新TVアニメ「うる星やつら」第22話のどこかチグハグなライト&ヘビーのハイブリッド感想
※このたび36年ぶりに新しくTVアニメ化された「うる星やつら」。自他共に認める高橋留美子主義者である私なりそこないが、これから毎週視聴した感想をざっくり語っていこうと思います。アニメの感想は慣れていないのであまり深堀はしません。基本原作ガチ勢ですw
(私の新アニメ「うる星やつら」への思いはこちらとこちらで。)
今回はどちらもいわゆる「いい話」でしたね。前回がいろんな意味でエグい回だったのでバランスを取ったのでしょうかw
でも、バイオレンスなドタバタも心温まる愛の物語も、どちらも同列で成り立つのが「うる星やつら」の面白さでもあります。
令和版アニメが一期目の区切りを迎える前に、対照的なテイストの話を並べることでその魅力の幅広さを提示する意味があったのかもしれません。
ただ同じ「いい話」でも、受ける印象はそれぞれ違っていたように思います。特にAパート「大ビン小ビン」は基本原作通りだったのにもかかわらず、微妙な調整がなされていたように感じました。
そしてその調整は、思いのほか作品に大きな影響を与えていたように見えたんですよね。それによって、22話全体の印象さえも変わったような気がしたんです。
前回のヘビー仕様感想では、あたるとラムの「ラブコメ」を22話前半に持ってきたことには何か仕掛けがあるのではないかと書きましたが、あながち見当はずれでもなかったかなと。
全体的な雰囲気というか、演出的な面ではわりとあっさりしていたように思います。
1クール目における「ラブ回」だった、「君待てども…」や「君去りし後」の叙情的な感じとはかなり違っていましたよね。
それも当然でしょう。あの二つはなんといっても世界そのものの始まりであり、また大きな転換期でもあったのですから。あのドラマチックな見せ方にもちゃんと意味があったんです。後期うる星の数ある「いい話」の一編に過ぎない今回の話とは、重みも重要性もまったく異なります。
そういった意味で、過剰な感傷に浸ることなく、ごく普通の「ちょっといい話」に終始していたことには好感を持ちました。
ただ、今回はいつものように点数をつけるのはやめておきます。
AパートBパート共にほぼ原作通りでしたし、それぞれ単体では高得点をあげられるかとは思うんですけど、先ほど述べた「微妙な調整」が全体に及ぼした影響が私を戸惑わせるんですよ。そしてそれは今も答えが出ていないんです。
それに加えて、13話のヘビー仕様感想で触れた「大ビン小ビン」問題が大きくのしかかってきますからね。
たぶんほとんどの人にってはどうでもいいことだろうとは思いますが、私にとっては絶対に避けては通れない重要な問題なんです。
しかも、今回の「微妙な調整」によって私の中の定義がすこし揺らぎ始めてるんですよ。この期に及んで、うる星とは何かという根本的な問題に直面しているような状態なんです。
……とまあ、その辺のなんとも面倒くさい話は後でゆっくり、「ヘビー仕様」の方で語ることにいたしましょう。
まずは「うる星やつら」第22話のライト仕様感想からどうぞ!
●ライト仕様
アバンは20話同様、異世界の風景から始まりました。ただ、今回はあの時よりもシュールなイメージが色濃く出ていましたように思います。四次元の森の雰囲気はまるでおとぎ話の世界のようでしたね。
ぺちゃくちゃしゃべる花は原作通りですが、マンガではコマの端っこにいた地味なあれを冒頭でクローズアップするとはなかなかいいセンスだなと思いました。ピンク色に光る三日月もどこか不気味な感じで、全体的にダークファンタジーっぽく見せていましたね。
アニメならではの華やかな色使いが印象的でした。
しかし売れないからって、子どもが持ってるアメと物々交換という理屈はいまだによくわからんw
それって商売になってるのか?もしかしたら、子どもの口コミとかを期待していたんだろうか。
小さくなる説明の時に象が小ビンに入ってるイメージが無かったのはちょっと残念でしたね。
あの説明だけでテンちゃんが食いつくのは今一つ説得力がないw
タイトルの入り方は素晴らしかったですね。まるでハリーポッターみたいなデザインでしたw
西洋風のファンタジーに日本的な舞台が融合している感じがすごく好きです。
Aパート。
ビンを割るラムはまるで特撮ヒーローみたいw 原作だとやれやれといった感じを出しながら、さもあたりまえのように割れたビンからばこっと出てくるのですが、今回はより元気で強いイメージを強調してるかのように見えました。
ていうか、せめてあれは大ビンとセットじゃないと売れないでしょw
人に向けるなといいつつも、まったく安全策がなってないし…そもそも幼児に与える時点であのカカシはやばいw
ラムがあたるの帰りにハッと喜ぶようなしぐさを見せ、あたるに声を掛けようとするのはアニオリ。
実は原作ではラムはもっとドライな感じなんですよ。ここの改変というか、描写は何気にすごく重要な気がしていますね。
あたるが「めぞん一刻」のコミックスをやっと買えたぜと言ってるのもアニオリ。原作では普通に学校帰りで、特にマンガを買いに行った描写はありません。
ちなみに私も当時は「めぞん一刻」のコミックスが出るのが待ち遠しかったんですけど、すぐに売れ切れてなかなか手に入れられなかったことを思い出しますね。ここでは5巻でしたが、3巻が特に入手しづらかったなあ…
あたるは原作でもけっこうめぞんを読んでいたりするので、実は高橋留美子のファンなのかもしれないw
あたるがせんべいを食べようとするのを、真っ正面から見せるのはなかなか新鮮な演出でしたね。ちょこんと乗った後ろ姿のラムがかわいいw あれはラム目線でもあるんでしょうか。
その後、原作ではせんべいを咥えたあたると目が合った瞬間に「ダーリン」と呼ぶんですけど、ここではなぜかカット。さきほど声を掛けようとしたからでしょうか。
これはいい機会だと優しくしてもらおうと画策するラム。これは後期うる星の特徴でもあります。
初期や中期のころとは違って、けっこうあたるを試そうとしたりするんですよ。
ある意味余裕が出てきたとも言えますが、むしろ初期のがむしゃらな感じから徐々に女のズルさが見えてきたようにも思えますね。
これは「大ビン小ビン問題」にも関わることなので、くわしくはヘビー仕様のほうに回しましょう。
ラムの演技が大根ぽいのが面白いw
原作だともっとあっさりというか自然なんですけど、ここでは変に演技しようとする方がむしろラムらしい気がしますね。
時々ラム目線であたるをアップに見せる演出も効果的。あたるが「え?」と一瞬驚くところや、「もとに戻るには…」のところで固唾をのむ感じも原作にはないシーンでした。
でもラムの大根演技にあたるがマジになるからこそ、その後の「ダーリンの大きな愛が必要だっちゃ!」が効いてくるんですよw
全然悲壮感がなく、むしろワクワクを隠しきれないラムに対してあたるが疑心暗鬼になるところに説得力が生まれるわけです。
夕食時の親たちの反応はすべてアニオリ。原作だと父母共にドン引きしてるというか、状況について何も考えないようにしてるというかw
「いやあ、宇宙人ていうのは変な病気になるんだね」「こんなに小さいと、食費が浮いて助かるけど…」は、なにげにひどいセリフw
ていうか、やっぱりラムの食費も諸星家から出ているんですね。
「でも早く戻りたいわよねえ」というあたる母の声が優しい。
「きっとダーリンが助けてくれるっちゃ」も原作にはないセリフですね。あの屈託のなさは後期うる星にはない感じが個人的にはしました。
なにさらすんじゃと叩こうとするあたるからラムがあたる母の肩に逃げるのは原作通り。
ただ、マンガだと一コマで見せるところを、動きが入ることであたるの母親への信頼感がより伺える感じがしてよかったですね。
あたるの親とラムとの関係性をちゃんと描こうとする姿勢は令和うる星のいいところの一つだと思います。
「めぞん一刻」5巻のシーンがそのまま描かれとるwwwまさかアップであそこまで見せるとはw
原作でも確かにめぞんの単行本は読んではいるんですけど、具体的なシーンははっきりとは描かれてなかったんですよね。
主人公の五代が本命の響子さんの顔が頭をよぎりながらも、ガールフレンドのこずえちゃんに据え膳食わぬは男の恥とばかりにキスをしようとする場面がなかなかに意味深w
あれってどうしてるんでしょう。まさかスキャンとか?
それを読んで「ふーん、なんて煮え切らない男じゃ…」とつぶやくあたるwww
ここはもちろんアニオリ。原作でのコミックスは単なる背景としての意味でしかありませんでした。
でもここは今回最大のポイントだと思いますね。
詳しいことはヘビー仕様の方に任せますが、めぞんの主人公である五代に対して「煮え切れない男」と評するあたるは、明らかにうる星後期のあたるでしょう。
少なくとも「最後のデート」つまり「ゴール」を経た後のあたるじゃないと、あのセリフは出てこないような気がします。
(「最後のデート」については、13話のヘビー仕様感想を参照してください。または後のヘビー仕様でも触れます)
あたるの凛々しい(?)横顔を見上げて微笑むラムはアニオリ。ここはむしろ「ゴール」前のラムですね。
そして、あたるの肩に飛び乗り一緒にめぞんを読むラム。
そのめぞんのシーンが泥酔した朱美さんに五代がキスされるシーンと言うのもなんだか意味深w
響子さんのあわてふためく姿が当時も印象的だったなあ…そして最後の奥付まで!
ちゃんと5巻のサブタイトル「一刻館の昼と夜」になってるのがうれしい。
実はこの頃の五代くんが「煮え切らない」のは当然なんですよ。まだ貧乏な学生の身分でしたからね。将来に漠然とした不安を抱えた、優柔不断なごく普通の若者だったんです。
ここから彼はだんだん「男」になっていくのですが、あえて5巻をあたるに読ませているところに深い意味があるんです。
つまり、「大ビン小ビン」(コミックス26巻)のあたるはすでに一歩お先に「男」になってるからこそ、この頃の五代くんを「煮え切らない」と断罪することができるんですね。
しかし今見ても、あたるとラムが一緒に「めぞん一刻」を読んでいるという状況はすごいなw
メタ的にも面白いですし、二人の関係性の変化から見ても興味深いなと思います。
原作を40年前に読んでいた頃はそれほど気にならなかっただけに、令和の今見ることでなんだか新たなうる星に出会えたような気がしますよ。基本は原作通りなのに、当時とは明らかに違う感触がそこにはあるんですよね。
あたるに人の頭でくつろぐなと言われて「もー!」というラムは、原作とは違いかなり本気で怒っているように見えました。
原作だともっと軽い感じでの「もー。」なんですよね。「しかたないっちゃねー」みたいなニュアンスがそこにあるんです。
「今日はここで寝るのか」「こんなに小さかったら宇宙船まで飛ぶのも一苦労だっちゃ」というくだりはアニオリ。
というか、原作のラムは基本押入れで寝ている設定で、令和アニメでは自分のUFOに戻って寝るという設定なので、そもそもそこからして違うわけなんですけど。
てか、めぞん一刻の単行本を途中で伏せたまま机に置いてるw 栞とか挟めやw 折りがくせになるぞw
ふーんといいつつ、ジト目で「なーにが大きな愛だよ」「かつぎやがって…」と独白するあたる。
原作だと布団に入ってから眠ってるラムを見ながら思うところなんですけど、かなりニュアンスが変わったように感じましたね。
マンガでは本当にかつがれていると思ってる風なんですけど、今回のアニメではあえてかつがれていることを容認しているというか、そういうラムをいやいやながらも受け入れているように見えました。
あたるのそばで寝ているラム。
原作ではあたるの方を向いていたんですが、ここでは背中を向けていましたね。
あれは拗ねているんでしょうか。原作ではそういう可愛らしい感情もあまりなく、すごくフラットな印象だっただけにここは少し「あれ?」と思いました。
それと、さりげなくラム用のふとん?らしきものが用意されているのが目に付きましたね。あれはあたるが用意したんでしょうか。
原作でのラムは元々寒さに強い体質もあって、特に何か羽織るわけでもなくトラジマビキニのまま横になっていたんですが。
あたるが寝ぼけてラムに腕を振り下ろそうとして寸で止めるところは原作通りではありますが、どこか違う印象を持ちました。
演出があっさりしているからか、あまり湿っぽく感じなかったのはむしろ良かったなと思いましたね。今回の話は「君去りし後」とは違うのですから。
…てか、どさくさにまぎれてケツ触んなw(原作では足をそっと撫でただけです)
次の日、帰りの校門でコースケと会話するシーンはまったくのオリジナル。ここもけっこう重要なところですね。
「本当にラムちゃんとケンカしたんじゃないだろうな」「明日は一緒に来いよ」は、なかなか友達甲斐のあるセリフでした。まさか、コースケがこんなキャラになるとは…w
原作では、クラスの男子がラムとあたるの仲を心配するような描写はほぼないだけにかなり気になるシーンですね。
これはひょっとしたら、「君待てども…」からの流れを意識している面もあるのでしょうか。(組野おと子事件はコースケが首謀者だった)
ただ、あの一連のやり取りがあっての「本当にやさしくせんと元に戻らんのだろうか」「あいつって時たま本当のことをいうからな」は、なかなか染みるものがありました。あたるの表情もいつになくシリアスでしたしね。
コースケが結果的にそれを促したとするなら、面白い解釈だし演出だと思います。
今回は派手ではないですが、地味にキャラの言動に命を吹き込むような演出が目立ったような気がしますね。
こたつねことラムの会話をたまたま聞いてしまうところは原作通り。
ここは連載当時から思っていましたが、こたつねこはどう心配したんだろうw
基本彼は言葉を発しないので態度でそれとなく感じたんでしょうけど、なんかいいですよね。
こたつねこがラムの身を心配をするということ自体になんだかグッときますよ。
ただつくづく残念なのは、令和うる星では彼のバックボーンが一切語られていないので、このエモさが今一つ視聴者に伝わらないのではないかということです…
ラムを閉じ込める鳥かごは木製のやつになっていましたね。原作では鉄製でした。
南京錠で鍵を閉めていましたが、原作では針金をぐるぐる巻きで留めていたんですよw 一応多少マイルドな描写にしたということなんでしょうか。
ていうか、あの鳥かご柵の目は粗すぎだろw 普通に脱出できると思うんですけどw
「もとに戻ったら再起不能にしてやるっちゃ!」も原作通りですけど、やっぱ怖いなこの女w 再起不能なんて言葉、普通出てこないぞw
アイパッチをつけたドラ猫は、原作ではテンちゃんの天敵として準レギュラーにもなっている「トラジマ」です。令和うる星では確か5話の「愛と闘魂のグローブ」以来の登場になりますでしょうか。アニメではテンちゃんと絡まないのでどうにも影が薄いw
テンちゃんが亀のおっさんにカカシの吾作の話を聞くシーンは今見てもシュールw
あきらかに西洋風のファンタジー世界なのに、日本古来の田舎の風景が自然に融合しているんですよね。
この世界観はうる星をよく表していると思います。Bパートのキツネの話にも通じる原風景ですね。
吾作がビンを割っているところがまたいかにも田舎にありそうな作業場でした。てか、亀の話だと一応ゴミ捨て場なのか。あの意味もない配管はいったいなんなんだろうw
小ビンは赤で大ビンは青になっていましたね。ちゃんとラベルで区別されてるのはよかったかな。
ていうか、作り過ぎだろw
そういえば吾作の声って二又一成さんだったんですね。TVアニメ「めぞん一刻」で、主人公の五代裕作を演じていた方です。(あと、旧うる星ではラム親衛隊のチビ役でもあった)
こういう思わずニヤリとしてしまう仕掛けはけっこう好きw
その吾作の元に、先ほど五代くんをディスっていたあたるが向かうというところも含めて興味深い演出だったんじゃないでしょうか。
テンちゃんが日没までがタイムリミットと言っていましたが、四次元の森って地球の自転と連動しているんでしょうかw まあどうでもいいけどw
でもここは地味に熱い場面でもありますね。
テンちゃんがあたるを全面的に信用して「おまえはラムちゃんをつれてくるんやで!」いうところはちょっと泣きそうになります。
個人的には、ここが一番の感動的な場面かもしれません。
ただ令和うる星では、それほどテンちゃんの話をやっていないので、初見の人にとってはテンちゃんのこのあたるへの信頼感は唐突に思えるかなあという気もしましたね。
原作では26巻という後期にあたる時期で、だからこそ二人の間には目に見えない信頼がそれなりに構築されているのですが…
ウソだろ…からウソだろ!になって、次第に速足が駆け足に変わっていくところはよかったです。
原作でも意外なほどにあっさり描かれている場面ですが、ここでも過剰な演出はしていませんでした。
でも、それが逆に緊張感を駆り立てるはずです。
屋根に上ったあたるの「こっちおいで…」は、なんであんな情けない顔をしているんでしょう…
さすがに原作ではもっと切実で真剣な表情をしていましたよ。どういう意図なのかはわかりませんが、緊張感が台無しでしたね。
「もとに戻らないほうがいいってダーリンいったっちゃ!」というラムのセリフもすごく重要です。
こういう本気でない言葉を、そのまま鵜呑みにしてしまうのがラムなんですね。
それを受けての「だからそれは!」というあたるの表情は、さっきとは打って変わって真剣そのものでした。
この二人の微妙な齟齬は今回の「大ビン小ビン」問題にもかかってくるところなので、後ほどヘビー仕様の方で語っていきましょう。
あたるとラムのやりとりを聞きつけて群がる人たちが噂するシーンはアニオリ。
「なんざます?」といっていたメガネパーマのおばさんは、15話の「薬口害」にも出ていた人かなw
ていうか、1話「絶体絶命」であたる母に「いいふらすので有名な奥さん」と言われてた人かw
ここから最後のオチまではかなりディープな話になるので、ここでは割愛しましょう。気になる方は是非ヘビー仕様のほうを合わせてご覧ください。ていうか、お願いだから読んでw
一つだけ言うなら、最後に見せるラムの笑顔は原作にはないものです。
そして、あれこそが今回最大の「微妙な調整」といっていいでしょう。あのラムを描くことによって、その後のBパートも含めて22話全体の印象が変わってしまったということだけ記しておきます。
Bパート。
冒頭からとんでもない犬たちが登場して笑うw
なんでアイパッチしてる奴がいるんだよw あと、片目に切り傷が走ってる奴もいたなw
あの3匹はほぼ原作通りのビジュアルでしたね。(ヤクザみたいな犬3匹はTVアニメ「SPY×FAMILY」にもいたな…)
木の枝で追っ払おうとするしのぶは可愛いですけど、勇敢でもありますw
ていうか、あの空き地はなんで丸太があんなに積んであるんだw 彼岸島の明さん用かw
丸太を置きながら「あ~~こわかった…」とつぶやくしのぶが最高w
こぎつねがもう可愛すぎるw どんぐりの首飾りをぶらさげてるのがまたいいんだよなあw
こーんこーんとやたら鳴くのは一応アニメならではでしょうか。原作ではキツネの姿の時はあまりしゃべらないんですよね。
交番の指名手配にだっぴゃ星人とめぞん一刻の四谷さん、そしてお探し犬に惣一郎さん(ヒロイン響子さんが飼っている犬です)がいるw(白くてじじむさい犬w)
今回はAパートと合わせてめぞん回でもあったのかもしれないw
ていうか、四谷さんはいったい何をやったんだw
ここでもご近所様たちが噂話w Aパートと整合性があるのがいいですね。
「ああいう人材に町の治安が守れるのかしら?」は初期の高橋留美子ぽさを感じますw
あたるとしのぶの相合傘はクレヨン調でなかなか味が出ていました。
Aがすこしシュールでダークファンタジーテイストがあるとすれば、Bは純和風なメルヘンテイストといったところでしょうか。
仏滅高校総番に果敢にも立ち向かおうとする騎士(ナイト)・きつねw
それにはおよばず、華麗に背負い投げをきめるしのぶw
ここまでほぼ完全に原作通りですが、まったく退屈しませんでしたね。もう何度でも見ていられるぬくもりのある世界観がたまりません!
あたるに化けたキツネの声は、キツネと同じ針宮理恵さんでしょうか。本当すごいですね。まったく違和感がないというか、キツネがあたるをマネするならこういう声だろうというのをそのまま忠実に再現してる感じです。
耳がひょこひょこ動くところがまたいいなあw
女子三人に続いて、竜之介が教室に入ってくるのはアニオリ。ていうか、原作では竜之介は登場しないんですよね。特に出番がないから。
自分の足跡を雑巾で拭きながら、新たな足跡つけていくところが最高にかわいいw
今回の個人的ベストシーンかもw(あ、わたモテじゃなかった)
温泉マークを呼ぶ時に女子が「へんな諸星くんが…」というところはカット。地味に面白いと思っていた箇所なので残念。
でも、「おはようございますなんて美しい言葉が諸星の口から出るはずは…」も好きw
基本、みんな諸星あたるだということはあまり疑っていないのが笑えますねw それでいて全然違うところで疑ってるというw
コースケの「おはよーっす」が妙にかっこいいw Aパートと言い、なんで今回コイツが隠れた実力者っぽい雰囲気出してんのw
一瞬主人公かと思うじゃないかw
メガネを探しにやって来る校長とそのメガネをつけているこたつねこは、今回一番笑ったシーンw(だからわたモテ記事じゃねーって)
こういうシュールなナンセンスネタも中期うる星の特徴でしょうか。個人的にすごく好き。
ただ、校長のあたるに化けたキツネを見るところがあまりボケていないようなのはちょっと興ざめでした。解像度が高すぎでしょ。
あそこは、ちゃんと校長の視力で見せないとダメだと思うんですよね。もっとぶれた画像にしないと……
校長の掛け声でみんなが戸惑いながらもキツネあたるに拍手をするシーンも笑えましたが、そこにやって来るラムとあたるが妙にベタベタしてるのはちょっと違和感がありました。あそこまでくっつくのは逆に不自然な気もするんですよね。
原作だと、ラムは普通に飛びながらあたるの後ろを付いてくる感じですし、ダーリンえらいっちゃねー!という時も、抱きつくんじゃなくて拍手なんですけど…
ひょっとして「大ビン小ビン」の流れから、よりラブコメ色を強めようとしてるんでしょうか。ここの演出はちょっと意図がよくわかりませんでした。
「大ビン小ビン」が後期ラム特有のドライな雰囲気を醸し出していただけに、よけいに違和感がありましたね。まあそれを「調整」するためのAパートラストの笑顔だったのかもしれませんが。
それにしても、面堂は驚きすぎだろw なんだあの「はああああ!?」はw
本気でキツネをあたるだと思っていたのかw
「あたる…本物の…」からの、「君は何者だ!」がすごくニセモノ感があってかわいいw
しのぶに同意を求めるところなんて最高でしたねw
面堂がどちらがニセモノかは一目瞭然とあたるに切りかかるところはベタだけどやっぱり好きw
で、当たり前のように真剣白羽取りするあたるもw
しのぶの「ありがとうよくわかったわ」からキツネが教室を去っていくとき、彼をみんなが笑顔で見守るところ(あたるは除くw)はアニオリ。
原作ではみんなきょとんとしてるんですよね。でもここはこんな風にみんなであたたかく見守る方がいいなと感じました。
あたるもどこかふてくされながらも、しのぶのやさしさに気付いてる風でしたよね。
オチも最後まで可愛い感じでよかったですね。
なぜか算数の授業になってましたがw てか、1+1=2ってw そんなん黒板に書かすなw
(この辺はアニオリ。原作では席に座っているしのぶに、単に「しのぶくんはいつもいい子だねえ」と言ってるだけでした)
下ろせーとわめく温泉マークをなぜか苦笑交じりで見つめるラムとコースケw
だからなんでコースケがあたかも重要キャラみたいな扱いなんだってのw
(なお原作では、ラムは頬杖つきながら物珍しそうに見つめてるだけでした)
さて、Cパート。
Cパートが入るのはまあ想定内でしたが、実質3本立てともいえるボリュームになってるのはまったくの想定外でした。少なくとも4分くらいはありましたよね。ある意味、隠しトラックみたいなものでしょうかw
これまでのCパートというのは次回への予告編というか、ちょっとした顔見せみたいな意味合いが濃かったじゃないですか。時間的にも1分に満たないものがほとんどでしたし。
まあED後に見せるものなんですから、当然といえますよね。あくまでカーテンコール後のアンコール扱いなんです。
そうでなければ始めから3本立てとして構成するのが筋でしょう。実際、6話や15話はそうだったんですから。
ところが今回は、次回の「決戦!!友1クイーンコンテスト」の“予選”となる話を丸ごと見せてきたわけです。
「決戦!!友1クイーンコンテスト」が原作における「ミス友引コンテスト」(18巻 PART7~11)を指すものだというのは、すでに13話のヘビー仕様感想で述べました。
おそらく「ミスコン」という言葉が今のコンプラ的に合わないということでタイトルが変えられたのでしょう。確かに今の時代、ミスコンネタというのもほとんど見ませんしね。タイトル変更くらいで済むならまあ許容範囲でしょう。
原作の「ミス友引コンテスト」は5話に渡る長編です。
内訳的にいうと、
「ミス友引コンテスト;予備選」「ミス友引コンテスト;本選」「ミス友引コンテスト;水着審査」「ミス友引コンテスト;戦う女たち」「ミス友引コンテスト;結果発表」
ですね。今回のCパートはこのうち、「予備選」を丸ごとやったことになります。
これによって、次回は本選4話分を30分でやればいいので、話の構成的にかなり余裕が出ることでしょう。なかなかうまいやり方だと思います。
実質3パート分というか、1.5話分を使う計算になるわけですね。
ただ、そうはいっても、5分にも満たないCパートなので内容としてはかなりアレンジを加えていました。
そもそも原作では、クラスの男子が女子の「美人コンテスト」を裏でやっていたことが授業中にばれるところから始まるんですよね。
あたるとコースケが中心となって集計(授業中に投票紙を回収していた)していたわけなんですが、
その途中経過は
ラム 8票
しのぶ 6票
響子 5票
こずえ 4票
ななこ 3票
となっていましたw
(響子とこずえはめぞん一刻から。ななこはたぶんるーみっくわーるど短編集の「戦国生徒会」のヒロイン、葵ななこから)
当然こんなシーンは今は描けないでしょうから、カットは当然でしょうねw
ちなみに原作でもしのぶをはじめとする女性陣は「顔で女を評価するなんて最低よ!」と抗議はしていました。
Cパート冒頭の登校シーン。
ラムとしのぶが仲良く談笑しながら登校してるシーンは新鮮に映りましたね。
AパートとBパートのヒロイン同士の競演といったところでしょうか。
PV風な演出はどうやら「ASAYAN」のパロとのこと。なんでそこからw
あたるのナレーションや校長へのインタビュー的な映像、友1クイーンコンテストというフレーズはなんだか昭和っぽくないなあw
校長が美しさは美貌だけではない、知性、健全な精神、そして力と技!と力説するところは原作通り。
というか、あたるたちの投票を見て彼がミス友引コンテストを開きたいと燃えて開催にいたるという感じでしたw この校長にしてこの高校ありといったところでしょうかw
友引高校と友引商店街合同プロジェクトというのは本選への伏線かなw
13話の「買い食い大戦争」で遺恨を残した両者がこうして手を取り合う姿は美しい…?w
予選通過8名は原作通りですが、みんな2年4組でしたね。この学校は2年のあのクラスしかかわいい子はいないのかw
原作では一応モブとして1年生や3年生もノミネートされていたんですけどねえ。まあ完全にかませだったわけですがw
決勝に進めるのが5名のみという時点で、もう出来レースなこと丸わかりw
握力検査も一応原作通りになります。
原作のしのぶは「女の子って弱いものよ!」と言っていましたが、ここでは「私みたいなか弱い子の何を知りたいのよ」になっていましたね。
ラムはなんで電撃で壊すときにピースサインなんだw 原作ではしのぶを参考にして天然風に「こわせばいいっちゃ?」といった感じだったんですけどねえw
ランちゃんがパワー養成ギプスを使うのも原作通り。
宇宙人二人が腕力そのものはあまりなくて、地球人三人が尋常じゃないパワーを持ってるというのがミソですねw
そう、ラムとランちゃんは(一応)標準的な力の持主で、特にパワーがあるわけではないというのが重要なポイントになってくるわけです。
竜之介のくだりも原作通り。
ていうか、親父が16話以来ようやく2度目の登場!
17話では理不尽なカットを余儀なくされただけに、本当に良かったです。やっぱりレギュラーキャラなんですから、それなりに活躍してくれないと。
原作では、竜ちゃんの顔を見て「無理をすれば女といってもごまかせるかもしれんな」だったんですけど、今回は「さまざまな経験をし、見聞を広めるのも大事」とか、まともなことをほざいていましたねw
まあ15万に目がくらんだと思えば、これも親父らしいですけど。
ていうか、15万で浜茶屋再建できるのかよw
最後、「運営委員長のおれにまかせてくれ!」というあたるには、「いつおまえが」運営委員長になったのだ?」というツッコミが入ったんですけど、それだとテンポがおかしくなるのかここではカットされてました。
まあ長い予告編といった感じではありましたが、次回はついにアニメ初の「本選」が見れそうです。
実は、旧アニメでは「予備選」だけで終わってしまったんですよ。5話分を30分に無理やり詰め込むくらいなら予選だけにしてムチャクチャやってやれみたいなノリでw
そのミス友引コンテストが40年の時を越えてようやく「本選」に向かうのかと思うと感慨深いですw
というわけで、次回はいよいよ2クール目ラスト、
「決戦!!友1クイーンコンテスト」
になります。
令和版うる星やつら第1期目の締めくくりとなりますね。
今秋から始まるであろう「第2期」を気持ちよく迎えるためにも、ぜひ有終の美を飾って欲しいと思います。
それでは、また来週!
●ヘビー仕様
ここではまず、「大ビン小ビン」問題についてもう一度おさらいしてみたいと思います。
(※人によっては、一部「最後のデート」のネタバレを含む内容になるかもしれません。)
詳しくは
新TVアニメ「うる星やつら」第13話のライト感想&第2クールタイトル答え合わせヘビー感想
https://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-500.html
こちらのヘビー仕様の後半から語っていますので、そちらをご覧いただきたいんですけど、
簡単にいうと、コミックス24巻収録の「最後のデート」以降の話は、あたるとラムの関係に「答え」が出た後だから今の時点でやるべきではないということです。
さらに言うなら、「君待てども…」をステップにして「君去りし後」からスタートしたうる星やつらという世界は「最後のデート」で“ゴール”を迎えるんですね。
コミックス26巻収録の「大ビン小ビン」は、まさに“ゴール”した後の話なんです。
さて、ではその“ゴール”とはいったい具体的にどういうことを指すんでしょう。
端的に言うと、ラムがあたるを好きな理由をちゃんと理解するんですよ。つまり、ギャグの一環としての鬼ごっこではなくなるんですね。
私はこれまで何度も、うる星やつらはラブコメではないギャグなんだと訴え続けてきました。
それは、そもそものことの始まりからして明白だとも言ってきました。
1話の「かけめぐる青春」の“オチ”から始まったラムとあたるの鬼ごっこは、最初から理不尽なギャグの元で始まっていますからね。そこに理由もドラマも存在しないんです。
やがて、当初のキャラ設定からあたるが外れていくにしたがって、ギャグのテイストも変わってきます。それにともない、当初のヒロインであったしのぶもその立ち位置を変えざるを得なくなります。
そしてラムという“侵略者”は、名実ともにうる星やつらの鬼神として君臨することになるわけです。
そういう流れを踏まえて、改めてラムとあたるの恋愛関係をスタートさせたのが例の「君待てども…」と「君去りし後」でした。
そこから二人の関係は少しずつ変わっていきます。令和版アニメではその辺をすっとばしているので今一つピンと来ないかもしれませんが、いくつかの「ラブ」回で段階を踏まえながら徐々に出会った頃とは明らかに心境の変化が見えてくるわけです。
とりわけ「愛は国境を越えて」(20巻PART5)では、あたるがラムへの想いをはっきりと自覚することになります。意地を張ることよりも、ラムとの交流や彼女を守ることを優先するような「男」になるんですね。
それは同時に、うる星やつらというギャグマンガが大きな転換期を迎えることでもありました。
そして、「最後のデート」(24巻PART2)。
ここでラムは、自分以外に向けられたあたるの「やさしさ」に触れることになります。そこで彼女は初めて自分が“ダーリン”を好きな理由をはっきりと認識するんですね。
それはすなわち、第1話からずっと続いていた、「ギャグとしての恋愛鬼ごっこ」の終焉を意味することでもありました。
つまり、ラムはあたるに追いついたんですよ。最初の鬼ごっこはここで終了しているんです。ひと足先に「愛は国境を越えて」で「男」になっていたあたるに続いて、彼女もまた「女」に変わったんです。
「ゴール」した後の二人は「男」と「女」になりました。それまでのただひたすらに追いかけ逃げ回るプリミティブな関係から、恋の駆け引きが生まれるんですね。
ただ恋愛ゲームとなると、いつだって女の方が一枚上手です。一方の男はいつだって純情で朴訥とした態度しか取れません。
結果として、それまでの鬼ごっことは打って変わって、あたるがラムを追いかけるような関係になっていくわけです。
つまり、ラムはあたるを追い越してしまったんですね。
そういった意味で、今回の「大ビン小ビン」は「ゴール」後の二人の関係がよくわかる、その典型的な話だといっていいでしょう。
もしかしたら、スタッフのその辺のことがわかっていてあえてこの話をチョイスしたのかもしれません。
この話の何が特徴的かといえば、とにかくラムの態度なんですよね。
原作ではびっくりするほど、彼女はほとんど笑顔を見せないんです。常に無感動か怒ってるかのどちらか。
一方のあたるがラムのことに関して事あるごとに一喜一憂するだけに、それはかなり異色に思えます。
小さくなってしまったことに対して、初期のラムならもっと素直にあたるに助けを求めるはずなんですよね。
本来彼女は良くも悪くも無邪気な性格なのですから。
ところが、すでに「女」として目覚めてしまった彼女は、嘘をついて優しくしてもらおうと画策するわけですよ。ここに「ゴール」後のラムの姿が見えるんですね。
屋根上での二人の言い争い。
あそこでラムは「もとに戻らないほうがいいってダーリンいったっちゃ!」と言い放ちました。
当然そんなセリフはあたるの本心ではないわけです。あれはハバネロをたっぷりふりかえたオカズを食べさせられた腹いせに思わず口走ってしまった、心にもない言葉なのですから。
でもラムはその辺の微妙な機微が理解できない。心の底ではラムのことを思っている彼の気持ちに、彼女は気づくことが出来ないんですね。
例えば布団で寝ている時に、あたるがラムをつぶさないように守ったことも彼女は知る由もないわけです。
むしろ、「君待てども…」の頃とは立場が逆転しているとも言えます。
まだ「君待てども…」と「君去りし後」でしか「ラブ回」をやっていない令和うる星で、今回の話をやることが果たしてどうなのかと言うことに対して、わたしはまだはっきりとしたことは言えません。初見の人にはその辺まったく気にならないかもしれませんからね。
ただ、私はどうしてもここに行きつくまではそれなりの段階を踏まえるべきなのではと考えてしまうわけです。
だからこそ、今回「微妙に調整」された部分がすごく気になるんですよね。ひょっとしてスタッフもその辺の問題を認識していての「調整」なのかなと思わないでもないんです。
ラムの言葉を受けて、「だからそれは!」というあたるの表情はそれまでとは打って変わって真剣そのものでした。
あれ、原作だと苦笑い的な表情を浮かべていたんですよね。
これはあたるがラムの本質をどこまで知ってるかにもよるかと思うんです。
原作ではすでにラムのそういう「わかっていない」ところをあたるは十分に知っていて、そんなラムもすでに受け止めている節があるんですよ。
でも、令和うる星のあたるはまだそこまで達観していないということでの描写なのかもしれないんです。
あたるが土下座してまで「頼んで」いるのに、「もうダーリンなんか信用できないっちゃ!」と言い放つラム。
この二人の温度差が、実は「大ビン小ビン」という話の肝なのかもしれません。
実は個人的な印象として、この時期になるとあたるの方がラムに惚れこんでいて、逆にラムは少し冷めているようにも感じるんですよね。
「君去りし後」あたりの頃のラムだったら、土下座してまでお願いするあたるを見てなにも感じないはずはないと思うんです。絶対になにかしら気持ちが動いてほだされるんじゃないかと。
まあ、それはラムが少しは大人になったということでもあるのかもしれませんが。
一方のあたるはそんなつれないラムにめげることもなく、また危険を省みずに高い屋根から飛びついてラムを捕まえるんですよね。
そこにはなんの迷いもためらいもないわけです。それはすなわち、彼が「ゴール」した後のあたるだからだと私は考えるわけです。
元に戻ったにもかかわらず、今だ状況がよくわからずきょとんとしているラム。
一方のあたるは体全体で喜びを表すかのようにラムの肩を叩き、手を握り、何度も揺さぶります。
そんな感情をあらわにするあたるを見ても、ラムはまったくの無感動。
個人的には、あの表情が抜け落ちている描写こそ一番見たかったラムだったので、あそこはよかったなあと思いましたね。
そう、「ゴール」以降のラブコメ回には、こういうある種ドライで冷めたテイストがあるんですよ。それはそれでまたいいものではあるんです。
ただ、それを「君去りし後」以降初のラブコメとして見せていいのかどうかはまだ判断できません。
で、オチ。
なんだかんだいっても、素直に鳥かごをかぶっているあたるこそ情に厚く、
それに対して、「閉じ込められた気分はどうだっちゃ!?」と言い放つラムこそ薄情とも言えます。
で、原作ではそのまま終わります。つまり、決して「いい話」のままで終わるわけではないんですね。
ところが。
今回のアニメではものすごい改変をしたんです。
なんとそんなあたるを見てラムは微笑むんです。しかも満面の笑みで!
つまりそれは、ラムは本当はあたるのそんな気持ちをわかっていて、あえて戯れとしてこんなことをやっているというニュアンスになるわけですよ。
原作だと、あくまで意地の悪いジト目であたるを見ているだけなんです。
最後の最後まで、彼女は笑顔を見せることはないんですね。それがここ「大ビン小ビン」の本質的なところだったんです。
私はこの改変はすごく大きいものと考えます。
それが良いか悪いかはまだ判断できませんが、とにかく原作とは全く違うテイストになったと断言できます。
なぜから「大ビン小ビン」という話は、あたるの必死な行動にラムがまったくといっていいほど反応を示さないというところに意味があるからなんです。
一方のあたるは基本的は原作とは変わっていません。あくまで描かれたのは「ゴール」以降のラムに本気になったあたるでした。
だが、ラムのほうはかなり実像が揺れています。
冷静にあたるを試そうとする行動をとる一方、中期までの(「最後のデート」以前)、あたるに言動に素直に喜ぶ彼女が時々顔を出すんですね。私はそこになんともちぐはぐな印象を持ちました。
いったいアニメスタッフは、どっちのあたるとラムを描こうとしていたのでしょうか?
このちぐはぐさはBパートの「愛がふれあうとき」にも波及します。
実はこの回は「愛は国境を越えて」からほとんど間をあけずに描かれた話なんですね。(20巻PART8)
ラムとあたるの関係が大きく変わった時期と重なるんです。
「愛がふれあうとき」は、ある意味、しのぶへの「はなむけ」的な意味合いもある話です。
つまり、途中でヒロインから降りてもらった彼女に対して、高橋留美子なりのお詫びの意味もあった話なんですね。
実は、高橋留美子はずっと「しのぶ」について負い目を感じていたようなんです。
これは色んなインタビューでも答えていることですが、彼女にも幸せになってもらわないとうる星を完結させられないとずっと悩まれていたそうなんですね。
まあそれが後の「扉シリーズ」というしのぶの相手役が登場する話が生まれるきっかけになったわけですけど、この「キツネシリーズ」もおそらく作者の「しのぶ」への愛情から生まれた話なんですよ。
あたるとラムが一緒になっていく中で、彼女にも「愛」を与えてあげたいという切実な思いがそこにはあったんです。
そういった意味で、朝登校してきたあたるとラムが、過剰にベタベタしていたのはなんだか違和感を覚えました。Aパートラストのあのラムの「笑顔」が悪い意味で影響しちゃってるのかなと。
割とドライなムードもある「ゴール」後の「大ビン小ビン」とのバランスを取って、変にラブ色を強めたとするなら本末転倒な気がしますね。
「愛がふれあうとき」は、あくまでしのぶの愛の物語であるべきなので。
でも、そんなラムとしのぶが、Cパートで仲良く登校しながら談笑していたシーンはよかったですね。
あそこはなんだかすごく救われたような気持ちになりました。
最終的に、ラムとあたるとしのぶの愛の物語はここに集約されたんだとw(我ながら何を言ってるのかよくわからんが…)
ところで、そのCパートである「ミス友引コンテスト」ですけど、実は旧アニメではかなりの問題作でもありました。
ライト仕様でも述べましたが、なんと予選だけで話が終わってしまっているんですよ。
予選での政治的な駆け引きが押井守節にあふれていたこともあって一部のファンには名作ともされていますが、世間的には消化不良な印象は否めない回でした。
おまけに作中でタブーとも言える描写を行って、原作者の高橋留美子に苦言を呈されることもありました。
以下、1984年11月発行の高橋留美子と平井和正の対談集「語り尽くせ恋愛時代」P168からの抜粋になります。
高橋 前に『うる星やつら』で「ミス友引コンテスト」というのがアニメになったことがあるんです。あれにはガーンという感じで…
平井 本当にムチャクチャやりましたね(笑)
高橋 あれはまさに開いた口がふさがらなかったです。それと細かい部分でぎょっとしたのは、キャラクターの踏み絵をさせているんですよね。これだけは踏むものじゃないよという感じでしたけど、そのへんの神経が私には理解できないなあと思いました。~(中略)~出来たらキャラクターはかわいがってほしいと思います。
対談がいつごろ行われたのかは、はっきりとした日時が記録にないので不明ですが、少なくとも旧アニメ版うる星やつらの「ミスコン」回である「ドキュメント・ミス友引は誰だ!?」が放映された1983年11月以降であることは間違いありません。
発行日からするとおそらく1984年の春から夏あたりにかけてからではないかと推測されます。
まだうる星やつらが連載中で、しかも同時期に「最後のデート」(コミックス24巻PART2/1984年8月22日売りのサンデー掲載)を執筆していた頃と考えると、この高橋留美子の言葉はなかなか感慨深いものがありますね。
彼女のキャラクターに対する深い愛情が伺えて、今でもすごく心に残る言葉です。
(なお、一応断っておきますが、高橋留美子は基本的にアニメ「うる星やつら」には好意的でした。そこははっきりさせておきます)
というわけで、次回はいよいよ2クール目ラスト、
「決戦!!友1クイーンコンテスト」
ですね。
前にも言った通り、実は個人的にはそこまで高い評価をしているシリーズではないのですが、それでも期待せざるを得ません。
制作スタッフの皆さんには、ぜひキャラクターたちへの愛が感じられる作品をお願いしたいと思います。
それでは、また来週!
(気が付けば過去最長記事になっていた…)
ブルーレイBOX第1巻が3月15日発売されました!豪華ブックレットも読み応えたっぷりの充実した内容になっています。
現在放映中の2クール目は第2巻にまとめて入る予定で、6月28日発売!
「大ビン小ビン」は26巻、「愛がふれあうとき」は20巻に収録されています!
BOXセットが4巻揃って発売中!
ぜひ、原作の深遠なギャグワールドを堪能してください!
新TVアニメ「うる星やつら」のOP/EDテーマ4曲とさらに新曲2曲を加えたCDが3月15日に発売!限定盤にはノンクレジットOP/ED2クール分を収録したBlu-rayが付きます。
3月1日に新TVアニメ「うる星やつら」オリジナルサウンドトラックが発売されました!曲タイトルが興味深いものが多いですね。「君待てども…」で流れたあの印象的な曲も入っています。
(私の新アニメ「うる星やつら」への思いはこちらとこちらで。)
今回はどちらもいわゆる「いい話」でしたね。前回がいろんな意味でエグい回だったのでバランスを取ったのでしょうかw
でも、バイオレンスなドタバタも心温まる愛の物語も、どちらも同列で成り立つのが「うる星やつら」の面白さでもあります。
令和版アニメが一期目の区切りを迎える前に、対照的なテイストの話を並べることでその魅力の幅広さを提示する意味があったのかもしれません。
ただ同じ「いい話」でも、受ける印象はそれぞれ違っていたように思います。特にAパート「大ビン小ビン」は基本原作通りだったのにもかかわらず、微妙な調整がなされていたように感じました。
そしてその調整は、思いのほか作品に大きな影響を与えていたように見えたんですよね。それによって、22話全体の印象さえも変わったような気がしたんです。
前回のヘビー仕様感想では、あたるとラムの「ラブコメ」を22話前半に持ってきたことには何か仕掛けがあるのではないかと書きましたが、あながち見当はずれでもなかったかなと。
全体的な雰囲気というか、演出的な面ではわりとあっさりしていたように思います。
1クール目における「ラブ回」だった、「君待てども…」や「君去りし後」の叙情的な感じとはかなり違っていましたよね。
それも当然でしょう。あの二つはなんといっても世界そのものの始まりであり、また大きな転換期でもあったのですから。あのドラマチックな見せ方にもちゃんと意味があったんです。後期うる星の数ある「いい話」の一編に過ぎない今回の話とは、重みも重要性もまったく異なります。
そういった意味で、過剰な感傷に浸ることなく、ごく普通の「ちょっといい話」に終始していたことには好感を持ちました。
ただ、今回はいつものように点数をつけるのはやめておきます。
AパートBパート共にほぼ原作通りでしたし、それぞれ単体では高得点をあげられるかとは思うんですけど、先ほど述べた「微妙な調整」が全体に及ぼした影響が私を戸惑わせるんですよ。そしてそれは今も答えが出ていないんです。
それに加えて、13話のヘビー仕様感想で触れた「大ビン小ビン」問題が大きくのしかかってきますからね。
たぶんほとんどの人にってはどうでもいいことだろうとは思いますが、私にとっては絶対に避けては通れない重要な問題なんです。
しかも、今回の「微妙な調整」によって私の中の定義がすこし揺らぎ始めてるんですよ。この期に及んで、うる星とは何かという根本的な問題に直面しているような状態なんです。
……とまあ、その辺のなんとも面倒くさい話は後でゆっくり、「ヘビー仕様」の方で語ることにいたしましょう。
まずは「うる星やつら」第22話のライト仕様感想からどうぞ!
●ライト仕様
アバンは20話同様、異世界の風景から始まりました。ただ、今回はあの時よりもシュールなイメージが色濃く出ていましたように思います。四次元の森の雰囲気はまるでおとぎ話の世界のようでしたね。
ぺちゃくちゃしゃべる花は原作通りですが、マンガではコマの端っこにいた地味なあれを冒頭でクローズアップするとはなかなかいいセンスだなと思いました。ピンク色に光る三日月もどこか不気味な感じで、全体的にダークファンタジーっぽく見せていましたね。
アニメならではの華やかな色使いが印象的でした。
しかし売れないからって、子どもが持ってるアメと物々交換という理屈はいまだによくわからんw
それって商売になってるのか?もしかしたら、子どもの口コミとかを期待していたんだろうか。
小さくなる説明の時に象が小ビンに入ってるイメージが無かったのはちょっと残念でしたね。
あの説明だけでテンちゃんが食いつくのは今一つ説得力がないw
タイトルの入り方は素晴らしかったですね。まるでハリーポッターみたいなデザインでしたw
西洋風のファンタジーに日本的な舞台が融合している感じがすごく好きです。
Aパート。
ビンを割るラムはまるで特撮ヒーローみたいw 原作だとやれやれといった感じを出しながら、さもあたりまえのように割れたビンからばこっと出てくるのですが、今回はより元気で強いイメージを強調してるかのように見えました。
ていうか、せめてあれは大ビンとセットじゃないと売れないでしょw
人に向けるなといいつつも、まったく安全策がなってないし…そもそも幼児に与える時点であのカカシはやばいw
ラムがあたるの帰りにハッと喜ぶようなしぐさを見せ、あたるに声を掛けようとするのはアニオリ。
実は原作ではラムはもっとドライな感じなんですよ。ここの改変というか、描写は何気にすごく重要な気がしていますね。
あたるが「めぞん一刻」のコミックスをやっと買えたぜと言ってるのもアニオリ。原作では普通に学校帰りで、特にマンガを買いに行った描写はありません。
ちなみに私も当時は「めぞん一刻」のコミックスが出るのが待ち遠しかったんですけど、すぐに売れ切れてなかなか手に入れられなかったことを思い出しますね。ここでは5巻でしたが、3巻が特に入手しづらかったなあ…
あたるは原作でもけっこうめぞんを読んでいたりするので、実は高橋留美子のファンなのかもしれないw
あたるがせんべいを食べようとするのを、真っ正面から見せるのはなかなか新鮮な演出でしたね。ちょこんと乗った後ろ姿のラムがかわいいw あれはラム目線でもあるんでしょうか。
その後、原作ではせんべいを咥えたあたると目が合った瞬間に「ダーリン」と呼ぶんですけど、ここではなぜかカット。さきほど声を掛けようとしたからでしょうか。
これはいい機会だと優しくしてもらおうと画策するラム。これは後期うる星の特徴でもあります。
初期や中期のころとは違って、けっこうあたるを試そうとしたりするんですよ。
ある意味余裕が出てきたとも言えますが、むしろ初期のがむしゃらな感じから徐々に女のズルさが見えてきたようにも思えますね。
これは「大ビン小ビン問題」にも関わることなので、くわしくはヘビー仕様のほうに回しましょう。
ラムの演技が大根ぽいのが面白いw
原作だともっとあっさりというか自然なんですけど、ここでは変に演技しようとする方がむしろラムらしい気がしますね。
時々ラム目線であたるをアップに見せる演出も効果的。あたるが「え?」と一瞬驚くところや、「もとに戻るには…」のところで固唾をのむ感じも原作にはないシーンでした。
でもラムの大根演技にあたるがマジになるからこそ、その後の「ダーリンの大きな愛が必要だっちゃ!」が効いてくるんですよw
全然悲壮感がなく、むしろワクワクを隠しきれないラムに対してあたるが疑心暗鬼になるところに説得力が生まれるわけです。
夕食時の親たちの反応はすべてアニオリ。原作だと父母共にドン引きしてるというか、状況について何も考えないようにしてるというかw
「いやあ、宇宙人ていうのは変な病気になるんだね」「こんなに小さいと、食費が浮いて助かるけど…」は、なにげにひどいセリフw
ていうか、やっぱりラムの食費も諸星家から出ているんですね。
「でも早く戻りたいわよねえ」というあたる母の声が優しい。
「きっとダーリンが助けてくれるっちゃ」も原作にはないセリフですね。あの屈託のなさは後期うる星にはない感じが個人的にはしました。
なにさらすんじゃと叩こうとするあたるからラムがあたる母の肩に逃げるのは原作通り。
ただ、マンガだと一コマで見せるところを、動きが入ることであたるの母親への信頼感がより伺える感じがしてよかったですね。
あたるの親とラムとの関係性をちゃんと描こうとする姿勢は令和うる星のいいところの一つだと思います。
「めぞん一刻」5巻のシーンがそのまま描かれとるwwwまさかアップであそこまで見せるとはw
原作でも確かにめぞんの単行本は読んではいるんですけど、具体的なシーンははっきりとは描かれてなかったんですよね。
主人公の五代が本命の響子さんの顔が頭をよぎりながらも、ガールフレンドのこずえちゃんに据え膳食わぬは男の恥とばかりにキスをしようとする場面がなかなかに意味深w
あれってどうしてるんでしょう。まさかスキャンとか?
それを読んで「ふーん、なんて煮え切らない男じゃ…」とつぶやくあたるwww
ここはもちろんアニオリ。原作でのコミックスは単なる背景としての意味でしかありませんでした。
でもここは今回最大のポイントだと思いますね。
詳しいことはヘビー仕様の方に任せますが、めぞんの主人公である五代に対して「煮え切れない男」と評するあたるは、明らかにうる星後期のあたるでしょう。
少なくとも「最後のデート」つまり「ゴール」を経た後のあたるじゃないと、あのセリフは出てこないような気がします。
(「最後のデート」については、13話のヘビー仕様感想を参照してください。または後のヘビー仕様でも触れます)
あたるの凛々しい(?)横顔を見上げて微笑むラムはアニオリ。ここはむしろ「ゴール」前のラムですね。
そして、あたるの肩に飛び乗り一緒にめぞんを読むラム。
そのめぞんのシーンが泥酔した朱美さんに五代がキスされるシーンと言うのもなんだか意味深w
響子さんのあわてふためく姿が当時も印象的だったなあ…そして最後の奥付まで!
ちゃんと5巻のサブタイトル「一刻館の昼と夜」になってるのがうれしい。
実はこの頃の五代くんが「煮え切らない」のは当然なんですよ。まだ貧乏な学生の身分でしたからね。将来に漠然とした不安を抱えた、優柔不断なごく普通の若者だったんです。
ここから彼はだんだん「男」になっていくのですが、あえて5巻をあたるに読ませているところに深い意味があるんです。
つまり、「大ビン小ビン」(コミックス26巻)のあたるはすでに一歩お先に「男」になってるからこそ、この頃の五代くんを「煮え切らない」と断罪することができるんですね。
しかし今見ても、あたるとラムが一緒に「めぞん一刻」を読んでいるという状況はすごいなw
メタ的にも面白いですし、二人の関係性の変化から見ても興味深いなと思います。
原作を40年前に読んでいた頃はそれほど気にならなかっただけに、令和の今見ることでなんだか新たなうる星に出会えたような気がしますよ。基本は原作通りなのに、当時とは明らかに違う感触がそこにはあるんですよね。
あたるに人の頭でくつろぐなと言われて「もー!」というラムは、原作とは違いかなり本気で怒っているように見えました。
原作だともっと軽い感じでの「もー。」なんですよね。「しかたないっちゃねー」みたいなニュアンスがそこにあるんです。
「今日はここで寝るのか」「こんなに小さかったら宇宙船まで飛ぶのも一苦労だっちゃ」というくだりはアニオリ。
というか、原作のラムは基本押入れで寝ている設定で、令和アニメでは自分のUFOに戻って寝るという設定なので、そもそもそこからして違うわけなんですけど。
てか、めぞん一刻の単行本を途中で伏せたまま机に置いてるw 栞とか挟めやw 折りがくせになるぞw
ふーんといいつつ、ジト目で「なーにが大きな愛だよ」「かつぎやがって…」と独白するあたる。
原作だと布団に入ってから眠ってるラムを見ながら思うところなんですけど、かなりニュアンスが変わったように感じましたね。
マンガでは本当にかつがれていると思ってる風なんですけど、今回のアニメではあえてかつがれていることを容認しているというか、そういうラムをいやいやながらも受け入れているように見えました。
あたるのそばで寝ているラム。
原作ではあたるの方を向いていたんですが、ここでは背中を向けていましたね。
あれは拗ねているんでしょうか。原作ではそういう可愛らしい感情もあまりなく、すごくフラットな印象だっただけにここは少し「あれ?」と思いました。
それと、さりげなくラム用のふとん?らしきものが用意されているのが目に付きましたね。あれはあたるが用意したんでしょうか。
原作でのラムは元々寒さに強い体質もあって、特に何か羽織るわけでもなくトラジマビキニのまま横になっていたんですが。
あたるが寝ぼけてラムに腕を振り下ろそうとして寸で止めるところは原作通りではありますが、どこか違う印象を持ちました。
演出があっさりしているからか、あまり湿っぽく感じなかったのはむしろ良かったなと思いましたね。今回の話は「君去りし後」とは違うのですから。
…てか、どさくさにまぎれてケツ触んなw(原作では足をそっと撫でただけです)
次の日、帰りの校門でコースケと会話するシーンはまったくのオリジナル。ここもけっこう重要なところですね。
「本当にラムちゃんとケンカしたんじゃないだろうな」「明日は一緒に来いよ」は、なかなか友達甲斐のあるセリフでした。まさか、コースケがこんなキャラになるとは…w
原作では、クラスの男子がラムとあたるの仲を心配するような描写はほぼないだけにかなり気になるシーンですね。
これはひょっとしたら、「君待てども…」からの流れを意識している面もあるのでしょうか。(組野おと子事件はコースケが首謀者だった)
ただ、あの一連のやり取りがあっての「本当にやさしくせんと元に戻らんのだろうか」「あいつって時たま本当のことをいうからな」は、なかなか染みるものがありました。あたるの表情もいつになくシリアスでしたしね。
コースケが結果的にそれを促したとするなら、面白い解釈だし演出だと思います。
今回は派手ではないですが、地味にキャラの言動に命を吹き込むような演出が目立ったような気がしますね。
こたつねことラムの会話をたまたま聞いてしまうところは原作通り。
ここは連載当時から思っていましたが、こたつねこはどう心配したんだろうw
基本彼は言葉を発しないので態度でそれとなく感じたんでしょうけど、なんかいいですよね。
こたつねこがラムの身を心配をするということ自体になんだかグッときますよ。
ただつくづく残念なのは、令和うる星では彼のバックボーンが一切語られていないので、このエモさが今一つ視聴者に伝わらないのではないかということです…
ラムを閉じ込める鳥かごは木製のやつになっていましたね。原作では鉄製でした。
南京錠で鍵を閉めていましたが、原作では針金をぐるぐる巻きで留めていたんですよw 一応多少マイルドな描写にしたということなんでしょうか。
ていうか、あの鳥かご柵の目は粗すぎだろw 普通に脱出できると思うんですけどw
「もとに戻ったら再起不能にしてやるっちゃ!」も原作通りですけど、やっぱ怖いなこの女w 再起不能なんて言葉、普通出てこないぞw
アイパッチをつけたドラ猫は、原作ではテンちゃんの天敵として準レギュラーにもなっている「トラジマ」です。令和うる星では確か5話の「愛と闘魂のグローブ」以来の登場になりますでしょうか。アニメではテンちゃんと絡まないのでどうにも影が薄いw
テンちゃんが亀のおっさんにカカシの吾作の話を聞くシーンは今見てもシュールw
あきらかに西洋風のファンタジー世界なのに、日本古来の田舎の風景が自然に融合しているんですよね。
この世界観はうる星をよく表していると思います。Bパートのキツネの話にも通じる原風景ですね。
吾作がビンを割っているところがまたいかにも田舎にありそうな作業場でした。てか、亀の話だと一応ゴミ捨て場なのか。あの意味もない配管はいったいなんなんだろうw
小ビンは赤で大ビンは青になっていましたね。ちゃんとラベルで区別されてるのはよかったかな。
ていうか、作り過ぎだろw
そういえば吾作の声って二又一成さんだったんですね。TVアニメ「めぞん一刻」で、主人公の五代裕作を演じていた方です。(あと、旧うる星ではラム親衛隊のチビ役でもあった)
こういう思わずニヤリとしてしまう仕掛けはけっこう好きw
その吾作の元に、先ほど五代くんをディスっていたあたるが向かうというところも含めて興味深い演出だったんじゃないでしょうか。
テンちゃんが日没までがタイムリミットと言っていましたが、四次元の森って地球の自転と連動しているんでしょうかw まあどうでもいいけどw
でもここは地味に熱い場面でもありますね。
テンちゃんがあたるを全面的に信用して「おまえはラムちゃんをつれてくるんやで!」いうところはちょっと泣きそうになります。
個人的には、ここが一番の感動的な場面かもしれません。
ただ令和うる星では、それほどテンちゃんの話をやっていないので、初見の人にとってはテンちゃんのこのあたるへの信頼感は唐突に思えるかなあという気もしましたね。
原作では26巻という後期にあたる時期で、だからこそ二人の間には目に見えない信頼がそれなりに構築されているのですが…
ウソだろ…からウソだろ!になって、次第に速足が駆け足に変わっていくところはよかったです。
原作でも意外なほどにあっさり描かれている場面ですが、ここでも過剰な演出はしていませんでした。
でも、それが逆に緊張感を駆り立てるはずです。
屋根に上ったあたるの「こっちおいで…」は、なんであんな情けない顔をしているんでしょう…
さすがに原作ではもっと切実で真剣な表情をしていましたよ。どういう意図なのかはわかりませんが、緊張感が台無しでしたね。
「もとに戻らないほうがいいってダーリンいったっちゃ!」というラムのセリフもすごく重要です。
こういう本気でない言葉を、そのまま鵜呑みにしてしまうのがラムなんですね。
それを受けての「だからそれは!」というあたるの表情は、さっきとは打って変わって真剣そのものでした。
この二人の微妙な齟齬は今回の「大ビン小ビン」問題にもかかってくるところなので、後ほどヘビー仕様の方で語っていきましょう。
あたるとラムのやりとりを聞きつけて群がる人たちが噂するシーンはアニオリ。
「なんざます?」といっていたメガネパーマのおばさんは、15話の「薬口害」にも出ていた人かなw
ていうか、1話「絶体絶命」であたる母に「いいふらすので有名な奥さん」と言われてた人かw
ここから最後のオチまではかなりディープな話になるので、ここでは割愛しましょう。気になる方は是非ヘビー仕様のほうを合わせてご覧ください。ていうか、お願いだから読んでw
一つだけ言うなら、最後に見せるラムの笑顔は原作にはないものです。
そして、あれこそが今回最大の「微妙な調整」といっていいでしょう。あのラムを描くことによって、その後のBパートも含めて22話全体の印象が変わってしまったということだけ記しておきます。
Bパート。
冒頭からとんでもない犬たちが登場して笑うw
なんでアイパッチしてる奴がいるんだよw あと、片目に切り傷が走ってる奴もいたなw
あの3匹はほぼ原作通りのビジュアルでしたね。(ヤクザみたいな犬3匹はTVアニメ「SPY×FAMILY」にもいたな…)
木の枝で追っ払おうとするしのぶは可愛いですけど、勇敢でもありますw
ていうか、あの空き地はなんで丸太があんなに積んであるんだw 彼岸島の明さん用かw
丸太を置きながら「あ~~こわかった…」とつぶやくしのぶが最高w
こぎつねがもう可愛すぎるw どんぐりの首飾りをぶらさげてるのがまたいいんだよなあw
こーんこーんとやたら鳴くのは一応アニメならではでしょうか。原作ではキツネの姿の時はあまりしゃべらないんですよね。
交番の指名手配にだっぴゃ星人とめぞん一刻の四谷さん、そしてお探し犬に惣一郎さん(ヒロイン響子さんが飼っている犬です)がいるw(白くてじじむさい犬w)
今回はAパートと合わせてめぞん回でもあったのかもしれないw
ていうか、四谷さんはいったい何をやったんだw
ここでもご近所様たちが噂話w Aパートと整合性があるのがいいですね。
「ああいう人材に町の治安が守れるのかしら?」は初期の高橋留美子ぽさを感じますw
あたるとしのぶの相合傘はクレヨン調でなかなか味が出ていました。
Aがすこしシュールでダークファンタジーテイストがあるとすれば、Bは純和風なメルヘンテイストといったところでしょうか。
仏滅高校総番に果敢にも立ち向かおうとする騎士(ナイト)・きつねw
それにはおよばず、華麗に背負い投げをきめるしのぶw
ここまでほぼ完全に原作通りですが、まったく退屈しませんでしたね。もう何度でも見ていられるぬくもりのある世界観がたまりません!
あたるに化けたキツネの声は、キツネと同じ針宮理恵さんでしょうか。本当すごいですね。まったく違和感がないというか、キツネがあたるをマネするならこういう声だろうというのをそのまま忠実に再現してる感じです。
耳がひょこひょこ動くところがまたいいなあw
女子三人に続いて、竜之介が教室に入ってくるのはアニオリ。ていうか、原作では竜之介は登場しないんですよね。特に出番がないから。
自分の足跡を雑巾で拭きながら、新たな足跡つけていくところが最高にかわいいw
今回の個人的ベストシーンかもw(あ、わたモテじゃなかった)
温泉マークを呼ぶ時に女子が「へんな諸星くんが…」というところはカット。地味に面白いと思っていた箇所なので残念。
でも、「おはようございますなんて美しい言葉が諸星の口から出るはずは…」も好きw
基本、みんな諸星あたるだということはあまり疑っていないのが笑えますねw それでいて全然違うところで疑ってるというw
コースケの「おはよーっす」が妙にかっこいいw Aパートと言い、なんで今回コイツが隠れた実力者っぽい雰囲気出してんのw
一瞬主人公かと思うじゃないかw
メガネを探しにやって来る校長とそのメガネをつけているこたつねこは、今回一番笑ったシーンw(だからわたモテ記事じゃねーって)
こういうシュールなナンセンスネタも中期うる星の特徴でしょうか。個人的にすごく好き。
ただ、校長のあたるに化けたキツネを見るところがあまりボケていないようなのはちょっと興ざめでした。解像度が高すぎでしょ。
あそこは、ちゃんと校長の視力で見せないとダメだと思うんですよね。もっとぶれた画像にしないと……
校長の掛け声でみんなが戸惑いながらもキツネあたるに拍手をするシーンも笑えましたが、そこにやって来るラムとあたるが妙にベタベタしてるのはちょっと違和感がありました。あそこまでくっつくのは逆に不自然な気もするんですよね。
原作だと、ラムは普通に飛びながらあたるの後ろを付いてくる感じですし、ダーリンえらいっちゃねー!という時も、抱きつくんじゃなくて拍手なんですけど…
ひょっとして「大ビン小ビン」の流れから、よりラブコメ色を強めようとしてるんでしょうか。ここの演出はちょっと意図がよくわかりませんでした。
「大ビン小ビン」が後期ラム特有のドライな雰囲気を醸し出していただけに、よけいに違和感がありましたね。まあそれを「調整」するためのAパートラストの笑顔だったのかもしれませんが。
それにしても、面堂は驚きすぎだろw なんだあの「はああああ!?」はw
本気でキツネをあたるだと思っていたのかw
「あたる…本物の…」からの、「君は何者だ!」がすごくニセモノ感があってかわいいw
しのぶに同意を求めるところなんて最高でしたねw
面堂がどちらがニセモノかは一目瞭然とあたるに切りかかるところはベタだけどやっぱり好きw
で、当たり前のように真剣白羽取りするあたるもw
しのぶの「ありがとうよくわかったわ」からキツネが教室を去っていくとき、彼をみんなが笑顔で見守るところ(あたるは除くw)はアニオリ。
原作ではみんなきょとんとしてるんですよね。でもここはこんな風にみんなであたたかく見守る方がいいなと感じました。
あたるもどこかふてくされながらも、しのぶのやさしさに気付いてる風でしたよね。
オチも最後まで可愛い感じでよかったですね。
なぜか算数の授業になってましたがw てか、1+1=2ってw そんなん黒板に書かすなw
(この辺はアニオリ。原作では席に座っているしのぶに、単に「しのぶくんはいつもいい子だねえ」と言ってるだけでした)
下ろせーとわめく温泉マークをなぜか苦笑交じりで見つめるラムとコースケw
だからなんでコースケがあたかも重要キャラみたいな扱いなんだってのw
(なお原作では、ラムは頬杖つきながら物珍しそうに見つめてるだけでした)
さて、Cパート。
Cパートが入るのはまあ想定内でしたが、実質3本立てともいえるボリュームになってるのはまったくの想定外でした。少なくとも4分くらいはありましたよね。ある意味、隠しトラックみたいなものでしょうかw
これまでのCパートというのは次回への予告編というか、ちょっとした顔見せみたいな意味合いが濃かったじゃないですか。時間的にも1分に満たないものがほとんどでしたし。
まあED後に見せるものなんですから、当然といえますよね。あくまでカーテンコール後のアンコール扱いなんです。
そうでなければ始めから3本立てとして構成するのが筋でしょう。実際、6話や15話はそうだったんですから。
ところが今回は、次回の「決戦!!友1クイーンコンテスト」の“予選”となる話を丸ごと見せてきたわけです。
「決戦!!友1クイーンコンテスト」が原作における「ミス友引コンテスト」(18巻 PART7~11)を指すものだというのは、すでに13話のヘビー仕様感想で述べました。
おそらく「ミスコン」という言葉が今のコンプラ的に合わないということでタイトルが変えられたのでしょう。確かに今の時代、ミスコンネタというのもほとんど見ませんしね。タイトル変更くらいで済むならまあ許容範囲でしょう。
原作の「ミス友引コンテスト」は5話に渡る長編です。
内訳的にいうと、
「ミス友引コンテスト;予備選」「ミス友引コンテスト;本選」「ミス友引コンテスト;水着審査」「ミス友引コンテスト;戦う女たち」「ミス友引コンテスト;結果発表」
ですね。今回のCパートはこのうち、「予備選」を丸ごとやったことになります。
これによって、次回は本選4話分を30分でやればいいので、話の構成的にかなり余裕が出ることでしょう。なかなかうまいやり方だと思います。
実質3パート分というか、1.5話分を使う計算になるわけですね。
ただ、そうはいっても、5分にも満たないCパートなので内容としてはかなりアレンジを加えていました。
そもそも原作では、クラスの男子が女子の「美人コンテスト」を裏でやっていたことが授業中にばれるところから始まるんですよね。
あたるとコースケが中心となって集計(授業中に投票紙を回収していた)していたわけなんですが、
その途中経過は
ラム 8票
しのぶ 6票
響子 5票
こずえ 4票
ななこ 3票
となっていましたw
(響子とこずえはめぞん一刻から。ななこはたぶんるーみっくわーるど短編集の「戦国生徒会」のヒロイン、葵ななこから)
当然こんなシーンは今は描けないでしょうから、カットは当然でしょうねw
ちなみに原作でもしのぶをはじめとする女性陣は「顔で女を評価するなんて最低よ!」と抗議はしていました。
Cパート冒頭の登校シーン。
ラムとしのぶが仲良く談笑しながら登校してるシーンは新鮮に映りましたね。
AパートとBパートのヒロイン同士の競演といったところでしょうか。
PV風な演出はどうやら「ASAYAN」のパロとのこと。なんでそこからw
あたるのナレーションや校長へのインタビュー的な映像、友1クイーンコンテストというフレーズはなんだか昭和っぽくないなあw
校長が美しさは美貌だけではない、知性、健全な精神、そして力と技!と力説するところは原作通り。
というか、あたるたちの投票を見て彼がミス友引コンテストを開きたいと燃えて開催にいたるという感じでしたw この校長にしてこの高校ありといったところでしょうかw
友引高校と友引商店街合同プロジェクトというのは本選への伏線かなw
13話の「買い食い大戦争」で遺恨を残した両者がこうして手を取り合う姿は美しい…?w
予選通過8名は原作通りですが、みんな2年4組でしたね。この学校は2年のあのクラスしかかわいい子はいないのかw
原作では一応モブとして1年生や3年生もノミネートされていたんですけどねえ。まあ完全にかませだったわけですがw
決勝に進めるのが5名のみという時点で、もう出来レースなこと丸わかりw
握力検査も一応原作通りになります。
原作のしのぶは「女の子って弱いものよ!」と言っていましたが、ここでは「私みたいなか弱い子の何を知りたいのよ」になっていましたね。
ラムはなんで電撃で壊すときにピースサインなんだw 原作ではしのぶを参考にして天然風に「こわせばいいっちゃ?」といった感じだったんですけどねえw
ランちゃんがパワー養成ギプスを使うのも原作通り。
宇宙人二人が腕力そのものはあまりなくて、地球人三人が尋常じゃないパワーを持ってるというのがミソですねw
そう、ラムとランちゃんは(一応)標準的な力の持主で、特にパワーがあるわけではないというのが重要なポイントになってくるわけです。
竜之介のくだりも原作通り。
ていうか、親父が16話以来ようやく2度目の登場!
17話では理不尽なカットを余儀なくされただけに、本当に良かったです。やっぱりレギュラーキャラなんですから、それなりに活躍してくれないと。
原作では、竜ちゃんの顔を見て「無理をすれば女といってもごまかせるかもしれんな」だったんですけど、今回は「さまざまな経験をし、見聞を広めるのも大事」とか、まともなことをほざいていましたねw
まあ15万に目がくらんだと思えば、これも親父らしいですけど。
ていうか、15万で浜茶屋再建できるのかよw
最後、「運営委員長のおれにまかせてくれ!」というあたるには、「いつおまえが」運営委員長になったのだ?」というツッコミが入ったんですけど、それだとテンポがおかしくなるのかここではカットされてました。
まあ長い予告編といった感じではありましたが、次回はついにアニメ初の「本選」が見れそうです。
実は、旧アニメでは「予備選」だけで終わってしまったんですよ。5話分を30分に無理やり詰め込むくらいなら予選だけにしてムチャクチャやってやれみたいなノリでw
そのミス友引コンテストが40年の時を越えてようやく「本選」に向かうのかと思うと感慨深いですw
というわけで、次回はいよいよ2クール目ラスト、
「決戦!!友1クイーンコンテスト」
になります。
令和版うる星やつら第1期目の締めくくりとなりますね。
今秋から始まるであろう「第2期」を気持ちよく迎えるためにも、ぜひ有終の美を飾って欲しいと思います。
それでは、また来週!
●ヘビー仕様
ここではまず、「大ビン小ビン」問題についてもう一度おさらいしてみたいと思います。
(※人によっては、一部「最後のデート」のネタバレを含む内容になるかもしれません。)
詳しくは
新TVアニメ「うる星やつら」第13話のライト感想&第2クールタイトル答え合わせヘビー感想
https://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-500.html
こちらのヘビー仕様の後半から語っていますので、そちらをご覧いただきたいんですけど、
簡単にいうと、コミックス24巻収録の「最後のデート」以降の話は、あたるとラムの関係に「答え」が出た後だから今の時点でやるべきではないということです。
さらに言うなら、「君待てども…」をステップにして「君去りし後」からスタートしたうる星やつらという世界は「最後のデート」で“ゴール”を迎えるんですね。
コミックス26巻収録の「大ビン小ビン」は、まさに“ゴール”した後の話なんです。
さて、ではその“ゴール”とはいったい具体的にどういうことを指すんでしょう。
端的に言うと、ラムがあたるを好きな理由をちゃんと理解するんですよ。つまり、ギャグの一環としての鬼ごっこではなくなるんですね。
私はこれまで何度も、うる星やつらはラブコメではないギャグなんだと訴え続けてきました。
それは、そもそものことの始まりからして明白だとも言ってきました。
1話の「かけめぐる青春」の“オチ”から始まったラムとあたるの鬼ごっこは、最初から理不尽なギャグの元で始まっていますからね。そこに理由もドラマも存在しないんです。
やがて、当初のキャラ設定からあたるが外れていくにしたがって、ギャグのテイストも変わってきます。それにともない、当初のヒロインであったしのぶもその立ち位置を変えざるを得なくなります。
そしてラムという“侵略者”は、名実ともにうる星やつらの鬼神として君臨することになるわけです。
そういう流れを踏まえて、改めてラムとあたるの恋愛関係をスタートさせたのが例の「君待てども…」と「君去りし後」でした。
そこから二人の関係は少しずつ変わっていきます。令和版アニメではその辺をすっとばしているので今一つピンと来ないかもしれませんが、いくつかの「ラブ」回で段階を踏まえながら徐々に出会った頃とは明らかに心境の変化が見えてくるわけです。
とりわけ「愛は国境を越えて」(20巻PART5)では、あたるがラムへの想いをはっきりと自覚することになります。意地を張ることよりも、ラムとの交流や彼女を守ることを優先するような「男」になるんですね。
それは同時に、うる星やつらというギャグマンガが大きな転換期を迎えることでもありました。
そして、「最後のデート」(24巻PART2)。
ここでラムは、自分以外に向けられたあたるの「やさしさ」に触れることになります。そこで彼女は初めて自分が“ダーリン”を好きな理由をはっきりと認識するんですね。
それはすなわち、第1話からずっと続いていた、「ギャグとしての恋愛鬼ごっこ」の終焉を意味することでもありました。
つまり、ラムはあたるに追いついたんですよ。最初の鬼ごっこはここで終了しているんです。ひと足先に「愛は国境を越えて」で「男」になっていたあたるに続いて、彼女もまた「女」に変わったんです。
「ゴール」した後の二人は「男」と「女」になりました。それまでのただひたすらに追いかけ逃げ回るプリミティブな関係から、恋の駆け引きが生まれるんですね。
ただ恋愛ゲームとなると、いつだって女の方が一枚上手です。一方の男はいつだって純情で朴訥とした態度しか取れません。
結果として、それまでの鬼ごっことは打って変わって、あたるがラムを追いかけるような関係になっていくわけです。
つまり、ラムはあたるを追い越してしまったんですね。
そういった意味で、今回の「大ビン小ビン」は「ゴール」後の二人の関係がよくわかる、その典型的な話だといっていいでしょう。
もしかしたら、スタッフのその辺のことがわかっていてあえてこの話をチョイスしたのかもしれません。
この話の何が特徴的かといえば、とにかくラムの態度なんですよね。
原作ではびっくりするほど、彼女はほとんど笑顔を見せないんです。常に無感動か怒ってるかのどちらか。
一方のあたるがラムのことに関して事あるごとに一喜一憂するだけに、それはかなり異色に思えます。
小さくなってしまったことに対して、初期のラムならもっと素直にあたるに助けを求めるはずなんですよね。
本来彼女は良くも悪くも無邪気な性格なのですから。
ところが、すでに「女」として目覚めてしまった彼女は、嘘をついて優しくしてもらおうと画策するわけですよ。ここに「ゴール」後のラムの姿が見えるんですね。
屋根上での二人の言い争い。
あそこでラムは「もとに戻らないほうがいいってダーリンいったっちゃ!」と言い放ちました。
当然そんなセリフはあたるの本心ではないわけです。あれはハバネロをたっぷりふりかえたオカズを食べさせられた腹いせに思わず口走ってしまった、心にもない言葉なのですから。
でもラムはその辺の微妙な機微が理解できない。心の底ではラムのことを思っている彼の気持ちに、彼女は気づくことが出来ないんですね。
例えば布団で寝ている時に、あたるがラムをつぶさないように守ったことも彼女は知る由もないわけです。
むしろ、「君待てども…」の頃とは立場が逆転しているとも言えます。
まだ「君待てども…」と「君去りし後」でしか「ラブ回」をやっていない令和うる星で、今回の話をやることが果たしてどうなのかと言うことに対して、わたしはまだはっきりとしたことは言えません。初見の人にはその辺まったく気にならないかもしれませんからね。
ただ、私はどうしてもここに行きつくまではそれなりの段階を踏まえるべきなのではと考えてしまうわけです。
だからこそ、今回「微妙に調整」された部分がすごく気になるんですよね。ひょっとしてスタッフもその辺の問題を認識していての「調整」なのかなと思わないでもないんです。
ラムの言葉を受けて、「だからそれは!」というあたるの表情はそれまでとは打って変わって真剣そのものでした。
あれ、原作だと苦笑い的な表情を浮かべていたんですよね。
これはあたるがラムの本質をどこまで知ってるかにもよるかと思うんです。
原作ではすでにラムのそういう「わかっていない」ところをあたるは十分に知っていて、そんなラムもすでに受け止めている節があるんですよ。
でも、令和うる星のあたるはまだそこまで達観していないということでの描写なのかもしれないんです。
あたるが土下座してまで「頼んで」いるのに、「もうダーリンなんか信用できないっちゃ!」と言い放つラム。
この二人の温度差が、実は「大ビン小ビン」という話の肝なのかもしれません。
実は個人的な印象として、この時期になるとあたるの方がラムに惚れこんでいて、逆にラムは少し冷めているようにも感じるんですよね。
「君去りし後」あたりの頃のラムだったら、土下座してまでお願いするあたるを見てなにも感じないはずはないと思うんです。絶対になにかしら気持ちが動いてほだされるんじゃないかと。
まあ、それはラムが少しは大人になったということでもあるのかもしれませんが。
一方のあたるはそんなつれないラムにめげることもなく、また危険を省みずに高い屋根から飛びついてラムを捕まえるんですよね。
そこにはなんの迷いもためらいもないわけです。それはすなわち、彼が「ゴール」した後のあたるだからだと私は考えるわけです。
元に戻ったにもかかわらず、今だ状況がよくわからずきょとんとしているラム。
一方のあたるは体全体で喜びを表すかのようにラムの肩を叩き、手を握り、何度も揺さぶります。
そんな感情をあらわにするあたるを見ても、ラムはまったくの無感動。
個人的には、あの表情が抜け落ちている描写こそ一番見たかったラムだったので、あそこはよかったなあと思いましたね。
そう、「ゴール」以降のラブコメ回には、こういうある種ドライで冷めたテイストがあるんですよ。それはそれでまたいいものではあるんです。
ただ、それを「君去りし後」以降初のラブコメとして見せていいのかどうかはまだ判断できません。
で、オチ。
なんだかんだいっても、素直に鳥かごをかぶっているあたるこそ情に厚く、
それに対して、「閉じ込められた気分はどうだっちゃ!?」と言い放つラムこそ薄情とも言えます。
で、原作ではそのまま終わります。つまり、決して「いい話」のままで終わるわけではないんですね。
ところが。
今回のアニメではものすごい改変をしたんです。
なんとそんなあたるを見てラムは微笑むんです。しかも満面の笑みで!
つまりそれは、ラムは本当はあたるのそんな気持ちをわかっていて、あえて戯れとしてこんなことをやっているというニュアンスになるわけですよ。
原作だと、あくまで意地の悪いジト目であたるを見ているだけなんです。
最後の最後まで、彼女は笑顔を見せることはないんですね。それがここ「大ビン小ビン」の本質的なところだったんです。
私はこの改変はすごく大きいものと考えます。
それが良いか悪いかはまだ判断できませんが、とにかく原作とは全く違うテイストになったと断言できます。
なぜから「大ビン小ビン」という話は、あたるの必死な行動にラムがまったくといっていいほど反応を示さないというところに意味があるからなんです。
一方のあたるは基本的は原作とは変わっていません。あくまで描かれたのは「ゴール」以降のラムに本気になったあたるでした。
だが、ラムのほうはかなり実像が揺れています。
冷静にあたるを試そうとする行動をとる一方、中期までの(「最後のデート」以前)、あたるに言動に素直に喜ぶ彼女が時々顔を出すんですね。私はそこになんともちぐはぐな印象を持ちました。
いったいアニメスタッフは、どっちのあたるとラムを描こうとしていたのでしょうか?
このちぐはぐさはBパートの「愛がふれあうとき」にも波及します。
実はこの回は「愛は国境を越えて」からほとんど間をあけずに描かれた話なんですね。(20巻PART8)
ラムとあたるの関係が大きく変わった時期と重なるんです。
「愛がふれあうとき」は、ある意味、しのぶへの「はなむけ」的な意味合いもある話です。
つまり、途中でヒロインから降りてもらった彼女に対して、高橋留美子なりのお詫びの意味もあった話なんですね。
実は、高橋留美子はずっと「しのぶ」について負い目を感じていたようなんです。
これは色んなインタビューでも答えていることですが、彼女にも幸せになってもらわないとうる星を完結させられないとずっと悩まれていたそうなんですね。
まあそれが後の「扉シリーズ」というしのぶの相手役が登場する話が生まれるきっかけになったわけですけど、この「キツネシリーズ」もおそらく作者の「しのぶ」への愛情から生まれた話なんですよ。
あたるとラムが一緒になっていく中で、彼女にも「愛」を与えてあげたいという切実な思いがそこにはあったんです。
そういった意味で、朝登校してきたあたるとラムが、過剰にベタベタしていたのはなんだか違和感を覚えました。Aパートラストのあのラムの「笑顔」が悪い意味で影響しちゃってるのかなと。
割とドライなムードもある「ゴール」後の「大ビン小ビン」とのバランスを取って、変にラブ色を強めたとするなら本末転倒な気がしますね。
「愛がふれあうとき」は、あくまでしのぶの愛の物語であるべきなので。
でも、そんなラムとしのぶが、Cパートで仲良く登校しながら談笑していたシーンはよかったですね。
あそこはなんだかすごく救われたような気持ちになりました。
最終的に、ラムとあたるとしのぶの愛の物語はここに集約されたんだとw(我ながら何を言ってるのかよくわからんが…)
ところで、そのCパートである「ミス友引コンテスト」ですけど、実は旧アニメではかなりの問題作でもありました。
ライト仕様でも述べましたが、なんと予選だけで話が終わってしまっているんですよ。
予選での政治的な駆け引きが押井守節にあふれていたこともあって一部のファンには名作ともされていますが、世間的には消化不良な印象は否めない回でした。
おまけに作中でタブーとも言える描写を行って、原作者の高橋留美子に苦言を呈されることもありました。
以下、1984年11月発行の高橋留美子と平井和正の対談集「語り尽くせ恋愛時代」P168からの抜粋になります。
高橋 前に『うる星やつら』で「ミス友引コンテスト」というのがアニメになったことがあるんです。あれにはガーンという感じで…
平井 本当にムチャクチャやりましたね(笑)
高橋 あれはまさに開いた口がふさがらなかったです。それと細かい部分でぎょっとしたのは、キャラクターの踏み絵をさせているんですよね。これだけは踏むものじゃないよという感じでしたけど、そのへんの神経が私には理解できないなあと思いました。~(中略)~出来たらキャラクターはかわいがってほしいと思います。
対談がいつごろ行われたのかは、はっきりとした日時が記録にないので不明ですが、少なくとも旧アニメ版うる星やつらの「ミスコン」回である「ドキュメント・ミス友引は誰だ!?」が放映された1983年11月以降であることは間違いありません。
発行日からするとおそらく1984年の春から夏あたりにかけてからではないかと推測されます。
まだうる星やつらが連載中で、しかも同時期に「最後のデート」(コミックス24巻PART2/1984年8月22日売りのサンデー掲載)を執筆していた頃と考えると、この高橋留美子の言葉はなかなか感慨深いものがありますね。
彼女のキャラクターに対する深い愛情が伺えて、今でもすごく心に残る言葉です。
(なお、一応断っておきますが、高橋留美子は基本的にアニメ「うる星やつら」には好意的でした。そこははっきりさせておきます)
というわけで、次回はいよいよ2クール目ラスト、
「決戦!!友1クイーンコンテスト」
ですね。
前にも言った通り、実は個人的にはそこまで高い評価をしているシリーズではないのですが、それでも期待せざるを得ません。
制作スタッフの皆さんには、ぜひキャラクターたちへの愛が感じられる作品をお願いしたいと思います。
それでは、また来週!
(気が付けば過去最長記事になっていた…)
ブルーレイBOX第1巻が3月15日発売されました!豪華ブックレットも読み応えたっぷりの充実した内容になっています。
現在放映中の2クール目は第2巻にまとめて入る予定で、6月28日発売!
「大ビン小ビン」は26巻、「愛がふれあうとき」は20巻に収録されています!
BOXセットが4巻揃って発売中!
ぜひ、原作の深遠なギャグワールドを堪能してください!
新TVアニメ「うる星やつら」のOP/EDテーマ4曲とさらに新曲2曲を加えたCDが3月15日に発売!限定盤にはノンクレジットOP/ED2クール分を収録したBlu-rayが付きます。
3月1日に新TVアニメ「うる星やつら」オリジナルサウンドトラックが発売されました!曲タイトルが興味深いものが多いですね。「君待てども…」で流れたあの印象的な曲も入っています。
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