まあしかし、鬼と座敷わらしと同時につきあってるとか、確かにどうかと思うわなw
(クラマは「鬼と夫婦になるようなアブノーマルではわしのむことして失格…」とも言ってたw それをいうなら、天狗と契るのもけっこうアブノーマルだと思うがw)
これはとんだとばっちりw
生徒の性格まで教師は面倒見きれないわなw
このあとの「わたしが性格をねじまげたわけじゃないっ!」「えらいいわれようやな…」も含めて、流れるようなコント感が好きですね。
あと、しのぶとラムがあたるを面白くない感じで見ているのもいいw
この二人、意外と波長が合う時があるんですよね。
☆ピックアップワード;きさま タフだな!
あたるを一言で言い当てた見事な評価といっていいでしょう。
本人も健康だけがとりえと言ってるしw
まあ、そうでなければ、ラムやしのぶと付き合えるわけがないですよねw
クラマの登場が果たした役割とは、まさに彼の主人公としてのしぶとさをはっきり読者に見せたことにあるのです。
●EP020;思い過ごしも恋のうち(02巻 PART08)(重要度:S★★★★)
◆あらすじ;放課後になると、取り憑かれたかのようにどこかに向かうあたる。ラムとチェリーが尾行すると、そこではクラマ姫が彼をマトモな人間に教育するための塾が開かれていた!
◆ポイント;クラマシリーズ2 潜在意識の弁天・おユキ
◆キーワード;人格強化訓練 潜在意識
◆注目フレーズ;「おれという男はなあ、バカにされればされるほど燃えてくるのだ!!」「さすがはしのぶ、動物的なカンのさえだっちゃ!」「わ~~っ、現実の女はいいな~っ、いいな~っ!!」
◆解説
「お雪」に並ぶ最長29ページ、なおかつ全ページカラーという破格の扱いだった回ですね。しかも今回は増刊号ではなく週刊での掲載ですから、当時の力の入りようがわかるというものです。
「ディスコ・インフェルノ」で着ていたトラジマボディコン再び。今回はキャップも被っていたりしてよりオシャレにw
一応尾行スタイルというか、ハードボイルドを気取っているんでしょうかw
てか、新聞読んでるフリっていつ頃のイメージなんだろw
チェリーとラムがコンビを組むというのもなかなか新鮮ですね。これはラムの方から協力を頼んだのでしょうか。
駅員が直接切符を切っているところが時代を感じさせます。この時代はまだ自動改札ではなかったんですね。
電車賃を請求するチェリーもせこいですけど、「ダーリンからとりたてればいいっちゃ!」と返すラムもなかなか辛辣ですw
ていうか、ラムは地球のお金をどうしているんだろうか…ダーリンからせびっているとか?
今回は毎日のように放課後どこかに通っているあたるを尾行するラムたちという、ちょっとドラマ風に始まるのが特徴的ですね。
冒頭ではしのぶも「火事」(笑)になっていたのですが、やはり彼女にはあたるの行く先を突き止めるほどの行動力はなかったようで…
この辺からも、ラムが次第に話の中心になってきているのがわかります。
で、けっきょくクラマのところに通っていたわけですが、ラムの言い方からすると、夏の林間学校でいったん関係を絶った流れだったんでしょうか。まあ無理矢理ラムたちが引き離して一応の決着を迎えていたのかもしれません。
もちろんラム自身そんなことは信じていなかったのですがw
アホガラスという物言いが強烈ですね。ダーリンを誘惑する相手には容赦しない彼女の激しい感情が伺えます。
ただ、チェリーを同行させた意味はよくわかりませんけどw
ていうか、そのグラサンはいったいどういうつもりなんだw
変装のつもりだったのかよ!
ナメてるというか、よけいに目立つわw
ただ、この回で面白いのは、チェリーがクラマの「あたる教育計画」に理解を示すところなんですよね。
彼いわく、「諸星あたるの凶運を改めるには、性格を治すのが一番」ということらしいですからw
今考えると、実は的を射ていた見方だったようにも思えます。
そして結果クラマは、あたるの性格に留まらず、うる星の世界そのものをも変えたのではないかという気がしますね。
しみったれガラスw よく見ると、ラムにだけ座布団も出していないのがわかりますね。
こういうお茶の間SF的な場面がクラマ回の特徴でもあります。
ていうか、ラムがお茶菓子を欲しがっているかと思うと、それもまたおかしいw
で、その夜に
こんな光景が繰り広げられたりするわけです。
「手を切るって約束するまでかえらないっちゃ!」とか、完全に重い女と化しているw
そんなラムを軽くいなしているあたるがまた印象的ですね。
もはや、「絶体絶命」や「愛で殺したい」の頃の彼とは別人のようです。
この回では前半、しのぶの影が薄いのですが、ラムが学校に来てあたるを呼び出すとさすがに彼女も黙ってはいられません。実際、ラムはこの機に乗じてUFOで鬼星にあたるをさらっていくつもりだったのですからw
ていうか、ラムがアホガラスならしのぶは「カラス女」なんですねw なんかショッカーの改造人間にいそうなネーミングw
でも、この二人がこうやっていがみ合うのも、実はこの回が最後なんですよね。クラマ編の後半ではしのぶは出番がなくなってしまうので。
次に登場するときはもはや三角関係のメインヒロインではなくなってしまうことを考えると、このシーンにもなんだか不思議な感傷を覚えずにはいられません。
クラマがあたるの「人格強化訓練」の一環として選んだのは、「精神アスレチックランド」。
まるでウサギを追いかけて不思議の国に迷い込んだアリスのように、彼は深い精神世界に落ちていったのですが、その表現の仕方が面白いですよね。
ある意味メタ演出というか、コマ割りをぶち破ることで彼は不条理な夢でさまようことになるわけです。
バニーガールが一服しているところが「お休み処」だったり、風鈴がぶら下がっている一方で鹿の頭のはく製が飾ってあったりと、和洋折衷なシュールさに“るーみっくわーるど”ぽさを感じます。
しのぶ=大入道、ラム=雷様という構図が面白いですねw
この世界では、「女性への恐怖心と不信感」をあたるの潜在意識に植え付ける目的があったわけですが、元々彼が奥底に抱えていたイメージを増幅させているだけな気もします。巨大化しているのも、そういうことなんじゃないでしょうか。
で、夜の街をさまよう中で、
弁天様や、
おユキさんに再会するわけです。
このイメージも、元々あたるが抱いていたものだったような気がしますね。
で、最後にはサクラさんも登場して、何やらわけのわからないうちに「死刑」を宣告されてしまうというw
扉を開けて現実に戻ってきた彼はひたすら「女こわい~~」とおびえるだけで、クラマの「人格強化訓練」は成功したかに思えたのですが……
☆なりそこないが選ぶこの一コマ
現実の女はいいな〜〜WWW
もう最高のオチですねw
ラムとしのぶが二人で「夢を見ていたんだ」と彼に告げるだけで、こうなるんですからたくましいw
要するに、普段彼女たちにせっかんされる「現実」はあたるにとってはすばらしい世界なわけですよ。
もちろんそれは悪夢を見せられての相対的な評価なんでしょうけど、なんかこうグッとくるものがあります。
もはや、諸星あたるは「まれにみる凶運の持ち主」ではなく、受難ばかりのこの世界をすばらしいと受け入れているんですね。実に感動的じゃないですかw
クラマは嘆いていますが、実は彼女の「教育」の成果は十分にあったんじゃないかという気がします。
☆なりそこないがハマったギャグベスト2
夢の中での弾劾シーンw
言ってることは間違ってはいないけど、微妙にニュアンスが違うだろうというw
まあおユキさんの件は押し倒したことには変わりないとは思いますが、弁天さまのはかなり脚色があるだろw
お前が「食ってもいいぜ」と言ったんだろうがw
ここで彼女たちが再登場して、ラムとしのぶに乗っかる形であたるを責めるという構図自体がなんか面白いですね。二人とも満更でもなかったはずなのにw
裁判長にここまで開き直られたら、もうどうしようもないw
でもまあ、実際本当のことだからなあw あたるも強くは否定できないのが辛いところですねw
☆ピックアップワード;一夜の契りってのが魅力的なんだよなァ あとくされがなくて……
令和版アニメの第4話ではわりと軽い感じでのセリフでしたが、ここではかなり重みのある言葉のように感じます。
何より、あたるはここで声に出しているわけじゃないんですね。ラムに対する言い訳ではなく、あくまで自分に言い聞かせるような「独白」なんです。
「あとくされがない」というのはこれだけ聞くとひどい言いように感じますが、実は「幸せの黄色いリボン」での「一生」という言葉がここにかかってくるんじゃないでしょうか。
その重みへの忌避の気持ちが根底にあるような気がしてならないんです。
「将来」「責任」「束縛」「運命」…
彼がクラマに魅かれたのは、そういったところから解放されたい気持ちがあったような気がします。
逆にいえば、ラムやしのぶとはそういうことを抜きでは付き合えないということを彼は無意識的にわかっていたとも言えるのではないでしょうか。
●EP021;父よあなたは強かった(03巻 PART01)(重要度:S★★★★)
◆あらすじ;クラマ姫はあたるの人格改造計画として、自分の理想の男に弟子入りさせることを目論む。その相手とはなんとあの「牛若丸」だった!
◆ポイント;クラマシリーズ3 タイムトラベル
◆キーワード; 弟子入り 子どもを作れないからだ
◆注目フレーズ;「パパは世界一だ!」「ダーリンもだんだん妖怪じみてきたっちゃ」「女千人斬り」
◆解説
いわゆるタイムトラベルもの。「系図」もそうでしたが、実はうる星ではちょこちょここの手の話があります。
「タイムリープ」や「タイムスリップ」ではなくて、「トラベル」というのがポイントですね。
つまり巻き込まれる形ではなく、自発的に「時間旅行」をするわけです。ドラえもんでいう「タイムマシン」のようなものと考えればいいかもしれません。
個人的には初期クラマシリーズの最高傑作だと位置付けています。
そしてクラマの役目は、実質この回で終わったとも言えるかと思いますね。
あたるの母が「クラマ」に言及している珍しいシーン。
どうやら、親にもバレバレの形で逢引き(?)はずっと続いているようですw
「日曜ごと」という言い方が昭和を感じさせますね。この時代はまだ土曜は休みではなかったのです。
このあと、ラムが「きょうというきょうはクラマと決着をつけるっちゃ!!」と言いながら、前回にも出てきた「給水塔」に向かいます。
あの後も、毎週のように「学習塾」は開かれていたんでしょうかw
相当苛立っているご様子w
夏の林間学校からずっと続いているクラマとの件で、ラムも歯止めが効かなくなってきている感じです。
ていうか、カラス天狗って生で食えるのか…?(いや、調理すればいいってことじゃないですけどw)
忘れがちですが、やはり本性は「鬼」であるということを改めて思い知らされますねw
この後、1173年の鞍馬山にタイムトラベルして、そこで牛若丸がクラマの父であることを知ったラムは「いいこと聞いたっちゃ」と考えるわけですが、それがまた「鬼」の発想というかなんというか…
「ダーリンもだんだん妖怪じみてきたっちゃ」
でも、この受け止め方はいいですね。決して呆れてる風でもないのがいいじゃないですか。
あるがままを受け入れているというか、フラットなたたずまいがある意味清々しい気がします。
一方ではすごく執着心が強いのに、ある面ではすごくあっけらかんとしているところがあるんですよね。
それが彼女の一番の魅力かなという気がします。
さて、いわゆる「時代もの」という一面もある今回ですが、それゆえに普段とはまた違うシュールな味わいが楽しい回でもあります。
たとえば、
牛若丸が「打倒平家」とか「平家が憎い」なんて張り紙を貼っていたり、
「わたしのははうえ うしわか画」なんて似顔絵(?)みたいなものがあったりしますw
しかも、なぜか仮面ライダーもどきのお面まで飾ってあるw
こういう脱力系なネタはまさに「るーみっく」的な面白さですね。高橋留美子ならではのセンスが冴え渡ります。
こういったあたると牛若丸との掛け合いもうる星ならではのものでしょうw 「義父(とう)さん」ってw
意外とこの二人、気が合うというかいいコンビなんですよね。
京の町でいっしょに「おねーちゃん、遊ばぬか?」なんてナンパするしw
この日のためにと、ヘアをセットする牛若様がかわいいw
ていうか、
牛若丸って、実はけっこうむっつりなのかもしれないw
あたるの「すきものっ!!」というツッコミがうまいw
このあと、あたるは「無理もない 初めて女の裸体を見たのだから……」というんですよね。
あたるもラムの普段の格好を「裸体」と認識してるんだ(笑)と、当時は思ったものです。ラムもそれをあえて否定しないんですよねw
まあ、平安時代の人間にとって裸同然なのは至極当然ではあります。
時代のギャップネタといえば、
このネタも好きですね〜w
絶対、こんな戸籍謄本なんてあったはずがないw
そもそも、弁慶がなんでサングラス的なものを掛けているのか謎ですけどw
まだまだ紹介しきれない小ネタが満載で、本当に何度も見返してしまう魅力がありますね。
過去にタイムトラベルをするのは他にもいくつかあるんですけど、こういった歴史的な出来事にリンクする話というのはこれしかないんです。
そんな中でも普段と変わらないバイタリティーを見せるあたるやラムの活躍は、見ていて痛快ですらあります。
ある意味、異色作でもありながら王道でもあるという、うる星の幅を広げた回でもあった気がしますね。
☆なりそこないが選ぶこの一コマ
あたるが「悪性遺伝」を超えて、自らトラブルに飛び込むことを決意した瞬間ですね。
ラムがあきれるように「ダーリンて本質的には変わらないっちゃねー」というのが、実に印象的です。
かつての彼女だったら、「女千人斬り」という目標にただひたすら怒りまくっていただけでしょう。
つまり、この時点で彼女はあたるの「本質」を見抜き、そしてそれを受け入れているわけです。
この時、クラマのあたるへの「教育」は無事に完了したのですね。
☆なりそこないがハマったギャグベスト2
どっか〜んw
何度見ても笑えるw
ていうか、そのセミヌードの絵はどこから調達したw 女の口説き方とは全然関係ない気がするんだがw
あたるのギャグマンガとしての主人公ぶりが見事に発揮された名シーンだと思います!
初期らしい言葉遊びネタですが、いきなり英語が出てくるところになんともいえないおかしみがありますよねw
それを牛若丸が言ってるかと思うと、よけいに面白いw
「カラスにちなんで」じゃねーよw
☆ピックアップワード;こういう者がここを通りかかったら、子どもの作れないからだにしてほしいっちゃ
世を忍ぶ格好をしてても、トラジマは必ず入るんだなw
それはさておき、これは考えてみるとかなり残酷な行為なんですよね。
クラマ自身をなきものにしようとするならまだしも、その種を根絶やししようというのですから。相当えげつない発想だと言わざるを得ません。
そこには「契り」という行為への激しい拒絶があったのかもしれませんが、ただ、これは彼女の「二面性」を意味するものではないと思うんですよ。
彼女の純粋性がそのまま陸続きでこの残酷さにつながっているのが、彼女たるゆえんなのです。
「ラムは“うる星”の中では、一番理解できないキャラでもあるんです。どちらかというと、私は、ひねくれていたり、コンプレックスを持ったキャラのほうが理解できるので、ラムのように、奔放でまっすぐなキャラって、私からは、一番遠い存在だったりします。まんがの作品の中には、自分に重ならないキャラもいるんだと教えてくれたのも、またラムでした。」(新装版「うる星やつら」第1巻巻末企画「My Lum 01/34 高橋留美子」より引用)
高橋先生もこうおっしゃっているように、ラムは本当に「裏表」がないキャラです。
というより、表と裏が同じ面にあるようなキャラなんですよ。それゆえに、どこまでもまっすぐでいられるんです。
純粋さが残酷にもなるし、愛情深くもなる。
だから、変に執着もしないし、執念深くもない。
その証拠に、彼女はこのあとクラマの命をとことん狙うということもしませんし、時が過ぎればそんなことがなかったかのようにあっけらかんとしているわけです。
それこそが彼女の魅力なのではないでしょうか。
あたるもその辺のことをわかっているのか、弁慶に「子どもの産めないからだにするよーに」と頼み事をしたラムに対して、「おまえか、弁慶をけしかけたのは~」くらいで済ませているんですよね。
本当なら、ライバルである女の親を殺すような真似だということはわかっているはずなのに、です。
おそらく彼もラムの物事に執着しない性格をある程度わかっていたのでしょう。
だから、「まったく仕方ないな」くらいの温度で済ませられたんじゃないかと思いますね。
ちなみに、ラムは「子どもの作れないからだ」と言ったのに対して、弁慶はそれを「子どもの産めないからだ」と解釈しているのが面白いw
●EP022;勇気があれば(03巻 PART4)(重要度:C★)
◆あらすじ;冬休みにスキー教室に参加したあたるたち。そこで教える先生が実に“いい女”だったことに浮かれる彼らだったが、たまたま近くで山ごもりをするチェリーに「彼女は通りかかる男を次々と食い殺す魔性のもの」だと忠告を受ける…
◆ポイント;クラマシリーズ4 メガネたち最後の出演
◆キーワード;安達が原の鬼女伝説 リューマチ
◆注目フレーズ;「姫はカップラーメンのようなおかたですね」「ところであのお客さんたちうまそうかい?」「あの娘、食あたりせんといいがのう」
◆解説
クラマシリーズ最後を飾る一編。なのに、クラマもラムもほとんどストーリーに関わってこないのが面白いですねw
鬼ババ伝説を題材にした、実質あたる一人が主人公の物語になっています。
つまり、すでにクラマのあたる改造計画は終わっているわけです。今回は独り立ちした彼の初お披露目といったところなのかもしれません。
これまた珍しい、あたる父がラムとクラマに言及しているシーン。
ここではラムもクラマと同じ扱いなんですね。つまり諸星家にとっては、いまだ平和を乱す邪魔者でしかないわけです。
ラムの登場シーンもいつもとは違う感じですね。顔見せというか、ゲスト的な扱いに近いような気がします。
今回はあくまであたるが遭遇する山での怪談話であって、いつもの恋愛ドタバタではないわけです。
そう言った意味で、今回はこれまでで一番「番外編」らしい一話と言えるかもしれません。
しかし、トラの着ぐるみで駆けつけるとは、ラムもけっこうおちゃめなところがありますねw
やっぱり自分はトラジマだという自覚があるんでしょうかw
おもしろいかたたちw
ラムとチェリーが同等の扱いなのが面白いですね。まあこの格好じゃ、無理もないかと思いますがw
バックの鬼女のイメージがガチすぎて怖いw こんなホラーも描けるんですね、高橋先生は。
ただ、こういう日本古来の伝承を元ネタとして使うのはうる星では定番と言ってもいいくらいですが、あくまで設定を借りるだけというか、突っ込んだ背景などにまでは決して踏み込んだりはしないんですよね。ここでも、名前とそのシチュエーションくらいしか使われません。
そこはギャグマンガならではの枠組みから外れないように心がけているように思えます。
ていうか、今現在も「鬼」に取り憑かれているようなものなんですけどねw
一方のクラマは、まったくの蚊帳の外w
今回彼女は、最初から最後まで温泉に浸かったままですw
もちろん、コールドスリープの副作用で寒いところに出ると眠くなってしまうという理由はあるわけですが、この彼女がストーリーにまったく関わらないという構図そのものがギャグになっているんですね。
と同時に、すでにクラマはお役御免になっていることを意味しているともいえそうです。
それにしても、サルの親子やシカがまたいい味出していますね。特にシカはどことなくあたるに似ているような気がするw
一方のラムもあまり話には関わってきません。
なんか知らんけど、メガネたちと花札(?)に興じているしw
意外と彼らとは仲が良かったりするんですよね。
あ、もちろん、寝るときはUFOに帰るんですよ。さすがにここで雑魚寝するわけではありませんw
チェリーの忠告にまさかそんなわけがないと頭を振り払うあたるですが、それでもやはり気になるようですね。
何しろ「化け物にもてる」と本人も自覚しているようですからw
哀れ、鬼に食べられてしまう悪夢を見てしまうわけです。
それでも、最後にラムの非難の言葉が出てくるということは、彼なりにどこか後ろめたさを感じていたのかもしれませんね。
ていうか、「安達が原鬼子」って名前を聞いたらそりゃ疑うわなw
なんだよ「鬼子」ってw 親はどういうつもりで命名したんだw
もっとも彼は、美女と見ればみさかいないタイプなので、想像と現実の区別が時々ぶっとんでしまいますw
で、上空に浮かぶUFOから見張るラムは攻撃を仕掛けるわけですが…
それがなんと、「吹雪」だというw
もはや、完全に舞台装置ですよね。彼らを遭難させるためだけにラムは駆り出されたわけです。
実際、このシーンを最後に彼女は登場しませんから。
それにしても、ここは雪だるまのプレートが立ち上がるという仕組みが面白いですねw
ていうか、これが吹雪のマークなのかw
他にどんな攻撃方法があるのか見てみたいw
ヒ~ヒ~w
おばあちゃんの正体はバレバレとはいえ、演出がうまいので緊迫感はありますね。
鬼子ちゃんも「こちらのへやには決してはいらないでください」とか、お約束なセリフを口にしますしw
ちゃんとここまで読者を惹きつける構成になっているからこそ、オチがしっかり生きてくるんですよね。
で、
これがオチw
いい女なら人喰い鬼でもいいから思いをとげたいと願う彼は、ある意味清々しいw
これもクラマの教育の賜物でしょうかw
どうせ食べてもらうなら綺麗に食べてもらいたいのか、ナイフとフォークを手渡しているのが笑えるw
もちろん鬼子さんは人喰い鬼なんかでなく、いたって普通の女性だったわけですがw
ちなみに、メガネたちはこの話を最後に二度と登場しなくなります。
そういった意味で、彼らは「初期」うる星の象徴でもありました。
そんな彼らが退いたことで、うる星は新たに生まれ変わることができたのかもしれませんね。
☆なりそこないが選ぶこの一コマ
シャ~コ シャ~コの響きがなんとも不気味ですね。
よく見ればスキー板というのはわかるんですけど、やっぱり見せ方がうまいんです。
で、この後の「だめよおばあちゃん、これは刃物なんだから!」とか「あんまりうまそうじゃないわね」といったいかにも匂わせたセリフがまた最高なんですよねw
ここでのおどろおどろしさがしっかりあるからこそ、ギャグも冴えるわけです。
☆なりそこないがハマったギャグベスト2
スキーのエッジは刃物なのよw
紛らわしい言い方すんなw
同じシャ~コ シャ~コでも、まったく違って聞こえますよね。
この辺の落差を笑いに変える手腕はさすがとしかいいようがありません。
ずっといたのだwww
リューマチのおばあちゃんの正体がわかるのと同時に、答え合わせのようにこういう脱力系のギャグにつながるところが素晴らしいですね。
まさに緊張と緩和でしょう。温泉は笑いにも効くわけですw
ちなみに、クラマはこのあと再びコールドスリープに入ります。
彼女が次に目を覚ますのは2年半先(週刊少年サンデー1982年26号(’82 6/2発売)「クラマ再び!!」にて)、つまり、「初期」の世界から一気にタイムスリップしたとも言えるわけですね。
☆ピックアップワード;人喰い鬼でもなんでもいい!あんないい女に、なんにもしないで別れるなんておれにはできん!!
すごい心意気ですよねw
まさに「自ら凶運に飛び込む」姿勢じゃないですか。当初のただ不幸にみまわれるキャラとは彼は完全に別れを告げたんです。
この姿勢がオチにもつながるわけで、あたるはこの瞬間に名実ともにうる星やつらの主人公になったんですね。
そして受け入れ態勢が整ったことで、「面堂終太郎」の出番も可能になったんだと思います。
◆単発掲載期~クラマ姫編~のまとめ
それまでの「初期」とは違いますし、ラムとあたるがメインとなる「前期」以降とも違うのであえて「番外編」と書きましたが、内容としては決して外すことのできない最重要時期だと思います。
クラマ姫がいなければ、「面堂」は登場できなかったでしょう。彼女が諸星あたるを「男」にしたからこそ、彼の出番が可能になったのです。なぜなら面堂とはまさに「トラブル」そのものだったのですから。
もし「初期」のあたるのままで面堂と対峙したら、たぶん真面目に相手にしないんじゃないかという気がします。それこそ面倒くさがって適当にいなしていたんじゃないかな。
なんていうか「覚悟」がまだ定まっていない感じがするんですよね。どこかで俺は不幸な星の下で生まれたんだとか言い訳をしてそうな気がするんです。
それを変えたのがクラマの「教育」でした。精神構造を暴かれ、潜在意識の奥底に潜ることで現実のすばらしさを知り、あたるは自分のあるべき姿を見つめ直したのです。
そして「男」の理想である牛若丸の生き方に感銘を受けた彼は「女千人斬り」を目標に掲げるくらいに成長(笑)します。
そう、彼はもはや「不幸の星に生まれた凶運の持ち主」ではなくなっていたのですね。
クラマはラムやしのぶとは別の、愛だの恋だのといったベクトルとは違った方向でうる星の土壌を耕しました。
そうすることで、うる星の世界を「面堂」に引渡せられるようにしたといえると思います。
つまり「初期」から「前期」へと、バトンを渡すような役割を果たしたんですね。
だからこそ、その役目を終えた途端、彼女は「冬眠」に入ったのではないでしょうか。
私にとってのクラマ姫は、この初期4部作の頃の彼女のことです。
長い眠りから覚めた後の、面食いで常にいい男はいないかと探している彼女とはまったく別人だと思っています。
というわけで、ここまで4回に分けて「初期」の時代を見てきたわけですが、いかがだったでしょうか。
一般的に知られているイメージとは異なるディープな味わいと、その遍歴を少しでも感じ取っていただけたら幸いです。
さて、次はいよいよ本格的に連載が始まった「前期」を見ていく予定ですが、その前にいったん中休みとして「表紙」についての記事を書こうかなと思っています。
うる星講座その1・原作コミックスを知ろう!でちらっと触れた、オリジナル版の表紙についてですね。復刻版で美麗なイラストを拝めるようになりましたし、皆さんと一緒に堪能できたらいいなと思います。
ぜひ楽しみにしていてくださいね。それではまた次回のうる星講座でお会いしましょう!
「復刻BOX」4セットがあれば、うる星の歴史を一望できます!
気軽に読める電子書籍もいいですね。とりあえず4巻まで読めば、「初期」の雰囲気がわかります!
初出どおりの順番で読むには文庫版が便利!
「クラマ姫編」は2巻のPART4からPART7でまとめて読むことができます。
うる星やつら 令和版ラブセレクションは本当に謎の多い「セレクション」で、実はここで紹介した話も収録されていたりw いったいどれが「ラブセレクション」なのか確かめてみては?
令和版アニメでは残念ながら初期のクラマ姫は取り上げられなかったのですが、
4話の「口づけと共に契らん!!」では、一部で初期のクラマ姫の要素を取り入れているところがあります。ぜひ確認してみましょう!
令和の時代に新しくTVアニメ化された「うる星やつら」。自他共に認める高橋留美子主義者である私なりそこないが、2024年から始まる第2期までの間、「うる星やつら」についてざっくばらんに語っていく企画です。
(私の新アニメ「うる星やつら」への思いはこちらとこちらで。)
「10週連続連載」の「最終回」だった「さよならを言う気もない」は、週刊少年サンデー1979年21号(’79 4/25発売)に掲載されました。
それから無事大学を卒業、本格的に週刊連載が始まるのは週刊少年サンデー1980年15号(’80 3/12発売)からです。その間、実に約一年ほどのブランクが空いています。
実はその間に、高橋留美子は「少年サンデー増刊号」で新連載を始めているんです。それが令和版アニメ13話でもちらっと紹介した「ダストスパート!!」になるわけですが、こちらは1979年5月号から9月号までの5回で連載が終わっています。
高橋留美子先生によると、「うる星」の最初の集中連載(注:おそらく10週連載期のことを指しているのだと思われる)が終わる頃に、
編集部から「次はサンデーの増刊で何か連載を始めてください」と言われまして。当時はまだ学生でしたけど、増刊ペースでの連載なら大学に通いながらでもやれるだろうと思い、あまり後先考えずに始めさせていただきました。(2019年12月発行 漫画家本Vol.14「高橋留美子本」小学館 P34より)
ということで連載が始まったとのこと。そして、
――5回で終わったというのはやはり、ある段階から編集部に本誌の『うる星やつら』の連載に集中しろと言われた感じですか。
高橋 まあ、ぶっちゃけて言えばそうです。私は本当はもう少し続けたかったんですけどね。(同「高橋留美子本」小学館 P35より)
ということだったようです。
高橋先生としては、恋愛要素がほとんどない庶民的なドタバタSFであった「ダストスパート!!」をもっと描きたい気持ちがあったようですが、サンデー編集部としてはやはり「うる星やつら」のほうを推したかったようですね。そして当時の読者もそれを望んでいたのでしょう。
「ダストスパート!!」の連載が終わったのとほぼ同時に、週刊少年サンデー1979年37号(’79 8/15発売)に「うる星やつら」は再び帰ってきます。
そこから週刊少年サンデー1979年43号(’79 9/26発売)、週刊少年サンデー1979年48号(’79 10/31発売)、週刊少年サンデー1980年5-6合併号(’80 1/5?発売)と、ほぼ1ヶ月おきに「番外編」が掲載されることになるわけです。
というわけで、これから「初期」最後を飾った「番外編」たちを見ていきます。各話ごとに注目ポイントなどを箇条書きしていますので、読む際の参考にしてみてください。
※各話の収録データはオリジナルコミックス(新装版および電子書籍版)に基づいています。
※重要度は4段階評価で、S=★★★★ A=★★★ B=★★ C=★。Sは絶対に外せない最重要エピソードになります。いずれも私見に寄るものですので、あくまで参考程度に考えてください。(なお、これは話の傑作度ではありません。あくまでうる星の歴史を顧みた場合の重要性を評価したものです)
※記事内の引用画像は当ブログにて考察研究のために「うる星やつら(新装版)1巻~34巻」より引用しています。
■単発掲載期~クラマ姫~編
初期のメインゲストでした。後々色んな人と絡められて面白かった。義経と絡めたのは、九郎とCrowの言葉遊びと、鞍馬天狗の伝説から。クラマはカラスも従えていましたし。
クラマはとても面食いです。 (高橋留美子公式Twitter(現・X)【キャラクター小話】より)
●EP019;女になって出直せよ(02巻 PART07)(重要度:S★★★★)
◆あらすじ;林間学校の夜、大きな音とともにカラス天狗が落ちてきた。気つけのビールを飲まされ、酔っ払ってしまった彼はあたるを色男と勘違いし、クラマ姫の一夜の契りの相手に選んでしまう。天狗の娘と聞いていたあたるは最初は拒否していたが、コールドスリープに寝ている美女を見て喜び勇んで目覚めの口づけを交わしてしまう!
◆ポイント;クラマ初登場 温泉マーク再(?)登場
◆キーワード;一夜の契り アニマ光線
◆注目フレーズ;「くやしーっ!!うちにはろくにしたことがないのにーーっ!!」「他人のものとなると手に入れたくなる」「だれが座敷わらしだ!!」
◆解説
言わずと知れたクラマ姫初登場回。これから新連載が始まるまで、4回に渡って登場することになります。
ある意味、第3のヒロインと言ってもいいくらいの破格の扱いですよね。
考えてみるに、高橋留美子先生としては先の10週連載で「うる星」は一旦終わったと考えており、もう一度あたるとラムとしのぶの三角関係を繰り返すことはあまり考えていなかったのではないでしょうか。
だからここは番外編として、新たなヒロインを投入して四角関係のマンガにしようと目論んだのかもしれません。
クラマ姫といえば、なんといってもその特徴的な唇です。

こんなにぷっくり厚みのある唇を描いたキャラは他に見当たりません。
何しろ、はっきりと縁取りがされているくらいですからねw ミックジャガーも顔負けですよw
さらにボンテージファッションとでもいうのでしょうか、鋲付きの首輪に胸元が大胆にクロスになっている衣装が刺激的ですよね。うる星キャラの中でももっとも過激なファッションと言えるのではないでしょうか。(さすがに再登場の際には、もうちょっとシンプル?な衣装に変わっていましたが…)
もう一つ、彼女の特徴といえば「種族維持」や「掟」に囚われているということがあります。
つまり、クラマはラムやしのぶと違って、あたるに惚れているわけではないんですね。
あくまで種族繁栄のために「一夜限り」の契りを求めているだけなんです。
愛とか恋とかではなく、極めて合理的でドライな関係性がそこにはあります。
この設定が彼女たちの間に微妙な空気感を醸し出していくわけです。

そしてあたるも、その即物的で割り切った関係に惹かれている節があるのがポイントです。
それまでの三角関係とは違う、刹那的で背徳な香り。
クラマという存在が、うる星の根幹を揺るがしてきたわけです。
この回では、他にもポイントになる点がいくつかあります。

まず、温泉マークが再登場。「いまだ浮上せず」の時もそれらしい教師が登場していましたが、あの時は“温泉マーク”を着ていませんでしたからねw
今回でようやくキャラが定着したと言えるのではないでしょうか。(そしておそらく、本格週刊連載開始時に彼が再び登場する布石にもなっている)
さらに、ここではっきりと「友引高校」の名前を確認することができますね。「系図」では10年後の世界ででしたが、これであたるたちが通っている高校の名前が確定したわけです。
ちなみに林間学校ということで、ここで初めて「夏」が描かれます。(うる星第1回は1978年8月30日発売号から始まっているので、夏休み期間の話はこれまでなかったのです)
あと、余談ですが、九羅馬牧場(くらま牧場)となっているのが面白いですねw
クラマのUFOがこの場所に落ちたのは、この名前に導かれたからなのかもしれないw
さて、あたるは最初こそ「天狗の姫」と契ることを渋っていましたが、クラマのその妖艶な尊顔をみた途端、歓喜の雄叫びをあげます。まあ正直、男なら誰でも気持ちはわかるんじゃないでしょうかw
何しろ「一夜の契り」ですからね。結婚だ一生だと、ラムにまとわりつかれている彼にとって、それは甘美な響きに聞こえたに違いありません。
口づけしたあとに乗り込んできたラムとのやりとりはまさに修羅場でしたねw
「こんなところで浮気していたのけーーっ!!」「ラ、ラム!」
「なんだ?きさま!」「うちは、ダーリンの妻だっちゃ!!」
「にゃにい〜〜っ口づけ〜〜!?」「ダーリン…やったのけ〜〜?」「いや〜つい、フラフラと……」
なんかもう、犬も食わないってやつw
それでも、

これだけで済ませてしまうんですから、ラムも慣れてきたというか寛大になってきたというかw
電撃を受けているあたるも悲壮感がないですよね。むしろ、妻の嫉妬を喜んでいるようにも見えますw 目が笑ってるしw

そんな二人のやりとりを見て、クラマの目の色が変わります。
そして彼女はこうつぶやくのです。
「他人のものとなると手に入れたくなる」「性(さが)よのう……」
このクラマには後々の彼女にはない、ある種の人間臭さを感じさせますね。
要はラムに嫉妬しているとも言えるわけですから。
もしかしたら彼女は、掟とか種族に囚われないその「愛情」が羨ましく思えたのかもしれません。
ここからクラマ姫の、あたるを「男」にするための教育が始まるわけですが、
それをラムは

なんと「エロ写真」で妨害するんですよね。これは何気にすごいことだと思いません?
もはや彼女にとってダーリンの本性は十分わかっていて、あえてそれを矯正する必要はないということじゃないですか。(しかし、これらの写真をラムはいったいどうやって手に入れたんだかw)
結果的にあたるは、ここでさらに女性への執着心を強固なものにしていくわけで、クラマの教育はまさに主人公としてのあたるを作り上げたことにもなるんですね。

そんなあたるも、自分の精神構造を探られるとなると、とたんに拒否反応を示します。
まったく今更何を言ってるんだという感じですが、ここでラムに助けを乞うというのがすごいですよねw
よくもまあ恥ずかしくもなく、という気もしますが、まあ考えようによってはそのくらい彼女に甘えていると言えるのかもしれません。
ラムの「身から出たサビだっちゃ!!」がまさにその通りとしか言いようがないw
このあと、しのぶの方もちらっと見るあたるでしたが、当然彼女にも「ふーんだ」と拒否されますw
もっとも、彼の「女のことしか頭にはいってない」中身を見てアホ扱いするクラマに、

ラムとしのぶは、烈火の如く怒ります。
この構図は面白いですね。それでもやはり彼女たちはあたるを好きなわけです。ここがクラマとの違いなんですね。
そして彼女は、あたるの女性への関心を抑えるためにアニマ(女性的要素)光線を浴びさせようとします。
つまり、自分への関心さえもクラマにとってはどうでもいいことなんですよ。あくまで「一夜の契り」で種族が維持できればそれでいいわけです。
この割り切り方とラムたちとの対比がすごく印象的なエピソードかと思います。
☆なりそこないが選ぶこの一コマ

で、これがそのあたるの頭の中w
双六になっているのが最高じゃないですかw なにげにサイコロまであるしw(おユキさんの下)
でも、しのぶが「思ってたよりずっとマシだったわ!!」というのもちょっと分かりますね。
なんだかんだいっても「4のぶ」が一番中心で大きく占めていますし、酒池肉林のハーレムといった感じではなかったのは意外とも言えるのかもw
「ラ6」もしっかり存在感を見せているのも興味深いですよね。
…ていうか、よく見るとスタートもゴールもないんだがw
5の「フリダシにもどる」はどこに行けばいいんだよw
それぞれを結ぶ進路も入り組んでいるし(なぜか「弁10」だけその輪から外れているのがまた面白いw)、「6にとぶ」(ラム)や「4にもどる」(しのぶ)がまた意味深に感じられますね。
いやもう、なんだかずっと見てられますよw
これは時代ごとに更新した図も見てみたいですね。「前期」や「中期」、そして「後期」ともなると、マスも増えてむちゃくちゃ複雑な双六になっているんじゃないかなw
☆なりそこないがハマったギャグベスト2

出た、座敷わらしw
しのぶのツッコミがお笑いのそれになってるのが面白いw
まあしかし、鬼と座敷わらしと同時につきあってるとか、確かにどうかと思うわなw
(クラマは「鬼と夫婦になるようなアブノーマルではわしのむことして失格…」とも言ってたw それをいうなら、天狗と契るのもけっこうアブノーマルだと思うがw)

これはとんだとばっちりw
生徒の性格まで教師は面倒見きれないわなw
このあとの「わたしが性格をねじまげたわけじゃないっ!」「えらいいわれようやな…」も含めて、流れるようなコント感が好きですね。
あと、しのぶとラムがあたるを面白くない感じで見ているのもいいw
この二人、意外と波長が合う時があるんですよね。
☆ピックアップワード;きさま タフだな!

あたるを一言で言い当てた見事な評価といっていいでしょう。
本人も健康だけがとりえと言ってるしw
まあ、そうでなければ、ラムやしのぶと付き合えるわけがないですよねw
クラマの登場が果たした役割とは、まさに彼の主人公としてのしぶとさをはっきり読者に見せたことにあるのです。
●EP020;思い過ごしも恋のうち(02巻 PART08)(重要度:S★★★★)
◆あらすじ;放課後になると、取り憑かれたかのようにどこかに向かうあたる。ラムとチェリーが尾行すると、そこではクラマ姫が彼をマトモな人間に教育するための塾が開かれていた!
◆ポイント;クラマシリーズ2 潜在意識の弁天・おユキ
◆キーワード;人格強化訓練 潜在意識
◆注目フレーズ;「おれという男はなあ、バカにされればされるほど燃えてくるのだ!!」「さすがはしのぶ、動物的なカンのさえだっちゃ!」「わ~~っ、現実の女はいいな~っ、いいな~っ!!」
◆解説
「お雪」に並ぶ最長29ページ、なおかつ全ページカラーという破格の扱いだった回ですね。しかも今回は増刊号ではなく週刊での掲載ですから、当時の力の入りようがわかるというものです。

「ディスコ・インフェルノ」で着ていたトラジマボディコン再び。今回はキャップも被っていたりしてよりオシャレにw
一応尾行スタイルというか、ハードボイルドを気取っているんでしょうかw
てか、新聞読んでるフリっていつ頃のイメージなんだろw
チェリーとラムがコンビを組むというのもなかなか新鮮ですね。これはラムの方から協力を頼んだのでしょうか。
駅員が直接切符を切っているところが時代を感じさせます。この時代はまだ自動改札ではなかったんですね。
電車賃を請求するチェリーもせこいですけど、「ダーリンからとりたてればいいっちゃ!」と返すラムもなかなか辛辣ですw
ていうか、ラムは地球のお金をどうしているんだろうか…ダーリンからせびっているとか?
今回は毎日のように放課後どこかに通っているあたるを尾行するラムたちという、ちょっとドラマ風に始まるのが特徴的ですね。
冒頭ではしのぶも「火事」(笑)になっていたのですが、やはり彼女にはあたるの行く先を突き止めるほどの行動力はなかったようで…
この辺からも、ラムが次第に話の中心になってきているのがわかります。

で、けっきょくクラマのところに通っていたわけですが、ラムの言い方からすると、夏の林間学校でいったん関係を絶った流れだったんでしょうか。まあ無理矢理ラムたちが引き離して一応の決着を迎えていたのかもしれません。
もちろんラム自身そんなことは信じていなかったのですがw
アホガラスという物言いが強烈ですね。ダーリンを誘惑する相手には容赦しない彼女の激しい感情が伺えます。
ただ、チェリーを同行させた意味はよくわかりませんけどw
ていうか、そのグラサンはいったいどういうつもりなんだw

変装のつもりだったのかよ!
ナメてるというか、よけいに目立つわw
ただ、この回で面白いのは、チェリーがクラマの「あたる教育計画」に理解を示すところなんですよね。
彼いわく、「諸星あたるの凶運を改めるには、性格を治すのが一番」ということらしいですからw
今考えると、実は的を射ていた見方だったようにも思えます。
そして結果クラマは、あたるの性格に留まらず、うる星の世界そのものをも変えたのではないかという気がしますね。

しみったれガラスw よく見ると、ラムにだけ座布団も出していないのがわかりますね。
こういうお茶の間SF的な場面がクラマ回の特徴でもあります。
ていうか、ラムがお茶菓子を欲しがっているかと思うと、それもまたおかしいw
で、その夜に

こんな光景が繰り広げられたりするわけです。
「手を切るって約束するまでかえらないっちゃ!」とか、完全に重い女と化しているw
そんなラムを軽くいなしているあたるがまた印象的ですね。
もはや、「絶体絶命」や「愛で殺したい」の頃の彼とは別人のようです。

この回では前半、しのぶの影が薄いのですが、ラムが学校に来てあたるを呼び出すとさすがに彼女も黙ってはいられません。実際、ラムはこの機に乗じてUFOで鬼星にあたるをさらっていくつもりだったのですからw
ていうか、ラムがアホガラスならしのぶは「カラス女」なんですねw なんかショッカーの改造人間にいそうなネーミングw
でも、この二人がこうやっていがみ合うのも、実はこの回が最後なんですよね。クラマ編の後半ではしのぶは出番がなくなってしまうので。
次に登場するときはもはや三角関係のメインヒロインではなくなってしまうことを考えると、このシーンにもなんだか不思議な感傷を覚えずにはいられません。

クラマがあたるの「人格強化訓練」の一環として選んだのは、「精神アスレチックランド」。
まるでウサギを追いかけて不思議の国に迷い込んだアリスのように、彼は深い精神世界に落ちていったのですが、その表現の仕方が面白いですよね。
ある意味メタ演出というか、コマ割りをぶち破ることで彼は不条理な夢でさまようことになるわけです。
バニーガールが一服しているところが「お休み処」だったり、風鈴がぶら下がっている一方で鹿の頭のはく製が飾ってあったりと、和洋折衷なシュールさに“るーみっくわーるど”ぽさを感じます。


しのぶ=大入道、ラム=雷様という構図が面白いですねw
この世界では、「女性への恐怖心と不信感」をあたるの潜在意識に植え付ける目的があったわけですが、元々彼が奥底に抱えていたイメージを増幅させているだけな気もします。巨大化しているのも、そういうことなんじゃないでしょうか。
で、夜の街をさまよう中で、

弁天様や、

おユキさんに再会するわけです。
このイメージも、元々あたるが抱いていたものだったような気がしますね。
で、最後にはサクラさんも登場して、何やらわけのわからないうちに「死刑」を宣告されてしまうというw
扉を開けて現実に戻ってきた彼はひたすら「女こわい~~」とおびえるだけで、クラマの「人格強化訓練」は成功したかに思えたのですが……
☆なりそこないが選ぶこの一コマ

現実の女はいいな〜〜WWW
もう最高のオチですねw
ラムとしのぶが二人で「夢を見ていたんだ」と彼に告げるだけで、こうなるんですからたくましいw
要するに、普段彼女たちにせっかんされる「現実」はあたるにとってはすばらしい世界なわけですよ。
もちろんそれは悪夢を見せられての相対的な評価なんでしょうけど、なんかこうグッとくるものがあります。
もはや、諸星あたるは「まれにみる凶運の持ち主」ではなく、受難ばかりのこの世界をすばらしいと受け入れているんですね。実に感動的じゃないですかw
クラマは嘆いていますが、実は彼女の「教育」の成果は十分にあったんじゃないかという気がします。
☆なりそこないがハマったギャグベスト2

夢の中での弾劾シーンw
言ってることは間違ってはいないけど、微妙にニュアンスが違うだろうというw
まあおユキさんの件は押し倒したことには変わりないとは思いますが、弁天さまのはかなり脚色があるだろw
お前が「食ってもいいぜ」と言ったんだろうがw
ここで彼女たちが再登場して、ラムとしのぶに乗っかる形であたるを責めるという構図自体がなんか面白いですね。二人とも満更でもなかったはずなのにw

裁判長にここまで開き直られたら、もうどうしようもないw
でもまあ、実際本当のことだからなあw あたるも強くは否定できないのが辛いところですねw
☆ピックアップワード;一夜の契りってのが魅力的なんだよなァ あとくされがなくて……

令和版アニメの第4話ではわりと軽い感じでのセリフでしたが、ここではかなり重みのある言葉のように感じます。
何より、あたるはここで声に出しているわけじゃないんですね。ラムに対する言い訳ではなく、あくまで自分に言い聞かせるような「独白」なんです。
「あとくされがない」というのはこれだけ聞くとひどい言いように感じますが、実は「幸せの黄色いリボン」での「一生」という言葉がここにかかってくるんじゃないでしょうか。
その重みへの忌避の気持ちが根底にあるような気がしてならないんです。
「将来」「責任」「束縛」「運命」…
彼がクラマに魅かれたのは、そういったところから解放されたい気持ちがあったような気がします。
逆にいえば、ラムやしのぶとはそういうことを抜きでは付き合えないということを彼は無意識的にわかっていたとも言えるのではないでしょうか。
●EP021;父よあなたは強かった(03巻 PART01)(重要度:S★★★★)
◆あらすじ;クラマ姫はあたるの人格改造計画として、自分の理想の男に弟子入りさせることを目論む。その相手とはなんとあの「牛若丸」だった!
◆ポイント;クラマシリーズ3 タイムトラベル
◆キーワード; 弟子入り 子どもを作れないからだ
◆注目フレーズ;「パパは世界一だ!」「ダーリンもだんだん妖怪じみてきたっちゃ」「女千人斬り」
◆解説
いわゆるタイムトラベルもの。「系図」もそうでしたが、実はうる星ではちょこちょここの手の話があります。
「タイムリープ」や「タイムスリップ」ではなくて、「トラベル」というのがポイントですね。
つまり巻き込まれる形ではなく、自発的に「時間旅行」をするわけです。ドラえもんでいう「タイムマシン」のようなものと考えればいいかもしれません。
個人的には初期クラマシリーズの最高傑作だと位置付けています。
そしてクラマの役目は、実質この回で終わったとも言えるかと思いますね。

あたるの母が「クラマ」に言及している珍しいシーン。
どうやら、親にもバレバレの形で逢引き(?)はずっと続いているようですw
「日曜ごと」という言い方が昭和を感じさせますね。この時代はまだ土曜は休みではなかったのです。
このあと、ラムが「きょうというきょうはクラマと決着をつけるっちゃ!!」と言いながら、前回にも出てきた「給水塔」に向かいます。
あの後も、毎週のように「学習塾」は開かれていたんでしょうかw

相当苛立っているご様子w
夏の林間学校からずっと続いているクラマとの件で、ラムも歯止めが効かなくなってきている感じです。
ていうか、カラス天狗って生で食えるのか…?(いや、調理すればいいってことじゃないですけどw)
忘れがちですが、やはり本性は「鬼」であるということを改めて思い知らされますねw
この後、1173年の鞍馬山にタイムトラベルして、そこで牛若丸がクラマの父であることを知ったラムは「いいこと聞いたっちゃ」と考えるわけですが、それがまた「鬼」の発想というかなんというか…

「ダーリンもだんだん妖怪じみてきたっちゃ」
でも、この受け止め方はいいですね。決して呆れてる風でもないのがいいじゃないですか。
あるがままを受け入れているというか、フラットなたたずまいがある意味清々しい気がします。
一方ではすごく執着心が強いのに、ある面ではすごくあっけらかんとしているところがあるんですよね。
それが彼女の一番の魅力かなという気がします。
さて、いわゆる「時代もの」という一面もある今回ですが、それゆえに普段とはまた違うシュールな味わいが楽しい回でもあります。
たとえば、

牛若丸が「打倒平家」とか「平家が憎い」なんて張り紙を貼っていたり、

「わたしのははうえ うしわか画」なんて似顔絵(?)みたいなものがあったりしますw
しかも、なぜか仮面ライダーもどきのお面まで飾ってあるw
こういう脱力系なネタはまさに「るーみっく」的な面白さですね。高橋留美子ならではのセンスが冴え渡ります。

こういったあたると牛若丸との掛け合いもうる星ならではのものでしょうw 「義父(とう)さん」ってw
意外とこの二人、気が合うというかいいコンビなんですよね。
京の町でいっしょに「おねーちゃん、遊ばぬか?」なんてナンパするしw
この日のためにと、ヘアをセットする牛若様がかわいいw
ていうか、

牛若丸って、実はけっこうむっつりなのかもしれないw
あたるの「すきものっ!!」というツッコミがうまいw
このあと、あたるは「無理もない 初めて女の裸体を見たのだから……」というんですよね。
あたるもラムの普段の格好を「裸体」と認識してるんだ(笑)と、当時は思ったものです。ラムもそれをあえて否定しないんですよねw
まあ、平安時代の人間にとって裸同然なのは至極当然ではあります。
時代のギャップネタといえば、

このネタも好きですね〜w
絶対、こんな戸籍謄本なんてあったはずがないw
そもそも、弁慶がなんでサングラス的なものを掛けているのか謎ですけどw
まだまだ紹介しきれない小ネタが満載で、本当に何度も見返してしまう魅力がありますね。
過去にタイムトラベルをするのは他にもいくつかあるんですけど、こういった歴史的な出来事にリンクする話というのはこれしかないんです。
そんな中でも普段と変わらないバイタリティーを見せるあたるやラムの活躍は、見ていて痛快ですらあります。
ある意味、異色作でもありながら王道でもあるという、うる星の幅を広げた回でもあった気がしますね。
☆なりそこないが選ぶこの一コマ

あたるが「悪性遺伝」を超えて、自らトラブルに飛び込むことを決意した瞬間ですね。
ラムがあきれるように「ダーリンて本質的には変わらないっちゃねー」というのが、実に印象的です。
かつての彼女だったら、「女千人斬り」という目標にただひたすら怒りまくっていただけでしょう。
つまり、この時点で彼女はあたるの「本質」を見抜き、そしてそれを受け入れているわけです。
この時、クラマのあたるへの「教育」は無事に完了したのですね。
☆なりそこないがハマったギャグベスト2

どっか〜んw
何度見ても笑えるw
ていうか、そのセミヌードの絵はどこから調達したw 女の口説き方とは全然関係ない気がするんだがw
あたるのギャグマンガとしての主人公ぶりが見事に発揮された名シーンだと思います!

初期らしい言葉遊びネタですが、いきなり英語が出てくるところになんともいえないおかしみがありますよねw
それを牛若丸が言ってるかと思うと、よけいに面白いw
「カラスにちなんで」じゃねーよw
☆ピックアップワード;こういう者がここを通りかかったら、子どもの作れないからだにしてほしいっちゃ

世を忍ぶ格好をしてても、トラジマは必ず入るんだなw
それはさておき、これは考えてみるとかなり残酷な行為なんですよね。
クラマ自身をなきものにしようとするならまだしも、その種を根絶やししようというのですから。相当えげつない発想だと言わざるを得ません。
そこには「契り」という行為への激しい拒絶があったのかもしれませんが、ただ、これは彼女の「二面性」を意味するものではないと思うんですよ。
彼女の純粋性がそのまま陸続きでこの残酷さにつながっているのが、彼女たるゆえんなのです。
「ラムは“うる星”の中では、一番理解できないキャラでもあるんです。どちらかというと、私は、ひねくれていたり、コンプレックスを持ったキャラのほうが理解できるので、ラムのように、奔放でまっすぐなキャラって、私からは、一番遠い存在だったりします。まんがの作品の中には、自分に重ならないキャラもいるんだと教えてくれたのも、またラムでした。」(新装版「うる星やつら」第1巻巻末企画「My Lum 01/34 高橋留美子」より引用)
高橋先生もこうおっしゃっているように、ラムは本当に「裏表」がないキャラです。
というより、表と裏が同じ面にあるようなキャラなんですよ。それゆえに、どこまでもまっすぐでいられるんです。
純粋さが残酷にもなるし、愛情深くもなる。
だから、変に執着もしないし、執念深くもない。
その証拠に、彼女はこのあとクラマの命をとことん狙うということもしませんし、時が過ぎればそんなことがなかったかのようにあっけらかんとしているわけです。
それこそが彼女の魅力なのではないでしょうか。
あたるもその辺のことをわかっているのか、弁慶に「子どもの産めないからだにするよーに」と頼み事をしたラムに対して、「おまえか、弁慶をけしかけたのは~」くらいで済ませているんですよね。
本当なら、ライバルである女の親を殺すような真似だということはわかっているはずなのに、です。
おそらく彼もラムの物事に執着しない性格をある程度わかっていたのでしょう。
だから、「まったく仕方ないな」くらいの温度で済ませられたんじゃないかと思いますね。
ちなみに、ラムは「子どもの作れないからだ」と言ったのに対して、弁慶はそれを「子どもの産めないからだ」と解釈しているのが面白いw
●EP022;勇気があれば(03巻 PART4)(重要度:C★)
◆あらすじ;冬休みにスキー教室に参加したあたるたち。そこで教える先生が実に“いい女”だったことに浮かれる彼らだったが、たまたま近くで山ごもりをするチェリーに「彼女は通りかかる男を次々と食い殺す魔性のもの」だと忠告を受ける…
◆ポイント;クラマシリーズ4 メガネたち最後の出演
◆キーワード;安達が原の鬼女伝説 リューマチ
◆注目フレーズ;「姫はカップラーメンのようなおかたですね」「ところであのお客さんたちうまそうかい?」「あの娘、食あたりせんといいがのう」
◆解説
クラマシリーズ最後を飾る一編。なのに、クラマもラムもほとんどストーリーに関わってこないのが面白いですねw
鬼ババ伝説を題材にした、実質あたる一人が主人公の物語になっています。
つまり、すでにクラマのあたる改造計画は終わっているわけです。今回は独り立ちした彼の初お披露目といったところなのかもしれません。

これまた珍しい、あたる父がラムとクラマに言及しているシーン。
ここではラムもクラマと同じ扱いなんですね。つまり諸星家にとっては、いまだ平和を乱す邪魔者でしかないわけです。

ラムの登場シーンもいつもとは違う感じですね。顔見せというか、ゲスト的な扱いに近いような気がします。
今回はあくまであたるが遭遇する山での怪談話であって、いつもの恋愛ドタバタではないわけです。
そう言った意味で、今回はこれまでで一番「番外編」らしい一話と言えるかもしれません。
しかし、トラの着ぐるみで駆けつけるとは、ラムもけっこうおちゃめなところがありますねw
やっぱり自分はトラジマだという自覚があるんでしょうかw

おもしろいかたたちw
ラムとチェリーが同等の扱いなのが面白いですね。まあこの格好じゃ、無理もないかと思いますがw

バックの鬼女のイメージがガチすぎて怖いw こんなホラーも描けるんですね、高橋先生は。
ただ、こういう日本古来の伝承を元ネタとして使うのはうる星では定番と言ってもいいくらいですが、あくまで設定を借りるだけというか、突っ込んだ背景などにまでは決して踏み込んだりはしないんですよね。ここでも、名前とそのシチュエーションくらいしか使われません。
そこはギャグマンガならではの枠組みから外れないように心がけているように思えます。
ていうか、今現在も「鬼」に取り憑かれているようなものなんですけどねw

一方のクラマは、まったくの蚊帳の外w
今回彼女は、最初から最後まで温泉に浸かったままですw
もちろん、コールドスリープの副作用で寒いところに出ると眠くなってしまうという理由はあるわけですが、この彼女がストーリーにまったく関わらないという構図そのものがギャグになっているんですね。
と同時に、すでにクラマはお役御免になっていることを意味しているともいえそうです。
それにしても、サルの親子やシカがまたいい味出していますね。特にシカはどことなくあたるに似ているような気がするw

一方のラムもあまり話には関わってきません。
なんか知らんけど、メガネたちと花札(?)に興じているしw
意外と彼らとは仲が良かったりするんですよね。
あ、もちろん、寝るときはUFOに帰るんですよ。さすがにここで雑魚寝するわけではありませんw

チェリーの忠告にまさかそんなわけがないと頭を振り払うあたるですが、それでもやはり気になるようですね。
何しろ「化け物にもてる」と本人も自覚しているようですからw
哀れ、鬼に食べられてしまう悪夢を見てしまうわけです。
それでも、最後にラムの非難の言葉が出てくるということは、彼なりにどこか後ろめたさを感じていたのかもしれませんね。
ていうか、「安達が原鬼子」って名前を聞いたらそりゃ疑うわなw
なんだよ「鬼子」ってw 親はどういうつもりで命名したんだw
もっとも彼は、美女と見ればみさかいないタイプなので、想像と現実の区別が時々ぶっとんでしまいますw
で、上空に浮かぶUFOから見張るラムは攻撃を仕掛けるわけですが…

それがなんと、「吹雪」だというw
もはや、完全に舞台装置ですよね。彼らを遭難させるためだけにラムは駆り出されたわけです。
実際、このシーンを最後に彼女は登場しませんから。
それにしても、ここは雪だるまのプレートが立ち上がるという仕組みが面白いですねw
ていうか、これが吹雪のマークなのかw
他にどんな攻撃方法があるのか見てみたいw

ヒ~ヒ~w
おばあちゃんの正体はバレバレとはいえ、演出がうまいので緊迫感はありますね。
鬼子ちゃんも「こちらのへやには決してはいらないでください」とか、お約束なセリフを口にしますしw
ちゃんとここまで読者を惹きつける構成になっているからこそ、オチがしっかり生きてくるんですよね。
で、

これがオチw
いい女なら人喰い鬼でもいいから思いをとげたいと願う彼は、ある意味清々しいw
これもクラマの教育の賜物でしょうかw
どうせ食べてもらうなら綺麗に食べてもらいたいのか、ナイフとフォークを手渡しているのが笑えるw
もちろん鬼子さんは人喰い鬼なんかでなく、いたって普通の女性だったわけですがw
ちなみに、メガネたちはこの話を最後に二度と登場しなくなります。
そういった意味で、彼らは「初期」うる星の象徴でもありました。
そんな彼らが退いたことで、うる星は新たに生まれ変わることができたのかもしれませんね。
☆なりそこないが選ぶこの一コマ

シャ~コ シャ~コの響きがなんとも不気味ですね。
よく見ればスキー板というのはわかるんですけど、やっぱり見せ方がうまいんです。
で、この後の「だめよおばあちゃん、これは刃物なんだから!」とか「あんまりうまそうじゃないわね」といったいかにも匂わせたセリフがまた最高なんですよねw
ここでのおどろおどろしさがしっかりあるからこそ、ギャグも冴えるわけです。
☆なりそこないがハマったギャグベスト2

スキーのエッジは刃物なのよw
紛らわしい言い方すんなw
同じシャ~コ シャ~コでも、まったく違って聞こえますよね。
この辺の落差を笑いに変える手腕はさすがとしかいいようがありません。

ずっといたのだwww
リューマチのおばあちゃんの正体がわかるのと同時に、答え合わせのようにこういう脱力系のギャグにつながるところが素晴らしいですね。
まさに緊張と緩和でしょう。温泉は笑いにも効くわけですw
ちなみに、クラマはこのあと再びコールドスリープに入ります。
彼女が次に目を覚ますのは2年半先(週刊少年サンデー1982年26号(’82 6/2発売)「クラマ再び!!」にて)、つまり、「初期」の世界から一気にタイムスリップしたとも言えるわけですね。
☆ピックアップワード;人喰い鬼でもなんでもいい!あんないい女に、なんにもしないで別れるなんておれにはできん!!

すごい心意気ですよねw
まさに「自ら凶運に飛び込む」姿勢じゃないですか。当初のただ不幸にみまわれるキャラとは彼は完全に別れを告げたんです。
この姿勢がオチにもつながるわけで、あたるはこの瞬間に名実ともにうる星やつらの主人公になったんですね。
そして受け入れ態勢が整ったことで、「面堂終太郎」の出番も可能になったんだと思います。
◆単発掲載期~クラマ姫編~のまとめ
それまでの「初期」とは違いますし、ラムとあたるがメインとなる「前期」以降とも違うのであえて「番外編」と書きましたが、内容としては決して外すことのできない最重要時期だと思います。
クラマ姫がいなければ、「面堂」は登場できなかったでしょう。彼女が諸星あたるを「男」にしたからこそ、彼の出番が可能になったのです。なぜなら面堂とはまさに「トラブル」そのものだったのですから。
もし「初期」のあたるのままで面堂と対峙したら、たぶん真面目に相手にしないんじゃないかという気がします。それこそ面倒くさがって適当にいなしていたんじゃないかな。
なんていうか「覚悟」がまだ定まっていない感じがするんですよね。どこかで俺は不幸な星の下で生まれたんだとか言い訳をしてそうな気がするんです。
それを変えたのがクラマの「教育」でした。精神構造を暴かれ、潜在意識の奥底に潜ることで現実のすばらしさを知り、あたるは自分のあるべき姿を見つめ直したのです。
そして「男」の理想である牛若丸の生き方に感銘を受けた彼は「女千人斬り」を目標に掲げるくらいに成長(笑)します。
そう、彼はもはや「不幸の星に生まれた凶運の持ち主」ではなくなっていたのですね。
クラマはラムやしのぶとは別の、愛だの恋だのといったベクトルとは違った方向でうる星の土壌を耕しました。
そうすることで、うる星の世界を「面堂」に引渡せられるようにしたといえると思います。
つまり「初期」から「前期」へと、バトンを渡すような役割を果たしたんですね。
だからこそ、その役目を終えた途端、彼女は「冬眠」に入ったのではないでしょうか。
私にとってのクラマ姫は、この初期4部作の頃の彼女のことです。
長い眠りから覚めた後の、面食いで常にいい男はいないかと探している彼女とはまったく別人だと思っています。
というわけで、ここまで4回に分けて「初期」の時代を見てきたわけですが、いかがだったでしょうか。
一般的に知られているイメージとは異なるディープな味わいと、その遍歴を少しでも感じ取っていただけたら幸いです。
さて、次はいよいよ本格的に連載が始まった「前期」を見ていく予定ですが、その前にいったん中休みとして「表紙」についての記事を書こうかなと思っています。
うる星講座その1・原作コミックスを知ろう!でちらっと触れた、オリジナル版の表紙についてですね。復刻版で美麗なイラストを拝めるようになりましたし、皆さんと一緒に堪能できたらいいなと思います。
ぜひ楽しみにしていてくださいね。それではまた次回のうる星講座でお会いしましょう!
「復刻BOX」4セットがあれば、うる星の歴史を一望できます!
気軽に読める電子書籍もいいですね。とりあえず4巻まで読めば、「初期」の雰囲気がわかります!
初出どおりの順番で読むには文庫版が便利!
「クラマ姫編」は2巻のPART4からPART7でまとめて読むことができます。
うる星やつら 令和版ラブセレクションは本当に謎の多い「セレクション」で、実はここで紹介した話も収録されていたりw いったいどれが「ラブセレクション」なのか確かめてみては?
令和版アニメでは残念ながら初期のクラマ姫は取り上げられなかったのですが、
4話の「口づけと共に契らん!!」では、一部で初期のクラマ姫の要素を取り入れているところがあります。ぜひ確認してみましょう!
- 関連記事
-
- 【なりそこないの四方山うる星ばなし10】10くらいからわかるうる星講座その7・特別企画!オリジナルコミックスの表紙を堪能しよう!
- 【なりそこないの四方山うる星ばなし09】10くらいからわかるうる星講座その6・まずは初期から読んでみよう!単発掲載期~クラマ姫~編
- 【なりそこないの四方山うる星ばなし08】新TVアニメ「うる星やつら」第2期が2024年1月から放送決定!今の時点で内容を予想してみる
スポンサーサイト