私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!ミステリー小説アンソロジー感想~ミステリーとして読むか小説として読むか、もしくはわたモテとして読むか~
8月6日に『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!ミステリー小説アンソロジー』が発売されました。
今回の表紙はシンプルでわかりやすい。(ちょっとベタすぎるかな?という気もしないでもないですけどw)
前回はなかなか書店で見つけることが出来ずに苦労したので、今回はあらかじめネット通販で購入。
7日には無事届いたのですが、2回目のワクチン接種などでなかなかじっくり読む機会がなく、ようやく先日読み終わりました。
まず最初に言っておきますと、すごく面白かったです。
ごく一部を除いて(笑)、どれもちゃんとミステリーしてましたし、小説としての読み応えも十分堪能できました。
満足度としては前回に負けていないと思います。
むしろ、ボリュームは前回の倍近くあるのに値段は据え置きなので、コストパフォーマンス的には今回の方が上とも言えるでしょう。
ただ、いざ感想となると、けっこう難しいんですね。
というのも、「ミステリー」縛りというのが意外な形でネックになっているような気がするんです。
つまり、「小説」としての面白さと「ミステリー」としての面白さと、どっちにウェイトを置くかで評価が変わってきそうな部分があるんですよ。
おまけに「わたモテ」としてどうかという視点も加えると、かなりややこしくなるんです。
ただでさえ、ミステリーの感想って書きづらいじゃないですか。
特に私は基本「ネタバレ」はしない主義なので、その辺のさじ加減が難しいんですよ。
まあそういったことで、少し奥歯に物が挟まったような感じになるかと思いますが、以下より各話の感想を述べていきたいと思います。犯人やトリック、事の真相に関わるようなことはなるべく避けますが、内容に関してはある程度触れていますので、ご注意ください。
それではさっそく見てまいりましょう!
各話タイトルと執筆された作家さんは以下の通り。
●朝の目撃者/昼休みの探偵…………谷川ニコ
●絵文字 vs. 絵文字 Mk-II…………市川憂人
●踵の下の空白…………岡崎琢磨
●モテないし合コンに行く…………坂上秋成
●モテないし一人になる…………円居挽
なお、各作家さんへの事前の印象などは
今週のわたモテ簡易感想(ネタバレなし)はないので、小説アンソロジー第2弾について少し触れてみる
https://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-409.html
こちらで述べていますので、参考にどうぞ。
●朝の目撃者/昼休みの探偵(谷川ニコ)
今回も冒頭に原作者を配置しているわけですが、印象は前回とは全然違いますね。
はっきり言ってしまうと、これは「ミステリー」じゃありません。
「ミステリー」として評価するなら0点ですね。「小説」としてもせいぜい2点くらいかなあ。
ただ、「わたモテ」としては満点ですね。
ていうか、わたモテオムニバス中の一話を文字起こししたかのような作品ですから。
それこそ、喪192の没ネタをこちらに回してきたんじゃないかと思うくらいw
内容としては2本立てになっているんですけど、「朝の目撃者」がゆりもこ漫才、「昼休みの探偵」がネモゆりもこのトリオ漫才といったところですか。中身はまったくないに等しいですけど、彼女たちの会話劇を楽しむ分には満足度の高いものになっています。
要は「ミステリー漫才」なんですよ。ミステリーというお題を元に仲間と大喜利をしているようなものなんです。これをミステリー小説だと銘打って単独出版したら大炎上しますよw
まあ強いて言うなら、巻末の「あとがき」が“謎解き”になっているかな?
なんでこういう内容になったかがわかりますw そういった意味では一冊丸ごと使った壮大な「メタミステリ」になっていると言えなくもないかも。
そうそう、前回では谷川作品についていなかった挿絵が今回はあるんですけど、これがなんというか…正直、とってつけたかのようなものなんですよw 他の作家さんの挿絵とは、いろんな意味でえらい違いです。
いかに谷川さんが今回の「ミステリー」縛りに苦労されていたかが伺えますねw
まあ、個人的にツボだったのは、「ドスケベ偵クロキ」と、最後のオチかな。
いろんな意味でメタミステリしてますw
(あと、ゆりちゃんを主人公にした「陰キャ探偵・田村ゆり」を読んでみたい)
●絵文字 vs. 絵文字 Mk-II(市川憂人)
今回、個人的に一番気になっていた作品がこれ。
なにしろ、うっちーと二木さんの推理合戦という触れ込みですからね。これに私が飛びつかないわけがないでしょうw
内容としては、夏休みにもこっちの水着が盗まれた事件の濡れ衣を着せられたうっちーが、絵文字Mk-IIこと二木さんとともに推理していくというものです。タイトルや触れ込みのような“VS”感はあまりありませんでしたね。どちらかというと二人で協力して真相に迫る、みたいな感じかと。
舞台設定的には、夏合宿が終わった後の夏休みのある一日といったところでしょうか。
さすが新本格の新鋭だけあって、「ミステリー」としては一番本格的な内容だったと思います。ダイイングメッセージや疑似的な密室的状況、ロジカルに仮定と検証を積み重ねながら進めていく推理など、謎解きとしての面白さは今回の中でも随一でしたね。まあ、ツッコミどころはありますけどw
現場の見取り図があるのがまたポイント高い!これがあると、ミステリーを読んでるという実感が湧いてきますよねw
「小説」としては可もなく不可もなく、といったところかなあ。ミステリー的には一番納得のいくものでしたが、そこから話が広がらないんですよね。だからなんだという。良くも悪くもパズラー的なミステリーだなと感じました。
ただ、「わたモテ」としてはかなり満足のいくものでした。うっちーの一人称視点というのも新鮮でしたし、二木さんとの絡みも原作ではほぼない状態なので、二次創作としても楽しめました。原作でこういうシーンが見たい!というのを自らの手で実現するのも二次創作の醍醐味ですからね。
うっちーが時々もこっちとの思い出(?)を振り返るところもよかったです。彼女がもこっちに少しずつ蠱惑化していった過程が感じ取れるかも?w
でも、うっちーと二木さんはいいんですけど、他のキャラには若干の違和感があったかな。特に宮ちゃんはうっちー目線だからか、キャラとしての厚みみたいなものを感じられませんでしたね。最初はひょっとしたら彼女が犯人かと思ってましたw
個人的に面白かったところは「人を絵文字で表すとき、自らもまた絵文字で表されるのだよ……」ですね。
いかにも凪さんがいいそうででも絶対言わないだろう的な感じが好きですw
●踵の下の空白(岡崎琢磨)
意外…といったら失礼ですが、今回の中で最も心を奪われた作品でした。私としてはもうこれが読めただけでも今回のアンソロジーの意味はあったと言いたいですね。そのくらい素晴らしかったと思います。
内容としてはゆうちゃんというキャラを優しく丁寧に掘り下げた「スピンオフ」的なものになっています。
高校受験を失敗したところから始まり、不安だった入学初日、中村砂羽ちゃんとの出会い(喪170のここを参照)、初めての彼氏……。そして高校二年生になり、新しいクラスで清塚聖という子と友達になるのだが…といった感じでしょうか。
「ミステリー」としては「日常の謎」系統に入るでしょう。清塚さんはクラスの中で孤立しているのですが、それには理由があって…といったものになっています。その辺はさすがデビュー作が「珈琲店タレーランの事件簿」シリーズであった岡崎さんらしいですね。
原作のエピソードと時折交錯しながら進んでいく青春ミステリは、実に小気味よいものでした。
ただ、謎の奥に秘められた人間の深層心理は決してライトなものではありません。エゴだったり同調圧力だったり、そこには人の弱さやずるさがはっきり存在しています。
それに対して見て見ぬふりをするのではなく、かといって通り一遍の正論を振り回すのでもなく、あくまで等身大の自分のままで必死にどうにかしようと奔走するゆうちゃんの姿は、読者の心を熱くさせることでしょう。
そして、その結末は実に清々しいものでありながら、どこか泣きたくなるような切実性がありました。
そう、それは少女が一つの出来事を経て、髪を切ったように。
「小説」として素晴らしいのもさることながら、「ミステリー」としての完成度も相当高いものだったと思います。
大掛かりなトリックや意外な犯人といったものを期待している方にとっては物足りない内容だったかもしれませんが、「日常の謎」としては実によくできていました。
なにより、探偵役であるゆうちゃんにそれを解き明かす必要性がはっきりとあるのがよかったですね。2年の一学期の打ち上げ会までに解決しないといけないというところはサスペンスに近い緊張感がありました。
しかも、探偵役がポンコツなだけにハラハラさせるんですよねw でもそこは、「わたモテ」らしい解決法がきちんと提示されているので安心して楽しめました。
そういった意味で、「わたモテ」としての面白さもけっこうあったんじゃないかと思います。まあネタ的な要素はほとんどないですし、全体的な空気は決して軽くはありませんでしたけど。
個人的に好きなシーンはゆうちゃんが「美紀ちゃんと一緒だよ」と言うところですね。
このシーンがあることで、物語の結末が決して甘いだけのものになっていないんです。優しさも狡さもどちらも人間が持ち得るものなんだと思える。そういうところが好きですね。
「踵の中の空白」というタイトルが一つの伏線というか、物語を解き明かすヒントになっているところも素晴らしい。
「空白」の意味を理解した時、思わず泣きそうになっている自分がいましたよ。
●モテないし合コンに行く(坂上秋成)
さて、今回で一番賛否両論分かれるだろうなあと思ったのがこれですね。ていうか、炎上物件かな?w
実際、Amazonのレビューでも物議を呼んでいるようですし。
内容としては、タイトル通り「合コンに行く話」です。ネモが声優養成所で知り会った男子からお願いされた合コンの話にもこっちとゆりちゃん、そして加藤さんが参加、そこで不穏な犯行予告めいたことが続いて…といった感じ。
爆発物や脅迫状、しまいには殺人未遂的なことも起ってしまうという、今回の中でももっとも深刻な犯罪が発生する内容になっています。…合コンに行く話なのにねw
そのガチな犯罪要素が「わたモテ」っぽくないのもさることながら、事の真相がかなり攻めたものになっていることが賛否の別れるところでしょう。しかも、犯人が、ねえ?
ただ、私はそれ自体はそれほど気になりませんでした。「それ自体」というのは、犯罪の重大性とか犯人があの人だということですね。
そこに、納得のいく動機とトリックがあれば、別に「ミステリー」として問題ないと思うんですよ。これは「ミステリー小説アンソロジー」なのですから。
第1弾もこれまでの作品もすべて「原作準拠」になってるために、どうしても原作のイメージを壊してはいけないとなりがちですけど、二次創作としてパラレルワールド的に独自の世界観を構築してもいいとは思うんですよね。そこに説得力があれば。
正直、この「合コンに行く」の「ミステリー」部分に私は納得できませんでした。つまり、犯人の動機も犯行のトリックも腑に落ちないんですよ。
――― ここから真相についての一部ネタバレがあります ―――
特に貯金箱については本当に納得できませんね。
犯人のいうことを信用するなら、あれは元々お店にあったアイテムじゃないんですよね?犯人が自ら持ち込んだ物なわけです。それなら、あの事件が起こった際に浦原くんが「誰だ、こんなものをここに置いたのは?この店にはこんなものなかったぞ!」と疑問を投げかけないとおかしいでしょう。
私も含めて、あの場の誰もが元々お店に置いていたものを凶器として使ったんだと思い込んでいたのですから。
あれが外から持ち込まれたものだとすると、かなり話が変わってくるはずです。
犯人の動機もおかしいですね。
サイコパスっぽい感じにしたのはまだしも、そもそも合理性に欠けると思うんですよ。
あそこまでやらなくても、もこっちを行かせなければいいだけの話じゃないですか。わざわざ犯罪の実行犯として捕まる危険まで冒してまでやることとは思えません。そこまで思考が狂った犯人というのならわかりますけど、あの人はその辺のことはちゃんと理解できる人ですよね?それはやばいとかサイコパスとかとは別の次元のことです。
それに、そこまで無理に止めるつもりはなかったんだけど連絡先を交換しようとしたから実行したという動機もおかしい。あえて透明の糸まで用意していつでも落とせるようにした段階で、最初からやるつもり満々でしょう。
もこっちに対する言い訳なのかもしれませんが、それにしても不自然な発言です。
――――――――――― ここまで ―――――――――――
…とまあ、そんな感じで後半の「ミステリー」部分にはかなり不満がありました。
でも、前半の雰囲気はわりと好きなんですよ。「もしももこっちたちが合コンに行くとしたら」という、IFものとしては楽しい感じに仕上がっているんです。もこっちの1人称語りもうまくハマっていますし、「わたモテ」としても「小説」としてもいい出来になっているんですね。
要は「ミステリー」縛りがこの作品を残念な形にしてしまっているんです。
「ミステリー」にしなきゃいけないという枠にとらわれずに、単に「合コン」ネタでワイワイ楽しいドタバタ劇に徹していたらもっといい作品になっていただろうにと思うと、すごくもったいない気がしましたね。
今回でなく、前回のアンソロで普通の小説として参加されていたら、きっと素晴らしいものになっていたと思います。
個人的に好きなところは合コンの相手男子3人のキャラですね。あまりに馬鹿馬鹿しくて笑えますw
何しろ、ラッパー、チャラ男、バンドマンですからw
ラッパーの彼なんていきなり「YO-YO! 自己紹介言っとく? 俺の名前はカツヤa.k.a. デリーロ!」とか、もう最初の挨拶からしておかしいw これで声優志望とか頭湧いてんのかw
どいつもこいつもテンプレ丸出しの感じで、それに対するもこっちのツッコミがまた冴えるんですよね。
「怖いよ、渋谷の皿怖いよ…」とかw
この馬鹿馬鹿しいノリで最後までいって欲しかったな。
●モテないし一人になる(円居挽)
さあ、今回もやっていきましたよ、「わたモテ大好きTwitterお兄さん」がw
前回はただ一人「ミステリー」を書いてきた円居さんですが、今回もがっつり「ミステリー」しています。
しかも、これは前もって告知されていましたが、「谷川ニコ作品クロスオーバーミステリー」になっているんですね。
どういうことかというと、幕張を舞台にした谷川ニコ作品として、「海浜秀学院のシロイハル」、「クズとメガネと文学少女(偽)」、そして「ライト姉妹」(便宜上略称にさせていただきます)とのコラボレーション作品になっているんですよ。
なので、これらの作品を知ってないと、逆に楽しめないかもしれませんね。良くも悪くもハードルが高いものになっているかもしれません。
内容としては、喪186(前編)と(後編)の間に挟まるものになっています。つまり、文化祭の「映画」プレゼンの予行演習終了直後の放課後の出来事を描いたものです。
表紙の注意書きに「※この作品は『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』20巻の内容に触れています」とあるのはそういうことなんですね。
映画の脚本をまとめるのにもっと集中したいということで、一人駅前のネットカフェ「アクレシオ」に向かうもこっち、そこで彼女は思いがけない事件に巻き込まれ参考人として控室で話を聞かれることになるわけですが、そこで一緒になるのが「シロイハル」の棗先輩だったり、「クズメガネ」のおーりこと織川衣栞だったり、「ライト姉妹」のお姉ちゃんこと水樹希美だったりするわけです。
(あと、思いもかけないあの人が再登場しています。しかも今回は谷川さんの挿絵付き!これはかなり貴重かも)
この「アクレシオ」という舞台が絶妙ですよね。この四作品に共通して登場する場所といえば、ここしかないのですから。(わたモテでいえば喪151を参照)
「ミステリー」としてはまたしてもやられましたね。前回も円居さんの作品はかなりアクロバティックなものでしたが、今回もかなり趣向を凝らしています。
もっとも、ミステリーをそれなりに読んできた方なら、最初の文章の「形式」からしてなんとなく察してしまうかもしれません。細かく時間系列を分けた章の区切り方というのは、どうしてもじょ…じゅつトリックを思い起こすものがありますからねw 語り手に注目しておけば必然的にそこに仕掛けられている罠には気づけるでしょう。
え?私?
いやだなあ、わかるわけないじゃないですかw
284ページをめくった瞬間、あの「十角館の殺人」の衝撃が再び蘇ってきましたよ、ええ。
ある意味、これこそが新本格へのオマージュというか、露骨に「十角」してんな~と思いました。まあもちろん負け惜しみなんですけどw
ただ、全体的なムードとしてかなり重苦しいものがありましたね。そこは前の「モテないしラブホに行く」とは全然雰囲気が違います。
事の真相もなんだかモヤモヤする感じで、すっきりしないんですよ。前述の284ページの衝撃はともかく、その後に語られる内容にはちょっと腑に落ちないものがありましたね。てか、監視カメラ仕事しろよ!
まあしかし、前回では「ゆりちゃんの表情問題」に一つの解釈を提示してくれた円居さんですが、今回もある問題についてそれなりの答えを見い出してくださってます。
それが喪187から191に渡って続いた「南さん編」におけるある点についてなのですが、実はこれ、表紙の段階ですでに伏線があったんですよね。
そう、
「※この作品は『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』20巻の内容に触れています」
この注意書きはもこっちのプレゼン云々だけではなく、「あの子」の心情についても当てはまることだったんです。
そこに気付いてから再読すると、いろいろ新たな気づきがあって面白いですよ。
冒頭でおーりが語る謎、「あの子はどうしてあんなにさみしそうな顔をしていたのか」。
実はこれこそが、この話のもっとも大きな「ミステリー」だったということに心底驚かされましたね。
全体的には前回以上に満足のいくものになっていました。
ただ、冒頭でも言ったように、面白さをどこに置くかでかなり評価が分かれる作品集でもあるなとは思いました。
個人的にはなんといっても「踵の下の空白」ですね。ダントツでこれが一番でした。
あとは「絵文字 vs. 絵文字 Mk-II」「モテないし一人になる」「モテないし合コンに行く」の順かなあ。読後感がよろしくないものはやっぱり苦手ですね。
「ミステリー」としても「小説」としても、そして「わたモテ」としても全体的にバランスの取れた話が自分としてはよかったです。まあ人によっては、無難にまとまり過ぎてつまらないという向きもあるかもしれませんが。
その辺のバランスの振り方は、たぶん人によって変わるのかなとは思います。
あ、谷川さんの「朝の目撃者/昼休みの探偵」はそもそもミステリーじゃないので評価外ですw
ていうか、「あとがき」と合わせて読むと味わい深いものになるかもしれませんね。
で、その「あとがき」ですけど、これが実に痛快というか最高に笑えますw
冒頭から「シロイハル」の顛末についての暴露というか愚痴ですからねw
この人の自虐的な毒吐きは本当に面白い。
で、そこから今回の谷川さん担当のミステリーについての言い訳というか、ボヤキにつながる流れはもはや神業ですね。地の文の書き方を忘れたには笑ったw だから会話だけなのかw
しかもこれ、4ページ半もあるんですよ。文章が書けないといいながらこのボリュームw これ自体が壮大なネタですよねw もう本当に天才としか言いようがありません。必読!
前回同様、最後には各先生方のあとがきコメントが載っているのですが、これまたそれぞれの個性がにじみ出ていて面白かったですね。
坂上先生の真意はここで窺うことができますよ。決して奇を衒ったわけではないんです。
円居さんは相変わらずですし、市川さんもまあそうだろうなあと思わせるものになっているのですが、その中でも岡崎さんのコメントには感銘を受けましたね。
作品同様、とても真摯な方なんだなと思いました。
まあとにかく、買って損はありませんよ。
好みはそれぞれでしょうけど、必ず自分のフィーリングにフィットする作品があるはずです。
そして、できれば第3弾を実現させましょう!
わたモテファンなら間違いなくマスト!確実に手に入れるなら、通販か電子書籍で!
市川さんのデビュー作「ジェリーフィッシュは凍らない」は今読み始めたところですけど、海外ミステリーを読んでいるような重厚感があって面白いですね。
「マリア&漣シリーズ」の最新作「ボーンヤードは語らない」はこちら。
岡崎さんの最新文庫である「夏を取り戻す」も今読み始めたところです。タレーランとは全然雰囲気が変わっていて驚き!
岡崎さんの最新作「Butterfly World 最後の六日間」はこちら。
坂上さんはマンガを題材にした青春もの「モノクロの君に恋をする」も書かれています。
坂上さんの最新作「紫ノ宮沙霧のビブリオセラピー 夢音堂書店と秘密の本棚」はこちら。
円居挽さんの代表作「FGOミステリーシリーズ」は同じ星海社から出ています。
なんと、あの「カイジ」のノベライズ「カイジ ファイナルゲーム 小説版」も書かれているとのこと。
こちらのアンソロジーも忘れずにどうぞ。

今回の表紙はシンプルでわかりやすい。(ちょっとベタすぎるかな?という気もしないでもないですけどw)
前回はなかなか書店で見つけることが出来ずに苦労したので、今回はあらかじめネット通販で購入。
7日には無事届いたのですが、2回目のワクチン接種などでなかなかじっくり読む機会がなく、ようやく先日読み終わりました。
まず最初に言っておきますと、すごく面白かったです。
ごく一部を除いて(笑)、どれもちゃんとミステリーしてましたし、小説としての読み応えも十分堪能できました。
満足度としては前回に負けていないと思います。
むしろ、ボリュームは前回の倍近くあるのに値段は据え置きなので、コストパフォーマンス的には今回の方が上とも言えるでしょう。
ただ、いざ感想となると、けっこう難しいんですね。
というのも、「ミステリー」縛りというのが意外な形でネックになっているような気がするんです。
つまり、「小説」としての面白さと「ミステリー」としての面白さと、どっちにウェイトを置くかで評価が変わってきそうな部分があるんですよ。
おまけに「わたモテ」としてどうかという視点も加えると、かなりややこしくなるんです。
ただでさえ、ミステリーの感想って書きづらいじゃないですか。
特に私は基本「ネタバレ」はしない主義なので、その辺のさじ加減が難しいんですよ。
まあそういったことで、少し奥歯に物が挟まったような感じになるかと思いますが、以下より各話の感想を述べていきたいと思います。犯人やトリック、事の真相に関わるようなことはなるべく避けますが、内容に関してはある程度触れていますので、ご注意ください。
それではさっそく見てまいりましょう!
各話タイトルと執筆された作家さんは以下の通り。
●朝の目撃者/昼休みの探偵…………谷川ニコ
●絵文字 vs. 絵文字 Mk-II…………市川憂人
●踵の下の空白…………岡崎琢磨
●モテないし合コンに行く…………坂上秋成
●モテないし一人になる…………円居挽
なお、各作家さんへの事前の印象などは
今週のわたモテ簡易感想(ネタバレなし)はないので、小説アンソロジー第2弾について少し触れてみる
https://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-409.html
こちらで述べていますので、参考にどうぞ。
●朝の目撃者/昼休みの探偵(谷川ニコ)
今回も冒頭に原作者を配置しているわけですが、印象は前回とは全然違いますね。
はっきり言ってしまうと、これは「ミステリー」じゃありません。
「ミステリー」として評価するなら0点ですね。「小説」としてもせいぜい2点くらいかなあ。
ただ、「わたモテ」としては満点ですね。
ていうか、わたモテオムニバス中の一話を文字起こししたかのような作品ですから。
それこそ、喪192の没ネタをこちらに回してきたんじゃないかと思うくらいw
内容としては2本立てになっているんですけど、「朝の目撃者」がゆりもこ漫才、「昼休みの探偵」がネモゆりもこのトリオ漫才といったところですか。中身はまったくないに等しいですけど、彼女たちの会話劇を楽しむ分には満足度の高いものになっています。
要は「ミステリー漫才」なんですよ。ミステリーというお題を元に仲間と大喜利をしているようなものなんです。これをミステリー小説だと銘打って単独出版したら大炎上しますよw
まあ強いて言うなら、巻末の「あとがき」が“謎解き”になっているかな?
なんでこういう内容になったかがわかりますw そういった意味では一冊丸ごと使った壮大な「メタミステリ」になっていると言えなくもないかも。
そうそう、前回では谷川作品についていなかった挿絵が今回はあるんですけど、これがなんというか…正直、とってつけたかのようなものなんですよw 他の作家さんの挿絵とは、いろんな意味でえらい違いです。
いかに谷川さんが今回の「ミステリー」縛りに苦労されていたかが伺えますねw
まあ、個人的にツボだったのは、「ドスケベ偵クロキ」と、最後のオチかな。
いろんな意味でメタミステリしてますw
(あと、ゆりちゃんを主人公にした「陰キャ探偵・田村ゆり」を読んでみたい)
●絵文字 vs. 絵文字 Mk-II(市川憂人)
今回、個人的に一番気になっていた作品がこれ。
なにしろ、うっちーと二木さんの推理合戦という触れ込みですからね。これに私が飛びつかないわけがないでしょうw
内容としては、夏休みにもこっちの水着が盗まれた事件の濡れ衣を着せられたうっちーが、絵文字Mk-IIこと二木さんとともに推理していくというものです。タイトルや触れ込みのような“VS”感はあまりありませんでしたね。どちらかというと二人で協力して真相に迫る、みたいな感じかと。
舞台設定的には、夏合宿が終わった後の夏休みのある一日といったところでしょうか。
さすが新本格の新鋭だけあって、「ミステリー」としては一番本格的な内容だったと思います。ダイイングメッセージや疑似的な密室的状況、ロジカルに仮定と検証を積み重ねながら進めていく推理など、謎解きとしての面白さは今回の中でも随一でしたね。まあ、ツッコミどころはありますけどw
現場の見取り図があるのがまたポイント高い!これがあると、ミステリーを読んでるという実感が湧いてきますよねw
「小説」としては可もなく不可もなく、といったところかなあ。ミステリー的には一番納得のいくものでしたが、そこから話が広がらないんですよね。だからなんだという。良くも悪くもパズラー的なミステリーだなと感じました。
ただ、「わたモテ」としてはかなり満足のいくものでした。うっちーの一人称視点というのも新鮮でしたし、二木さんとの絡みも原作ではほぼない状態なので、二次創作としても楽しめました。原作でこういうシーンが見たい!というのを自らの手で実現するのも二次創作の醍醐味ですからね。
うっちーが時々もこっちとの思い出(?)を振り返るところもよかったです。彼女がもこっちに少しずつ蠱惑化していった過程が感じ取れるかも?w
でも、うっちーと二木さんはいいんですけど、他のキャラには若干の違和感があったかな。特に宮ちゃんはうっちー目線だからか、キャラとしての厚みみたいなものを感じられませんでしたね。最初はひょっとしたら彼女が犯人かと思ってましたw
個人的に面白かったところは「人を絵文字で表すとき、自らもまた絵文字で表されるのだよ……」ですね。
いかにも凪さんがいいそうででも絶対言わないだろう的な感じが好きですw
●踵の下の空白(岡崎琢磨)
意外…といったら失礼ですが、今回の中で最も心を奪われた作品でした。私としてはもうこれが読めただけでも今回のアンソロジーの意味はあったと言いたいですね。そのくらい素晴らしかったと思います。
内容としてはゆうちゃんというキャラを優しく丁寧に掘り下げた「スピンオフ」的なものになっています。
高校受験を失敗したところから始まり、不安だった入学初日、中村砂羽ちゃんとの出会い(喪170のここを参照)、初めての彼氏……。そして高校二年生になり、新しいクラスで清塚聖という子と友達になるのだが…といった感じでしょうか。
「ミステリー」としては「日常の謎」系統に入るでしょう。清塚さんはクラスの中で孤立しているのですが、それには理由があって…といったものになっています。その辺はさすがデビュー作が「珈琲店タレーランの事件簿」シリーズであった岡崎さんらしいですね。
原作のエピソードと時折交錯しながら進んでいく青春ミステリは、実に小気味よいものでした。
ただ、謎の奥に秘められた人間の深層心理は決してライトなものではありません。エゴだったり同調圧力だったり、そこには人の弱さやずるさがはっきり存在しています。
それに対して見て見ぬふりをするのではなく、かといって通り一遍の正論を振り回すのでもなく、あくまで等身大の自分のままで必死にどうにかしようと奔走するゆうちゃんの姿は、読者の心を熱くさせることでしょう。
そして、その結末は実に清々しいものでありながら、どこか泣きたくなるような切実性がありました。
そう、それは少女が一つの出来事を経て、髪を切ったように。
「小説」として素晴らしいのもさることながら、「ミステリー」としての完成度も相当高いものだったと思います。
大掛かりなトリックや意外な犯人といったものを期待している方にとっては物足りない内容だったかもしれませんが、「日常の謎」としては実によくできていました。
なにより、探偵役であるゆうちゃんにそれを解き明かす必要性がはっきりとあるのがよかったですね。2年の一学期の打ち上げ会までに解決しないといけないというところはサスペンスに近い緊張感がありました。
しかも、探偵役がポンコツなだけにハラハラさせるんですよねw でもそこは、「わたモテ」らしい解決法がきちんと提示されているので安心して楽しめました。
そういった意味で、「わたモテ」としての面白さもけっこうあったんじゃないかと思います。まあネタ的な要素はほとんどないですし、全体的な空気は決して軽くはありませんでしたけど。
個人的に好きなシーンはゆうちゃんが「美紀ちゃんと一緒だよ」と言うところですね。
このシーンがあることで、物語の結末が決して甘いだけのものになっていないんです。優しさも狡さもどちらも人間が持ち得るものなんだと思える。そういうところが好きですね。
「踵の中の空白」というタイトルが一つの伏線というか、物語を解き明かすヒントになっているところも素晴らしい。
「空白」の意味を理解した時、思わず泣きそうになっている自分がいましたよ。
●モテないし合コンに行く(坂上秋成)
さて、今回で一番賛否両論分かれるだろうなあと思ったのがこれですね。ていうか、炎上物件かな?w
実際、Amazonのレビューでも物議を呼んでいるようですし。
内容としては、タイトル通り「合コンに行く話」です。ネモが声優養成所で知り会った男子からお願いされた合コンの話にもこっちとゆりちゃん、そして加藤さんが参加、そこで不穏な犯行予告めいたことが続いて…といった感じ。
爆発物や脅迫状、しまいには殺人未遂的なことも起ってしまうという、今回の中でももっとも深刻な犯罪が発生する内容になっています。…合コンに行く話なのにねw
そのガチな犯罪要素が「わたモテ」っぽくないのもさることながら、事の真相がかなり攻めたものになっていることが賛否の別れるところでしょう。しかも、犯人が、ねえ?
ただ、私はそれ自体はそれほど気になりませんでした。「それ自体」というのは、犯罪の重大性とか犯人があの人だということですね。
そこに、納得のいく動機とトリックがあれば、別に「ミステリー」として問題ないと思うんですよ。これは「ミステリー小説アンソロジー」なのですから。
第1弾もこれまでの作品もすべて「原作準拠」になってるために、どうしても原作のイメージを壊してはいけないとなりがちですけど、二次創作としてパラレルワールド的に独自の世界観を構築してもいいとは思うんですよね。そこに説得力があれば。
正直、この「合コンに行く」の「ミステリー」部分に私は納得できませんでした。つまり、犯人の動機も犯行のトリックも腑に落ちないんですよ。
――― ここから真相についての一部ネタバレがあります ―――
特に貯金箱については本当に納得できませんね。
犯人のいうことを信用するなら、あれは元々お店にあったアイテムじゃないんですよね?犯人が自ら持ち込んだ物なわけです。それなら、あの事件が起こった際に浦原くんが「誰だ、こんなものをここに置いたのは?この店にはこんなものなかったぞ!」と疑問を投げかけないとおかしいでしょう。
私も含めて、あの場の誰もが元々お店に置いていたものを凶器として使ったんだと思い込んでいたのですから。
あれが外から持ち込まれたものだとすると、かなり話が変わってくるはずです。
犯人の動機もおかしいですね。
サイコパスっぽい感じにしたのはまだしも、そもそも合理性に欠けると思うんですよ。
あそこまでやらなくても、もこっちを行かせなければいいだけの話じゃないですか。わざわざ犯罪の実行犯として捕まる危険まで冒してまでやることとは思えません。そこまで思考が狂った犯人というのならわかりますけど、あの人はその辺のことはちゃんと理解できる人ですよね?それはやばいとかサイコパスとかとは別の次元のことです。
それに、そこまで無理に止めるつもりはなかったんだけど連絡先を交換しようとしたから実行したという動機もおかしい。あえて透明の糸まで用意していつでも落とせるようにした段階で、最初からやるつもり満々でしょう。
もこっちに対する言い訳なのかもしれませんが、それにしても不自然な発言です。
――――――――――― ここまで ―――――――――――
…とまあ、そんな感じで後半の「ミステリー」部分にはかなり不満がありました。
でも、前半の雰囲気はわりと好きなんですよ。「もしももこっちたちが合コンに行くとしたら」という、IFものとしては楽しい感じに仕上がっているんです。もこっちの1人称語りもうまくハマっていますし、「わたモテ」としても「小説」としてもいい出来になっているんですね。
要は「ミステリー」縛りがこの作品を残念な形にしてしまっているんです。
「ミステリー」にしなきゃいけないという枠にとらわれずに、単に「合コン」ネタでワイワイ楽しいドタバタ劇に徹していたらもっといい作品になっていただろうにと思うと、すごくもったいない気がしましたね。
今回でなく、前回のアンソロで普通の小説として参加されていたら、きっと素晴らしいものになっていたと思います。
個人的に好きなところは合コンの相手男子3人のキャラですね。あまりに馬鹿馬鹿しくて笑えますw
何しろ、ラッパー、チャラ男、バンドマンですからw
ラッパーの彼なんていきなり「YO-YO! 自己紹介言っとく? 俺の名前はカツヤa.k.a. デリーロ!」とか、もう最初の挨拶からしておかしいw これで声優志望とか頭湧いてんのかw
どいつもこいつもテンプレ丸出しの感じで、それに対するもこっちのツッコミがまた冴えるんですよね。
「怖いよ、渋谷の皿怖いよ…」とかw
この馬鹿馬鹿しいノリで最後までいって欲しかったな。
●モテないし一人になる(円居挽)
さあ、今回もやっていきましたよ、「わたモテ大好きTwitterお兄さん」がw
前回はただ一人「ミステリー」を書いてきた円居さんですが、今回もがっつり「ミステリー」しています。
しかも、これは前もって告知されていましたが、「谷川ニコ作品クロスオーバーミステリー」になっているんですね。
どういうことかというと、幕張を舞台にした谷川ニコ作品として、「海浜秀学院のシロイハル」、「クズとメガネと文学少女(偽)」、そして「ライト姉妹」(便宜上略称にさせていただきます)とのコラボレーション作品になっているんですよ。
なので、これらの作品を知ってないと、逆に楽しめないかもしれませんね。良くも悪くもハードルが高いものになっているかもしれません。
内容としては、喪186(前編)と(後編)の間に挟まるものになっています。つまり、文化祭の「映画」プレゼンの予行演習終了直後の放課後の出来事を描いたものです。
表紙の注意書きに「※この作品は『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』20巻の内容に触れています」とあるのはそういうことなんですね。
映画の脚本をまとめるのにもっと集中したいということで、一人駅前のネットカフェ「アクレシオ」に向かうもこっち、そこで彼女は思いがけない事件に巻き込まれ参考人として控室で話を聞かれることになるわけですが、そこで一緒になるのが「シロイハル」の棗先輩だったり、「クズメガネ」のおーりこと織川衣栞だったり、「ライト姉妹」のお姉ちゃんこと水樹希美だったりするわけです。
(あと、思いもかけないあの人が再登場しています。しかも今回は谷川さんの挿絵付き!これはかなり貴重かも)
この「アクレシオ」という舞台が絶妙ですよね。この四作品に共通して登場する場所といえば、ここしかないのですから。(わたモテでいえば喪151を参照)
「ミステリー」としてはまたしてもやられましたね。前回も円居さんの作品はかなりアクロバティックなものでしたが、今回もかなり趣向を凝らしています。
もっとも、ミステリーをそれなりに読んできた方なら、最初の文章の「形式」からしてなんとなく察してしまうかもしれません。細かく時間系列を分けた章の区切り方というのは、どうしてもじょ…じゅつトリックを思い起こすものがありますからねw 語り手に注目しておけば必然的にそこに仕掛けられている罠には気づけるでしょう。
え?私?
いやだなあ、わかるわけないじゃないですかw
284ページをめくった瞬間、あの「十角館の殺人」の衝撃が再び蘇ってきましたよ、ええ。
ある意味、これこそが新本格へのオマージュというか、露骨に「十角」してんな~と思いました。まあもちろん負け惜しみなんですけどw
ただ、全体的なムードとしてかなり重苦しいものがありましたね。そこは前の「モテないしラブホに行く」とは全然雰囲気が違います。
事の真相もなんだかモヤモヤする感じで、すっきりしないんですよ。前述の284ページの衝撃はともかく、その後に語られる内容にはちょっと腑に落ちないものがありましたね。てか、監視カメラ仕事しろよ!
まあしかし、前回では「ゆりちゃんの表情問題」に一つの解釈を提示してくれた円居さんですが、今回もある問題についてそれなりの答えを見い出してくださってます。
それが喪187から191に渡って続いた「南さん編」におけるある点についてなのですが、実はこれ、表紙の段階ですでに伏線があったんですよね。
そう、
「※この作品は『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』20巻の内容に触れています」
この注意書きはもこっちのプレゼン云々だけではなく、「あの子」の心情についても当てはまることだったんです。
そこに気付いてから再読すると、いろいろ新たな気づきがあって面白いですよ。
冒頭でおーりが語る謎、「あの子はどうしてあんなにさみしそうな顔をしていたのか」。
実はこれこそが、この話のもっとも大きな「ミステリー」だったということに心底驚かされましたね。
全体的には前回以上に満足のいくものになっていました。
ただ、冒頭でも言ったように、面白さをどこに置くかでかなり評価が分かれる作品集でもあるなとは思いました。
個人的にはなんといっても「踵の下の空白」ですね。ダントツでこれが一番でした。
あとは「絵文字 vs. 絵文字 Mk-II」「モテないし一人になる」「モテないし合コンに行く」の順かなあ。読後感がよろしくないものはやっぱり苦手ですね。
「ミステリー」としても「小説」としても、そして「わたモテ」としても全体的にバランスの取れた話が自分としてはよかったです。まあ人によっては、無難にまとまり過ぎてつまらないという向きもあるかもしれませんが。
その辺のバランスの振り方は、たぶん人によって変わるのかなとは思います。
あ、谷川さんの「朝の目撃者/昼休みの探偵」はそもそもミステリーじゃないので評価外ですw
ていうか、「あとがき」と合わせて読むと味わい深いものになるかもしれませんね。
で、その「あとがき」ですけど、これが実に痛快というか最高に笑えますw
冒頭から「シロイハル」の顛末についての暴露というか愚痴ですからねw
この人の自虐的な毒吐きは本当に面白い。
で、そこから今回の谷川さん担当のミステリーについての言い訳というか、ボヤキにつながる流れはもはや神業ですね。地の文の書き方を忘れたには笑ったw だから会話だけなのかw
しかもこれ、4ページ半もあるんですよ。文章が書けないといいながらこのボリュームw これ自体が壮大なネタですよねw もう本当に天才としか言いようがありません。必読!
前回同様、最後には各先生方のあとがきコメントが載っているのですが、これまたそれぞれの個性がにじみ出ていて面白かったですね。
坂上先生の真意はここで窺うことができますよ。決して奇を衒ったわけではないんです。
円居さんは相変わらずですし、市川さんもまあそうだろうなあと思わせるものになっているのですが、その中でも岡崎さんのコメントには感銘を受けましたね。
作品同様、とても真摯な方なんだなと思いました。
まあとにかく、買って損はありませんよ。
好みはそれぞれでしょうけど、必ず自分のフィーリングにフィットする作品があるはずです。
そして、できれば第3弾を実現させましょう!
わたモテファンなら間違いなくマスト!確実に手に入れるなら、通販か電子書籍で!
市川さんのデビュー作「ジェリーフィッシュは凍らない」は今読み始めたところですけど、海外ミステリーを読んでいるような重厚感があって面白いですね。
「マリア&漣シリーズ」の最新作「ボーンヤードは語らない」はこちら。
岡崎さんの最新文庫である「夏を取り戻す」も今読み始めたところです。タレーランとは全然雰囲気が変わっていて驚き!
岡崎さんの最新作「Butterfly World 最後の六日間」はこちら。
坂上さんはマンガを題材にした青春もの「モノクロの君に恋をする」も書かれています。
坂上さんの最新作「紫ノ宮沙霧のビブリオセラピー 夢音堂書店と秘密の本棚」はこちら。
円居挽さんの代表作「FGOミステリーシリーズ」は同じ星海社から出ています。
なんと、あの「カイジ」のノベライズ「カイジ ファイナルゲーム 小説版」も書かれているとのこと。
こちらのアンソロジーも忘れずにどうぞ。
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