私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!過去編特別編~思い出ではないからこそリアルな「過去」~
5月11日に「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」がブラウザ版で特別編に更新されました。
わたモテにおける「特別編」は、これまでに15編あります。そのうちの8編はクリスマス編ですね。かつては基本、特別編といえばクリスマス回のことを指していました。
その他にいわゆる「企画もの」があります。ロッテとコラボをした特別編6(コミックス10巻所収)を皮切りに、KADOKAWAのBOOK☆WALKER企画と連動した特別編8(コミックス15巻所収)、「抱き枕カバー」の販促マンガだった特別編14(コミックス22巻所収)がそうですね。今年初め、クリスマス編の代わり(?)に描かれた初夢編(特別編15)(コミックス23巻所収)もその一種と言えるかもしれません。
それ以外だと、不測の事態でやむなく急遽「本編」からの差し替えになったケースです。
コミックス18巻所収の特別編9と特別編10がそれに当たりますね。谷川先生が病気などで正規の話が描けなくなったための、ある種の苦肉の策としての「特別編」なわけです。
特別編13(コミックス22巻所収)では、まさに苦肉の策として「お蔵出し」になっています。
今回も一見すると、この「イレギュラー」ケースのように思えます。直前に作画さんのヘルニアの件が報告されていましたからね。執筆の負担を軽くするための苦肉の策としての「特別編」なのかなと。
でも内容を読む限り、そんな印象は一切受けないんですよ。いわゆる「しかたなく」差し替えた的な感じがしないんですよね。すごく真っ当というか、これまでの流れにすっと組み込まれるような自然さがそこにはあるんです。
病気のことがあろうとなかろうと、最初からこの話は用意されていたんだろうなと思わせる説得力のある一編だったと思います。
まあ強いて言えば、「企画もの」のカテゴリーに入れてもいいのかもしれません。
ほら、前回の「特別編」はある意味「未来編」だったじゃないですか。初夢を通して未来の姿を見せる構図になっていたんですよね。今回はそれに対しての「過去編」だったとも言えるのではないでしょうか。
というわけで、さっそく見てまいりましょう!
今回の大きなポイントとしてはまず、「回想」形式ではないということが挙げられます。
ネモ特別編のような、「今」から「過去」を振り返るものではないんですよね。
つまり“思い出”ではないんですよ。誰かの視点から見た世界ではなく、我々読者に向けた“リアルタイム”で体験する話になっているんです。
だから、コマも通常通りなんですよね。バックが黒枠だったり、角がまるくなっていたりしないんです。
いうなれば、私たちがタイムスリップをして3年前の「入学式」を一緒に体験しているようなものなのかもしれませんw
彼女たちの「出会い」はやはり出席番号順がそのきっかけになっていました。
「たむらゆり」と「たなかまこ」、そして「みなみこはる」に「みまさち」ですね。サチの苗字が判明したのは喪191「モテないし繰り返す」(コミックス20巻)でしたが、その時からこの友達になるきっかけは用意されていたのかもしれません。
まあしかし、これ自体はごく普通なきっかけです。私の学生時代を振り返ってみても、だいたい席の近くのやつからなんとなく会話が始まっていましたし、結果として友達は苗字のあいうえお順に近い人間しかいませんでしたからねw
ここでも真子に何か意図があったわけではなく、たまたまサクラの花びらがゆりちゃんの肩についているのが目についただけなのでしょう。
偶然のきっかけが二人を結び付けたといえます。
一方、後ろでその様子を見ていた彼女のほうは……
あからさまに邪な意図がありありw
ぱっと見陰じゃなさそうとか、いきなり値踏みするあたりがサチらしいですね。まったく変わってないw
ただまあ、名前的に隣になることが多いから友達になっておくと何かと便利という発想は、打算的ではありますけど理にかなってはいますよね。そんなに悪い考えではないような気がします。
…それにしても、南さんの何も考えてなさそうな顔w

というわけで、喪191の表紙で描かれた4人組の構図が早くもこの時点で成立するわけですが、どうやら南さんの口からゆりちゃんとは「おな中」であることが語られたようですね。
見る限り、南さんに何か含むことはなさそうですが、ゆりちゃんの方を一切見ていないのが気になりますね。まるでこの場に彼女がいないかのように、真子だけと話しています。
ただ、どうなんでしょうね?南さんとゆりちゃんの中学時代というと、喪187の
このシーンくらいしかないわけですが、見たところ「あんま話したことないけどね」という感じでもないような気がします。同じグループ内にいたようですし、南さんの方から声をかけていますよね。
この時にいろいろ不満があったとしたら、「田村は何を振ってもなしのつぶてだから会話になんなかったw」的なことをぶちまけてもいいような気がします。
まあ本人の目の前なので体裁を繕った可能性もありますが、この時点ではそれほどゆりちゃんに対して反発していたわけでもないのかもしれません。
表情からしても、そんな感じがしますね。
一方、ゆりちゃんは南さんのことを見ています。何か言いたそうでもありますが、いったいどんな思いを抱いているのでしょう。
サチは平常運転w 最初から顔の点数から入るんですね。ていうか、何様だよw お前だって及第点ギリギリじゃねーかw
しかしこれ、もし顔が彼女の基準に達していなかったらどうするつもりだったんでしょうね?なんだかんだ理由をつけて避けるつもりだったんでしょうか。
そんな微妙な空気を察したのか、ゆりちゃんはトイレに行くとこの場を離れようとするのですが……
この辺はまさに女子あるあるですよね。一緒に付き合うことがコミュニケーションの一環になっているわけです。
男子の場合はツレしょんという文化があったりしますが、女子はさすがに並んで用を足すというわけにはいきませんw
洗面所の前で相手を待ちながらこうしておしゃべりに花を咲かすわけですね。
そういった意味では、女子がトイレを社交場にするのもわかるような気がします。
(しかし、南さんのダブルピースはいったい何の話をしてるんだかw)
それにしても、ゆりちゃんは本当にトイレに行きたかったんでしょうか。
個室の便器のそばに立っているところからすると、単に一人になりたかったかのようにも見えるのですが…
そんなゆりちゃんは、女子の暗黙のルールに対して少々腑に落ちないご様子。
こういうある種の「同調圧力」に対して疑問を抱くあたり、一般的な女子の感覚とは少しずれているところがありますよね。もしかしたら、男目線的なところからきているのかもしれません。
それはそうと、やっぱり本当はトイレに行きたかったわけじゃないんじゃないかなあw
スカートのまま座ってるようですしw
ここで我らがもこっちが!
まだ入学式が終わった直後ですし、このオドオドした姿は第1話以前の彼女ということになりますね。
(で、必然的に今回の個人的ベストもこっちになりますw)
ゆりちゃんの「だからと言って、一人でずっと過ごす勇気もない」というモノローグがなんだか残酷に聞こえます。
もこっちだって、別に勇気があったから一人で過ごす羽目になったわけじゃないですからねw
でも、こういった形でもこっちとゆりちゃんの違いがはっきりしたのは興味深いです。
ゆりちゃんは別に確固たる信念があって自分を貫くというタイプでもないんですよね。
「みんな一緒」に違和感を覚えながらも、それに対して反発するわけでもなく、ただトイレの中で一人ぐちるだけなんです。
かといって、もこっちのように悪あがきをするわけでもない。一人でいるのはやっぱりさみしいからなんとなくその場にいることを選択するのが彼女なんですね。
クソみたいな会話w そんなん、どっちでもいいわw
(あ、自分は猫派です)
でも、この構図は面白いですね。
ここまで真子と南さんだけが会話をしていて、サチとゆりちゃんは端でただ聞いてるだけなんです。
最初の時点では、この二人がグループをつなぐ役割を果たしていたんですね。
こうしてみると真子と南さんが陽の者で、サチとゆりちゃんが陰の者といった印象を受けます。
意外と、彼女たちはどこか通じるものがあるのかもしれません。
好きより何が嫌いかで会話www
逆ル●ィ(…によく似た奴って、もこっちもコミックス11巻のおまけで言ってましたねw)かよw
というわけで、今回一番笑ったシーンはここになります!
まあ正直、彼女の言うこともわかるんですけどね。
確かにお互いの表面をさらっと撫でて確認するだけの馴れ合いは、なんだか気持ち悪いものがあります。そういったただ繕うだけの関係に嫌悪感を感じるというのは、ある意味健全だとも思いますよ。思春期ならではの感情でしょう。
ただまあ、手探り状態なんですよね。相手がどんなやつなのかまだわからない状態なのですから、最初のうちは軽く試し打ちしてみるというのもあるんじゃないでしょうか。
そういった意味では、意外と南さんは手順をきちんと踏んでいるなとも思いましたよ。少なくともいきなり「猫より犬だよねー」とか、さも確定してるかのように振ってくるやつよりはましだと思うw
やっぱり、まずは相手の出方を見てから「本音」の会話に移行した方がいいんじゃないかなあw
特に「嫌いなもの」というのはその人の本質がにじみ出るものですから、慎重にかかった方がいいでしょうw
WWWゆりちゃんwwwww
なんてわかりやすいw
もはや、顔が完全に猫になってるぞw
なんかいろいろ一家言がありそうですけど、どうせお前らにはわからないだろうから言わないとか考えてそうw
うーん、やっぱりサチとどこか通じるものがあるような気がするw
いやいや、顔に書いてあるからw
そうでなくても2択なんですけどねw
でも、この「しゃべってないのに伝わった」というのが大事なんでしょうね。
自分の感性を大事にしてるがゆえにどこか周りを下に見ていた彼女にとって、感覚にわかってくれる「理解者」は何よりも待ち望んでいたものだったのかもしれません。
ある程度打ち解けたと考えたのか、ここぞとばかりにオタいじり物マネでネタを披露するキバ子。
やっぱりお互いの距離を縮めるには、共通の蔑む存在が一番手っ取り早いですからね。これまで、こうやって成功してきた経験もあるのでしょう。自信をもってやっていますね。
でもどうせマネするなら、しっかり再現してほしいですよねw なんだよ「なんとかを召喚す」ってw その「なんとか」をはっきりしろってw
そんな専門用語なんてわからないという皮肉なのかもしれませんが、ちょっとギャグとしてもわかりづらいw
ていうか、「墓地にリリース」ってのも、それ合ってるんだろうか…
それにしてもサチの受け方のわざとらしいことw
南さん、チョロかわいいw
この場合のオタ物マネも、心からキモいよねという共感が欲しかったわけじゃなくて、ネタを褒めてほしかったんですよね。要は子どもなんです。
で、サチはその辺の南さんの心の内を見透かした上であえて乗ってあげているんですよね。それで本人は手玉に取っているつもりなんでしょう。たぶん、それで自尊心みたいなものを満たそうとしているような気がします。
そんないびつな二人のやり取りを見て、何か言いたいことがありそうなゆりちゃん。
一方のまこっちは、さすが一応のフォローを忘れませんねw
こういうところが彼女の上手いところでもあり、またずるいところでもあるように感じます。
ていうか、小学校の時に女子がやるようなカードと、いま彼らがやっているカードとはまた違ったジャンルな気がしますけどw
サチも真子も、その辺あまりわかっていないままに語ってるんですよね。
レベルが低いって言っちゃってるよw
ていうか、問題にしているのはそこなのねw
まこっちが言ってる通り、悪口自体はいいんだw
どさくさにまぎれてTik●ok女子ネタをディスってるしw
要するに、彼女にとっては「センス」こそが良し悪しの基準なんですね。
あくまでクオリティの問題であって、南さんの悪口癖が嫌いというわけじゃないんです。
そこにはある種の優位意識みたいなものがあって、そのことで自分を守っている部分があるような気がします。
南さんと彼女はそういった意味でも少し似ていますよね。
ただ、南さんはあまりにバカすぎるんでつり合いが取れてないのかもw
南さんの村山キモい発言に対して迎合することなく否定しようとするゆりちゃんですが、まさかのサチの懐疑的な発言に少し驚きます。
先ほどの様子を見てレベルの低い馴れ合いに終始するタイプかと思っていただけに、ちょっと意外に感じたんでしょうね。
彼女もまた、非常にひねくれた優越感を持った同類だったのですw
南さん、遊ばれてんなあw
ていうか、すっごくわかりやすいw
先ほど自分のネタを褒めてもらえただけに、急なダメ出しにむきになってしまうんでしょうねw
サチもこのあたりで彼女の性格をつかみ始めたようです。
この時点で、ようやくゆりちゃんもサチキバの関係性に気付いたようですねw
確かにいびつな関係ではありますけど、それを「気持ち悪い」と断罪してしまうところに彼女の面倒くさい部分が見え隠れしているような気がします。
映画論を語るときもそうですけど、「人に合わせたり、または操ったりすること」をすごく嫌うんですよね。とにかくその人の本当の心のうちだけが価値のあるものだと思っているようなんです。
それは必ずしも悪いこととは思いませんけど、ちょっと極端すぎるかなあという気もします。
もう少し肩の力を抜いてもいいんじゃないかなと感じますね。
それからしばらく他の子たちと接触を図るサチと南さん。
お互い、もっと悪口ネタで盛り上がれるタイプの相手を探しているのかもしれませんね。
そういう話題って、人数が多い方がよりテンションがあがるものですから。
そして、そんな様子を何やら微妙な表情で見つめるゆりちゃんとまこっち。
ゆりちゃんは呆れているかのようですが、それでも気になってしまうんですよね。
まこっちは微笑んではいるものの、どこかとってつけたような表情にも思えます。あまり深くタッチしないというか、安全な場所で見守っていたいという感じが見て取れますよね。
今回の個人的ベストシーンはこの4人にしようかな。
入学式からしばらく経ってのこの間に、彼女たちのそれぞれの立ち位置などが確立したんじゃないかなという気がします。
で、けっきょく、この4人組で落ち着くと。
この一か月というのが、すごくリアルに感じますね。だいたいグループが形成されていく期間ってそのくらいな気がして、なんだか逆に生々しいw
この段階になると、サチと南さんが会話の中心になるんですよね。真子は一歩引いた形で落ち着くんです。
で、ゆりちゃんはその真子の隣をただ黙ってついていくとw
なんだか、喪205の時を思い出しますよ。
そう、真子の
これねw
考えてみれば、ここまでゆりちゃんは南さんやサチと一切会話をしていないんですよね。
最後、それぞれの本音と建て前がはっきり見えてくるのが面白いですね。
ていうか、ゆりちゃんだけはモノローグ(本音)のみというw
キバ子は自分に彼氏ができると思っていたんですねw そりゃかわいい分だけアドバンテージはありますけど、あまりにアホすぎてたぶんそれがネックになってるw
結局のところ、彼女みたいなお子様は女の子同士で群れているのがお似合いなんだと思います。
サチの仮面めいた笑顔は怖いですねw ちょっとホラーめいてるぞw
ていうか、調子に乗ってるのはどっちだよw
ブサイクだろうとお前に男を紹介できるとは思えないんだがw
無理に賢いふりをしようとしてる感じがなんだか痛いですね。
まこっちは良くも悪くも冷めた視点の持ち主ですよね。ある意味リアリストなんだなあと思います。
ここでの「建て前」は嘘ではないんですよ。その点、キバ子やサチとは違うんです。
ただ、その「建て前」があくまで「建て前」に過ぎないということを彼女は本能的に知っているんですね。
「本当いいよね」という言葉にある種の諦観めいたものを感じずにはいられません。
一方のゆりちゃんは「建て前」すらありません。「空気」や「同調圧力」に抵抗は感じつつも、一人になる勇気もなくてただその場に身を置くだけなんですね。
自分を主張するわけでもなく、かといって輪に入るわけでもない。
まあそれが一番楽ですからね。まこっちがいい塩梅で調整役をかって出てくれますし、何もしなくても特に立場が悪くなることはないと思っているのでしょう。
ただこの後、彼女たちがどうなっていくかを知っているだけに、なんだか複雑な気持ちにもさせられますね。
彼女たちはまだ、「本音」の通りに事が進むとは限らないということを知らないのです。
今回はいったい誰の話だったんだろうか。
読みなおしてみて、ふとそんなことを考えました。
普通に考えれば、ゆりちゃんの話だったような気もします。
真子との出会いから始まりますし、なにかにつけ彼女のモノローグがフィーチャーされますしね。
4人組が形成される流れを彼女の冷めた視点で見つめている構成になっていたと考えれば、最後、彼女のモノローグで締めくくるのもきれいな形と言えるでしょう。
でも、どこか引っかかるんですよね。果たしてゆりちゃんから見た関係性でいいのかと。
そこに真子側から見たものやサチの思惑、そして南さんの感じたことも必要なんじゃないかという気がするんです。
今回は「回想」ではないと、冒頭で言いました。
それはつまり、誰かの「過去」ではないということです。
私たちはあくまで「本編」から通常の流れで、彼女たちの“始まり”を目撃したわけです。
となれば、この「過去編」は彼女たち4人の物語ということになるのではないでしょうか。
まあとにかく、すごくリアルな感じでしたよ。わかりやすい事件やハプニングがあるわけじゃなくて、こういうなにげない会話を通して少しずつお互いの立ち位置とか関係性をなんとなく感じ取っていくんですよね。
そして気づいたら“そういう関係”になっているものなんです。
このリアルさは「思い出」の中からは出てこないものでしょう。そこには思い出補正が入りますからね。
あくまで「4人」の物語だからこそのリアルなんだろうなと思います。
そしてこの物語はまだ始まったばかりです。
この後ノリマキが合流し、そして1年時のクリスマスを経て彼女たちの関係性は「崩壊」の一途をたどります。
さらには2年の「修学旅行」へ……
そこに至るまでの道筋も、きっとどこかで語られることでしょう。そうでなくてはいけません。
なぜならこの関係性は、今まさに現在進行中の「文化祭前夜」に大きくかかわってくるからです。
はっきり言ってしまうと、次の喪214とつながっているんですよ。彼女たちの「過去」が「今」に生きてくるんです。
つまり、本当に必然性があっての「特別編」だったんですね。
次の喪214を読めばそれがわかりますよ、いや本当に。
今回の「過去編」は、「文化祭」の今と今を結ぶ役割も果たしていたんじゃないかと思います。
これをなくして、彼女たちの文化祭は始まりません!
今回の更新日と同じ、5月11日に最新23巻が発売になりました!
…実は買ったはいいものの、まだ封も開けてないんですよね。感想記事はなんとか5月中にはアップしたいと考えています。
喪205もいいですけど、喪200の「サチとこはる」もいいですね。今回の話の後に読むと、また感慨もひとしおw
喪191は南さんの話であると同時に、サチや真子、そしてゆりちゃんの話でもあったんだと思います。
ネモの「過去編」は15巻で読めます!
わたモテにおける「特別編」は、これまでに15編あります。そのうちの8編はクリスマス編ですね。かつては基本、特別編といえばクリスマス回のことを指していました。
その他にいわゆる「企画もの」があります。ロッテとコラボをした特別編6(コミックス10巻所収)を皮切りに、KADOKAWAのBOOK☆WALKER企画と連動した特別編8(コミックス15巻所収)、「抱き枕カバー」の販促マンガだった特別編14(コミックス22巻所収)がそうですね。今年初め、クリスマス編の代わり(?)に描かれた初夢編(特別編15)(コミックス23巻所収)もその一種と言えるかもしれません。
それ以外だと、不測の事態でやむなく急遽「本編」からの差し替えになったケースです。
コミックス18巻所収の特別編9と特別編10がそれに当たりますね。谷川先生が病気などで正規の話が描けなくなったための、ある種の苦肉の策としての「特別編」なわけです。
特別編13(コミックス22巻所収)では、まさに苦肉の策として「お蔵出し」になっています。
今回も一見すると、この「イレギュラー」ケースのように思えます。直前に作画さんのヘルニアの件が報告されていましたからね。執筆の負担を軽くするための苦肉の策としての「特別編」なのかなと。
でも内容を読む限り、そんな印象は一切受けないんですよ。いわゆる「しかたなく」差し替えた的な感じがしないんですよね。すごく真っ当というか、これまでの流れにすっと組み込まれるような自然さがそこにはあるんです。
病気のことがあろうとなかろうと、最初からこの話は用意されていたんだろうなと思わせる説得力のある一編だったと思います。
まあ強いて言えば、「企画もの」のカテゴリーに入れてもいいのかもしれません。
ほら、前回の「特別編」はある意味「未来編」だったじゃないですか。初夢を通して未来の姿を見せる構図になっていたんですよね。今回はそれに対しての「過去編」だったとも言えるのではないでしょうか。
というわけで、さっそく見てまいりましょう!

今回の大きなポイントとしてはまず、「回想」形式ではないということが挙げられます。
ネモ特別編のような、「今」から「過去」を振り返るものではないんですよね。
つまり“思い出”ではないんですよ。誰かの視点から見た世界ではなく、我々読者に向けた“リアルタイム”で体験する話になっているんです。
だから、コマも通常通りなんですよね。バックが黒枠だったり、角がまるくなっていたりしないんです。
いうなれば、私たちがタイムスリップをして3年前の「入学式」を一緒に体験しているようなものなのかもしれませんw

彼女たちの「出会い」はやはり出席番号順がそのきっかけになっていました。
「たむらゆり」と「たなかまこ」、そして「みなみこはる」に「みまさち」ですね。サチの苗字が判明したのは喪191「モテないし繰り返す」(コミックス20巻)でしたが、その時からこの友達になるきっかけは用意されていたのかもしれません。
まあしかし、これ自体はごく普通なきっかけです。私の学生時代を振り返ってみても、だいたい席の近くのやつからなんとなく会話が始まっていましたし、結果として友達は苗字のあいうえお順に近い人間しかいませんでしたからねw
ここでも真子に何か意図があったわけではなく、たまたまサクラの花びらがゆりちゃんの肩についているのが目についただけなのでしょう。
偶然のきっかけが二人を結び付けたといえます。
一方、後ろでその様子を見ていた彼女のほうは……

あからさまに邪な意図がありありw
ぱっと見陰じゃなさそうとか、いきなり値踏みするあたりがサチらしいですね。まったく変わってないw
ただまあ、名前的に隣になることが多いから友達になっておくと何かと便利という発想は、打算的ではありますけど理にかなってはいますよね。そんなに悪い考えではないような気がします。
…それにしても、南さんの何も考えてなさそうな顔w

というわけで、喪191の表紙で描かれた4人組の構図が早くもこの時点で成立するわけですが、どうやら南さんの口からゆりちゃんとは「おな中」であることが語られたようですね。
見る限り、南さんに何か含むことはなさそうですが、ゆりちゃんの方を一切見ていないのが気になりますね。まるでこの場に彼女がいないかのように、真子だけと話しています。
ただ、どうなんでしょうね?南さんとゆりちゃんの中学時代というと、喪187の

このシーンくらいしかないわけですが、見たところ「あんま話したことないけどね」という感じでもないような気がします。同じグループ内にいたようですし、南さんの方から声をかけていますよね。
この時にいろいろ不満があったとしたら、「田村は何を振ってもなしのつぶてだから会話になんなかったw」的なことをぶちまけてもいいような気がします。
まあ本人の目の前なので体裁を繕った可能性もありますが、この時点ではそれほどゆりちゃんに対して反発していたわけでもないのかもしれません。
表情からしても、そんな感じがしますね。
一方、ゆりちゃんは南さんのことを見ています。何か言いたそうでもありますが、いったいどんな思いを抱いているのでしょう。
サチは平常運転w 最初から顔の点数から入るんですね。ていうか、何様だよw お前だって及第点ギリギリじゃねーかw
しかしこれ、もし顔が彼女の基準に達していなかったらどうするつもりだったんでしょうね?なんだかんだ理由をつけて避けるつもりだったんでしょうか。
そんな微妙な空気を察したのか、ゆりちゃんはトイレに行くとこの場を離れようとするのですが……

この辺はまさに女子あるあるですよね。一緒に付き合うことがコミュニケーションの一環になっているわけです。
男子の場合はツレしょんという文化があったりしますが、女子はさすがに並んで用を足すというわけにはいきませんw
洗面所の前で相手を待ちながらこうしておしゃべりに花を咲かすわけですね。
そういった意味では、女子がトイレを社交場にするのもわかるような気がします。
(しかし、南さんのダブルピースはいったい何の話をしてるんだかw)
それにしても、ゆりちゃんは本当にトイレに行きたかったんでしょうか。
個室の便器のそばに立っているところからすると、単に一人になりたかったかのようにも見えるのですが…

そんなゆりちゃんは、女子の暗黙のルールに対して少々腑に落ちないご様子。
こういうある種の「同調圧力」に対して疑問を抱くあたり、一般的な女子の感覚とは少しずれているところがありますよね。もしかしたら、男目線的なところからきているのかもしれません。
それはそうと、やっぱり本当はトイレに行きたかったわけじゃないんじゃないかなあw
スカートのまま座ってるようですしw

ここで我らがもこっちが!
まだ入学式が終わった直後ですし、このオドオドした姿は第1話以前の彼女ということになりますね。
(で、必然的に今回の個人的ベストもこっちになりますw)
ゆりちゃんの「だからと言って、一人でずっと過ごす勇気もない」というモノローグがなんだか残酷に聞こえます。
もこっちだって、別に勇気があったから一人で過ごす羽目になったわけじゃないですからねw
でも、こういった形でもこっちとゆりちゃんの違いがはっきりしたのは興味深いです。
ゆりちゃんは別に確固たる信念があって自分を貫くというタイプでもないんですよね。
「みんな一緒」に違和感を覚えながらも、それに対して反発するわけでもなく、ただトイレの中で一人ぐちるだけなんです。
かといって、もこっちのように悪あがきをするわけでもない。一人でいるのはやっぱりさみしいからなんとなくその場にいることを選択するのが彼女なんですね。

クソみたいな会話w そんなん、どっちでもいいわw
(あ、自分は猫派です)
でも、この構図は面白いですね。
ここまで真子と南さんだけが会話をしていて、サチとゆりちゃんは端でただ聞いてるだけなんです。
最初の時点では、この二人がグループをつなぐ役割を果たしていたんですね。
こうしてみると真子と南さんが陽の者で、サチとゆりちゃんが陰の者といった印象を受けます。
意外と、彼女たちはどこか通じるものがあるのかもしれません。

好きより何が嫌いかで会話www
逆ル●ィ(…によく似た奴って、もこっちもコミックス11巻のおまけで言ってましたねw)かよw
というわけで、今回一番笑ったシーンはここになります!
まあ正直、彼女の言うこともわかるんですけどね。
確かにお互いの表面をさらっと撫でて確認するだけの馴れ合いは、なんだか気持ち悪いものがあります。そういったただ繕うだけの関係に嫌悪感を感じるというのは、ある意味健全だとも思いますよ。思春期ならではの感情でしょう。
ただまあ、手探り状態なんですよね。相手がどんなやつなのかまだわからない状態なのですから、最初のうちは軽く試し打ちしてみるというのもあるんじゃないでしょうか。
そういった意味では、意外と南さんは手順をきちんと踏んでいるなとも思いましたよ。少なくともいきなり「猫より犬だよねー」とか、さも確定してるかのように振ってくるやつよりはましだと思うw
やっぱり、まずは相手の出方を見てから「本音」の会話に移行した方がいいんじゃないかなあw
特に「嫌いなもの」というのはその人の本質がにじみ出るものですから、慎重にかかった方がいいでしょうw

WWWゆりちゃんwwwww
なんてわかりやすいw
もはや、顔が完全に猫になってるぞw
なんかいろいろ一家言がありそうですけど、どうせお前らにはわからないだろうから言わないとか考えてそうw
うーん、やっぱりサチとどこか通じるものがあるような気がするw

いやいや、顔に書いてあるからw
そうでなくても2択なんですけどねw
でも、この「しゃべってないのに伝わった」というのが大事なんでしょうね。
自分の感性を大事にしてるがゆえにどこか周りを下に見ていた彼女にとって、感覚にわかってくれる「理解者」は何よりも待ち望んでいたものだったのかもしれません。

ある程度打ち解けたと考えたのか、ここぞとばかりにオタいじり物マネでネタを披露するキバ子。
やっぱりお互いの距離を縮めるには、共通の蔑む存在が一番手っ取り早いですからね。これまで、こうやって成功してきた経験もあるのでしょう。自信をもってやっていますね。
でもどうせマネするなら、しっかり再現してほしいですよねw なんだよ「なんとかを召喚す」ってw その「なんとか」をはっきりしろってw
そんな専門用語なんてわからないという皮肉なのかもしれませんが、ちょっとギャグとしてもわかりづらいw
ていうか、「墓地にリリース」ってのも、それ合ってるんだろうか…
それにしてもサチの受け方のわざとらしいことw

南さん、チョロかわいいw
この場合のオタ物マネも、心からキモいよねという共感が欲しかったわけじゃなくて、ネタを褒めてほしかったんですよね。要は子どもなんです。
で、サチはその辺の南さんの心の内を見透かした上であえて乗ってあげているんですよね。それで本人は手玉に取っているつもりなんでしょう。たぶん、それで自尊心みたいなものを満たそうとしているような気がします。

そんないびつな二人のやり取りを見て、何か言いたいことがありそうなゆりちゃん。
一方のまこっちは、さすが一応のフォローを忘れませんねw
こういうところが彼女の上手いところでもあり、またずるいところでもあるように感じます。
ていうか、小学校の時に女子がやるようなカードと、いま彼らがやっているカードとはまた違ったジャンルな気がしますけどw
サチも真子も、その辺あまりわかっていないままに語ってるんですよね。

レベルが低いって言っちゃってるよw
ていうか、問題にしているのはそこなのねw
まこっちが言ってる通り、悪口自体はいいんだw
どさくさにまぎれてTik●ok女子ネタをディスってるしw
要するに、彼女にとっては「センス」こそが良し悪しの基準なんですね。
あくまでクオリティの問題であって、南さんの悪口癖が嫌いというわけじゃないんです。
そこにはある種の優位意識みたいなものがあって、そのことで自分を守っている部分があるような気がします。
南さんと彼女はそういった意味でも少し似ていますよね。
ただ、南さんはあまりにバカすぎるんでつり合いが取れてないのかもw

南さんの村山キモい発言に対して迎合することなく否定しようとするゆりちゃんですが、まさかのサチの懐疑的な発言に少し驚きます。
先ほどの様子を見てレベルの低い馴れ合いに終始するタイプかと思っていただけに、ちょっと意外に感じたんでしょうね。
彼女もまた、非常にひねくれた優越感を持った同類だったのですw

南さん、遊ばれてんなあw
ていうか、すっごくわかりやすいw
先ほど自分のネタを褒めてもらえただけに、急なダメ出しにむきになってしまうんでしょうねw
サチもこのあたりで彼女の性格をつかみ始めたようです。

この時点で、ようやくゆりちゃんもサチキバの関係性に気付いたようですねw
確かにいびつな関係ではありますけど、それを「気持ち悪い」と断罪してしまうところに彼女の面倒くさい部分が見え隠れしているような気がします。
映画論を語るときもそうですけど、「人に合わせたり、または操ったりすること」をすごく嫌うんですよね。とにかくその人の本当の心のうちだけが価値のあるものだと思っているようなんです。
それは必ずしも悪いこととは思いませんけど、ちょっと極端すぎるかなあという気もします。
もう少し肩の力を抜いてもいいんじゃないかなと感じますね。

それからしばらく他の子たちと接触を図るサチと南さん。
お互い、もっと悪口ネタで盛り上がれるタイプの相手を探しているのかもしれませんね。
そういう話題って、人数が多い方がよりテンションがあがるものですから。
そして、そんな様子を何やら微妙な表情で見つめるゆりちゃんとまこっち。
ゆりちゃんは呆れているかのようですが、それでも気になってしまうんですよね。
まこっちは微笑んではいるものの、どこかとってつけたような表情にも思えます。あまり深くタッチしないというか、安全な場所で見守っていたいという感じが見て取れますよね。
今回の個人的ベストシーンはこの4人にしようかな。
入学式からしばらく経ってのこの間に、彼女たちのそれぞれの立ち位置などが確立したんじゃないかなという気がします。

で、けっきょく、この4人組で落ち着くと。
この一か月というのが、すごくリアルに感じますね。だいたいグループが形成されていく期間ってそのくらいな気がして、なんだか逆に生々しいw
この段階になると、サチと南さんが会話の中心になるんですよね。真子は一歩引いた形で落ち着くんです。
で、ゆりちゃんはその真子の隣をただ黙ってついていくとw
なんだか、喪205の時を思い出しますよ。
そう、真子の

これねw
考えてみれば、ここまでゆりちゃんは南さんやサチと一切会話をしていないんですよね。


最後、それぞれの本音と建て前がはっきり見えてくるのが面白いですね。
ていうか、ゆりちゃんだけはモノローグ(本音)のみというw
キバ子は自分に彼氏ができると思っていたんですねw そりゃかわいい分だけアドバンテージはありますけど、あまりにアホすぎてたぶんそれがネックになってるw
結局のところ、彼女みたいなお子様は女の子同士で群れているのがお似合いなんだと思います。
サチの仮面めいた笑顔は怖いですねw ちょっとホラーめいてるぞw
ていうか、調子に乗ってるのはどっちだよw
ブサイクだろうとお前に男を紹介できるとは思えないんだがw
無理に賢いふりをしようとしてる感じがなんだか痛いですね。
まこっちは良くも悪くも冷めた視点の持ち主ですよね。ある意味リアリストなんだなあと思います。
ここでの「建て前」は嘘ではないんですよ。その点、キバ子やサチとは違うんです。
ただ、その「建て前」があくまで「建て前」に過ぎないということを彼女は本能的に知っているんですね。
「本当いいよね」という言葉にある種の諦観めいたものを感じずにはいられません。
一方のゆりちゃんは「建て前」すらありません。「空気」や「同調圧力」に抵抗は感じつつも、一人になる勇気もなくてただその場に身を置くだけなんですね。
自分を主張するわけでもなく、かといって輪に入るわけでもない。
まあそれが一番楽ですからね。まこっちがいい塩梅で調整役をかって出てくれますし、何もしなくても特に立場が悪くなることはないと思っているのでしょう。
ただこの後、彼女たちがどうなっていくかを知っているだけに、なんだか複雑な気持ちにもさせられますね。
彼女たちはまだ、「本音」の通りに事が進むとは限らないということを知らないのです。
今回はいったい誰の話だったんだろうか。
読みなおしてみて、ふとそんなことを考えました。
普通に考えれば、ゆりちゃんの話だったような気もします。
真子との出会いから始まりますし、なにかにつけ彼女のモノローグがフィーチャーされますしね。
4人組が形成される流れを彼女の冷めた視点で見つめている構成になっていたと考えれば、最後、彼女のモノローグで締めくくるのもきれいな形と言えるでしょう。
でも、どこか引っかかるんですよね。果たしてゆりちゃんから見た関係性でいいのかと。
そこに真子側から見たものやサチの思惑、そして南さんの感じたことも必要なんじゃないかという気がするんです。
今回は「回想」ではないと、冒頭で言いました。
それはつまり、誰かの「過去」ではないということです。
私たちはあくまで「本編」から通常の流れで、彼女たちの“始まり”を目撃したわけです。
となれば、この「過去編」は彼女たち4人の物語ということになるのではないでしょうか。
まあとにかく、すごくリアルな感じでしたよ。わかりやすい事件やハプニングがあるわけじゃなくて、こういうなにげない会話を通して少しずつお互いの立ち位置とか関係性をなんとなく感じ取っていくんですよね。
そして気づいたら“そういう関係”になっているものなんです。
このリアルさは「思い出」の中からは出てこないものでしょう。そこには思い出補正が入りますからね。
あくまで「4人」の物語だからこそのリアルなんだろうなと思います。
そしてこの物語はまだ始まったばかりです。
この後ノリマキが合流し、そして1年時のクリスマスを経て彼女たちの関係性は「崩壊」の一途をたどります。
さらには2年の「修学旅行」へ……
そこに至るまでの道筋も、きっとどこかで語られることでしょう。そうでなくてはいけません。
なぜならこの関係性は、今まさに現在進行中の「文化祭前夜」に大きくかかわってくるからです。
はっきり言ってしまうと、次の喪214とつながっているんですよ。彼女たちの「過去」が「今」に生きてくるんです。
つまり、本当に必然性があっての「特別編」だったんですね。
次の喪214を読めばそれがわかりますよ、いや本当に。
今回の「過去編」は、「文化祭」の今と今を結ぶ役割も果たしていたんじゃないかと思います。
これをなくして、彼女たちの文化祭は始まりません!
今回の更新日と同じ、5月11日に最新23巻が発売になりました!
…実は買ったはいいものの、まだ封も開けてないんですよね。感想記事はなんとか5月中にはアップしたいと考えています。
喪205もいいですけど、喪200の「サチとこはる」もいいですね。今回の話の後に読むと、また感慨もひとしおw
喪191は南さんの話であると同時に、サチや真子、そしてゆりちゃんの話でもあったんだと思います。
ネモの「過去編」は15巻で読めます!
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