fc2ブログ

鬼っていったいなんだろう~なりそこないがボカロを聞く理由~

今月末で誕生7周年を迎える初音ミクを始め、すっかりひとつのジャンルとして定着した感がある“ボーカロイド”。

最近では、ボカロ小説やボカロコミックなども人気になっているそうで、
もはや、電子音楽という枠を超えて、
ラノベやアニメ、マンガやゲーム界隈にとっても、決して無視できない存在になっているように思います。

私個人としては小説やマンガはほとんど読んでいませんが、
動画や楽曲のほうはけっこう見たり聞いたりします。(最近の流行とかはうといですが)

ただ、これは音楽的な指向というよりも
どちらかというと「バーチャルアイドル」という存在自体に惹かれたといったほうがいいかもしれません。

とくに初期のころのハジメテノオト」や「Packaged」のような“バーチャル歌手”の存在意義をテーマにしたものは、
音楽というよりもSF的なモチーフとして興味深く、今思えばひとつのSF作品のように楽しんでいたような気がします。(少し前にSFマガジンボカロ特集も組んでいましたよね)

また、「悪ノ娘」などから連なる“物語”系などキャラや世界観を重視した楽曲つくりも、音楽という枠よりもむしろ、マンガやラノベに親和性があるように思えたんですよね。

最近は一時のブームも落ち着いて、普通に才能のある音楽プロデューサーが普通にJ-POP的な楽曲を発表する場として、
または、「うたってみた」「踊ってみた」などのソーシャル系のツールとして消費されるようになってきて、
個人的にはちょっと興味が薄れてきてはいますが、それでもお気に入りのボカロPの新譜とかはチェックしてしまいます。

それはさておき。

私はここで音楽論を述べたいわけでも、今のボカロ現象について一言申し上げたいわけでもありません。私がボカロを聞くようになったそもそもの理由についてです。

なぜ、私は「バーチャルアイドル」に惹かれたのか。

このことについて改めて省みてみると、
どうも私のフェチ趣向として「人外萌え」という性癖があるようなんですね。(すみません、引かないでください)

アニメをほとんど見ない私がなぜ、エヴァンゲリオンを観ようと思ったのかといえば、
綾波レイ」の存在が大きかったでしょうし、「狼と香辛料」にハマったのもホロのケモ耳の影響は否めません。

そこで、このルーツはなんなんだろうと考えてみると、どうやら「うる星やつら」でも「ドラえもん」でもなく、あるひとつの劇に辿りつくわけです。

それは、さねとうあきら作の「べっかんこ鬼」という演劇。

今でも小学校などで上演されることもあるようですので、知っているかたも多いかもしれません。
私、なりそこないも小学校低学年のころ、講堂で見せられました。

今思い浮かべてみると、かなり社会的メッセージの濃い、重苦しい話だったと思います。

ただ、当時まだ幼かった私にとって、あの舞台から、同和問題、マイノリティに対する差別といったテーマは読み取ることは到底できませんでした。

私の心に深く刻み込まれたものはただ一つ。

物語最後に歌われる以下のような歌詞でした。

鬼って一体なんだろう
鬼って一体なんだろう
人の中にも鬼はいる
鬼の中にも人はいる
鬼って一体なんだろう


(※舞台にも様々なバリエーションがあり、正確な言い回しは異なる場合がありますが、ご容赦ください、あくまで筆者の記憶の中にもとづくものです)

この「人の中にも鬼がいる」「鬼の中にも人はいる」というフレーズ。
実は人こそ鬼なのではないか、鬼のほうこそ実は人なのではないか、という問いかけだけがずっと頭から離れず、
それ以来、人の形をした人にあらざるもの、といった存在に倒錯した魅力を感じる様になります。

もちろん、作者のさねとうさんの意図としては、
人を自分と違うからといって迫害し、差別する心こそが「鬼」なんだよ、というメッセージであって、まさか、純粋無垢な子どもを「人外萌え」といった特殊性癖に目覚めさせることになるとは思いもしなかったでしょうがw

まあ、作品が作者の意図とは異なる方向に向かうということはよくあることで、
作品自体に人知を超えた力があるという証明でもあると思いますけどね。

とにかく、異形を異形だと排除する人間は本当に人間なのか、実は異形のほうが人間らしいのかもしれない、といったテーマは私にとってえも言われぬ魅力となっていったわけです。

そこで、初音ミクの登場ですよ。
人であって人でない存在。
人間の思いを唄いながらも「機械声」が耳障りだと迫害される存在。
「なりそこない」の私が魅了されていくのに、それほど時間を要しませんでした。

私にとっては「機械声」だからこそ、感動するんですね。
つまり、声そのものには人の感情はない。
しかし、そこに人間が作ったメロディと言葉がのることによって、
もしかしたら彼女らにも人の気持ちが宿っているのかもしれないというささやかな幻想生まれるわけですね。
そして、機械がきごちないながらも一生懸命“ココロ”を唄う。
この構図にロマンがあるわけです。
だからこそ、最近の“うまい”ボカロよりも初期のボカロばかり聞いてしまうわけですが。

ボーカロイドという存在は万物に魂が宿るという考えなしでは語れないと思うんです。
ロボットが自我に目覚めて、思い悩むとか古典SFやマンガでもおなじみの題材ですけど、けっきょくそこに受け手の自意識とかを投影してしまうんですよね。
私のような“一般人”にも“オタク”にもなれない「なりそこない」が「人外萌え」になるのは必然だったわけです。

これからもどんどん技術は進み、いつか、まったく人間と変わらないボーカロイドも生まれるかもしれません。もしかしたら自我を持ち、自分で作詞作曲をするようなシンガーソングライターボカロも登場するかもしれません。
それはそれでちょっと怖い気もしますが、
高度に発達したロボットやアンドロイドは人間とどこが違うのか、といったテーマにそそられる自分もいます。


ところで、ボカロをムーブメントとして語ったものは多いですが、
音楽的な視点できちんと批評したものは意外と少ないです。

初音ミクはなぜ世界を変えたのか?初音ミクはなぜ世界を変えたのか?
(2014/04/03)
柴那典

商品詳細を見る

その中でこの「初音ミクはなぜ世界を変えたのか」はポップ音楽史の流れを踏まえた上で、
ボカロ音楽の立ち位置や意義を探求していて、なかなか面白い評論になっています。

著者の柴那典氏は元ロッキングオン出身だけあって、人によってはロキノン節がちょっと鼻につくかもしれませんが、内容はかなり充実しています。
ryo氏(Supercell)の「ODDS&ENDS」とイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」の共通点など、ボカロに興味がない人にとっても意外な発見があるものとなっていますので、変な先入観を持たずに是非読んでほしいですね。
スポンサーサイト



tag : ボーカロイド

line
line

comment

管理者にだけ表示を許可する

人外萌えと聞いて

人外に萌えるんだ・・・
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15311552
人外に萌えるんだ!
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15119936

閑話休題、「べっかんこ鬼」は寡聞にして知らないので、社会的メッセージと言えばコレね。
https://www.excite.co.jp/News/review/tag/%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%AE%E6%82%A9%E3%81%BF/

機械声はロマンだの。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4165215

ボーカロイドなら最初期のこの曲がボカァやっぱり好きだなぁ。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1924663

バーチャルの中に実在する存在

通過気取りさんはなぜこのタイミングでこの記事にコメントされたのでしょうか?そのおかげで「最新コメント」にこの記事が上がり,このような素晴らしい記事に出会えたわけですがww

「バーチャル」という存在そのものに魅力を感じる・・・?

なりそこないさんが私と全く同じことを考えておられたとは,本当に驚きです!!暗殺教室の推しメンは間違いなく律ちゃんでしょ?w

私から言わせれば,初音ミクを他の二次元キャラと同じレベルでの「萌え」と考えている人は浅いんですよ。最近,初音ミクと結婚式を挙げた人が話題になりましたが、残念ながら彼もまた三次元の呪縛に捕らわれているのです。初音ミクはそれぞれの心の中に存在するのであり,結婚などという人間の概念を適用すること自体がナンセンスなのです。

「初音ミクはなぜ世界を変えたのか」私がまだNEETだったころに読みましたよ。80年代くらいの欧米のムーブメントとかけっこう幅広い洞察がされてましたよね。

日本は古来から八百万,つまり全ての物に神が宿っているという独特の宗教観を持っているので,擬人化とかバーチャルといった概念を受け入れやすいのでしょう。欧米からすると,なぜ日本人がロボット犬のAIBOをあそこまで愛せるのか理解できないようですw

我々人間は有限でありいずれ死を迎えます。しかし,バーチャルの世界に終わりはありません。だからこそ,我々は「永遠」の象徴であるバーチャルの存在に憧れるのではないでしょうか。

なんかすみません,修学旅行最終日のもこっち並にすっごい喋りましたwあまりに記事の内容に共感してしまったので。

推しメンは律ちゃんと聞いて

司令や律ちゃんも君に隠し事をしている。それが、これさ。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm13137499

>マコスキーさん

>なぜこのタイミングでこの記事にコメントされたのでしょうか?
八百万が一柱、返神再臨の時が近いと聞きまして・・・
しかしまぁ、いろいろあるんですねぇ。
https://www.izumo-murasakino.jp/yomimono-024.html
おまけ
https://togetter.com/li/984972

ところでマコスキーさんは日産のMOCOにものすごく惹かれるんでしたっけ。
https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=70267826
https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=70346039

いろいろとゴメンナサイ。

遅ばせながらの返信

返信が遅くなりましてすみません

>通過気取りさん、こんな古い記事にわざわざコメントいただきありがとうございます。
どの動画も私の知らない世界ばかりで、とても興味深く拝見しました。
人外萌えとは言え、だいぶ特殊な世界ばかりでしたが…w

べっかんこ鬼は今はもう上演されないのかな?
かつてはどこの小学校でもあったそうなんですけどね。

> ボーカロイドなら最初期のこの曲がボカァやっぱり好きだなぁ。
これは懐かしいwこの頃はよくわからないキャラ属性遊びがはやっていて、それ自体がすごく面白かったですね。音楽がどうというよりも、みんなで遊べるおもちゃ感が楽しかった記憶があります。今は良くも悪くも成熟したということなんでしょうね。


>マコスキーさん
ねえ?w書いた本人も忘れていましたよ。ああそういえば、こんな記事も書いたなあと、なんだか懐かしくなってしまいましたw
でも過去の記事にもこうしてコメントが付くのはすごくうれしい限りですね。少し気恥しい思いもありますが。

マコスキーさんも同志なんですか。リアルではこんなことを吐露したことはないので、似たようなことを考えている人に出会ったことがないんですよね。(もちろん、暗殺教室では律がお気に入りキャラでした。自律、という名前が秀逸ですよね)

> 結婚などという人間の概念
わかります。私も「○○は俺の嫁」という言い方自体に違和感がありますから。
まあもちろん、ほとんどネタではあるんでしょうけど、我々が生きている世界とあちらの世界を混合しているような考えはどうもなじめません。
ふたつの世界は決して交わらないからこそ、憧れるのですよね。それこそロマンですよ。

「初音ミクはなぜ世界を変えたのか」は意外と興味深い音楽評論になっていましたよね。書籍タイトルである程度ターゲットが狭まったのが少し残念です。

「有限」と「永遠」の関係も、決して重なることがないから逆に魅かれるんだと思います。その辺は死生観にも関わってくる問題なのかもしれませんね。


>ふたたび、通過気取りさん

いつも多様なジャンルのネタ(?)をご紹介いただきありがとうございます。どれも面白いなあ。
最後のMOCOは意表を突かれましたよwさすがにそこは未知の領域でしたw

半年振りに

>バーチャルアイドル

>今月末で誕生7周年を迎える初音ミク
もうすぐちゆより年上になるのか。
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1802/15/news140.html

>「機械声」が耳障り
ボカロ曲が流行ったらそういう論調が出てくるかと思ったけど全然出てこなかった印象。
それはさておき、みんな大好き新技術。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm36405360

https://www.nicovideo.jp/watch/sm36557740

https://www.nicovideo.jp/watch/sm36473375
秋田
https://www.nicovideo.jp/watch/sm36498246

https://www.nicovideo.jp/watch/sm36652921
cf.
https://www.nicovideo.jp/watch/sm30438372

Re: >バーチャルアイドル

> もうすぐちゆより年上になるのか。
そういえば、最近この話もあまり聞かなくなりましたけどまだやってるんですかね…
ていうか、この記事からももう6年たつのか。

> それはさておき、みんな大好き新技術。
おお、最新。意外と言っては失礼ですけどなんかけっこういい感じ。
しかしもう、機械声とかそういう問題ではもはやないですね。

> 春
なんか、女の子と一緒にカラオケに行った気分w
それにしても、こんなポップで聞きやすい曲だったんですね。
昔の歌の魅力を再発見するきっかけにもなりそう。

> 夏
夏の曲はいっぱいありますけど、デュエットとなるとやっぱりこれですね!

> 秋田
秋田の曲もいっぱいありますけど、きりたんとなるとやっぱりこれですね!

> 冬
で、冬はやっぱりこれかw
最後まで微笑ましいというか一所懸命歌ってるけなげさを感じてしまうなあ。

> cf.
なるほどこれは新技術。

>実は人こそ鬼なのではないか

Re: >実は人こそ鬼なのではないか

>通過気取りさん

> あれはなりそこないなどではなかったのだ
なんだ私の仲間じゃなかったのか、ということはさておき、さっそく旬なネタを持ってきますね。
たまたま被ってますけど、けっこう考えさせられる視点だなあ。
ていうか、目らしきものがあるだけで、「生物」かどうかもわからないんですよね。単なるロゴデザインなんですから。
まああのデザインもけっこう賛否あるようですけど、個人的にはアリですね。こうしてさっそくネタでもされてますしw
ていうか、他の案が凝ったものが多くて消去法的にあれになったんじゃという気がします。

> ネタ元
まとめサイトじゃなくって、普通に記事にしてるのかよ!ハフポストってこんな感じでいいのか…

> 参考
まあ多様性とはいっても、けっきょくすべての人がなっとくするものなんてものはないわけですからね。100%じゃないからこそ、多様性なわけで。

鬼滅の刃ブームだし、今年のハロウィン会場はここで良いよね?

Re: 鬼滅の刃ブームだし、今年のハロウィン会場はここで良いよね?

>氷河期鳥さん
いや、うちはそもそもそういう場の提供はやっていないんですが…

> 貪
なんだこれ……鬼なんかよりもよっぽど怖い。…どっちも。

> 瞋
これは貴重な話。私はこの人が特殊だとは思わない。誰にでもあり得る話。

> 痴
あ、これはダメだ。とても最後まで読めない。すみませんが感想も書けません。ああ…

> 守
いや自分はこれさえ言わないなあ…

> 破
なんだこれw 最初の3連発がきつすぎたせいか、なんだかすっごくほっとするw

> 離
前回とはいったい…

> お土産ようさん持って行け。
おお、ありがとうございます!あなたはなんていい人なんだ。地獄に仏とはこのこと!

>次はいったいどうなるんだーーーー!

鬼は外
https://viewer.ganganonline.com/manga/?chapterId=29161
後編は福は内とはいかないんだろうなぁ。

>あ、これはダメだ。とても最後まで読めない。すみませんが感想も書けません。ああ…
代わりを用意しました。
https://seiga.nicovideo.jp/comic/50799

上のコメントで人様のHN名乗っちゃってるよオイ。

Re: >次はいったいどうなるんだーーーー!

>通過気取りさん
> 鬼は外
え、これで完結じゃないの?前編?
いやいや、これでハッピーエンドでいいじゃないですか。次なんてなくていいんだーーーー!

> 代わりを用意しました。
こわいこわいこわい。ていうか、人ごととは思えない。
でもとりあえず一旦終わってよかった。本当にあとはもう何ごともないことを祈るばかり。

> 上のコメントで人様のHN名乗っちゃってるよオイ。
あのコメントはあなただったんですか。
フレンズ仲間のお名前を拝借してしまったんですねw

【喪189ネタバレあり】

Re: 【喪189ネタバレあり】

>通過気取りさん

> 下顎の限界を超えて
そっちの限界かwww
でもなぜか胸が締め付けられるような切なさがありますね。
そこまで頑張って歌わなくていいんだよと言ってあげたいw

> 鬼子
なかなかかわいい。
やはり機械の心は男のロマンですね!

> cf.
なんだよこれ…
むしろ人間を侵略してくれた方がよかったよ…

> 鬼親
これはいいオチw
自分も子どもの頃、似たような妄想をしたなあ。

> cf.
どっちがどっちなんだ…

> 鬼の手
最後うまいなあ。
けっきょくなんで50年たったのかはわからず仕舞いだけどw

> cf.
これができてこその愛なのか…

> 鬼の首
寄生獣だったのかw

> cf.
www相変わらずオチがぶっ飛んでるwww
この人すごいなあw


今回もたくさんの作品をご紹介いただきありがとうございます!
とっても楽しかったです!
line
line

line
プロフィール
ぬるく切なくだらしなく。 オタクにも一般人にもなれなかった、昭和40年代生まれの「なりそこない」がライトノベルや漫画を主観丸出しで書きなぐるところです。 滅びゆくじじいの滅びゆく日々。 ブログポリシーはこちら

なりそこない

Author:なりそこない
FC2ブログへようこそ!

line
Twitterフォロー
line
カレンダー
10 | 2023/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
line
最新記事
line
最新コメント
line
最新トラックバック
line
月別アーカイブ
line
カテゴリ
line
カウンター
line
表現規制問題について
line
Amazon人気商品










line
My Favorite商品
line
検索フォーム
line
読んでいます
line
リンク
line
RSSリンクの表示
line
QRコード
QR
line
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

line
sub_line