【なりそこないの四方山うる星ばなし04】10くらいからわかるうる星講座その2・うる星の歴史を区分化しよう!
※【なりそこないの四方山うる星ばなし】とは……
令和の時代に新しくTVアニメ化された「うる星やつら」。自他共に認める高橋留美子主義者である私なりそこないが、2024年から始まる第2期までの間、「うる星やつら」についてざっくばらんに語っていく企画です。
(私の新アニメ「うる星やつら」への思いはこちらとこちらで。)
うる星について書かれた記事を読んでいると、時々「初期」とか「後期」といった言葉にぶつかります。
当ブログでも「初期うる星」とか「中期の~」という言い回しが、特に前置きもなく出てきますよね。
原作は単行本にして全34巻、連載期間は8年半におよぶ歴史のある作品ですから、どうしてもその時期によって作風が異なってきます。それを語る上で便宜上そういった言葉で区分化しているわけです。
ただ、この区分は特にファンの共通した認識の下で決められたものではありません。ストーリーマンガとは違い、〇〇編とか明確な区切りがあるわけじゃないですからね。
それぞれが自分の分類に基づいて「初期」だ「後期」だと言っているに過ぎないんです。
それ自体は別にいいんですけど、これから「10くらいからわかるうる星講座」をやっていく上で、その辺の認識があいまいだと何かと不都合かなと感じたんですよね。講座というからには、いい加減な定義のまま語っていくわけにはいきませんから。
せめて当ブログ内では、一度しっかり定めておく必要があるのではないかと考えたわけです。
というわけで、今回は「うる星の歴史を区分化しよう!」と題して、原作を大きく4つの時期に分けて見ていきます。
すなわち「初期」「前期」「中期」「後期」といった具合ですね。
ただし、ここではあくまでざっくりと流れを踏まえるだけです。
そうすることで、「うる星やつら」を“線”として理解できると思うんですよね。俯瞰的な視点で見ることで全体の流れを把握するだけではなく、それぞれの時代の特色や変遷も見えてくるんじゃないかと。
うる星やつらを知る上での大まかなガイドラインになれば幸いです。
ひとつおことわりしておきますが、今回提示する区分はあくまで私独自の基準になります。必ずしも普遍的な指針にはならないということはあらかじめご理解ください。
「歴史」の解釈は人それぞれ、今回の記事を見たら、今度は自分だけの「区分」を作ってみるのも面白いのではないでしょうか。
それでは見てまいりましょう!
(なお、各区分で挙げた「代表的エピソード」は私の独断によるものです。異論は認めますw)
●初期
オリジナルコミックス(新装版・電子書籍版共通)1巻PART1「かけめぐる青春」~3巻PART4「勇気があれば」+4巻PART1「酒と泪と男と女」まで
(文庫版1巻~3巻PART7、ワイド版1巻~2巻PART3)
1978年8月に「うる星やつら」の連載が始まったとき、高橋留美子はまだ大学3年生でした。その年の6月に「勝手なやつら」で本誌デビューしたものの、まだ海のものとも山のものともつかない新人がわずか2か月でいきなり本誌連載を勝ち取るのですから破格の待遇だったといっていいでしょう。
もっとも最初は「5回集中連載」という形でした。いわゆる「お試し連載」という意味合いもあったかと思います。
まだ学生の身でしたし、学業を優先しつつ無理のない形で時間のあるときに集中して描くというスタイルだったようです。
第1巻PART1「かけめぐる青春」~PART5「絶体絶命」までがその時期に当たりますね。
なんでも「大学3年生の夏休みを使って描きました」(うる星やつらパーフェクトカラーエディション下巻 巻末インタビューより)とか。
その後、冬休みや春休みごとに単発掲載や10週集中連載を経て、大学を卒業した1980年春から本格的に週刊連載が始まりました。
この間のいわゆる不定期連載期間を「初期」と呼ぶことにします。
最初は「プレうる星期」とか「旧うる星期」という名前も頭に浮かんだんですけどね。個人的な見解として本格連載が始まる前の時期のうる星は、それ以降とはまったく別ものと考えている面があるので。
ただ、一般的にはなじみのない言い方ですし、いたずらに混乱を招く危険性も考慮して無難なところに落ち着きましたw
なお、「最初期」という言い方も一部では使われているようです。
「初期」の特徴としてはなんといっても、あたる、ラム、しのぶの三角関係でしょう。当初はラムもゲストキャラに過ぎず、主人公あたるとその恋人であるしのぶを中心としたSFドタバタ劇が繰り広げられます。いわゆるラブコメ色はほとんどなく、むしろドロドロとした薄暗い雰囲気でのブラックギャグといった装いですね。
この「初期」に関してはその掲載時期によってさらに4つに分けることができます。参考までに併記しておきましょう。(巻数はオリジナルコミックスに準じます)
■5週連続連載期(週刊少年サンデー1978年39号~43号 ※発売日は’78 8/30~9/27)
1巻PART1「かけめぐる青春」~同巻PART5「絶体絶命」まで
■単発掲載期
2巻PART1「お雪」(週刊少年サンデー1978年51号 ※発売日’78 11/22)
1巻PART6「愛で殺したい」(少年サンデー1978年11月25日増刊号 ※発売日確認とれず。おそらく’78の10月下旬かと思われる)
4巻PART1「酒と泪と男と女」(少年サンデー1978年12月20日増刊号 ※発売日確認とれず。おそらく’78の11月下旬か)
■10週連続連載期(週刊少年サンデー1979年12号~21号 ※発売日’79 2/21~4/25)
1巻PART7「憎みきれないろくでなし」~同巻PART9「大勝負」
2巻PART2「性(さが)」~同巻PART6「幸せの黄色いリボン」
3巻PART2「ディスコ・インフェルノ」~同巻PART3「さよならを言う気もない」
■単発掲載期(クラマ姫編)
2巻PART7「女になって出直せよ」(週刊少年サンデー1979年37号 ※発売日’79 8/15)
2巻PART8「思い過ごしも恋のうち」(週刊少年サンデー1979年43号 ※発売日’79 9/26)
3巻PART1「父よあなたは強かった」(週刊少年サンデー1979年48号 ※発売日’79 10/31)
3巻PART4「勇気があれば」(週刊少年サンデー1980年5-6合併号 ※発売日’80 1/5?)
これからもわかるように、この時期のエピソードは雑誌初出とはかなり順序が入れ替わっています。
特に4巻PART1「酒と泪と男と女」はひとつだけ離れて収録されているので注意が必要ですね。
★この時期の代表的エピソード:
「かけめぐる青春」
「絶体絶命」
「お雪」
「幸せの黄色いリボン」
「思い過ごしも恋のうち」
●前期
オリジナルコミックス(新装版・電子書籍版共通)3巻PART5「トラブルは舞い降りた!!」~14巻PART11「みんなで海をきれいにしよう!」まで
(文庫版2巻PART8~8巻PART11、ワイド版2巻PART4~7巻PART6)
1980年春に大学卒業を機に、週刊少年サンデー1980年15号(’80 3/12発売)からいよいよ本格的に週刊連載が始まります。
その第一回目が「トラブルは舞い降りた!!」。いわゆる「面堂終太郎初登場」回ですね。
ここでひとつ、高橋留美子先生の実に興味深いお言葉をご紹介しましょう。
昨年から4つのBOXに分けて発売された「うる星やつら復刻BOX」のVol.4に特典としてついてきた「ミニ原画集」のあとがきに当時の思い出としてこんなことが書かれています。
無事大学を卒業でき、いよいよ週刊で新連載の準備という段階で『うる星』でいこうと言われ、正直困惑しました。
新連載なのだから、別タイトルでやるものだと思い込んでいたので。
どうです、ちょっと衝撃的じゃないですか?
なんと、高橋留美子先生は「初期」でうる星やつらは終了していたつもりだったんです。
逆に言えば、「トラブルは舞い降りた!!」は正真正銘の「新作新連載」でもあったんですね。
このことからしても、「面堂以前」と「面堂以降」はまったく別作品だといっても過言ではないのではないでしょうか。
この時期は私にとってもっとも思い入れの強い頃ですね。特に4巻から12巻あたりまでは「うる星黄金期」と勝手に呼んで崇拝しているくらいですw
特徴としては、面堂の登場によってそれまでの三角関係が解消され、ラムとあたるの追いかけっこに物語の主軸が移るというのがまず大きなポイントですね。
それにともない、ラムのキャラクターも「初期」とは変わっていきます。
友引高校への転入、幼なじみのランちゃん登場、いとこのテンちゃんが居候してくるなど、彼女周りの環境も変化していきドンドンにぎやかな雰囲気になります。ドタバタを描きながらもどこか明るくて、あっけらかんとしている感じがありますね。
「初期」とは違って、さらに細分化する必要はそれほどないかとは思いますが、
■3巻PART5「トラブルは舞い降りた!!」~同巻PART9「君待てども…」まで
■4巻PART2「涙の日記」~同巻PART8「君去りし後」まで
■5巻PART1「妖花・サクラ先生」~同巻PART11「哀愁でいと」まで
(+4巻PART9「魔のランニング」、PART10「七夕デート」が途中に挟まります)
■6巻PART1「個人教授」~7巻PART4「おみくじこわい」まで
■7巻PART5「テンちゃんがきた」以降
といった具合に分けることも可能でしょうね。とにかく大きな鳴動が頻繁に起こっている時期でもありました。「うる星」の歴史の中でももっとも活動的で波に乗っていた頃と言えるのではないでしょうか。
★この時期の代表的エピソード:
「君待てども…」
「君去りし後」
「見合いコワし」
「買い食い大戦争」
「酔っぱらいブギ」
●中期
オリジナルコミックス(新装版・電子書籍版共通)15巻PART1「激闘、父子鷹!!」~24巻PART02「最後のデート」まで
(文庫版8巻PART12~13巻PART7、ワイド版7巻PART7~11巻PART7)
「前期」と「中期」を“藤波親子登場”で分けるのはファンなら誰もが考えることでしょうが、どこで「中期」を区切るかはかなり意見が分かれそうな気がします。私は「最後のデート」でいったん区切りたいですね。
一般的にはこのあたりのイメージが一番強いのではないでしょうか。
竜之介が登場したことでよりバイオレンスなギャグが繰り広げられるようになり、全体的な雰囲気としてますますにぎやかで騒がしい感じになりました。一方、あたるとラムの関係性も徐々に変わっていき、“ラブコメ”色も濃くなってきた時期でもあります。
トータル的に見て作風に幅が出たというか、バラエティーに富んだ印象ですね。
絵柄的にもこの時期が一番安定しているといえるでしょう。
この「中期」をさらに分けるなら、20巻PART5「愛は国境を越えて」からかな。
それまでを上半期、それ以降を下半期と分けることは可能かもしれません。
ただ、それを境に大きく作品世界が変わるというわけでもないですからね。一つの道標にはなるかもしれませんが、あえて切り分ける必要もないような気もします。
ただ、15巻16巻あたりと、22巻23巻あたりとでは明らかに作品が醸し出す空気は変わってはいるんですよね。たぶん、緩やかなグラデーションを描きながら少しずつ変化して行ったんだんだと思います。
★この時期の代表的エピソード:
「怒りのラムちゃん!!」
「岩石の母」
「愛は国境を越えて」
「秘密の花園」
「最後のデート」
●後期
オリジナルコミックス(新装版・電子書籍版共通)24巻PART03「大脱走・大騒動」~34巻PART1-11「ボーイミーツガール」まで
(文庫版13巻PART8~18巻ボーイミーツガール[ACT.1~ACT.11]、ワイド版11巻PART8~15巻PART24)
どこからが「後期」なのかはかなり難しい問題です。絵柄の微妙な違いから分ける人もいますし、それこそ最終話である「ボーイミーツガール」だけを「後期」と呼ぶ人もいるくらいですからね。その人の「うる星」観が問われるところでもあるのでしょう。
私は当時自分が受けた衝撃を素直に受け取って「最後のデート」の後に線を引きましたが、「大脱走・大騒動」が「後期」の始まりを飾る大きな意味のある話とは到底思えませんからねw(面白い話ではありますが)
この辺は便宜上、形式的に区切っている感は正直あるかもしれません。
話の流れとしての重要性を考えるなら、むしろ
■31巻PART7「扉を開けて」~
かなという気もするんですけどね。これはいわゆる「扉シリーズ」と呼ばれるその第1話にあたるもので、あたるとラム、そしてしのぶの未来についての話です。
高橋留美子先生はこのエピソードを描けたことで、「そろそろ物語を締めてもいいかなと考えるようになった」と語っています。(漫画家本Vol.14「高橋留美子本」44ページより引用)
まあ後期を分けるとするなら、「扉を開けて」からを「晩期」もしくは「終期」とするのがいいんじゃないかなと思いますね。
★この時期の代表的エピソード:
「風邪見舞い」
「母の心、子の心」
「おとなの恋の物語」
「極彩のペアルック」
「ボーイミーツガール」
というわけで、ここまで「うる星やつら」を「初期」「前期」「中期」「後期」と分けて見てきましたが、いかがだったでしょうか。
それぞれ作風もギャグのテイストも違いますし、ラムやあたるのキャラも変わってきていますが、きっとあなた好みの時代が見つかるかと思います。
またそれとは別に、時代の変遷みたいなものを感じてもらいたいですね。その流れにこそ「うる星」の本当の面白さがあると思っているので。
ぜひ、それぞれの味わいの違いを楽しんでくださいね。
さて、次回の【なりそこないの四方山うる星ばなし】ですが、今のところテーマはまだ未定です。
この流れに基づいて「初期」から順を追って掘り下げていくか、もしくはいったんブレイクとして「表紙」をテーマに取り上げるか、それとも一つのテーマに絞ってコラム的な話を繰り広げるか…
もし何かこれをやってほしいといったリクエストがありましたら、コメントいただけるとうれしいです。
ただし私の手に負える範疇で、ですけどw
それではまた次回にお会いしましょう!
いっそのこと、「復刻BOX」4セット通りに分ける方法もありかもしれませんね。
それだと、1巻~9巻が「初期・前期」、10巻~18巻が「中期」、19巻~27巻が「後期」、28巻~34巻が「終期(晩期)」といった具合でしょうか。
うる星を一気に読みたい場合には、フィジカルな形よりも電子書籍版のほうが便利かもしれません。
文庫版だと話の前後がほとんどなく、雑誌発表時通りに収録されているので「歴史」の変遷がわかりやすくて便利ですよ。
令和版「うる星やつら」の12話から23話分を収録した「うる星やつら Blu-ray Disc BOX」第2巻が6月28日に発売になりました
!
先日我が家にも届きましたが、第1巻に負けないくらいの豪華さですよ。
令和の時代に新しくTVアニメ化された「うる星やつら」。自他共に認める高橋留美子主義者である私なりそこないが、2024年から始まる第2期までの間、「うる星やつら」についてざっくばらんに語っていく企画です。
(私の新アニメ「うる星やつら」への思いはこちらとこちらで。)
うる星について書かれた記事を読んでいると、時々「初期」とか「後期」といった言葉にぶつかります。
当ブログでも「初期うる星」とか「中期の~」という言い回しが、特に前置きもなく出てきますよね。
原作は単行本にして全34巻、連載期間は8年半におよぶ歴史のある作品ですから、どうしてもその時期によって作風が異なってきます。それを語る上で便宜上そういった言葉で区分化しているわけです。
ただ、この区分は特にファンの共通した認識の下で決められたものではありません。ストーリーマンガとは違い、〇〇編とか明確な区切りがあるわけじゃないですからね。
それぞれが自分の分類に基づいて「初期」だ「後期」だと言っているに過ぎないんです。
それ自体は別にいいんですけど、これから「10くらいからわかるうる星講座」をやっていく上で、その辺の認識があいまいだと何かと不都合かなと感じたんですよね。講座というからには、いい加減な定義のまま語っていくわけにはいきませんから。
せめて当ブログ内では、一度しっかり定めておく必要があるのではないかと考えたわけです。
というわけで、今回は「うる星の歴史を区分化しよう!」と題して、原作を大きく4つの時期に分けて見ていきます。
すなわち「初期」「前期」「中期」「後期」といった具合ですね。
ただし、ここではあくまでざっくりと流れを踏まえるだけです。
そうすることで、「うる星やつら」を“線”として理解できると思うんですよね。俯瞰的な視点で見ることで全体の流れを把握するだけではなく、それぞれの時代の特色や変遷も見えてくるんじゃないかと。
うる星やつらを知る上での大まかなガイドラインになれば幸いです。
ひとつおことわりしておきますが、今回提示する区分はあくまで私独自の基準になります。必ずしも普遍的な指針にはならないということはあらかじめご理解ください。
「歴史」の解釈は人それぞれ、今回の記事を見たら、今度は自分だけの「区分」を作ってみるのも面白いのではないでしょうか。
それでは見てまいりましょう!
(なお、各区分で挙げた「代表的エピソード」は私の独断によるものです。異論は認めますw)
●初期
オリジナルコミックス(新装版・電子書籍版共通)1巻PART1「かけめぐる青春」~3巻PART4「勇気があれば」+4巻PART1「酒と泪と男と女」まで
(文庫版1巻~3巻PART7、ワイド版1巻~2巻PART3)
1978年8月に「うる星やつら」の連載が始まったとき、高橋留美子はまだ大学3年生でした。その年の6月に「勝手なやつら」で本誌デビューしたものの、まだ海のものとも山のものともつかない新人がわずか2か月でいきなり本誌連載を勝ち取るのですから破格の待遇だったといっていいでしょう。
もっとも最初は「5回集中連載」という形でした。いわゆる「お試し連載」という意味合いもあったかと思います。
まだ学生の身でしたし、学業を優先しつつ無理のない形で時間のあるときに集中して描くというスタイルだったようです。
第1巻PART1「かけめぐる青春」~PART5「絶体絶命」までがその時期に当たりますね。
なんでも「大学3年生の夏休みを使って描きました」(うる星やつらパーフェクトカラーエディション下巻 巻末インタビューより)とか。
その後、冬休みや春休みごとに単発掲載や10週集中連載を経て、大学を卒業した1980年春から本格的に週刊連載が始まりました。
この間のいわゆる不定期連載期間を「初期」と呼ぶことにします。
最初は「プレうる星期」とか「旧うる星期」という名前も頭に浮かんだんですけどね。個人的な見解として本格連載が始まる前の時期のうる星は、それ以降とはまったく別ものと考えている面があるので。
ただ、一般的にはなじみのない言い方ですし、いたずらに混乱を招く危険性も考慮して無難なところに落ち着きましたw
なお、「最初期」という言い方も一部では使われているようです。
「初期」の特徴としてはなんといっても、あたる、ラム、しのぶの三角関係でしょう。当初はラムもゲストキャラに過ぎず、主人公あたるとその恋人であるしのぶを中心としたSFドタバタ劇が繰り広げられます。いわゆるラブコメ色はほとんどなく、むしろドロドロとした薄暗い雰囲気でのブラックギャグといった装いですね。
この「初期」に関してはその掲載時期によってさらに4つに分けることができます。参考までに併記しておきましょう。(巻数はオリジナルコミックスに準じます)
■5週連続連載期(週刊少年サンデー1978年39号~43号 ※発売日は’78 8/30~9/27)
1巻PART1「かけめぐる青春」~同巻PART5「絶体絶命」まで
■単発掲載期
2巻PART1「お雪」(週刊少年サンデー1978年51号 ※発売日’78 11/22)
1巻PART6「愛で殺したい」(少年サンデー1978年11月25日増刊号 ※発売日確認とれず。おそらく’78の10月下旬かと思われる)
4巻PART1「酒と泪と男と女」(少年サンデー1978年12月20日増刊号 ※発売日確認とれず。おそらく’78の11月下旬か)
■10週連続連載期(週刊少年サンデー1979年12号~21号 ※発売日’79 2/21~4/25)
1巻PART7「憎みきれないろくでなし」~同巻PART9「大勝負」
2巻PART2「性(さが)」~同巻PART6「幸せの黄色いリボン」
3巻PART2「ディスコ・インフェルノ」~同巻PART3「さよならを言う気もない」
■単発掲載期(クラマ姫編)
2巻PART7「女になって出直せよ」(週刊少年サンデー1979年37号 ※発売日’79 8/15)
2巻PART8「思い過ごしも恋のうち」(週刊少年サンデー1979年43号 ※発売日’79 9/26)
3巻PART1「父よあなたは強かった」(週刊少年サンデー1979年48号 ※発売日’79 10/31)
3巻PART4「勇気があれば」(週刊少年サンデー1980年5-6合併号 ※発売日’80 1/5?)
これからもわかるように、この時期のエピソードは雑誌初出とはかなり順序が入れ替わっています。
特に4巻PART1「酒と泪と男と女」はひとつだけ離れて収録されているので注意が必要ですね。
★この時期の代表的エピソード:
「かけめぐる青春」
「絶体絶命」
「お雪」
「幸せの黄色いリボン」
「思い過ごしも恋のうち」
●前期
オリジナルコミックス(新装版・電子書籍版共通)3巻PART5「トラブルは舞い降りた!!」~14巻PART11「みんなで海をきれいにしよう!」まで
(文庫版2巻PART8~8巻PART11、ワイド版2巻PART4~7巻PART6)
1980年春に大学卒業を機に、週刊少年サンデー1980年15号(’80 3/12発売)からいよいよ本格的に週刊連載が始まります。
その第一回目が「トラブルは舞い降りた!!」。いわゆる「面堂終太郎初登場」回ですね。
ここでひとつ、高橋留美子先生の実に興味深いお言葉をご紹介しましょう。
昨年から4つのBOXに分けて発売された「うる星やつら復刻BOX」のVol.4に特典としてついてきた「ミニ原画集」のあとがきに当時の思い出としてこんなことが書かれています。
無事大学を卒業でき、いよいよ週刊で新連載の準備という段階で『うる星』でいこうと言われ、正直困惑しました。
新連載なのだから、別タイトルでやるものだと思い込んでいたので。
どうです、ちょっと衝撃的じゃないですか?
なんと、高橋留美子先生は「初期」でうる星やつらは終了していたつもりだったんです。
逆に言えば、「トラブルは舞い降りた!!」は正真正銘の「新作新連載」でもあったんですね。
このことからしても、「面堂以前」と「面堂以降」はまったく別作品だといっても過言ではないのではないでしょうか。
この時期は私にとってもっとも思い入れの強い頃ですね。特に4巻から12巻あたりまでは「うる星黄金期」と勝手に呼んで崇拝しているくらいですw
特徴としては、面堂の登場によってそれまでの三角関係が解消され、ラムとあたるの追いかけっこに物語の主軸が移るというのがまず大きなポイントですね。
それにともない、ラムのキャラクターも「初期」とは変わっていきます。
友引高校への転入、幼なじみのランちゃん登場、いとこのテンちゃんが居候してくるなど、彼女周りの環境も変化していきドンドンにぎやかな雰囲気になります。ドタバタを描きながらもどこか明るくて、あっけらかんとしている感じがありますね。
「初期」とは違って、さらに細分化する必要はそれほどないかとは思いますが、
■3巻PART5「トラブルは舞い降りた!!」~同巻PART9「君待てども…」まで
■4巻PART2「涙の日記」~同巻PART8「君去りし後」まで
■5巻PART1「妖花・サクラ先生」~同巻PART11「哀愁でいと」まで
(+4巻PART9「魔のランニング」、PART10「七夕デート」が途中に挟まります)
■6巻PART1「個人教授」~7巻PART4「おみくじこわい」まで
■7巻PART5「テンちゃんがきた」以降
といった具合に分けることも可能でしょうね。とにかく大きな鳴動が頻繁に起こっている時期でもありました。「うる星」の歴史の中でももっとも活動的で波に乗っていた頃と言えるのではないでしょうか。
★この時期の代表的エピソード:
「君待てども…」
「君去りし後」
「見合いコワし」
「買い食い大戦争」
「酔っぱらいブギ」
●中期
オリジナルコミックス(新装版・電子書籍版共通)15巻PART1「激闘、父子鷹!!」~24巻PART02「最後のデート」まで
(文庫版8巻PART12~13巻PART7、ワイド版7巻PART7~11巻PART7)
「前期」と「中期」を“藤波親子登場”で分けるのはファンなら誰もが考えることでしょうが、どこで「中期」を区切るかはかなり意見が分かれそうな気がします。私は「最後のデート」でいったん区切りたいですね。
一般的にはこのあたりのイメージが一番強いのではないでしょうか。
竜之介が登場したことでよりバイオレンスなギャグが繰り広げられるようになり、全体的な雰囲気としてますますにぎやかで騒がしい感じになりました。一方、あたるとラムの関係性も徐々に変わっていき、“ラブコメ”色も濃くなってきた時期でもあります。
トータル的に見て作風に幅が出たというか、バラエティーに富んだ印象ですね。
絵柄的にもこの時期が一番安定しているといえるでしょう。
この「中期」をさらに分けるなら、20巻PART5「愛は国境を越えて」からかな。
それまでを上半期、それ以降を下半期と分けることは可能かもしれません。
ただ、それを境に大きく作品世界が変わるというわけでもないですからね。一つの道標にはなるかもしれませんが、あえて切り分ける必要もないような気もします。
ただ、15巻16巻あたりと、22巻23巻あたりとでは明らかに作品が醸し出す空気は変わってはいるんですよね。たぶん、緩やかなグラデーションを描きながら少しずつ変化して行ったんだんだと思います。
★この時期の代表的エピソード:
「怒りのラムちゃん!!」
「岩石の母」
「愛は国境を越えて」
「秘密の花園」
「最後のデート」
●後期
オリジナルコミックス(新装版・電子書籍版共通)24巻PART03「大脱走・大騒動」~34巻PART1-11「ボーイミーツガール」まで
(文庫版13巻PART8~18巻ボーイミーツガール[ACT.1~ACT.11]、ワイド版11巻PART8~15巻PART24)
どこからが「後期」なのかはかなり難しい問題です。絵柄の微妙な違いから分ける人もいますし、それこそ最終話である「ボーイミーツガール」だけを「後期」と呼ぶ人もいるくらいですからね。その人の「うる星」観が問われるところでもあるのでしょう。
私は当時自分が受けた衝撃を素直に受け取って「最後のデート」の後に線を引きましたが、「大脱走・大騒動」が「後期」の始まりを飾る大きな意味のある話とは到底思えませんからねw(面白い話ではありますが)
この辺は便宜上、形式的に区切っている感は正直あるかもしれません。
話の流れとしての重要性を考えるなら、むしろ
■31巻PART7「扉を開けて」~
かなという気もするんですけどね。これはいわゆる「扉シリーズ」と呼ばれるその第1話にあたるもので、あたるとラム、そしてしのぶの未来についての話です。
高橋留美子先生はこのエピソードを描けたことで、「そろそろ物語を締めてもいいかなと考えるようになった」と語っています。(漫画家本Vol.14「高橋留美子本」44ページより引用)
まあ後期を分けるとするなら、「扉を開けて」からを「晩期」もしくは「終期」とするのがいいんじゃないかなと思いますね。
★この時期の代表的エピソード:
「風邪見舞い」
「母の心、子の心」
「おとなの恋の物語」
「極彩のペアルック」
「ボーイミーツガール」
というわけで、ここまで「うる星やつら」を「初期」「前期」「中期」「後期」と分けて見てきましたが、いかがだったでしょうか。
それぞれ作風もギャグのテイストも違いますし、ラムやあたるのキャラも変わってきていますが、きっとあなた好みの時代が見つかるかと思います。
またそれとは別に、時代の変遷みたいなものを感じてもらいたいですね。その流れにこそ「うる星」の本当の面白さがあると思っているので。
ぜひ、それぞれの味わいの違いを楽しんでくださいね。
さて、次回の【なりそこないの四方山うる星ばなし】ですが、今のところテーマはまだ未定です。
この流れに基づいて「初期」から順を追って掘り下げていくか、もしくはいったんブレイクとして「表紙」をテーマに取り上げるか、それとも一つのテーマに絞ってコラム的な話を繰り広げるか…
もし何かこれをやってほしいといったリクエストがありましたら、コメントいただけるとうれしいです。
ただし私の手に負える範疇で、ですけどw
それではまた次回にお会いしましょう!
いっそのこと、「復刻BOX」4セット通りに分ける方法もありかもしれませんね。
それだと、1巻~9巻が「初期・前期」、10巻~18巻が「中期」、19巻~27巻が「後期」、28巻~34巻が「終期(晩期)」といった具合でしょうか。
うる星を一気に読みたい場合には、フィジカルな形よりも電子書籍版のほうが便利かもしれません。
文庫版だと話の前後がほとんどなく、雑誌発表時通りに収録されているので「歴史」の変遷がわかりやすくて便利ですよ。
令和版「うる星やつら」の12話から23話分を収録した「うる星やつら Blu-ray Disc BOX」第2巻が6月28日に発売になりました
!
先日我が家にも届きましたが、第1巻に負けないくらいの豪華さですよ。
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