新TVアニメ「うる星やつら」第16話の今回も語っていますライト&ヘビーのハイブリッド感想
※このたび36年ぶりに新しくTVアニメ化された「うる星やつら」。自他共に認める高橋留美子主義者である私なりそこないが、これから毎週視聴した感想をざっくり語っていこうと思います。アニメの感想は慣れていないのであまり深堀はしません。基本原作ガチ勢ですw
(私の新アニメ「うる星やつら」への思いはこちらとこちらで。)
竜ちゃんがかわいかった。
今回はこれに尽きますかね。
なんかバカみたいな感想ですが、素直にまずそう感じました。
実際、ビジュアルというか作画も原作や旧アニメよりも若干美少女よりに描かれていたように見えましたが、それより全体的な描かれ方がもうかわいいなと思ったんですよね。
それこそ、5話のあたるじゃないですけど、
「竜ちゃんって、こんなにかわいかったのか……」って感じw
かといって、キャラを改変したわけではありません。
どちらかというと、本来の彼女の可愛さをより直感的にわかりやすく見せていたように思えました。
決してジェンダー的な配慮からそうしたわけではないということは、はっきり言っておきましょう。
そう、彼女は元々女の子としてかわいいんです。
点数としては、Aパート「激闘、父子鷹!!」が9.3点、Bパート「セーラー服よ、こんにちは!!」が9.1点ですね。微妙なさじ加減が特徴だったりしてw
千葉繁さんの親父はもちろん最高でしたが、竜之介役の高垣彩陽さんがムチャクチャはまり役でびっくりしました。本当に命が宿っているようで感動しましたね。
Aパートに関してはほぼ原作通りでしたし、まず文句ない出来でした。
ただ、Bパートに関しては最初少し複雑な思いで見ていましたね。
というのも、こちらは原作の「セーラー服よ、コンにちは!!」(15巻 PART2)に加えて、「蘭は女の香り=その1=」「蘭は女の香り=その2=」(15巻 PART4、5)を合わせたものになっていたんです。
つまり、実質3話分を再構成した内容になっていたんですよ。さらにテーマを「セーラー服」に統一したために、かなり感触の違うものになっていたんです。
これに関しては「原作」はむしろ邪魔だなと思いまして、極力頭を無の状態に近づける形で改めて見直してみました。
そうすることで、Aパートに負けていないくらいの面白さを発見することができた次第です。
というわけで、まずは「うる星やつら」第16話のライト仕様感想から始めましょうか!
●ライト仕様
いきなり遊泳禁止の看板から始まりましたが、あれは一応アニオリになるかな。
原作ではそれまでもあの4人で何回かにわたって海で遊んでいる話が続いていたんですよ。その“海シリーズ”の最後を飾る話として今回だったんですね。だからまあシーズン終わりなのも最初から納得ではあったんです。
ていうか、あんな看板見なくてもあの高波というか、荒れた海を見ればわかりそうなものですけどねw
そもそも最初から遊びに来る時期が間違ってるw
それにしても、あたるたちは泳ぐ気満々だったなw 浮輪や水中メガネまで用意してw
ラムなんかシュノーケルをつけてたぞw お前はそんなものつけなくても普通に潜れるだろw
あと、なんで面堂はサングラス?
しのぶがビーチボールを持っていたけど、ラムと一緒に遊ぶつもりだったんだろうかw
あの4人は本当に仲がいいですよね。一度、どういう流れで計画が決まるのか見てみたいw
竜之介の髪の色はダークブルーになっていましたね。原作や旧アニメでは普通に黒髪だったんですが、あえてクール系キャラのイメージなのが少し新鮮に映りました。
竜之介の親父が叫ぶたびに劇画調になるのは、おそらく元ネタが「巨人の星」だからでしょうか。(彼の子どもへの虐待めいた教育方針は星一徹のパロ的な意味もあるのだ)
さて、Aパート。
ラーメンどんぶりにサブタイトルが出るセンスはさすがでしたね。アバンからのつながりも見事。
一年中浜茶屋は今でも笑えるw
「鍋焼きうどんあり〼」はアニオリでしたけど、面白かったですね。一体誰があの状態で食べたいと思うのかw
「なんで男らしくならなきゃならねえんだ!俺は女だぞ」を原作通りに言ってくれたのは、すごくうれしかったです。
なんか、藤波竜之介の居場所はこの令和の時代でもちゃんとあったんだと思えたんですよね。
それと、アニオリとして「セーラー服とかすげえ憧れるぜ」というセリフだけが追加されていました。これはBパートへの布石なんでしょうね。
それにしても、殴り合いの時の「ばき」は本当うっとおしい。
セリフも聞きづらくなるし、テンポが狂うような気がするんですよね。間合いが崩れるというか。
今さら擬音を口で言うことに苦言を呈してもしょうがないですけど、せめてキャラのセリフに被るような使い方はやめて欲しいものです。
親父があたるたちを買収?したシーンでラムがイカ焼きを食べていましたね。実は彼女にはスルメ好きという裏設定(?)があるんですよw
浜茶屋でスルメはさすがにおかしいんで、イカ焼きなんでしょう。まあどうでもいいことですけどw
藤波親子のくろすかうんた~は「あしたのジョー」へのオマージュ。うる星では時々高橋留美子の劇画愛が伺えますが、ここもその一環ですね。
最後、鎖手錠で親子を縛り付けて喧嘩できないようにしていましたけど、あれは誰が用意したんでしょうね?まあギャグマンガにそれを問うのも野暮ってもんですがw
あそこでラムとあたるがなぜかサムズアップしてるんですよねw どういう意味だw
あれはアニオリですけど、地味に面白かったですw
俺は女だー!で締めるのもベタだけど好印象。ちゃんとキャラの立ち位置を分かっている感じですね。
あとは変な演出と言うか、効果音を口で言うのだけやめてくれれば…
今回は特に殴る掛け合いの時に多用していたんで、特に気になりましたね。
Bパート。
Aパートで浜茶屋が損壊してしまった藤波親子が友引高校の購買部に住み込みで引っ越してくる形ですね。
これまでの新キャラはいきなり友引町にやってくる形でしたが、彼らの場合、ワンクッション置いているのが特徴です。
それはさておき、ついに!令和うる星で「夏服」が初登場しましたね!
本当ようやくというか、なんでこの時期にと思わないでもないですが、とにかくまあよかったw
できれば6話くらいの段階でみたかったですけどね。
あたるとラムが腕を組んで仲良く?登校はアニオリかな。まあ仲がよろしいことでw
なお、原作では特に腕は組んでいません。
ただこれは、この後の「蘭は女の香り」で竜之介ランちゃんとあたるラムでダブルデートするエピが本来あるのですが、それを割愛したための救済(?)処置なのかもしれませんね。(そこではラムとあたるはしっかりおしゃれして腕を組んでいる)
竜之介親子のケンカの後に、あたるとラムがやり方があまりに過激だと親父を窘めるシーンがあったのですがここではカット。
その後の親父が発する一人前の男として育てるという教育方針うんたらというセリフが問題だったのかな。いずれにしてもBパートは実質3話分をまとめる必要があるので、いつも以上にテンポよく進める必要があったのでしょう。
その後、学校に着いて校門前で転入届を出したという話になりますが、原作では「男・女」のどちらに◯をつけたかという問いに親父は「男」と答えるんですよね。
そう、原作において竜之介は、「男」として友引高校の生徒になるんですよ。実はこの設定のために今のアニメではできない話がけっこうあるんです。
そういった意味でも、さすがにこれは当然のカットだったと言えるでしょう。
今回はその辺を曖昧にしつつ、「セーラー服」に焦点を定めて話を進めている感じなんですよね。これはいい判断だと思います。まあ、セーラー服が女の子の憧れというのも時代錯誤もいいところですがw
幼いころの竜之介が夢見たセーラー服の姿にランちゃんっぽい子がいるのはアニオリですね。
これが後半のランちゃんの話につながるわけです。
コースケの「なんだあいつは女装趣味か」というセリフも当然ながらカット。今見ると本当にこれはどうかと思うような言葉が当たり前のようにあるんで、台本チェックにも細心の注意を払ったんだろうなあと想像します。
面堂の夏の制服が絶妙にダサイw ゴルフウェアじゃないんだからw
その面堂たちが竜之介に夢中になるクラスの女子たちに危機感を感じる場面。
原作では「友引高校始まって以来の不健康な雰囲気」「正常な男女交際のありかたを取り戻さねば」という、これまたあまりにも時代錯誤なセリフが飛び交っていました。
さすがにこれはアウトでいいと思いますし、こういう視点は別に竜之介回の本質ではないので改変は当然でしょう。
まあ「このままだと俺たち見向きもされなくなるぞ」には、「竜之介関係なく、どうせお前らは見向きもされんだろw」とツッコみたくなりましたがw
ここでは面堂の危機感だけが唯一正しい図式というw
購買部で親父が「今さら竜之介を女にしてたまるか」と拒否するのもカット。
でも、面堂の「誠意をつくして父君を説得してきた」は笑いましたねw こいつ最低だw
竜之介が気持ちだけありがたく受け取っていつか実力で着てやると心に誓うシーンが、原作におけるオチでした。つるしたセーラー服に向かって勇ましく拳を振り上げて宣言するのがギャグになっていたんですね。
でも今回のアニメでは笑いではなく、竜之介の純粋な思いがストレートに描かれていました。
正直、私は感動してしまいましたよ。なんてけなげな子なんだろうと。
原作において、ドタバタの中に埋もれていた彼女の「女らしさ」が垣間見えたいいシーンだったと思います。
つるしたセーラー服を見つめながら「俺がセーラー服を着るには、まだ何か足りねえ気がするんだ」とつぶやくシーンはアニオリです。
ここから話は次の「蘭は女の香り」パートに移行するわけですが、すごく自然な流れに見えましたね。
二つの話を連結する上で、見事な構成になっていたのではないでしょうか。
何より、セーラー服を見つめる竜ちゃんの横顔が実に美しかった!
さて、後半の「蘭は女の香り」ですが、さすがに2話分をBパート半分で消化する分、かなり原作とは変えられていましたね。
まず、ランちゃんが2-4のクラスにやってくるのはアニオリです。
原作では購買部に消しゴムを買いに来た時に、親父に殴られて鼻血を出している竜之介にハンカチを貸してあげるんですね。竜ちゃんはその優しさとハンカチのいい匂いに心魅かれて、ランちゃんに興味を持つんです。
そして、ラムがそのハンカチを見てあれなんでランちゃんのを持ってるのと言う流れだったのですが、ここではあくまで「憧れのセーラー服」という趣旨に沿っての登場になっていましたね。
しかし、ランちゃんとラムは教科書とかを貸し借りする仲なのかw
特に嫌がらせのためでもなく、普通に借りていたようなんだがw まあ仲がいいのは何よりだけどw
ていうか、ランちゃん忘れ過ぎだろw ちゃんと教科書くらい用意しとけw
それにしても、原作でもそうでしたが、ラムはランちゃんを普通に「幼なじみ」と紹介していましたね。
それで誰ももう疑問にも思わないというw
ランちゃんにOKを貰った時の竜之介の笑顔は最高でしたね。
今回のベストシーンに挙げたいくらいに目を奪われたシーンでした。
そこからランちゃんと竜之介は放課後デートすることになるわけですが、原作では週末改めての休日デートだったんです。(もっとも竜ちゃんはデートとは思っていませんが)
今回のアニメではあくまで「セーラー服よ、こんにちは!!」の一環としてなので、こういう形にしたんでしょうね。「セーラー服」がポイントなのですから。
それはわかるんですけど、原作ファンとしては私服姿での彼らのデートも見たかった気がしますね。特に竜ちゃんはネクタイをしめてのスーツ姿が決まっていただけに…
なお、そのデートの話を聞きつけてあたるとラムも彼らを張り込むために出かけることになります。
つまり原作に於ける「蘭は女の香り」では、ダブルデートがキモになる話だったんですね。それがなくなったのは残念かな。
腕を組みながらおそろいのサスペンダー姿のあたるとラムはなかなかキュートだっただけにもったいないなという感じはします。
まあ先ほども触れましたが、たぶんそれをカットしたために朝登校時の腕組みを代わりに用意したんでしょうけど…
「女の子のことを教えてもらいてえんだ!」からの「こいつ意外とスケベやな」は最高w
こういう勘違いネタはランちゃんの十八番でもありますね。
ドットのような処理の演出もなかなか効果的だったと思います。
ランちゃんの真似をしながらせかせか食べる竜ちゃんがまた可愛かった!
仕草そのものじゃなくて、その心意気がすごくいじらしいというか、胸に来るものがありましたね。
あそこは原作にはなく、真似する前にあたるが邪魔してしまうのですが、今回のタイミングの方がはるかによかったと思います。竜之介のキャラがよく表れている、いいシーンでした。
その後、ラムはランちゃんに問い詰められるわけですが、あそこの言い訳は原作では「うちはダーリンとデートしてただけだっちゃ」になっていました。まあストーカーじみてはいましたが一応はデートっぽいことをやっていたわけですからねw
アニメでは放課後帰りですし特にデートというわけでもないので、「うちはダーリンについてきただけだっちゃ」と返していましたが、これだとなんだか腰ぎんちゃくみたいだなw
まあしかし、「読めたでラム」にハズレはないですねw もういつ聞いても笑えるw
最後、あたるがボートをぶつけて飛んでくるシーンは、原作だとラムが足元をつかんで彼だけ池にドボンと浸かる羽目になっていました。そこからぐぐぐとエビぞってラムたちが乗っているボードが浮き上がる感じでそのままオチだったんですね。ラムも必死で持ちこたえてw
ランちゃんは竜之介と抱き合ったままでラムに当てつける形で「しばらくこのままでいましょう」と言い、そんな彼女を見て竜之介は「わかんねえな~。女は複雑だぜ」とさらに謎を深める形でした。
つまり、竜之介もランちゃんも池に落ちたりずぶぬれにはなっていないんです。
そこをアニメではかなり改変していましたね。
ずぶぬれになったランちゃんがラムに対して激高してる姿を見て竜之介が「女の子って奥が深いなあ」としみじみ思い、そしていつかぜったいにセーラー服を着てやるんだと空に誓う。
すごくポジティブな形になっていて、見ていて心地よい締めでした。
原作の「蘭は女の香り」のエッセンスが失われていたのは残念でしたが、元々「セーラー服よ、コンにちは!!」がメインであって、蘭は女の香りはあくまでおまけとして一部採用したと考えれば実によく出来た構成だったと思います。
藤波竜之介というキャラの魅力を引き出すのに十分な内容になっていたのではないでしょうか。
なんといっても爽やかじゃないですか。
口は悪いし、すぐに手は出るし、おまけに一般常識にいささか欠けてはいるけれど、それでもすごくピュアな心の持主なんです。私は今回で彼女を再発見したような気持ちになりましたよ。
さて、15話の感想時で少し触れた今の時代に合わせての「最低限の修正」ですけど、本当にごく一部の調整だけでしたね。
いわゆる同性愛への偏見に満ちた否定的な言葉をいくつか言い換えたり省いたりしただけだったようです。
具体的には「女装趣味か?」とか「正常な男女交際のありかたを取り戻す」とかそういうやつですね。
あと、男として転入してきたという設定も、あえてぼかしていたようです。
心底安心しましたね。キャラクターの設定や性格はまったくいじられていないことに。
本質的なことが変えられていないのなら、ちょっとした言葉のあれこれなんて些細なことです。
竜之介やその親父のキャラはかつてのまま、輝いていました。
もうそれだけで私は満足です。
さて、次回は
「あこがれを胸に!!」「星に願いを」
ですね。
「あこがれを胸に!!」は竜之介としのぶがデートする話です。それだけならまあ微笑ましいだけなんですが、OPにもちょろっと出ていたあいつがねえ…まあそれは見てのお楽しみとしておきましょう。
「星に願いを」は割と地味めですが個人的にすごく好きな話ですね。ちょっと寓話的な感じもあって味のある話なんですけど、典型的なドタバタである「あこがれを胸に!!」との温度差が気になるかも。
正直、なんでこの組み合わせなのか謎ですね…
それでは、また来週!
ここからはヘビー仕様になります。
●ヘビー仕様
まず最初に告白しますと、当初、竜之介はあまり好きじゃありませんでした。
なんだトンちゃんのときと同じかと思われるかもしれませんが、それとは少し意味が違います。
キャラやギャグ自体は好きだったんですよ。
彼らの初登場回である「激闘、父子鷹!!」なんかは、初めて読んだときからすごく面白くて、お気に入りの話の一つだったんです。
問題は次の「セーラー服よ、コンにちは!!」でした。
私はあの親子を、てっきり一回限りのゲストキャラだと思い込んでいたんですね。
それが次の週でいきなり友引町に引っ越ししてきてレギュラー入りしたことにすごく違和感を覚えたんです。
そもそも「激闘、父子鷹!!」は夏シリーズの最後を飾る回でした。
うる星やつらは毎年季節回というのがあり、夏は必ず何週かにわたって「海シリーズ」があります。
竜之介親子の話は、その中での一つというのが当時の私の認識でした。
藤波親子のあのキャラや設定はゲストなら許容できたんですよ。
それまでも所々でわけのわからない人たちに出会って騒動が起こる話はたくさんありましたからね。
でもレギュラーとなるとわけが違います。
宇宙人でも妖怪でもない、まったく普通の人間がうる星やつらというこのシュールで変な世界の住人になるというのは、これまでの世界観が崩れるような気がしたんですね。
私の中では、うる星やつらはあくまで「奇想天外なSFファンタジーギャグ」だったんです。
しのぶは元々のヒロインだから外すとして、地球上の人間がレギュラーになるのには常軌を逸した付加要素が必要だと当時の私は考えていました。
面堂のように桁外れの金持ちで私設警察まで持っているとか、チェリーやサクラさんのように霊能力者の力を持っているとか。彼らは言ってみれば、その存在自体がもうファンタジーなんですね。
そして、トンちゃんや了子の狂気にはリアリティがありません。ボールを食べたり吐いたり、実の兄をいたずらとしてセメント攻めするのはあまりに荒唐無稽でしょう。
だからこそ、うる星やつらの世界で思いっきり暴れられるのです。彼らの病理はシャレで済むんですね。
でも、竜之介とその親父が抱えるものにはシャレにならない部分があります。
たとえば戸籍はどうなっているのかとか、生理はどうしてるとか、気にし出すとギャグで済ませられない深刻な問題がそこには横たわっていると思うんですよ。
なんていうか、生々しさがあるんですよね。彼らの異常性は決してファンタジーではなく、我々と地続きなんです。
藤波竜之介の問題はいわゆるLGBTとは違うものだと、私は考えています。
なぜなら、彼の「性自認」はあくまで女性だから。
彼は体と心が一致しているんです。
自分の胸のふくらみに違和感があるわけでもないし、あくまで彼は「女」であることを認めてもらいたいだけなんです。つまり、「トランスジェンダー」ではないんですね。
彼らが抱えているもので本当にシャレにならないのは、児童虐待の問題でしょう。
竜之介は自分の性を否定され、親が望む性を押し付けられているのですからね。
さらにはお金や洋服まで満足に与えられていないんです。
正しい教育でさえ受けさせてもらえず、親の押し付けた間違った知識を今でも信じている姿は、決してシャレで済ましてはならない深刻な問題でしょう。
竜之介の親父の奇行というか狂気には、理由があります。
そしてそれは、極めて現実的な問題でもあります。
家業を継がせるため、自分の夢を子供に託すため、もしくは妻の面影を娘に見てしまうのが辛くてその女性性を否定してしまう。
本来ギャグマンガであるうる星で扱うべき問題ではないような気がしてなりませんでした。
これは高橋留美子自身がいろんなインタビューで応えていることですが、もともと竜之介はネタがすっからかんになった時期に苦し紛れに登場させたキャラでした。
そして、彼女のお陰でうる星やつらの寿命は延びたとも言っています。
当時はまったくそんな風には思っていませんでしたが、今ならわかります。
竜之介登場直前辺りでは、クラマやトンちゃんなど脈絡もなく初期のキャラが復活したりしていましたからね。
それはネタが尽きてしまった上でのことだったんです。
そういったこともあり、竜之介は高橋留美子の中で非常に大きな存在になります。
彼が登場してからおよそ3か月くらい、ずっと「竜之介シリーズ」が続いたのもその証左でしょう。
コミックス15巻はすべて竜之介回といってもいいくらいですね。
彼がレギュラーになってからしばらくは困惑が続きました。
それまでのうる星とは明らかにテイストが変わりましたから。
暴力ギャグが増え、ネタもどぎつい感じのものが目立つようになるんです。
今でも原作ファンの中では、竜之介以降のうる星を否定的に見る向きが一部あるくらいですね。
そんな中、「努力、女の道!!」(15巻 PART6)という回が私に強烈な印象を残します。
そこでは、竜之介が親父に
「女なのによ!こんな風に育てやがって…」「女にも戻れねえ!男にもなれねえ!おれの一生はムチャクチャだ!」と訴えながら、ぽろっと涙を流すシーンがあったんです。
これは特にシリアスな場面でもなく、むしろギャグっぽい雰囲気の中で繰り広げられるものなのですが、当時私の心を大きく揺さぶるには十分でした。
なぜか竜之介がすごくけなげに思えたんですね。初めて、ああこいついいキャラだなと感じたんです。
そこから少しずつ、「新しいうる星」に慣れていった覚えがあります。
竜之介はうる星やつらに、我々の世界と繋がっているささやかな「日常」を持ち込んでくれました。
決して笑い事では済まないような残酷な悲劇や人の弱さを笑いのオブラートに包んで。
彼が登場してから、ラムとしのぶがより仲良くなっていったように思います。
一緒に竜之介に女らしさを教えようとしたり、親父の行き過ぎを窘めたり、彼らを通じて二人の仲はそれまで以上にわだがまりがなくなっていきます。
それはあたるとラムも同様です。
彼らは竜之介親子の問題に接していく中で、だんだんと日常の中で一緒にいるのが当たり前のような雰囲気になっていきます。
そうやって、うる星やつらは徐々に「安定期」を迎えるのです。
竜之介が抱えている問題は決して軽いものではありません。
本当にギャグマンガの中で笑って済ませるだけではいかないものが確かにあるんです。
でも、逆にだからこそ、うる星に新風を吹き込むことができました。
キャラの関係性も良好になり、ラムやあたる、しのぶや面堂が竜之介親子の問題をあれこれ世話を焼く姿は彼らにキャラとしての厚みを与え、ギャグの幅も広がっていきます。
まさに高橋留美子が言うように、うる星やつらは竜之介に助けられたんです。
今では竜之介は私の大好きなキャラの一人になりました。
彼女のその人間性や優しさは間違いなくうる星やつらをもう一つ上の段階に引っ張ってくれましたし、次の「らんま1/2」への架け橋にもなってくれたのですから。
今回では語られていませんが、竜之介の母親の話は是非やってほしいですね。
「想い出ボロボロ!?」「想い出のアルバム」(17巻 PART8、9)、「岩石の母;前編」「岩石の母;後編」(19巻 PART3、4)、「妻は面影の中に」(24巻 PART06)、そして「おとなの恋の物語;前編」「おとなの恋の物語;後編」(30巻 PART3、4)。
どれも名作です。バイオレンスでアナーキーな殺伐さが目立つ藤波親子の回の中で、これらはすごくヒューマンな匂いがするんですよね。
全部とは言いませんが、是非3クール目以降で取り上げてくれることを願わずにはいられません。
さて、次回は
「あこがれを胸に!!」「星に願いを」
とのこと。
「あこがれを胸に!!」はライト仕様でも述べた通り、竜之介としのぶの話なのですが、正直かなりエグい内容なんですよね…今回と照らし合わせても、アウトなセリフも多いですし、とても原作通りやれるとは思えません。まあ2話に渡る話をAパートにまとめるわけですから、うまいこと調整してくれることでしょう!
「星に願いを」はあまり取りざたされることのない話ですが、地味に名作だと思っています。諸星家の食卓という限定された舞台で繰り広げられる各キャラの思惑が交錯する攻防戦は、ある意味落語的な面白さがありますね。あたる母が大活躍(?)するはずなので、期待しておいてくださいw
それでは、また来週!
(俺ってこんなに竜之介が好きだったんだと、自分で自分に驚いています…)
ブルーレイBOX第1巻は3月15日発売!
現在放映中の2クール目は第2巻にまとめて入る予定で、6月28日発売です!
「激闘、父子鷹!!」「セーラー服よ、こんにちは!!」は共に15巻に収録されています!
BOXセットが4巻揃って発売中!
これだけでうる星やつらのすべてが手に入ります!
新TVアニメ「うる星やつら」のOP/EDテーマ4曲とさらに新曲2曲を加えたCDが3月15日に発売!限定盤にはノンクレジットOP/ED2クール分を収録したBlu-rayが付きます。
3月1日に新TVアニメ「うる星やつら」オリジナルサウンドトラックが発売決定!全 92 曲収録とのことです。
(私の新アニメ「うる星やつら」への思いはこちらとこちらで。)
竜ちゃんがかわいかった。
今回はこれに尽きますかね。
なんかバカみたいな感想ですが、素直にまずそう感じました。
実際、ビジュアルというか作画も原作や旧アニメよりも若干美少女よりに描かれていたように見えましたが、それより全体的な描かれ方がもうかわいいなと思ったんですよね。
それこそ、5話のあたるじゃないですけど、
「竜ちゃんって、こんなにかわいかったのか……」って感じw
かといって、キャラを改変したわけではありません。
どちらかというと、本来の彼女の可愛さをより直感的にわかりやすく見せていたように思えました。
決してジェンダー的な配慮からそうしたわけではないということは、はっきり言っておきましょう。
そう、彼女は元々女の子としてかわいいんです。
点数としては、Aパート「激闘、父子鷹!!」が9.3点、Bパート「セーラー服よ、こんにちは!!」が9.1点ですね。微妙なさじ加減が特徴だったりしてw
千葉繁さんの親父はもちろん最高でしたが、竜之介役の高垣彩陽さんがムチャクチャはまり役でびっくりしました。本当に命が宿っているようで感動しましたね。
Aパートに関してはほぼ原作通りでしたし、まず文句ない出来でした。
ただ、Bパートに関しては最初少し複雑な思いで見ていましたね。
というのも、こちらは原作の「セーラー服よ、コンにちは!!」(15巻 PART2)に加えて、「蘭は女の香り=その1=」「蘭は女の香り=その2=」(15巻 PART4、5)を合わせたものになっていたんです。
つまり、実質3話分を再構成した内容になっていたんですよ。さらにテーマを「セーラー服」に統一したために、かなり感触の違うものになっていたんです。
これに関しては「原作」はむしろ邪魔だなと思いまして、極力頭を無の状態に近づける形で改めて見直してみました。
そうすることで、Aパートに負けていないくらいの面白さを発見することができた次第です。
というわけで、まずは「うる星やつら」第16話のライト仕様感想から始めましょうか!
●ライト仕様
いきなり遊泳禁止の看板から始まりましたが、あれは一応アニオリになるかな。
原作ではそれまでもあの4人で何回かにわたって海で遊んでいる話が続いていたんですよ。その“海シリーズ”の最後を飾る話として今回だったんですね。だからまあシーズン終わりなのも最初から納得ではあったんです。
ていうか、あんな看板見なくてもあの高波というか、荒れた海を見ればわかりそうなものですけどねw
そもそも最初から遊びに来る時期が間違ってるw
それにしても、あたるたちは泳ぐ気満々だったなw 浮輪や水中メガネまで用意してw
ラムなんかシュノーケルをつけてたぞw お前はそんなものつけなくても普通に潜れるだろw
あと、なんで面堂はサングラス?
しのぶがビーチボールを持っていたけど、ラムと一緒に遊ぶつもりだったんだろうかw
あの4人は本当に仲がいいですよね。一度、どういう流れで計画が決まるのか見てみたいw
竜之介の髪の色はダークブルーになっていましたね。原作や旧アニメでは普通に黒髪だったんですが、あえてクール系キャラのイメージなのが少し新鮮に映りました。
竜之介の親父が叫ぶたびに劇画調になるのは、おそらく元ネタが「巨人の星」だからでしょうか。(彼の子どもへの虐待めいた教育方針は星一徹のパロ的な意味もあるのだ)
さて、Aパート。
ラーメンどんぶりにサブタイトルが出るセンスはさすがでしたね。アバンからのつながりも見事。
一年中浜茶屋は今でも笑えるw
「鍋焼きうどんあり〼」はアニオリでしたけど、面白かったですね。一体誰があの状態で食べたいと思うのかw
「なんで男らしくならなきゃならねえんだ!俺は女だぞ」を原作通りに言ってくれたのは、すごくうれしかったです。
なんか、藤波竜之介の居場所はこの令和の時代でもちゃんとあったんだと思えたんですよね。
それと、アニオリとして「セーラー服とかすげえ憧れるぜ」というセリフだけが追加されていました。これはBパートへの布石なんでしょうね。
それにしても、殴り合いの時の「ばき」は本当うっとおしい。
セリフも聞きづらくなるし、テンポが狂うような気がするんですよね。間合いが崩れるというか。
今さら擬音を口で言うことに苦言を呈してもしょうがないですけど、せめてキャラのセリフに被るような使い方はやめて欲しいものです。
親父があたるたちを買収?したシーンでラムがイカ焼きを食べていましたね。実は彼女にはスルメ好きという裏設定(?)があるんですよw
浜茶屋でスルメはさすがにおかしいんで、イカ焼きなんでしょう。まあどうでもいいことですけどw
藤波親子のくろすかうんた~は「あしたのジョー」へのオマージュ。うる星では時々高橋留美子の劇画愛が伺えますが、ここもその一環ですね。
最後、鎖手錠で親子を縛り付けて喧嘩できないようにしていましたけど、あれは誰が用意したんでしょうね?まあギャグマンガにそれを問うのも野暮ってもんですがw
あそこでラムとあたるがなぜかサムズアップしてるんですよねw どういう意味だw
あれはアニオリですけど、地味に面白かったですw
俺は女だー!で締めるのもベタだけど好印象。ちゃんとキャラの立ち位置を分かっている感じですね。
あとは変な演出と言うか、効果音を口で言うのだけやめてくれれば…
今回は特に殴る掛け合いの時に多用していたんで、特に気になりましたね。
Bパート。
Aパートで浜茶屋が損壊してしまった藤波親子が友引高校の購買部に住み込みで引っ越してくる形ですね。
これまでの新キャラはいきなり友引町にやってくる形でしたが、彼らの場合、ワンクッション置いているのが特徴です。
それはさておき、ついに!令和うる星で「夏服」が初登場しましたね!
本当ようやくというか、なんでこの時期にと思わないでもないですが、とにかくまあよかったw
できれば6話くらいの段階でみたかったですけどね。
あたるとラムが腕を組んで仲良く?登校はアニオリかな。まあ仲がよろしいことでw
なお、原作では特に腕は組んでいません。
ただこれは、この後の「蘭は女の香り」で竜之介ランちゃんとあたるラムでダブルデートするエピが本来あるのですが、それを割愛したための救済(?)処置なのかもしれませんね。(そこではラムとあたるはしっかりおしゃれして腕を組んでいる)
竜之介親子のケンカの後に、あたるとラムがやり方があまりに過激だと親父を窘めるシーンがあったのですがここではカット。
その後の親父が発する一人前の男として育てるという教育方針うんたらというセリフが問題だったのかな。いずれにしてもBパートは実質3話分をまとめる必要があるので、いつも以上にテンポよく進める必要があったのでしょう。
その後、学校に着いて校門前で転入届を出したという話になりますが、原作では「男・女」のどちらに◯をつけたかという問いに親父は「男」と答えるんですよね。
そう、原作において竜之介は、「男」として友引高校の生徒になるんですよ。実はこの設定のために今のアニメではできない話がけっこうあるんです。
そういった意味でも、さすがにこれは当然のカットだったと言えるでしょう。
今回はその辺を曖昧にしつつ、「セーラー服」に焦点を定めて話を進めている感じなんですよね。これはいい判断だと思います。まあ、セーラー服が女の子の憧れというのも時代錯誤もいいところですがw
幼いころの竜之介が夢見たセーラー服の姿にランちゃんっぽい子がいるのはアニオリですね。
これが後半のランちゃんの話につながるわけです。
コースケの「なんだあいつは女装趣味か」というセリフも当然ながらカット。今見ると本当にこれはどうかと思うような言葉が当たり前のようにあるんで、台本チェックにも細心の注意を払ったんだろうなあと想像します。
面堂の夏の制服が絶妙にダサイw ゴルフウェアじゃないんだからw
その面堂たちが竜之介に夢中になるクラスの女子たちに危機感を感じる場面。
原作では「友引高校始まって以来の不健康な雰囲気」「正常な男女交際のありかたを取り戻さねば」という、これまたあまりにも時代錯誤なセリフが飛び交っていました。
さすがにこれはアウトでいいと思いますし、こういう視点は別に竜之介回の本質ではないので改変は当然でしょう。
まあ「このままだと俺たち見向きもされなくなるぞ」には、「竜之介関係なく、どうせお前らは見向きもされんだろw」とツッコみたくなりましたがw
ここでは面堂の危機感だけが唯一正しい図式というw
購買部で親父が「今さら竜之介を女にしてたまるか」と拒否するのもカット。
でも、面堂の「誠意をつくして父君を説得してきた」は笑いましたねw こいつ最低だw
竜之介が気持ちだけありがたく受け取っていつか実力で着てやると心に誓うシーンが、原作におけるオチでした。つるしたセーラー服に向かって勇ましく拳を振り上げて宣言するのがギャグになっていたんですね。
でも今回のアニメでは笑いではなく、竜之介の純粋な思いがストレートに描かれていました。
正直、私は感動してしまいましたよ。なんてけなげな子なんだろうと。
原作において、ドタバタの中に埋もれていた彼女の「女らしさ」が垣間見えたいいシーンだったと思います。
つるしたセーラー服を見つめながら「俺がセーラー服を着るには、まだ何か足りねえ気がするんだ」とつぶやくシーンはアニオリです。
ここから話は次の「蘭は女の香り」パートに移行するわけですが、すごく自然な流れに見えましたね。
二つの話を連結する上で、見事な構成になっていたのではないでしょうか。
何より、セーラー服を見つめる竜ちゃんの横顔が実に美しかった!
さて、後半の「蘭は女の香り」ですが、さすがに2話分をBパート半分で消化する分、かなり原作とは変えられていましたね。
まず、ランちゃんが2-4のクラスにやってくるのはアニオリです。
原作では購買部に消しゴムを買いに来た時に、親父に殴られて鼻血を出している竜之介にハンカチを貸してあげるんですね。竜ちゃんはその優しさとハンカチのいい匂いに心魅かれて、ランちゃんに興味を持つんです。
そして、ラムがそのハンカチを見てあれなんでランちゃんのを持ってるのと言う流れだったのですが、ここではあくまで「憧れのセーラー服」という趣旨に沿っての登場になっていましたね。
しかし、ランちゃんとラムは教科書とかを貸し借りする仲なのかw
特に嫌がらせのためでもなく、普通に借りていたようなんだがw まあ仲がいいのは何よりだけどw
ていうか、ランちゃん忘れ過ぎだろw ちゃんと教科書くらい用意しとけw
それにしても、原作でもそうでしたが、ラムはランちゃんを普通に「幼なじみ」と紹介していましたね。
それで誰ももう疑問にも思わないというw
ランちゃんにOKを貰った時の竜之介の笑顔は最高でしたね。
今回のベストシーンに挙げたいくらいに目を奪われたシーンでした。
そこからランちゃんと竜之介は放課後デートすることになるわけですが、原作では週末改めての休日デートだったんです。(もっとも竜ちゃんはデートとは思っていませんが)
今回のアニメではあくまで「セーラー服よ、こんにちは!!」の一環としてなので、こういう形にしたんでしょうね。「セーラー服」がポイントなのですから。
それはわかるんですけど、原作ファンとしては私服姿での彼らのデートも見たかった気がしますね。特に竜ちゃんはネクタイをしめてのスーツ姿が決まっていただけに…
なお、そのデートの話を聞きつけてあたるとラムも彼らを張り込むために出かけることになります。
つまり原作に於ける「蘭は女の香り」では、ダブルデートがキモになる話だったんですね。それがなくなったのは残念かな。
腕を組みながらおそろいのサスペンダー姿のあたるとラムはなかなかキュートだっただけにもったいないなという感じはします。
まあ先ほども触れましたが、たぶんそれをカットしたために朝登校時の腕組みを代わりに用意したんでしょうけど…
「女の子のことを教えてもらいてえんだ!」からの「こいつ意外とスケベやな」は最高w
こういう勘違いネタはランちゃんの十八番でもありますね。
ドットのような処理の演出もなかなか効果的だったと思います。
ランちゃんの真似をしながらせかせか食べる竜ちゃんがまた可愛かった!
仕草そのものじゃなくて、その心意気がすごくいじらしいというか、胸に来るものがありましたね。
あそこは原作にはなく、真似する前にあたるが邪魔してしまうのですが、今回のタイミングの方がはるかによかったと思います。竜之介のキャラがよく表れている、いいシーンでした。
その後、ラムはランちゃんに問い詰められるわけですが、あそこの言い訳は原作では「うちはダーリンとデートしてただけだっちゃ」になっていました。まあストーカーじみてはいましたが一応はデートっぽいことをやっていたわけですからねw
アニメでは放課後帰りですし特にデートというわけでもないので、「うちはダーリンについてきただけだっちゃ」と返していましたが、これだとなんだか腰ぎんちゃくみたいだなw
まあしかし、「読めたでラム」にハズレはないですねw もういつ聞いても笑えるw
最後、あたるがボートをぶつけて飛んでくるシーンは、原作だとラムが足元をつかんで彼だけ池にドボンと浸かる羽目になっていました。そこからぐぐぐとエビぞってラムたちが乗っているボードが浮き上がる感じでそのままオチだったんですね。ラムも必死で持ちこたえてw
ランちゃんは竜之介と抱き合ったままでラムに当てつける形で「しばらくこのままでいましょう」と言い、そんな彼女を見て竜之介は「わかんねえな~。女は複雑だぜ」とさらに謎を深める形でした。
つまり、竜之介もランちゃんも池に落ちたりずぶぬれにはなっていないんです。
そこをアニメではかなり改変していましたね。
ずぶぬれになったランちゃんがラムに対して激高してる姿を見て竜之介が「女の子って奥が深いなあ」としみじみ思い、そしていつかぜったいにセーラー服を着てやるんだと空に誓う。
すごくポジティブな形になっていて、見ていて心地よい締めでした。
原作の「蘭は女の香り」のエッセンスが失われていたのは残念でしたが、元々「セーラー服よ、コンにちは!!」がメインであって、蘭は女の香りはあくまでおまけとして一部採用したと考えれば実によく出来た構成だったと思います。
藤波竜之介というキャラの魅力を引き出すのに十分な内容になっていたのではないでしょうか。
なんといっても爽やかじゃないですか。
口は悪いし、すぐに手は出るし、おまけに一般常識にいささか欠けてはいるけれど、それでもすごくピュアな心の持主なんです。私は今回で彼女を再発見したような気持ちになりましたよ。
さて、15話の感想時で少し触れた今の時代に合わせての「最低限の修正」ですけど、本当にごく一部の調整だけでしたね。
いわゆる同性愛への偏見に満ちた否定的な言葉をいくつか言い換えたり省いたりしただけだったようです。
具体的には「女装趣味か?」とか「正常な男女交際のありかたを取り戻す」とかそういうやつですね。
あと、男として転入してきたという設定も、あえてぼかしていたようです。
心底安心しましたね。キャラクターの設定や性格はまったくいじられていないことに。
本質的なことが変えられていないのなら、ちょっとした言葉のあれこれなんて些細なことです。
竜之介やその親父のキャラはかつてのまま、輝いていました。
もうそれだけで私は満足です。
さて、次回は
「あこがれを胸に!!」「星に願いを」
ですね。
「あこがれを胸に!!」は竜之介としのぶがデートする話です。それだけならまあ微笑ましいだけなんですが、OPにもちょろっと出ていたあいつがねえ…まあそれは見てのお楽しみとしておきましょう。
「星に願いを」は割と地味めですが個人的にすごく好きな話ですね。ちょっと寓話的な感じもあって味のある話なんですけど、典型的なドタバタである「あこがれを胸に!!」との温度差が気になるかも。
正直、なんでこの組み合わせなのか謎ですね…
それでは、また来週!
ここからはヘビー仕様になります。
●ヘビー仕様
まず最初に告白しますと、当初、竜之介はあまり好きじゃありませんでした。
なんだトンちゃんのときと同じかと思われるかもしれませんが、それとは少し意味が違います。
キャラやギャグ自体は好きだったんですよ。
彼らの初登場回である「激闘、父子鷹!!」なんかは、初めて読んだときからすごく面白くて、お気に入りの話の一つだったんです。
問題は次の「セーラー服よ、コンにちは!!」でした。
私はあの親子を、てっきり一回限りのゲストキャラだと思い込んでいたんですね。
それが次の週でいきなり友引町に引っ越ししてきてレギュラー入りしたことにすごく違和感を覚えたんです。
そもそも「激闘、父子鷹!!」は夏シリーズの最後を飾る回でした。
うる星やつらは毎年季節回というのがあり、夏は必ず何週かにわたって「海シリーズ」があります。
竜之介親子の話は、その中での一つというのが当時の私の認識でした。
藤波親子のあのキャラや設定はゲストなら許容できたんですよ。
それまでも所々でわけのわからない人たちに出会って騒動が起こる話はたくさんありましたからね。
でもレギュラーとなるとわけが違います。
宇宙人でも妖怪でもない、まったく普通の人間がうる星やつらというこのシュールで変な世界の住人になるというのは、これまでの世界観が崩れるような気がしたんですね。
私の中では、うる星やつらはあくまで「奇想天外なSFファンタジーギャグ」だったんです。
しのぶは元々のヒロインだから外すとして、地球上の人間がレギュラーになるのには常軌を逸した付加要素が必要だと当時の私は考えていました。
面堂のように桁外れの金持ちで私設警察まで持っているとか、チェリーやサクラさんのように霊能力者の力を持っているとか。彼らは言ってみれば、その存在自体がもうファンタジーなんですね。
そして、トンちゃんや了子の狂気にはリアリティがありません。ボールを食べたり吐いたり、実の兄をいたずらとしてセメント攻めするのはあまりに荒唐無稽でしょう。
だからこそ、うる星やつらの世界で思いっきり暴れられるのです。彼らの病理はシャレで済むんですね。
でも、竜之介とその親父が抱えるものにはシャレにならない部分があります。
たとえば戸籍はどうなっているのかとか、生理はどうしてるとか、気にし出すとギャグで済ませられない深刻な問題がそこには横たわっていると思うんですよ。
なんていうか、生々しさがあるんですよね。彼らの異常性は決してファンタジーではなく、我々と地続きなんです。
藤波竜之介の問題はいわゆるLGBTとは違うものだと、私は考えています。
なぜなら、彼の「性自認」はあくまで女性だから。
彼は体と心が一致しているんです。
自分の胸のふくらみに違和感があるわけでもないし、あくまで彼は「女」であることを認めてもらいたいだけなんです。つまり、「トランスジェンダー」ではないんですね。
彼らが抱えているもので本当にシャレにならないのは、児童虐待の問題でしょう。
竜之介は自分の性を否定され、親が望む性を押し付けられているのですからね。
さらにはお金や洋服まで満足に与えられていないんです。
正しい教育でさえ受けさせてもらえず、親の押し付けた間違った知識を今でも信じている姿は、決してシャレで済ましてはならない深刻な問題でしょう。
竜之介の親父の奇行というか狂気には、理由があります。
そしてそれは、極めて現実的な問題でもあります。
家業を継がせるため、自分の夢を子供に託すため、もしくは妻の面影を娘に見てしまうのが辛くてその女性性を否定してしまう。
本来ギャグマンガであるうる星で扱うべき問題ではないような気がしてなりませんでした。
これは高橋留美子自身がいろんなインタビューで応えていることですが、もともと竜之介はネタがすっからかんになった時期に苦し紛れに登場させたキャラでした。
そして、彼女のお陰でうる星やつらの寿命は延びたとも言っています。
当時はまったくそんな風には思っていませんでしたが、今ならわかります。
竜之介登場直前辺りでは、クラマやトンちゃんなど脈絡もなく初期のキャラが復活したりしていましたからね。
それはネタが尽きてしまった上でのことだったんです。
そういったこともあり、竜之介は高橋留美子の中で非常に大きな存在になります。
彼が登場してからおよそ3か月くらい、ずっと「竜之介シリーズ」が続いたのもその証左でしょう。
コミックス15巻はすべて竜之介回といってもいいくらいですね。
彼がレギュラーになってからしばらくは困惑が続きました。
それまでのうる星とは明らかにテイストが変わりましたから。
暴力ギャグが増え、ネタもどぎつい感じのものが目立つようになるんです。
今でも原作ファンの中では、竜之介以降のうる星を否定的に見る向きが一部あるくらいですね。
そんな中、「努力、女の道!!」(15巻 PART6)という回が私に強烈な印象を残します。
そこでは、竜之介が親父に
「女なのによ!こんな風に育てやがって…」「女にも戻れねえ!男にもなれねえ!おれの一生はムチャクチャだ!」と訴えながら、ぽろっと涙を流すシーンがあったんです。
これは特にシリアスな場面でもなく、むしろギャグっぽい雰囲気の中で繰り広げられるものなのですが、当時私の心を大きく揺さぶるには十分でした。
なぜか竜之介がすごくけなげに思えたんですね。初めて、ああこいついいキャラだなと感じたんです。
そこから少しずつ、「新しいうる星」に慣れていった覚えがあります。
竜之介はうる星やつらに、我々の世界と繋がっているささやかな「日常」を持ち込んでくれました。
決して笑い事では済まないような残酷な悲劇や人の弱さを笑いのオブラートに包んで。
彼が登場してから、ラムとしのぶがより仲良くなっていったように思います。
一緒に竜之介に女らしさを教えようとしたり、親父の行き過ぎを窘めたり、彼らを通じて二人の仲はそれまで以上にわだがまりがなくなっていきます。
それはあたるとラムも同様です。
彼らは竜之介親子の問題に接していく中で、だんだんと日常の中で一緒にいるのが当たり前のような雰囲気になっていきます。
そうやって、うる星やつらは徐々に「安定期」を迎えるのです。
竜之介が抱えている問題は決して軽いものではありません。
本当にギャグマンガの中で笑って済ませるだけではいかないものが確かにあるんです。
でも、逆にだからこそ、うる星に新風を吹き込むことができました。
キャラの関係性も良好になり、ラムやあたる、しのぶや面堂が竜之介親子の問題をあれこれ世話を焼く姿は彼らにキャラとしての厚みを与え、ギャグの幅も広がっていきます。
まさに高橋留美子が言うように、うる星やつらは竜之介に助けられたんです。
今では竜之介は私の大好きなキャラの一人になりました。
彼女のその人間性や優しさは間違いなくうる星やつらをもう一つ上の段階に引っ張ってくれましたし、次の「らんま1/2」への架け橋にもなってくれたのですから。
今回では語られていませんが、竜之介の母親の話は是非やってほしいですね。
「想い出ボロボロ!?」「想い出のアルバム」(17巻 PART8、9)、「岩石の母;前編」「岩石の母;後編」(19巻 PART3、4)、「妻は面影の中に」(24巻 PART06)、そして「おとなの恋の物語;前編」「おとなの恋の物語;後編」(30巻 PART3、4)。
どれも名作です。バイオレンスでアナーキーな殺伐さが目立つ藤波親子の回の中で、これらはすごくヒューマンな匂いがするんですよね。
全部とは言いませんが、是非3クール目以降で取り上げてくれることを願わずにはいられません。
さて、次回は
「あこがれを胸に!!」「星に願いを」
とのこと。
「あこがれを胸に!!」はライト仕様でも述べた通り、竜之介としのぶの話なのですが、正直かなりエグい内容なんですよね…今回と照らし合わせても、アウトなセリフも多いですし、とても原作通りやれるとは思えません。まあ2話に渡る話をAパートにまとめるわけですから、うまいこと調整してくれることでしょう!
「星に願いを」はあまり取りざたされることのない話ですが、地味に名作だと思っています。諸星家の食卓という限定された舞台で繰り広げられる各キャラの思惑が交錯する攻防戦は、ある意味落語的な面白さがありますね。あたる母が大活躍(?)するはずなので、期待しておいてくださいw
それでは、また来週!
(俺ってこんなに竜之介が好きだったんだと、自分で自分に驚いています…)
ブルーレイBOX第1巻は3月15日発売!
現在放映中の2クール目は第2巻にまとめて入る予定で、6月28日発売です!
「激闘、父子鷹!!」「セーラー服よ、こんにちは!!」は共に15巻に収録されています!
BOXセットが4巻揃って発売中!
これだけでうる星やつらのすべてが手に入ります!
新TVアニメ「うる星やつら」のOP/EDテーマ4曲とさらに新曲2曲を加えたCDが3月15日に発売!限定盤にはノンクレジットOP/ED2クール分を収録したBlu-rayが付きます。
3月1日に新TVアニメ「うる星やつら」オリジナルサウンドトラックが発売決定!全 92 曲収録とのことです。
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