私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!喪191~「南さん編」は終わり、そして本当の南さんの物語が始まる~
6月3日に「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」がブラウザ版で喪191に更新されました。
二度あることは三度あると言いますが、今回はまさにその言葉通りの回になりました。
というか、むしろ「三度目の正直」のほうが合ってるかなw
喪189のラストで一度終わったと思い、喪190でこういう締めもわたモテらしいなと思ったものでしたが、
今回がまさに三度目の正直、長かった「南さん編」もようやくここで一区切りつくことになります。
ただ、改めて読んでみてふと思ったんですけど、これで「終わり」というよりここから「始まる」ような気がしたんですよね。
喪189の簡易感想の時にイメソンで「グッドバイからはじめよう」を選んだことを少し思い出しましたよ。
“終わりは はじまり”というフレーズは、むしろ今回にぴったりだったような気もしないでもなかったです。
一体何が終わり、何が始まったのか。
今回はその辺を踏まえながら一つ一つ見て行きたいと思います。
それでは、さっそく見てまいりましょう!
すでにあるのが当たり前になりつつある「表紙」。少なくとも、喪187から続く「南さん編」ではもはや付き物といってもいいでしょうね。
これまで「未来」「過去」「現在」と巡ってきた表紙ですが、最後は再び「過去」、それも私たちが未だ知らない“過去”になっています。
桜の舞う景色、そして今とは髪型の違う真子とゆりちゃんからもわかるように、今回は高校に入学したばかりの彼女たちを切り取った一枚です。この様子だと、4人ともまだ親しくなって間もない感じですね。
入学式の後、帰り道で思わず会話が弾んでその場でしばらく立ち話といったところでしょうか。どうでもいいけど、通行に邪魔だなw
(こういう時ってすみませんのひと声も掛けづらくて困るんだよなあ…下手すると何コイツ邪魔すんじゃねーよみたいな冷たい目線を向けられるし)
桜といえば3年の始業式(喪122)や、ネモの過去編で描かれた入学式(特別編8)を思い出さずにはいられないわけですが、その辺の暗喩や隠された意味などは喪191の簡易感想のコメント欄でさゆさんが詳しく説明されているので、そちらにお任せしてしまいましょう。私なんかよりはるかにわかりやすく解説されているのでぜひ一読されることをオススメします。
というわけで、今回は「モテないし繰り返す」。
思わず目を瞠るようなまぶしい光景と相まって、なんとも意味深なタイトルですが、ここにも何か「始まり」の予感を感じさせますね。
何かが終わって、また何かが始まる。そんな繰り返しの物語を示唆しているかのようです。
ここではそれぞれ4人のたたずまいが実に印象的に描かれています。
ひたすら楽しそうに笑っている南さん。両手を前に組んでお嬢様然としたサチ。カバンの紐を持つ姿が今と変わらぬ真面目さを表している髪型も初々しい真子。そして、髪型も表情もそっけない(笑)ゆりちゃん。
どれも目を引く姿ですが、ここで一番の注目ポイントはやはり南さんとゆりちゃんが真っ正面から対峙していることでしょう。
実はこの中で彼女たちだけが同じ中学出身なんですよね。
だから二人の会話の中に、真子とサチが加わるような形になっているわけです。(おそらく真子とサチはまだ知り会ったばかりのはず)
この構図は思いのほか重要です。
いつしか二人は袂を分かつことになるわけですが、この頃はまだお互いそれほど嫌ってはいなかったんですね。
ここで思い出すのが南さん編の始まりである喪187。
そこで南さんは二木さんを見てなぜかゆりちゃんのことを思い出します。
実はこれこそが南さん編のもう一つの大きなテーマだったのかもしれません。
「モテないし繰り返す」。
なんとも意味深な言葉です。
喪187も喪184の繰り返しから始まりました。
ひょっとすると、喪187の表紙で南さんの頭に浮かんでいたのは、この光景だったのかもしれません。
前回の二木さんとの話を踏まえて、サチのいるクラスをそっと覗く南さんですが、教室内まではなかなか入っていけないようです。
少し前までは当たり前のようにサチーノリーとやっていたものでしたが、今の状況下では見えない結界が存在しているかのようですね。
今となっては知り合いがまったくいないようなものですから、二の足を踏んでしまう気持ちはよくわかります。
そうなくても別のクラスって、なんとなく入りづらい雰囲気がありますよね。そこには別のコミュニティが存在しているわけで、自分はいわば異分子なわけです。
今まではサチたちがいたことで、そういったことを認識せずに済んでいただけだったのでしょう。
そんな彼女の目に映るのは、以前出禁を言い渡されたことのあるうっちーとその友達。
無意識ではあるのでしょうけど、やはりそこには精神的な壁があるのかもしれませんね。
そんな彼女に、うっちーだけが気づきます。
誰もまったく気にも留めていない中、彼女だけがその存在に気が付いたのです。
いやあ、もうこの構図だけでしびれてしまうわけですが、これは南さんの気持ち的なハードルをイメージした描写でもあると思うんですよね。
だからこそ、こんな若干ホラーテイストな感じになっているのではないでしょうか。
普通に考えたらこんなの、逆に注目を浴びますからねw
なんかちっこい女の子が顔半分だけ出して寂しそうにこちらを見てるぞ…怖っ、みたいなw
昼休みにもう一度出直してきた南さんですが、そこでもサチの姿は見当たりません。
そこにいるのは、普段通り一緒にお昼を囲んでいるうっちーたちの面々ばかり。
南さん的にも少し前までは4人で一緒にお昼をしていただけに、どうしても目が行ってしまうんでしょうね。
微笑ましい光景ではありますが、それゆえになんだか切なくも感じてしまう場面です。
そんな時、マキとその彼氏が通りかかります。教室に入るわけでもないようですから、これから二人で食堂でも行く感じでしょうか。
あんなことがあったとはいえ、南さんにとっては一応知った仲ではあるのですから、声を掛けるのも当然でしょう。別に仲直りしたいわけではなくてもサチの居場所くらいは聞いてもと思ったのではないでしょうか。
でも、返ってきたのは厳しい現実でした。
もはや、マキのほうは彼女のことを「ないもの」として扱うことになっていたのですね。
言うほど、彼氏もアゴ出てませんよねw
これでアイ●シュタインとか、逆に稲ちゃん怒るわw
ていうか、彼氏は事情を知らないんですね。それもなんだかなー。
一応友達だということはこれまで普通にお昼をしていたことからわかっているわけですし、事の顛末くらいは教えてあげてもいいような気がしますけど。
この状況で、素知らぬ顔で「何が?」と返されるほうがよっぽど怖いというか引くわw
これ、逆に彼氏は冷める感じなんじゃないかなあ。少なくとも、私だったらこいつなんかやばいな…くらいには思いますね。
まあ、今は南さんがいる手前なんでもないふりをしてるだけで、後から説明するつもりなのかもしれませんけど。(でもたぶんそうじゃないような気がする…)
南さんとしては前回のノリのこともありますが、やはり目の前で無視されてしまうと傷つきますよね。
自分たちの今までやってきたことの報いとはいえ、こうも簡単に崩れ去ってしまうと、今までの日々は一体何だったんだろうと思ってしまうのは仕方ないことかと思います。
今日のところはサチのことはもういいかと諦めかけていたその時、
そんな南さんにうっちーが声を掛けます。
それは彼女にとってはまさに思ってもみなかったことで、なんだか戸惑っているかのように見えます。
自分の常識とはあまりにかけ離れた行動ゆえに、頭の理解がついていけていないんでしょうね。
美馬っていうんですね。サチではピンとこなくて、苗字で聞き返すのが実にうっちーらしいなあと思います。
宮崎さんのことは宮ちゃんと呼んでますから小宮山さんほどではないんでしょうけど、基本名前呼びやあだ名呼びはしない子ですよね。(例外はまこっちくらいか)
凪さんは「さっちゃん」呼びをしていましたし、まったく知らない仲でもないはずなのに。きっとこれが彼女の距離感なんでしょう。
しかも「さん」付けは絶対といっていいほどしないんですよね。加藤さんを「加藤」と呼ぶのなんて彼女くらいなんじゃないでしょうかw
本当にニュートラルというか、相手を見て態度を変えたりしない姿勢が感じられます。
普通あまり仲のよい相手でもないなら、来てるかどうかもわからないと思うんですけど、彼女の場合はそれがさも当たり前かのように「来てたと思うけど」と返せるわけです。
誰も居ない机を見て「多分どこかに行ってると思う」とだけ伝えて去ろうとするうっちーに対して、南さんは驚きを隠せないままこう尋ねます。
「あんた前さ 私に顔見せんな的なこと言わなかった?」と。
それはもちろん、
(コミックス16巻;喪156より)
この時のことを言っているわけですが、これに対するうっちーの答えが衝撃的でした。
「言った? 忘れた」
まさかの忘れた発言w
衝撃のあまり、一瞬うっちーなりの照れ隠しかとも思ったのですが……
WWWWW自覚があったのかよwww
つーか、“たまに”という時点でやっぱりあまり自覚はないかw
でも、もう隠すつもりもないところがすごいですね。
なんかもう、見ていてすがすがしいw
というわけで、今回はもうここしかないでしょう。
一番笑ったシーンは当然ここになります!
南さんの戸惑いというか、なんか腑に落ちない感じがまたおかしいですねw
何度もうん?となってるのが笑えるw
まあそりゃそうだよなあw
私は気にしないから!と言われてもw
イマイチ意味を計りかねるw
ここでようやくかよたちも気づき始めますが、やっぱり状況をわかっていなかったようですね。南さんが身を隠すように教室をそっと覗いていたことにすら気づいていなかったのでしょう。
南さんの「助かった」という言葉が胸に迫りますね。
南さんの表情が印象的ですね。
こんな彼女は初めてかもしれません。
前回の「ごめん」もそうですが、目に見える成長よりもこういう本当に些細な変化こそが重要なんだと思います。
それはうっちーにとっては、なんでもないこと。
ことさら口にするまでもない当たり前のことなのですが、彼女にとってそれは、とても大きくてあたたかいものだったのでしょう。
そのたった一言が誰かの心の支えになり得ることを彼女は身を持って知ったのです。
今回の個人的ベストキバ子はこの彼女にあげたいと思います。
うっちーのこの言葉に嘘はないと思います。
照れ隠しや謙遜ではなく、本当に「どうでもよかった」。
きっと彼女にとってはそれは当たり前のことで、だからこそ修学旅行でももこっちのジャージを投げ入れたりもできた。
でも考えてみればそうですよね。
どうでもいいから特に気を遣うこともなく、事務的に処理できるわけですから。
逆に言えば、どうでもよくない相手にはうまく声をかけられないのが彼女なのでしょう。
こんな風に変に持論をぶつわけでもなく、自然に言える彼女のことがますます好きになりましたね。
「それでも」とぎこちなく感謝を伝える南さんに、彼女はさりげなくこう答えます。
「美馬と仲直りできたらいいね」と。
会話の流れでなんとなくわかるとは言ってましたが、これはひょっとすると照れ隠しなのかもしれませんw
うっちーの言葉に後押しされて、昨日二木さんが見たという場所に向かってみる南さんでしたが、そこであっさりサチと出会います。
最初からここに出向けばよかったんじゃないかという気もしますが、南さんにとっては未開の地だったのかもしれません。
「こんな所に」とも言っていましたし、教室に足を踏み入れる以上に勇気がいたことでしょう。
でも本当に彼女に会いたいなら、その未踏の地に行かなければダメなんですよね。
サチの気持ちはあの教室にはなく、この普段足を運ぶことのない「一人になれる場所」だったのですから。
内心動揺してるくせに、なんとか冷静さを保とうとしているサチがかわいいですねw
さもあらかじめ想定していたかのように「あー小陽ちゃんも来ちゃったか」と言ってしまうあたりが逆にバレバレですw
ていうか、二木さんを「あれ」呼ばわりすんなw
この「三年生の男子」については、喪192(後編)で明らかになります。(“三”が“二”の間違いだったということからもうおわかりですよね?)
まあそれはさておき、この段階ではまだサチが「のっぺらぼう」なのが面白いですね。
南さんの前ではいまだ仮面をつけたままでいたかったのかもしれません。
足なんか組んで、あえて顔を上げて、いかにもなんでもないかのように振る舞っていますけど、それが逆になんか不自然ですよね。
必死になって「のっぺらぼう」を死守してるかのように思えてしまいます。
でももうわかっちゃってるんですよね、南さんには。
それはまるで昨日自分が二木さんにイライラしていたのと同じようなものだったから。
だからこんなお誘いもできるんです。
今までの自分、そしてこれからの自分を自覚できたから。
相手の態度に一喜一憂するよりも自分の思いをまず伝えることが大事だということに気付いたから。
それは相手へのやさしさというより、自分に対するけじめだったような気がします。
今回の個人的ベストシーン。
少しずつ焦点が定まっていくような、連続した感じがすごくサチらしいなという気がしました。
いきなり見えてきたのではなくって、徐々に光を帯びてきた感じなんですよね。
それは南さんの目にもそう映ったことだろうと思います。
それももちろん南さん。
でも、今の南さんはもうちょっと先に進んでいるんですよね。
相手の見えない気持ちを推し量りながら、持ち手のカードをどう切っていくかに頭を働かせる余裕があるんです。
サチはそれを単に「本音」を言ってるだけととらえていましたが、少し見くびり過ぎかなとも思いましたね。
今の彼女はもう無邪気なだけの「こはるちゃん」ではないのですから。
単に本音を言うのと、本音を武器にするということとでは大きな違いがあります。
そこには無邪気なだけではない、確固たる意志があるのです。
この二人の「本音」対「本音」の攻防は見ていて面白いですね。
サチの頭の中にかつてのこはるちゃんの影がある分、いくらか分が悪いように見えます。
それをここで言うかw
つーか、リアルにかわいいかどうかなんてマンガにおいては禁断の話題というか、ある意味メタ領域だぞw
でもこれには、サチの月並みな「ぼっち」攻撃も歯が立ちませんねw
どうやら南さんは、「戦い方」もこの何日かで学んだようです。
WWWさすがにこれにはサチも黙っていられませんw
そっちがそうくるならとばかりに、これまた禁断の「デブ」カードを切ってきますw
サチの顔で「……」とやられるとマジで怖いですね。
なんか静かに切れている感じがハンパないw
南さんも「ほぼ平均体重」とか反撃してましたけど(“ほぼ”ってなんだよw)、
「平均体重とかデブ」と簡単にいなされていましたねw
(ていうか、平均がデブって…統計学に喧嘩を売るような暴論w)
WWWWW
もはや泥沼化w
歯並び悪いもお面みたいな顔も公式発言として捉えていいわけねw
つーか、本音を言い合う悪口合戦というより、メタっぽいのぶちまけ合戦と化してるようなw
あえて「顔も整ってる」というあたり、ああ見えてサチもけっこう堪えていたのかもしれませんね。
まあ普通に「私の方がかわいい」と言われて「……」と黙るくらいだからなあw
WWWWW
なんて不毛な戦いw
ただお互いが傷つくだけで、どちらにとってもメリットがないというねw
殴り合いをしたわけでもないのに、なんかお互いの「ハァ…ハァ…」が聞こえてくるかのようw
ここまで南さんが計算していたかどうかはともかく、このタイミングでのこれは効きますよね。
本当絶妙だと思います。これこそが「本音を武器にする」ということなんです。
サチもそれがわかったのではないでしょうか。
南さんが単に泣き言を言いに来たのではないということを。
そして裏ではよく小陽ちゃんの悪口を言ってると返すサチに対して、
南さんはそんなことは百も承知だとばかりに「表でだよ!」と言い返すのです。
今までの彼女たちの関係はいない人間の「陰口」を言い合うことで成り立っていたわけですが、それではもうやっていけないということを二人はこの何日かで思い知りました。
でも今さらうまく本音を隠しつつうまくやるなんて高等手段はできません。
それならば、私たちなりのやり方でもう一度やってみない?ということなんでしょう。
これは、南さんからの一つの取引なんだと思います。
それだけ彼女もいろんなことを学んだのでしょう。その結果がこの交渉だったのではないでしょうか。
ここで二木さんとその取り巻き?であるオタク達を除外するというのもサチらしいというか、最後のプライドみたいなものなんでしょうね。
そうすることで、彼女としてもなんとか面目を保ちたかったのです。
でも、「あれ」から「あの娘」になってるあたり、ほんの少し綻びも見えたような気もしますがw
この後の会話がまた実に興味深いものがあります。
「まこっちならOKだけど田村さんは……まあいいか……」
「なんで田村?」
「一年の時グループだったじゃん」
「いや私が嫌なんだけど 中学一緒だったから間違って入れちゃっただけだし」
ここで今回の「表紙」を誰もが見返したくなるのではないでしょうか。
本当に“間違って入れちゃった”だけなのか。
それが「本音」だったのかは、あの時正面から向き合っていた二人とあの表情を見て判断してみてください。
さて、舞台は一転して「映画班」の方に移るのですが……
タピオカwww
こいつのパワーで押し通そうとする癖はホントやめろw
ちょっと目を離した瞬間にwww
張り込み中かよw ていうか、見張ってたってw
いったい、二木さんが何をしたんだって感じですよねw 犯人扱いかよw
つーか、二人見ていないでさっさと声かけろw
なんで食べ終わるのを待ってんだw
変な時だけ変な気遣いすんなw
もはや何をやりたいのかよくわからなくなってるw
もこっちもちょっとヤケになりつつありますよねw
ネモが急に正気に戻ったかのような顔をしてるの、ホント草w
ゆりちゃんと真子の表情も面白いw
なんでまこっちは少しうれしそうなんだw
そんななんやかんやの中で、ふと放たれた言葉。
それはもこっちに対してではなく、“田村”に向けたかのようです。
「二木(あいつ)なら多分体育館の2階にいる」
その言葉をゆりちゃんは確かにその耳で聞いたはずです。
ここでも思い出すのは、あの「表紙」。
笑ってはいないものの、南さんの顔と言葉は明らかにあの時と同じ“田村”に向けてのものでした。
ゆりちゃんもそれがわかっているからでしょう、決して目を逸らさずにしっかりと彼女の目を見ていますよね。
そして、もこっちが「キバ子」を認めた段階で「南さん編」は終わったのでしょう。
と同時に、ここから南さんの物語は本当の意味で始まったんだと思います。
実はもこっちが南さんを意識するのって、3年生になってからほぼ初めてなんですよね。
そういった意味でも、ここが「南さん編」と「もこっち編」との交差する場所だったのではないでしょうか。
伝えるべきことは伝えたとばかりに「んじゃね」とだけ告げて去っていく南さんを、ゆりちゃんはただ見つめるしかありません。
でもその眼には少し驚きの色があるように見えます。
そしてうれしそうに「南さん!」と声を掛ける真子。
反応はそれぞれ違いますが、南さんの言葉は彼女たちにとっても何かを感じさせるものであったようです。
一方、体育館の2階すらどこかわからずにネモに尋ねるもこっちw
この二組の対比もなんだかいいですね。
同じ情報を告げられても、気に掛けるポイントが全然違うわけです。
去っていく南さんを背景に、ゆりちゃんとまこっちの会話で物語は終わりを迎えます。
それはまるでまた違う物語が始まるかのように。
もこっちたちの「映画」がここから始まるように、南さんもまた、新たな場所へと向かったのではないでしょうか。
というわけで、「南さん編」はこうして幕を閉じたわけですが、なんか最終的には南さんとゆりちゃんの話になっていたような気もします。
最初に読んだときには前回の「後日談」みたいな印象も受けたのですが、今改めて読み直すとなんだか「予告編」を見ているような気分にもなりましたね。
そういった意味でも「繰り返す」なのかなとも思いましたし、だからこそここから「始まる」のかなという感じもしました。
なぜ南さんは二木さんの場所を教える気になったのか。
それはたぶん、うっちーの言葉にあるような気がします。
すなわち、「私にとってはどうでもいいこと」だから教えるつもりになったのかなと。
逆に言えば、知ってるのに変に「知らない」と言うのも意地を張ってるようで馬鹿らしいなと思ったのではないでしょうか。
それはサチの言う「やさしさ」というより、自分を偽らずに正面から向き合いたいという意志の表れ。
本音とは単に悪口をいうことではないということにようやく気付いたからなんですね。
これは決して贔屓目ではなく、うっちーがそのきっかけを彼女に与えてくれたんだと思います。
正直、初読時はまだ続くんだ…という気持ちもありました。
でも今回、ゆりちゃんに向き合う彼女を見て、ひょっとするとここまで描くことが南さん編の本当の目的だったのではないかという気がしました。そこまで至るまでには5話分を費やさないと到底たどり着けない道のりだったのでは、と。
そしてそれは、間を持たせたり後々への余韻を残すようなことも不要だと思ったのでしょうね。というか、そういうまどろっこしいやり方では機能しないと判断したような気がします。
南さんの気持ちの微妙な変化というのはある種「生もの」であって、変に寝かすと腐ってしまうと、そう思ったのではないでしょうか。
本当に南さんの「変化」というのはそれだけ繊細なニュアンスが求められると思うんですよ。
ある意味、彼女は子どものままでここまで来てしまったところがあるだけに、下手すると振り幅が大きすぎて人格崩壊にまでいきかねませんから。
そういう点からしても、変に温存したくなかったのかなという風に感じました。
まあとにかく、今回はうっちーですよ。もう実質うっちー回だったでいいでしょう。(きっぱり)
彼女があそこで声を掛けなかったら、南さんはあの場所に行くのをなんだかんだ理由を付けていかなかったかもしれませんし、何よりゆりちゃんたちに二木さんのことを伝えようとはしなかったのではないでしょうか。
うっちーの「なんでもない」言葉が、南さんの背中を後押ししたわけです。
それはたぶん本当になんでもないような“変化”だったでしょうけど、でもきっと彼女にとって大きな一歩になったんだと思います。
そう、彼女の道のりはきっとここから始まるのです。
南さん編も映画編も実は19巻から始まっていると言ってもいいかもしれませんね。
黒木のことになると「たまに」オカしくなる、ねえ……
サチの居た場所はすでに先客がいたりするんだよなあ。
今の人間関係の源流は13巻にあったのではないでしょうか。
「どうしたらいい子に」というまこっちの心配はやっぱり少しずれていたんだなと再認識。
二度あることは三度あると言いますが、今回はまさにその言葉通りの回になりました。
というか、むしろ「三度目の正直」のほうが合ってるかなw
喪189のラストで一度終わったと思い、喪190でこういう締めもわたモテらしいなと思ったものでしたが、
今回がまさに三度目の正直、長かった「南さん編」もようやくここで一区切りつくことになります。
ただ、改めて読んでみてふと思ったんですけど、これで「終わり」というよりここから「始まる」ような気がしたんですよね。
喪189の簡易感想の時にイメソンで「グッドバイからはじめよう」を選んだことを少し思い出しましたよ。
“終わりは はじまり”というフレーズは、むしろ今回にぴったりだったような気もしないでもなかったです。
一体何が終わり、何が始まったのか。
今回はその辺を踏まえながら一つ一つ見て行きたいと思います。
それでは、さっそく見てまいりましょう!

すでにあるのが当たり前になりつつある「表紙」。少なくとも、喪187から続く「南さん編」ではもはや付き物といってもいいでしょうね。
これまで「未来」「過去」「現在」と巡ってきた表紙ですが、最後は再び「過去」、それも私たちが未だ知らない“過去”になっています。
桜の舞う景色、そして今とは髪型の違う真子とゆりちゃんからもわかるように、今回は高校に入学したばかりの彼女たちを切り取った一枚です。この様子だと、4人ともまだ親しくなって間もない感じですね。
入学式の後、帰り道で思わず会話が弾んでその場でしばらく立ち話といったところでしょうか。どうでもいいけど、通行に邪魔だなw
(こういう時ってすみませんのひと声も掛けづらくて困るんだよなあ…下手すると何コイツ邪魔すんじゃねーよみたいな冷たい目線を向けられるし)
桜といえば3年の始業式(喪122)や、ネモの過去編で描かれた入学式(特別編8)を思い出さずにはいられないわけですが、その辺の暗喩や隠された意味などは喪191の簡易感想のコメント欄でさゆさんが詳しく説明されているので、そちらにお任せしてしまいましょう。私なんかよりはるかにわかりやすく解説されているのでぜひ一読されることをオススメします。
というわけで、今回は「モテないし繰り返す」。
思わず目を瞠るようなまぶしい光景と相まって、なんとも意味深なタイトルですが、ここにも何か「始まり」の予感を感じさせますね。
何かが終わって、また何かが始まる。そんな繰り返しの物語を示唆しているかのようです。
ここではそれぞれ4人のたたずまいが実に印象的に描かれています。
ひたすら楽しそうに笑っている南さん。両手を前に組んでお嬢様然としたサチ。カバンの紐を持つ姿が今と変わらぬ真面目さを表している髪型も初々しい真子。そして、髪型も表情もそっけない(笑)ゆりちゃん。
どれも目を引く姿ですが、ここで一番の注目ポイントはやはり南さんとゆりちゃんが真っ正面から対峙していることでしょう。
実はこの中で彼女たちだけが同じ中学出身なんですよね。
だから二人の会話の中に、真子とサチが加わるような形になっているわけです。(おそらく真子とサチはまだ知り会ったばかりのはず)
この構図は思いのほか重要です。
いつしか二人は袂を分かつことになるわけですが、この頃はまだお互いそれほど嫌ってはいなかったんですね。
ここで思い出すのが南さん編の始まりである喪187。
そこで南さんは二木さんを見てなぜかゆりちゃんのことを思い出します。
実はこれこそが南さん編のもう一つの大きなテーマだったのかもしれません。
「モテないし繰り返す」。
なんとも意味深な言葉です。
喪187も喪184の繰り返しから始まりました。
ひょっとすると、喪187の表紙で南さんの頭に浮かんでいたのは、この光景だったのかもしれません。

前回の二木さんとの話を踏まえて、サチのいるクラスをそっと覗く南さんですが、教室内まではなかなか入っていけないようです。
少し前までは当たり前のようにサチーノリーとやっていたものでしたが、今の状況下では見えない結界が存在しているかのようですね。
今となっては知り合いがまったくいないようなものですから、二の足を踏んでしまう気持ちはよくわかります。
そうなくても別のクラスって、なんとなく入りづらい雰囲気がありますよね。そこには別のコミュニティが存在しているわけで、自分はいわば異分子なわけです。
今まではサチたちがいたことで、そういったことを認識せずに済んでいただけだったのでしょう。
そんな彼女の目に映るのは、以前出禁を言い渡されたことのあるうっちーとその友達。
無意識ではあるのでしょうけど、やはりそこには精神的な壁があるのかもしれませんね。

そんな彼女に、うっちーだけが気づきます。
誰もまったく気にも留めていない中、彼女だけがその存在に気が付いたのです。
いやあ、もうこの構図だけでしびれてしまうわけですが、これは南さんの気持ち的なハードルをイメージした描写でもあると思うんですよね。
だからこそ、こんな若干ホラーテイストな感じになっているのではないでしょうか。
普通に考えたらこんなの、逆に注目を浴びますからねw
なんかちっこい女の子が顔半分だけ出して寂しそうにこちらを見てるぞ…怖っ、みたいなw

昼休みにもう一度出直してきた南さんですが、そこでもサチの姿は見当たりません。
そこにいるのは、普段通り一緒にお昼を囲んでいるうっちーたちの面々ばかり。
南さん的にも少し前までは4人で一緒にお昼をしていただけに、どうしても目が行ってしまうんでしょうね。
微笑ましい光景ではありますが、それゆえになんだか切なくも感じてしまう場面です。

そんな時、マキとその彼氏が通りかかります。教室に入るわけでもないようですから、これから二人で食堂でも行く感じでしょうか。
あんなことがあったとはいえ、南さんにとっては一応知った仲ではあるのですから、声を掛けるのも当然でしょう。別に仲直りしたいわけではなくてもサチの居場所くらいは聞いてもと思ったのではないでしょうか。
でも、返ってきたのは厳しい現実でした。
もはや、マキのほうは彼女のことを「ないもの」として扱うことになっていたのですね。

言うほど、彼氏もアゴ出てませんよねw
これでアイ●シュタインとか、逆に稲ちゃん怒るわw
ていうか、彼氏は事情を知らないんですね。それもなんだかなー。
一応友達だということはこれまで普通にお昼をしていたことからわかっているわけですし、事の顛末くらいは教えてあげてもいいような気がしますけど。
この状況で、素知らぬ顔で「何が?」と返されるほうがよっぽど怖いというか引くわw
これ、逆に彼氏は冷める感じなんじゃないかなあ。少なくとも、私だったらこいつなんかやばいな…くらいには思いますね。
まあ、今は南さんがいる手前なんでもないふりをしてるだけで、後から説明するつもりなのかもしれませんけど。(でもたぶんそうじゃないような気がする…)
南さんとしては前回のノリのこともありますが、やはり目の前で無視されてしまうと傷つきますよね。
自分たちの今までやってきたことの報いとはいえ、こうも簡単に崩れ去ってしまうと、今までの日々は一体何だったんだろうと思ってしまうのは仕方ないことかと思います。
今日のところはサチのことはもういいかと諦めかけていたその時、

そんな南さんにうっちーが声を掛けます。
それは彼女にとってはまさに思ってもみなかったことで、なんだか戸惑っているかのように見えます。
自分の常識とはあまりにかけ離れた行動ゆえに、頭の理解がついていけていないんでしょうね。

美馬っていうんですね。サチではピンとこなくて、苗字で聞き返すのが実にうっちーらしいなあと思います。
宮崎さんのことは宮ちゃんと呼んでますから小宮山さんほどではないんでしょうけど、基本名前呼びやあだ名呼びはしない子ですよね。(例外はまこっちくらいか)
凪さんは「さっちゃん」呼びをしていましたし、まったく知らない仲でもないはずなのに。きっとこれが彼女の距離感なんでしょう。
しかも「さん」付けは絶対といっていいほどしないんですよね。加藤さんを「加藤」と呼ぶのなんて彼女くらいなんじゃないでしょうかw
本当にニュートラルというか、相手を見て態度を変えたりしない姿勢が感じられます。
普通あまり仲のよい相手でもないなら、来てるかどうかもわからないと思うんですけど、彼女の場合はそれがさも当たり前かのように「来てたと思うけど」と返せるわけです。

誰も居ない机を見て「多分どこかに行ってると思う」とだけ伝えて去ろうとするうっちーに対して、南さんは驚きを隠せないままこう尋ねます。
「あんた前さ 私に顔見せんな的なこと言わなかった?」と。
それはもちろん、

この時のことを言っているわけですが、これに対するうっちーの答えが衝撃的でした。
「言った? 忘れた」
まさかの忘れた発言w
衝撃のあまり、一瞬うっちーなりの照れ隠しかとも思ったのですが……

WWWWW自覚があったのかよwww
つーか、“たまに”という時点でやっぱりあまり自覚はないかw
でも、もう隠すつもりもないところがすごいですね。
なんかもう、見ていてすがすがしいw
というわけで、今回はもうここしかないでしょう。
一番笑ったシーンは当然ここになります!
南さんの戸惑いというか、なんか腑に落ちない感じがまたおかしいですねw
何度もうん?となってるのが笑えるw
まあそりゃそうだよなあw
私は気にしないから!と言われてもw
イマイチ意味を計りかねるw

ここでようやくかよたちも気づき始めますが、やっぱり状況をわかっていなかったようですね。南さんが身を隠すように教室をそっと覗いていたことにすら気づいていなかったのでしょう。
南さんの「助かった」という言葉が胸に迫りますね。

南さんの表情が印象的ですね。
こんな彼女は初めてかもしれません。
前回の「ごめん」もそうですが、目に見える成長よりもこういう本当に些細な変化こそが重要なんだと思います。
それはうっちーにとっては、なんでもないこと。
ことさら口にするまでもない当たり前のことなのですが、彼女にとってそれは、とても大きくてあたたかいものだったのでしょう。
そのたった一言が誰かの心の支えになり得ることを彼女は身を持って知ったのです。
今回の個人的ベストキバ子はこの彼女にあげたいと思います。

うっちーのこの言葉に嘘はないと思います。
照れ隠しや謙遜ではなく、本当に「どうでもよかった」。
きっと彼女にとってはそれは当たり前のことで、だからこそ修学旅行でももこっちのジャージを投げ入れたりもできた。
でも考えてみればそうですよね。
どうでもいいから特に気を遣うこともなく、事務的に処理できるわけですから。
逆に言えば、どうでもよくない相手にはうまく声をかけられないのが彼女なのでしょう。
こんな風に変に持論をぶつわけでもなく、自然に言える彼女のことがますます好きになりましたね。
「それでも」とぎこちなく感謝を伝える南さんに、彼女はさりげなくこう答えます。
「美馬と仲直りできたらいいね」と。
会話の流れでなんとなくわかるとは言ってましたが、これはひょっとすると照れ隠しなのかもしれませんw

うっちーの言葉に後押しされて、昨日二木さんが見たという場所に向かってみる南さんでしたが、そこであっさりサチと出会います。
最初からここに出向けばよかったんじゃないかという気もしますが、南さんにとっては未開の地だったのかもしれません。
「こんな所に」とも言っていましたし、教室に足を踏み入れる以上に勇気がいたことでしょう。
でも本当に彼女に会いたいなら、その未踏の地に行かなければダメなんですよね。
サチの気持ちはあの教室にはなく、この普段足を運ぶことのない「一人になれる場所」だったのですから。

内心動揺してるくせに、なんとか冷静さを保とうとしているサチがかわいいですねw
さもあらかじめ想定していたかのように「あー小陽ちゃんも来ちゃったか」と言ってしまうあたりが逆にバレバレですw
ていうか、二木さんを「あれ」呼ばわりすんなw

この「三年生の男子」については、喪192(後編)で明らかになります。(“三”が“二”の間違いだったということからもうおわかりですよね?)
まあそれはさておき、この段階ではまだサチが「のっぺらぼう」なのが面白いですね。
南さんの前ではいまだ仮面をつけたままでいたかったのかもしれません。

足なんか組んで、あえて顔を上げて、いかにもなんでもないかのように振る舞っていますけど、それが逆になんか不自然ですよね。
必死になって「のっぺらぼう」を死守してるかのように思えてしまいます。
でももうわかっちゃってるんですよね、南さんには。
それはまるで昨日自分が二木さんにイライラしていたのと同じようなものだったから。

だからこんなお誘いもできるんです。
今までの自分、そしてこれからの自分を自覚できたから。
相手の態度に一喜一憂するよりも自分の思いをまず伝えることが大事だということに気付いたから。
それは相手へのやさしさというより、自分に対するけじめだったような気がします。

今回の個人的ベストシーン。
少しずつ焦点が定まっていくような、連続した感じがすごくサチらしいなという気がしました。
いきなり見えてきたのではなくって、徐々に光を帯びてきた感じなんですよね。
それは南さんの目にもそう映ったことだろうと思います。

それももちろん南さん。
でも、今の南さんはもうちょっと先に進んでいるんですよね。
相手の見えない気持ちを推し量りながら、持ち手のカードをどう切っていくかに頭を働かせる余裕があるんです。
サチはそれを単に「本音」を言ってるだけととらえていましたが、少し見くびり過ぎかなとも思いましたね。
今の彼女はもう無邪気なだけの「こはるちゃん」ではないのですから。

単に本音を言うのと、本音を武器にするということとでは大きな違いがあります。
そこには無邪気なだけではない、確固たる意志があるのです。
この二人の「本音」対「本音」の攻防は見ていて面白いですね。
サチの頭の中にかつてのこはるちゃんの影がある分、いくらか分が悪いように見えます。

それをここで言うかw
つーか、リアルにかわいいかどうかなんてマンガにおいては禁断の話題というか、ある意味メタ領域だぞw
でもこれには、サチの月並みな「ぼっち」攻撃も歯が立ちませんねw
どうやら南さんは、「戦い方」もこの何日かで学んだようです。

WWWさすがにこれにはサチも黙っていられませんw
そっちがそうくるならとばかりに、これまた禁断の「デブ」カードを切ってきますw
サチの顔で「……」とやられるとマジで怖いですね。
なんか静かに切れている感じがハンパないw
南さんも「ほぼ平均体重」とか反撃してましたけど(“ほぼ”ってなんだよw)、
「平均体重とかデブ」と簡単にいなされていましたねw
(ていうか、平均がデブって…統計学に喧嘩を売るような暴論w)

WWWWW
もはや泥沼化w
歯並び悪いもお面みたいな顔も公式発言として捉えていいわけねw
つーか、本音を言い合う悪口合戦というより、メタっぽいのぶちまけ合戦と化してるようなw
あえて「顔も整ってる」というあたり、ああ見えてサチもけっこう堪えていたのかもしれませんね。
まあ普通に「私の方がかわいい」と言われて「……」と黙るくらいだからなあw

WWWWW
なんて不毛な戦いw
ただお互いが傷つくだけで、どちらにとってもメリットがないというねw
殴り合いをしたわけでもないのに、なんかお互いの「ハァ…ハァ…」が聞こえてくるかのようw

ここまで南さんが計算していたかどうかはともかく、このタイミングでのこれは効きますよね。
本当絶妙だと思います。これこそが「本音を武器にする」ということなんです。
サチもそれがわかったのではないでしょうか。
南さんが単に泣き言を言いに来たのではないということを。
そして裏ではよく小陽ちゃんの悪口を言ってると返すサチに対して、
南さんはそんなことは百も承知だとばかりに「表でだよ!」と言い返すのです。

今までの彼女たちの関係はいない人間の「陰口」を言い合うことで成り立っていたわけですが、それではもうやっていけないということを二人はこの何日かで思い知りました。
でも今さらうまく本音を隠しつつうまくやるなんて高等手段はできません。
それならば、私たちなりのやり方でもう一度やってみない?ということなんでしょう。
これは、南さんからの一つの取引なんだと思います。
それだけ彼女もいろんなことを学んだのでしょう。その結果がこの交渉だったのではないでしょうか。

ここで二木さんとその取り巻き?であるオタク達を除外するというのもサチらしいというか、最後のプライドみたいなものなんでしょうね。
そうすることで、彼女としてもなんとか面目を保ちたかったのです。
でも、「あれ」から「あの娘」になってるあたり、ほんの少し綻びも見えたような気もしますがw
この後の会話がまた実に興味深いものがあります。
「まこっちならOKだけど田村さんは……まあいいか……」
「なんで田村?」
「一年の時グループだったじゃん」
「いや私が嫌なんだけど 中学一緒だったから間違って入れちゃっただけだし」
ここで今回の「表紙」を誰もが見返したくなるのではないでしょうか。
本当に“間違って入れちゃった”だけなのか。
それが「本音」だったのかは、あの時正面から向き合っていた二人とあの表情を見て判断してみてください。
さて、舞台は一転して「映画班」の方に移るのですが……

タピオカwww
こいつのパワーで押し通そうとする癖はホントやめろw

ちょっと目を離した瞬間にwww
張り込み中かよw ていうか、見張ってたってw
いったい、二木さんが何をしたんだって感じですよねw 犯人扱いかよw
つーか、二人見ていないでさっさと声かけろw
なんで食べ終わるのを待ってんだw
変な時だけ変な気遣いすんなw

もはや何をやりたいのかよくわからなくなってるw
もこっちもちょっとヤケになりつつありますよねw
ネモが急に正気に戻ったかのような顔をしてるの、ホント草w
ゆりちゃんと真子の表情も面白いw
なんでまこっちは少しうれしそうなんだw

そんななんやかんやの中で、ふと放たれた言葉。
それはもこっちに対してではなく、“田村”に向けたかのようです。
「二木(あいつ)なら多分体育館の2階にいる」
その言葉をゆりちゃんは確かにその耳で聞いたはずです。

ここでも思い出すのは、あの「表紙」。
笑ってはいないものの、南さんの顔と言葉は明らかにあの時と同じ“田村”に向けてのものでした。
ゆりちゃんもそれがわかっているからでしょう、決して目を逸らさずにしっかりと彼女の目を見ていますよね。
そして、もこっちが「キバ子」を認めた段階で「南さん編」は終わったのでしょう。
と同時に、ここから南さんの物語は本当の意味で始まったんだと思います。
実はもこっちが南さんを意識するのって、3年生になってからほぼ初めてなんですよね。
そういった意味でも、ここが「南さん編」と「もこっち編」との交差する場所だったのではないでしょうか。

伝えるべきことは伝えたとばかりに「んじゃね」とだけ告げて去っていく南さんを、ゆりちゃんはただ見つめるしかありません。
でもその眼には少し驚きの色があるように見えます。
そしてうれしそうに「南さん!」と声を掛ける真子。
反応はそれぞれ違いますが、南さんの言葉は彼女たちにとっても何かを感じさせるものであったようです。
一方、体育館の2階すらどこかわからずにネモに尋ねるもこっちw
この二組の対比もなんだかいいですね。
同じ情報を告げられても、気に掛けるポイントが全然違うわけです。

去っていく南さんを背景に、ゆりちゃんとまこっちの会話で物語は終わりを迎えます。
それはまるでまた違う物語が始まるかのように。
もこっちたちの「映画」がここから始まるように、南さんもまた、新たな場所へと向かったのではないでしょうか。
というわけで、「南さん編」はこうして幕を閉じたわけですが、なんか最終的には南さんとゆりちゃんの話になっていたような気もします。
最初に読んだときには前回の「後日談」みたいな印象も受けたのですが、今改めて読み直すとなんだか「予告編」を見ているような気分にもなりましたね。
そういった意味でも「繰り返す」なのかなとも思いましたし、だからこそここから「始まる」のかなという感じもしました。
なぜ南さんは二木さんの場所を教える気になったのか。
それはたぶん、うっちーの言葉にあるような気がします。
すなわち、「私にとってはどうでもいいこと」だから教えるつもりになったのかなと。
逆に言えば、知ってるのに変に「知らない」と言うのも意地を張ってるようで馬鹿らしいなと思ったのではないでしょうか。
それはサチの言う「やさしさ」というより、自分を偽らずに正面から向き合いたいという意志の表れ。
本音とは単に悪口をいうことではないということにようやく気付いたからなんですね。
これは決して贔屓目ではなく、うっちーがそのきっかけを彼女に与えてくれたんだと思います。
正直、初読時はまだ続くんだ…という気持ちもありました。
でも今回、ゆりちゃんに向き合う彼女を見て、ひょっとするとここまで描くことが南さん編の本当の目的だったのではないかという気がしました。そこまで至るまでには5話分を費やさないと到底たどり着けない道のりだったのでは、と。
そしてそれは、間を持たせたり後々への余韻を残すようなことも不要だと思ったのでしょうね。というか、そういうまどろっこしいやり方では機能しないと判断したような気がします。
南さんの気持ちの微妙な変化というのはある種「生もの」であって、変に寝かすと腐ってしまうと、そう思ったのではないでしょうか。
本当に南さんの「変化」というのはそれだけ繊細なニュアンスが求められると思うんですよ。
ある意味、彼女は子どものままでここまで来てしまったところがあるだけに、下手すると振り幅が大きすぎて人格崩壊にまでいきかねませんから。
そういう点からしても、変に温存したくなかったのかなという風に感じました。
まあとにかく、今回はうっちーですよ。もう実質うっちー回だったでいいでしょう。(きっぱり)
彼女があそこで声を掛けなかったら、南さんはあの場所に行くのをなんだかんだ理由を付けていかなかったかもしれませんし、何よりゆりちゃんたちに二木さんのことを伝えようとはしなかったのではないでしょうか。
うっちーの「なんでもない」言葉が、南さんの背中を後押ししたわけです。
それはたぶん本当になんでもないような“変化”だったでしょうけど、でもきっと彼女にとって大きな一歩になったんだと思います。
そう、彼女の道のりはきっとここから始まるのです。
南さん編も映画編も実は19巻から始まっていると言ってもいいかもしれませんね。
黒木のことになると「たまに」オカしくなる、ねえ……
サチの居た場所はすでに先客がいたりするんだよなあ。
今の人間関係の源流は13巻にあったのではないでしょうか。
「どうしたらいい子に」というまこっちの心配はやっぱり少しずれていたんだなと再認識。
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