新TVアニメ「うる星やつら」第4話のせめて気持ちだけはライトなものを目指している感想
※このたび36年ぶりに新しくTVアニメ化された「うる星やつら」。自他共に認める高橋留美子主義者である私なりそこないが、これから毎週視聴した感想をざっくり語っていこうと思います。アニメの感想は慣れていないのであまり深堀はしません。基本原作ガチ勢ですw
(私の新アニメ「うる星やつら」への思いはこちらとこちらで。)
今回はだいたい予想通りでした。
ほぼクラマ再登場回である「クラマ再び!!」「口づけと共に契らん!!」「掟、おさらば」(すべてコミックス14巻所収)の三部作を30分にまとめたものでしたね。
内容も前回の「迷路でメロメロ」で奇妙な四角関係になったあたるラム面堂しのぶの元にクラマ姫が飛んでくるというもので、前のCパートを引き継ぐものになっていました。もちろん、あたるたちもクラマとは初対面になっていましたね。(面堂だけは元々初対面)
結果として原作におけるクラマ姫の役割は抹消され、いわゆる1話限りのゲストキャラみたいな形になっていたと思います。(これが本当の一夜限りのあとくされのない関係ってかw)
点数は8点といったところですか。初見ではもうちょっと低くて7点くらいかなと思ったのですが、何度か見ているうちにこれはこれでいいかもと思い直しましたw
元々原作でもそれほど評価が高いエピソードではなかったんですよ。私にとってクラマは面堂が現れる前のうる星だからこそ意味があったキャラで、彼が登場した以上お役御免になったと思っていましたから。クラマ再登場自体に疑問を抱いていたこともあって、当時からそれほど気に入っていたわけじゃなかったんです。
ただ、逆にそれが良かったのかもしれませんね。初期のクラマ回にあったエグみのようなものがすっかり抜けて、見事なまでに内容のない馬鹿馬鹿しい話になっていました。
契るだのやり得だの子作りだの、露骨な言葉が飛び交うわりにはまあリアリティがないことw
いい意味でまったく意味のないバカ話として昇華されていたおかげで、肩の力を抜いて楽しむことができました。
クラマ姫の声を担当されたのは水樹奈々さんだそうですが、さすがの貫禄(?)でしたね。妖艶過ぎず幼過ぎず、いいさじ加減でのお嬢様感がありました。
原作の初期だともっと狡猾というか計算高い面もあったりするのですが、今回のスタッフはあえてその辺をあまり出さないように指導したのかもしれませんね。一夜の契りとか子宝をとか言っても、どこか天然ぽいあどけなさが感じられました。
ある意味、あのクラマは本来のクラマではないとも言えますが、面堂登場直後の微妙なタイミングですからね。むしろあのキャラでないと出せなかったでしょう。
今回のタイトルの入り方もまた凝っていましたね。
あたるがクラマに口づけした瞬間からのOPへの流れは、小気味よいものがありましたよ。毎回どのタイミングで来るか楽しみになってきましたw
冒頭の入り方も「クラマ再び!!」通り。
ただ、面堂が転校してきた直後の話として設定されただけに微妙な調整がなされていました。
原作ではもはや仲良し四人組(?)という感じで当たり前のようにダブルスでテニスを楽しんでいた彼らでしたが、アニメではまだそこまで打ち解けていないですからね。
「どうしてきさまがラムさんと同じチームなんだ」「俺だってしのぶと組みたい」
といったオリジナルのセリフが挿入されていました。
この辺は女性陣の思惑が優先される様子が伺えて微笑ましいですねw
そうそう、あと「ダーリンとラブゲームするっちゃ」もオリジナルw あれは不覚にも笑ってしまったw
ただ、学校に戻ってからのホームルームでの「正しい男女交際のありかた」は今一つ笑えなかったかな。
あれは長い間、あの3人(原作ではラムも含めて4人)がハチャメチャな騒動ばかりやってきたのを見てきた経過があってのクラスメイトのツッコミが冴えるところなんですよ。
前回の「迷路でメロメロ」だけではちょっと弱いんですよね。
でも、その後の「理性が邪魔しなければ」は笑ったw 本人は至って真面目なだけに、よけい傍から見ると滑稽なんです。あれぞ面堂って感じw
それと、彼がクラマにラブホ(笑)に連れ込まれる時のしのぶの「さよなら面堂くん」も最高だったw
あれ、原作では単なるモブ女子高生のセリフなんですよね。それをしのぶに言わせることでより名残惜しんでいるようでのあっさり感がより強調されるわけです。あのドライな感じもうる星ならばの面白さですよ。
原作ではあまりハマらなかったところがけっこう笑えたりするのが、逆に意外でもありましたね。
基本的にはクラマ再登場三部作をそのままなぞる構成になっていました。
ただし、テンちゃん(途中から加わるラムのいとこにあたる幼児)との絡みは当然のごとく丸ごとカット。
まあ仮にテンちゃんがいたとしてもカットしていたかもしれませんけどねw コンプラ的にやばいような気もするしw
そういえばカラス天狗たちが面堂をそそのかすシーンでは「一回きりのあとくされなし」「やり得」「しかもタダ」といったまあひどい(笑)セリフのオンパレードはそのままだったのにもかかわらず、原作にあった「ポン引きみたいだな」は「契りの押し売り」に変わっていましたねw
さすがにポン引きは…というより、そもそも今の人には通じないからなのかもしれないw
あと、イケメンという言葉が普通に使われていましたけど、この時代はまだ使われていませんよね。確か平成に入ってから生まれた言葉のはずです。(イケてるという言葉自体めちゃイケあたりからか…?)
原作では「色男」「ハンサム」だったのですが、若い人にはわからないと判断されたのでしょうか。昭和の世界に時々こういう現代的なワードが入るとなんか不思議な感じがしますね。
しかし、「オールバックのイケメン」は笑ったw あれ、原作では単に「オールバック」なんですよ。あの当時でもオールバックって…といった感じだったんですけど、それに今風の「イケメン」が付くと何とも言えないおかしさが漂いますね。
思い返すと、原作にはない部分でけっこう笑えた部分があったなあ。
全体的には悪くない回だったと思います。
最初はクラマというキャラが単なる数あるゲストキャラの一人みたいな感じに格下げされていることに違和感を覚えずにはいられなかったのですが、何度か見なおしていくうちにむしろ面堂以降のクラマを描くにはこれが最良だったのではと思い直しました。
1巻~4巻あたりの世界観からいきなり14巻に飛ぶことで、いったいどうなることかと心配もしていたのですが、思った以上になじんでいましたね。なんだか拍子抜けしてしまいましたよ。
まあ元々他愛のない回でしたから、作品世界にたいした影響もなかったのかもしれません。それを見込んでのクラマ復活回を選んだとしたなら、なかなかどうして鋭い目利きでしたね。
そういえば今回、ごくわずかではありますが初期のクラマ回の要素も一部取り入れていたんですよ。
あたるがクラマにキスした際のラムの「うちにはろくにしたことがないのに!」とかカラス天狗たちの会議に乗り込んだ際の「うちはダーリンの妻だっちゃ」とかはコミックス2巻「女になって出直せよ」からですし、
教室でクラマに弾き飛ばされた際にラムからの苦言に対してあたるの「一夜の契りってのが魅力的なんだよなぁ あとくされがなくて」や「おれという男はなあ、バカにされればされるほど燃えてくるのだ!!」はコミックス2巻「思い過ごしも恋のうち」からのセリフです。
でも、どれも初期のドロドロした感じが全然ないんですよね。あっけらかんとしてるというか、普通のセリフとしてさらっと通り過ぎていきます。
この中でもっとも当初のニュアンスと変えられていたのは、「一夜の契りってのが魅力的なんだよなぁ あとくされがなくて」です。
アニメでは割とギャグっぽい雰囲気で口に出た言葉でしたが、原作ではもっと重みがあるシーンなんですね。
ラムが「クラマと手を切ると約束するまで帰らない」「どうしてあんなのがいいんだ?」と問い詰める中で、あたるが「心の中で」独白するシーンなんです。
つまり、彼は“本音”をラムに明かしていないんですよ。決しておちゃらけた中での言い訳めいたセリフじゃないんです。
これは彼がなぜラムから逃げるのかという問題にも間接的につながっています。「一生」という言葉が2話の「幸せの黄色いリボン」でも出てきましたが、大きな目で見ればそこへの伏線にもなっているんです。(そして最終回「ボーイミーツガール」へとつながっていく)
新作アニメのスタッフはそれをちゃんとわかっていました。分かった上であえてストーリーにちりばめてきたのです。そう、「無毒化」した上で。
私が今回のアニメ化で面白いなあと思うのはこういうところなんですね。
確かに「原作準拠」です。旧アニメと比べるまでもなく、オリジナル要素はほとんどありません。
それなのに、各パーツの組み合わせを変えるだけでまったく別の世界が目の前に広がっていくんですよ。これは本当に驚くべきことです。
ある意味、この「実験」のために今回のアニメ化の意義はあったんじゃないかと思うくらいですね。
私は「放映開始直前!改めて新TVアニメ「うる星やつら」について考える」という記事の中で、クラマ姫についてこんな風に書いています。
> クラマはうる星において非常にピンポイントなところで役割を果たしたキャラだと私は認識しています。ある意味、面堂終太郎よりも先に「初期におけるあたるラムしのぶの三角関係」にくさびを打った存在でもあったわけです。逆に言えばそれこそが彼女の存在理由であって、弁天とかおユキとはまったくベクトルが違うと思うんですよ。
さて、ここでいう“役割”とは何か。
これはあくまで個人的見解ですが、うる星やつらにおけるクラマが果たした“役割”とは、諸星あたるを「男」にしたということにあると思うんです。
…あ、もちろん童貞を奪ったとかそういう意味じゃないですよw
要は彼女に出会ったことで、諸星あたるというキャラが名実ともにうる星やつらの主人公になったということです。
高橋留美子はインタビューにおいて、「連載当初はあたるというキャラに苦労した」といったことを語っています。つまり、不幸にみまわれるキャラというのは「受け身」でしか描けないということに途中から気づくんですね。話がどうしてもワンパターンになりがちだし、何より暗い話ばかりになってしまうと。
そこで5回連載、10回連載が終わってから登場させたのが「クラマ姫」だったんです。
彼女はあたるを自分の婿にふさわしい男となるように教育しようと画策します。その中で、あたるは自らトラブルに飛び込んでいくような能動的なキャラへと変貌していくわけですね。
私がクラマシリーズで一番好きな話として「父よあなたは強かった」(コミックス3巻所収)があります。
そこで諸星あたるはクラマ姫の父親である「牛若丸」(!)に出会い感銘を受けるわけですが、そこでのオチが最高なんですよ。
なんと彼は「女千人斬り」を目標に挙げるんですw(それを見て「ダーリンて本質的には変わらないっちゃねー」と半ばあきれた表情を見せるラムも最高w)
とにかくこれらを経て、あたるはようやく「主人公」となります。
そしてトラブルを受け入れる覚悟ができたことで、初めて「面堂登場」となるわけです。
つまり間接的に彼女がその後の「うる星やつら」の道筋を決めたと行っても過言ではないんですよ。
ところがどうでしょう。今回のアニメではそんな重要な意味の欠片も感じられません。
クラマは単に数ある1話限りのゲストキャラで、ひたすら意味のない喧騒の中でギャグとともに去っていきました。
面堂が登場した世界では彼女の果たす“役割”はすでに消失していたんですね。
いや、本当にこのシリーズは面白いですよ。こんなことは今回のアニメを見なければ考えもしなかったことですからね。
私はずっと原作の流れでしか「うる星やつら」という世界を認識していなかったので、毎週目から鱗が落ちる思いをしています。
これは旧アニメではなぜか感じなかったことなんです。
あれも2話目で早くもテンちゃんが登場したりむちゃくちゃな流れではありましたけど、そこでうる星やつらという世界がどう変貌していったのかというところまで意識が行くことはありませんでした。
まあ当時は中学生くらいだったこともありますけど、やはりスタッフの原作への意識の差があるんだと思います。
今回の新作アニメのスタッフはそれぞれの回の因果関係をしっかり分かった上で再構築していますから。
もちろん、原作を知ってる身としては色々複雑な思いは多々ありますけどね。あれをやらずにこれをやってどうするとか、せめてこのエピソードを入れないとこれは意味成さないだろうとか、モヤモヤすることばかりです。
でも、それも含めて改めて「うる星やつら」を知るきっかけになっているんですよ。もうコミックスを再読するのが楽しくてしょうがないw
この令和の時代にどうして今、とか始まる前はあれこれ思うこともありましたが、なんかそれでもう十分じゃないかという気にもなってきています。
さて、そこで次回予告ですよ。
「愛と闘魂のグローブ」「君待てども…」
なんとこの段階で「君待てども…」!
まだ弁天やレイ、おユキといったキャラも残っている中でのこのタイミングは、無謀としか言いようがない暴挙だと言いたくなります。
しかもそのカップリングエピソードが21巻所収の「愛と闘魂のグローブ」と来た日にゃ、ついに血迷ったかと言わざるを得ないw
何度も言ってますが、「君待てども…」は特別な回です。
もし「うる星やつらでもっとも重要な回を一つだけ挙げろ」と言われたら、私は迷わず「君待てども…」と答えます。(最高傑作ではないですよ、念のため)
おそらく、多くの原作ファンがそう答えるのではないでしょうか。
「君待てども…」は初めてあたるとラムが心を通わせる話です。それもほんのわずか、最後の最後でぽっと灯る、なんとも心もとない光です。
でもその小さな灯りがうる星やつらという世界を新たに生まれ変わらせたのです。
はじめて読んだときのことを私は一生忘れないでしょう。
それは感動ともまた違って、星が生まれる瞬間に立ち会ったかのような厳かな気持ちでした。
このエピソードは、面堂登場からいくつかの話を経て初めて成り立つものです。
ラムが面堂に興味を抱き、その結果あたると面堂が「同レベル」だとわかる「星座はめぐる」。
永遠の春を繰り返す中で、ラムと面堂、しのぶとあたるが急接近(?)する「春のうららの落第教室」。
そして、ラムがあたるの言う「普通の女の子」に扮装する「ツノる思いが地獄をまねく」。
これらの話がすべて布石になってこその「君待てども…」なんです。
この中で「星座はめぐる」や「春のうららの落第教室」は、「迷路でメロメロ」や今回の「口づけと共に契らん!!」でクリアできたと言ってもいいかもしれません。
ただ、「ツノる思いが地獄をまねく」だけはどうにもカバーできないと思うんですよね。あそこでとことん地獄絵図を繰り広げてからのわずかな灯だから輝くのであって、それなしでは単なる甘ったるいメロドラマになりかねないんです。
実際、旧アニメのそれにあたる「ときめきの聖夜」はベッタベタでしたからね。世間的には名作となっているようですが、私は当時からほとんど評価していません。
あれの二の舞だけは避けてもらわないと…
ギャグマンガであるうる星やつらにとって、最後をオチなしで締める話というのは危険な行為です。
それをあえてやるというのはそれだけの覚悟がないと許されないんです。(そういった意味で「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」の喪115「モテないし二年目の卒業式」は、うる星における「君待てども…」だったと勝手に解釈しています)
オチが無くてもギャグマンガであり続けられるという確固たる自信がなければダメなんですよ。ちょっと甘い雰囲気やお涙頂戴でラブコメや青春ものにしてしまったらいけないんです。
しっかりとした下準備のもとコントロールされた構成力が要求される、大変タフな作業なんですね。
次回Aパートになるであろう「愛と闘魂のグローブ」は、コミックス21巻に収録されています。
あたるとラムが円熟関係というか、どちらかというと倦怠期に入った夫婦のような時期の「ちょっとしたラブ話」です。とても「君待てども…」の直前に入るような話とは思えません。
よくもまあ、よりにもよってその話を持ってこれたなと半ば感心しますよ。
本当にどう料理するのか、皆目見当もつきません。
ある意味、一番食い合わせの悪い選択ですからね。
だからこそ、逆に楽しみでもあります。
ここまで見てきて、ここのスタッフがしっかり原作を読みこんで臨んでいるのはもうすでに明らかになってますからね。
私がここで指摘したようなことは百も承知でしょう。
是非、これまで見たことのなかった新たな「うる星やつら」を見せてもらいたいと思います。
というわけで、また来週!
(せめて気持ちだけでもと思っていたら、なぜかこれまでで最長記事になってるという…)
ブルーレイBOX第1巻は来年3月15日発売!、1話から11話までの1クール収録らしいので、そこまで見てから判断するのもありかも。
「クラマ再び!!」「口づけと共に契らん!!」「掟、おさらば」は14巻に収録されています!
できれば、2巻と3巻で初期のクラマ姫も見てもらいたい。
BOXセットも再入荷したようです。定価は5500円ですので、それ以上の値がついていたら買う必要がありませんよ。(ちなみにVol.2は一時的に品切れのようです)
オープニング曲とエンディング曲のカップリングCDが発売決定!12月21日発売です。
(私の新アニメ「うる星やつら」への思いはこちらとこちらで。)
今回はだいたい予想通りでした。
ほぼクラマ再登場回である「クラマ再び!!」「口づけと共に契らん!!」「掟、おさらば」(すべてコミックス14巻所収)の三部作を30分にまとめたものでしたね。
内容も前回の「迷路でメロメロ」で奇妙な四角関係になったあたるラム面堂しのぶの元にクラマ姫が飛んでくるというもので、前のCパートを引き継ぐものになっていました。もちろん、あたるたちもクラマとは初対面になっていましたね。(面堂だけは元々初対面)
結果として原作におけるクラマ姫の役割は抹消され、いわゆる1話限りのゲストキャラみたいな形になっていたと思います。(これが本当の一夜限りのあとくされのない関係ってかw)
点数は8点といったところですか。初見ではもうちょっと低くて7点くらいかなと思ったのですが、何度か見ているうちにこれはこれでいいかもと思い直しましたw
元々原作でもそれほど評価が高いエピソードではなかったんですよ。私にとってクラマは面堂が現れる前のうる星だからこそ意味があったキャラで、彼が登場した以上お役御免になったと思っていましたから。クラマ再登場自体に疑問を抱いていたこともあって、当時からそれほど気に入っていたわけじゃなかったんです。
ただ、逆にそれが良かったのかもしれませんね。初期のクラマ回にあったエグみのようなものがすっかり抜けて、見事なまでに内容のない馬鹿馬鹿しい話になっていました。
契るだのやり得だの子作りだの、露骨な言葉が飛び交うわりにはまあリアリティがないことw
いい意味でまったく意味のないバカ話として昇華されていたおかげで、肩の力を抜いて楽しむことができました。
クラマ姫の声を担当されたのは水樹奈々さんだそうですが、さすがの貫禄(?)でしたね。妖艶過ぎず幼過ぎず、いいさじ加減でのお嬢様感がありました。
原作の初期だともっと狡猾というか計算高い面もあったりするのですが、今回のスタッフはあえてその辺をあまり出さないように指導したのかもしれませんね。一夜の契りとか子宝をとか言っても、どこか天然ぽいあどけなさが感じられました。
ある意味、あのクラマは本来のクラマではないとも言えますが、面堂登場直後の微妙なタイミングですからね。むしろあのキャラでないと出せなかったでしょう。
今回のタイトルの入り方もまた凝っていましたね。
あたるがクラマに口づけした瞬間からのOPへの流れは、小気味よいものがありましたよ。毎回どのタイミングで来るか楽しみになってきましたw
冒頭の入り方も「クラマ再び!!」通り。
ただ、面堂が転校してきた直後の話として設定されただけに微妙な調整がなされていました。
原作ではもはや仲良し四人組(?)という感じで当たり前のようにダブルスでテニスを楽しんでいた彼らでしたが、アニメではまだそこまで打ち解けていないですからね。
「どうしてきさまがラムさんと同じチームなんだ」「俺だってしのぶと組みたい」
といったオリジナルのセリフが挿入されていました。
この辺は女性陣の思惑が優先される様子が伺えて微笑ましいですねw
そうそう、あと「ダーリンとラブゲームするっちゃ」もオリジナルw あれは不覚にも笑ってしまったw
ただ、学校に戻ってからのホームルームでの「正しい男女交際のありかた」は今一つ笑えなかったかな。
あれは長い間、あの3人(原作ではラムも含めて4人)がハチャメチャな騒動ばかりやってきたのを見てきた経過があってのクラスメイトのツッコミが冴えるところなんですよ。
前回の「迷路でメロメロ」だけではちょっと弱いんですよね。
でも、その後の「理性が邪魔しなければ」は笑ったw 本人は至って真面目なだけに、よけい傍から見ると滑稽なんです。あれぞ面堂って感じw
それと、彼がクラマにラブホ(笑)に連れ込まれる時のしのぶの「さよなら面堂くん」も最高だったw
あれ、原作では単なるモブ女子高生のセリフなんですよね。それをしのぶに言わせることでより名残惜しんでいるようでのあっさり感がより強調されるわけです。あのドライな感じもうる星ならばの面白さですよ。
原作ではあまりハマらなかったところがけっこう笑えたりするのが、逆に意外でもありましたね。
基本的にはクラマ再登場三部作をそのままなぞる構成になっていました。
ただし、テンちゃん(途中から加わるラムのいとこにあたる幼児)との絡みは当然のごとく丸ごとカット。
まあ仮にテンちゃんがいたとしてもカットしていたかもしれませんけどねw コンプラ的にやばいような気もするしw
そういえばカラス天狗たちが面堂をそそのかすシーンでは「一回きりのあとくされなし」「やり得」「しかもタダ」といったまあひどい(笑)セリフのオンパレードはそのままだったのにもかかわらず、原作にあった「ポン引きみたいだな」は「契りの押し売り」に変わっていましたねw
さすがにポン引きは…というより、そもそも今の人には通じないからなのかもしれないw
あと、イケメンという言葉が普通に使われていましたけど、この時代はまだ使われていませんよね。確か平成に入ってから生まれた言葉のはずです。(イケてるという言葉自体めちゃイケあたりからか…?)
原作では「色男」「ハンサム」だったのですが、若い人にはわからないと判断されたのでしょうか。昭和の世界に時々こういう現代的なワードが入るとなんか不思議な感じがしますね。
しかし、「オールバックのイケメン」は笑ったw あれ、原作では単に「オールバック」なんですよ。あの当時でもオールバックって…といった感じだったんですけど、それに今風の「イケメン」が付くと何とも言えないおかしさが漂いますね。
思い返すと、原作にはない部分でけっこう笑えた部分があったなあ。
全体的には悪くない回だったと思います。
最初はクラマというキャラが単なる数あるゲストキャラの一人みたいな感じに格下げされていることに違和感を覚えずにはいられなかったのですが、何度か見なおしていくうちにむしろ面堂以降のクラマを描くにはこれが最良だったのではと思い直しました。
1巻~4巻あたりの世界観からいきなり14巻に飛ぶことで、いったいどうなることかと心配もしていたのですが、思った以上になじんでいましたね。なんだか拍子抜けしてしまいましたよ。
まあ元々他愛のない回でしたから、作品世界にたいした影響もなかったのかもしれません。それを見込んでのクラマ復活回を選んだとしたなら、なかなかどうして鋭い目利きでしたね。
そういえば今回、ごくわずかではありますが初期のクラマ回の要素も一部取り入れていたんですよ。
あたるがクラマにキスした際のラムの「うちにはろくにしたことがないのに!」とかカラス天狗たちの会議に乗り込んだ際の「うちはダーリンの妻だっちゃ」とかはコミックス2巻「女になって出直せよ」からですし、
教室でクラマに弾き飛ばされた際にラムからの苦言に対してあたるの「一夜の契りってのが魅力的なんだよなぁ あとくされがなくて」や「おれという男はなあ、バカにされればされるほど燃えてくるのだ!!」はコミックス2巻「思い過ごしも恋のうち」からのセリフです。
でも、どれも初期のドロドロした感じが全然ないんですよね。あっけらかんとしてるというか、普通のセリフとしてさらっと通り過ぎていきます。
この中でもっとも当初のニュアンスと変えられていたのは、「一夜の契りってのが魅力的なんだよなぁ あとくされがなくて」です。
アニメでは割とギャグっぽい雰囲気で口に出た言葉でしたが、原作ではもっと重みがあるシーンなんですね。
ラムが「クラマと手を切ると約束するまで帰らない」「どうしてあんなのがいいんだ?」と問い詰める中で、あたるが「心の中で」独白するシーンなんです。
つまり、彼は“本音”をラムに明かしていないんですよ。決しておちゃらけた中での言い訳めいたセリフじゃないんです。
これは彼がなぜラムから逃げるのかという問題にも間接的につながっています。「一生」という言葉が2話の「幸せの黄色いリボン」でも出てきましたが、大きな目で見ればそこへの伏線にもなっているんです。(そして最終回「ボーイミーツガール」へとつながっていく)
新作アニメのスタッフはそれをちゃんとわかっていました。分かった上であえてストーリーにちりばめてきたのです。そう、「無毒化」した上で。
私が今回のアニメ化で面白いなあと思うのはこういうところなんですね。
確かに「原作準拠」です。旧アニメと比べるまでもなく、オリジナル要素はほとんどありません。
それなのに、各パーツの組み合わせを変えるだけでまったく別の世界が目の前に広がっていくんですよ。これは本当に驚くべきことです。
ある意味、この「実験」のために今回のアニメ化の意義はあったんじゃないかと思うくらいですね。
私は「放映開始直前!改めて新TVアニメ「うる星やつら」について考える」という記事の中で、クラマ姫についてこんな風に書いています。
> クラマはうる星において非常にピンポイントなところで役割を果たしたキャラだと私は認識しています。ある意味、面堂終太郎よりも先に「初期におけるあたるラムしのぶの三角関係」にくさびを打った存在でもあったわけです。逆に言えばそれこそが彼女の存在理由であって、弁天とかおユキとはまったくベクトルが違うと思うんですよ。
さて、ここでいう“役割”とは何か。
これはあくまで個人的見解ですが、うる星やつらにおけるクラマが果たした“役割”とは、諸星あたるを「男」にしたということにあると思うんです。
…あ、もちろん童貞を奪ったとかそういう意味じゃないですよw
要は彼女に出会ったことで、諸星あたるというキャラが名実ともにうる星やつらの主人公になったということです。
高橋留美子はインタビューにおいて、「連載当初はあたるというキャラに苦労した」といったことを語っています。つまり、不幸にみまわれるキャラというのは「受け身」でしか描けないということに途中から気づくんですね。話がどうしてもワンパターンになりがちだし、何より暗い話ばかりになってしまうと。
そこで5回連載、10回連載が終わってから登場させたのが「クラマ姫」だったんです。
彼女はあたるを自分の婿にふさわしい男となるように教育しようと画策します。その中で、あたるは自らトラブルに飛び込んでいくような能動的なキャラへと変貌していくわけですね。
私がクラマシリーズで一番好きな話として「父よあなたは強かった」(コミックス3巻所収)があります。
そこで諸星あたるはクラマ姫の父親である「牛若丸」(!)に出会い感銘を受けるわけですが、そこでのオチが最高なんですよ。
なんと彼は「女千人斬り」を目標に挙げるんですw(それを見て「ダーリンて本質的には変わらないっちゃねー」と半ばあきれた表情を見せるラムも最高w)
とにかくこれらを経て、あたるはようやく「主人公」となります。
そしてトラブルを受け入れる覚悟ができたことで、初めて「面堂登場」となるわけです。
つまり間接的に彼女がその後の「うる星やつら」の道筋を決めたと行っても過言ではないんですよ。
ところがどうでしょう。今回のアニメではそんな重要な意味の欠片も感じられません。
クラマは単に数ある1話限りのゲストキャラで、ひたすら意味のない喧騒の中でギャグとともに去っていきました。
面堂が登場した世界では彼女の果たす“役割”はすでに消失していたんですね。
いや、本当にこのシリーズは面白いですよ。こんなことは今回のアニメを見なければ考えもしなかったことですからね。
私はずっと原作の流れでしか「うる星やつら」という世界を認識していなかったので、毎週目から鱗が落ちる思いをしています。
これは旧アニメではなぜか感じなかったことなんです。
あれも2話目で早くもテンちゃんが登場したりむちゃくちゃな流れではありましたけど、そこでうる星やつらという世界がどう変貌していったのかというところまで意識が行くことはありませんでした。
まあ当時は中学生くらいだったこともありますけど、やはりスタッフの原作への意識の差があるんだと思います。
今回の新作アニメのスタッフはそれぞれの回の因果関係をしっかり分かった上で再構築していますから。
もちろん、原作を知ってる身としては色々複雑な思いは多々ありますけどね。あれをやらずにこれをやってどうするとか、せめてこのエピソードを入れないとこれは意味成さないだろうとか、モヤモヤすることばかりです。
でも、それも含めて改めて「うる星やつら」を知るきっかけになっているんですよ。もうコミックスを再読するのが楽しくてしょうがないw
この令和の時代にどうして今、とか始まる前はあれこれ思うこともありましたが、なんかそれでもう十分じゃないかという気にもなってきています。
さて、そこで次回予告ですよ。
「愛と闘魂のグローブ」「君待てども…」
なんとこの段階で「君待てども…」!
まだ弁天やレイ、おユキといったキャラも残っている中でのこのタイミングは、無謀としか言いようがない暴挙だと言いたくなります。
しかもそのカップリングエピソードが21巻所収の「愛と闘魂のグローブ」と来た日にゃ、ついに血迷ったかと言わざるを得ないw
何度も言ってますが、「君待てども…」は特別な回です。
もし「うる星やつらでもっとも重要な回を一つだけ挙げろ」と言われたら、私は迷わず「君待てども…」と答えます。(最高傑作ではないですよ、念のため)
おそらく、多くの原作ファンがそう答えるのではないでしょうか。
「君待てども…」は初めてあたるとラムが心を通わせる話です。それもほんのわずか、最後の最後でぽっと灯る、なんとも心もとない光です。
でもその小さな灯りがうる星やつらという世界を新たに生まれ変わらせたのです。
はじめて読んだときのことを私は一生忘れないでしょう。
それは感動ともまた違って、星が生まれる瞬間に立ち会ったかのような厳かな気持ちでした。
このエピソードは、面堂登場からいくつかの話を経て初めて成り立つものです。
ラムが面堂に興味を抱き、その結果あたると面堂が「同レベル」だとわかる「星座はめぐる」。
永遠の春を繰り返す中で、ラムと面堂、しのぶとあたるが急接近(?)する「春のうららの落第教室」。
そして、ラムがあたるの言う「普通の女の子」に扮装する「ツノる思いが地獄をまねく」。
これらの話がすべて布石になってこその「君待てども…」なんです。
この中で「星座はめぐる」や「春のうららの落第教室」は、「迷路でメロメロ」や今回の「口づけと共に契らん!!」でクリアできたと言ってもいいかもしれません。
ただ、「ツノる思いが地獄をまねく」だけはどうにもカバーできないと思うんですよね。あそこでとことん地獄絵図を繰り広げてからのわずかな灯だから輝くのであって、それなしでは単なる甘ったるいメロドラマになりかねないんです。
実際、旧アニメのそれにあたる「ときめきの聖夜」はベッタベタでしたからね。世間的には名作となっているようですが、私は当時からほとんど評価していません。
あれの二の舞だけは避けてもらわないと…
ギャグマンガであるうる星やつらにとって、最後をオチなしで締める話というのは危険な行為です。
それをあえてやるというのはそれだけの覚悟がないと許されないんです。(そういった意味で「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」の喪115「モテないし二年目の卒業式」は、うる星における「君待てども…」だったと勝手に解釈しています)
オチが無くてもギャグマンガであり続けられるという確固たる自信がなければダメなんですよ。ちょっと甘い雰囲気やお涙頂戴でラブコメや青春ものにしてしまったらいけないんです。
しっかりとした下準備のもとコントロールされた構成力が要求される、大変タフな作業なんですね。
次回Aパートになるであろう「愛と闘魂のグローブ」は、コミックス21巻に収録されています。
あたるとラムが円熟関係というか、どちらかというと倦怠期に入った夫婦のような時期の「ちょっとしたラブ話」です。とても「君待てども…」の直前に入るような話とは思えません。
よくもまあ、よりにもよってその話を持ってこれたなと半ば感心しますよ。
本当にどう料理するのか、皆目見当もつきません。
ある意味、一番食い合わせの悪い選択ですからね。
だからこそ、逆に楽しみでもあります。
ここまで見てきて、ここのスタッフがしっかり原作を読みこんで臨んでいるのはもうすでに明らかになってますからね。
私がここで指摘したようなことは百も承知でしょう。
是非、これまで見たことのなかった新たな「うる星やつら」を見せてもらいたいと思います。
というわけで、また来週!
(せめて気持ちだけでもと思っていたら、なぜかこれまでで最長記事になってるという…)
ブルーレイBOX第1巻は来年3月15日発売!、1話から11話までの1クール収録らしいので、そこまで見てから判断するのもありかも。
「クラマ再び!!」「口づけと共に契らん!!」「掟、おさらば」は14巻に収録されています!
できれば、2巻と3巻で初期のクラマ姫も見てもらいたい。
BOXセットも再入荷したようです。定価は5500円ですので、それ以上の値がついていたら買う必要がありませんよ。(ちなみにVol.2は一時的に品切れのようです)
オープニング曲とエンディング曲のカップリングCDが発売決定!12月21日発売です。
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