【海浜秀学院のシロイハル】電子書籍感想~220円で買える奇跡~
4月12日に「海浜秀学院のシロイハル」が電子コミックスとして発売になりました。
そう、去年の8月に突如として現れ、そのあまりの衝撃的な面白さに(一部で)大反響を巻き起こしたのにもかかわらず、たった3ヶ月で我々の前から姿を消してしまったあの伝説のマンガがついに帰ってきたのです。
期待していた描き下ろしもあとがきもおまけもありません。
すでに発表されていた6話に表紙と目次、そして奥付がついただけのなんとも味気ない作品集になっています。
でも、それでも購入する価値はあります。
何せ、いつでもどこでも何度でも読み返せるのですから。
なにより、ちゃんと「作品」として後世に残せたことは本当に喜ばしいことです。
その祝福の気持ちを購入という形で示すことが、作品に対する敬意にもなることでしょう。
お値段も税込220円と(総ページ数が68ページとはいえ)なかなか良心的です。
今なら販売サイトによってクーポンや無料お試しもあったりしますから、使いようによってはもっとお得に読めることでしょう。
是非叶くんや星くん、そして棗さんにもう一度会いにきてください。
というわけで、発売からすでに2週間経ってしまいましたが、電子コミックスの感想を綴っていこうと思います。
ネタバレありですが、極力画像引用は最小限に留めますので、少しでも気になった方は是非購入をご検討ください。そして奇跡の再連載化を目指しましょう!
なお、連載開始当初の感想が
「【ネタバレあり】海浜秀学院のシロイハルを読んで〜彼らの行く先を最後まで見届ける覚悟〜」、
連載終了時の感想が
「【海浜秀学院のシロイハル】突然の終了について」
こちらにありますので、よかったら合わせてどうぞ。
●第1章
記念すべき第一回。
「海浜秀学院」
「中高一貫の全寮制男子高。」
もう冒頭から痺れます。
この硬質とも言える舞台設定だからこそ、“自慰”というテーマが映えるんですよね。
全寮制の男子校しかもスマホや雑誌等の娯楽もままならない環境下で、ただひたすらに「オナニー道」を追求するそのストイックさが笑いと感動(?)を呼ぶんです。
これが普通の学校での話だったらとてもじゃないですけど笑えませんよ。痛々しすぎて。
世間から隔離された特殊な空間だからこそ、叶くんの主張がリアルに響くわけですし、かろうじて笑いに転化できるわけです。
初回としては完璧ですよね。星くんという語り部がうまい具合に読者への案内役として作用しています。
いきなり主人公の語りから始まったら、おそらくグロテスクな印象だけで終わってしまったことでしょう。
彼のような「常識より」な理解者はこういうエッジのきいた作品には重要なんです。
残念ながら2話以降、彼はほとんど登場しなくなってしまいますが、できれば、叶くんとコンビを組んでバディ物としてのシロイハルも見たかったなと思いますね。
個人的に一番笑ったシーンというか、特に好きなシーンは

ここですねw
星くんの冷静沈着な分析が結果として最高のツッコミとして作用してるという構図がもう最高w
と、同時に、叶くんの「人間性」までもがわずかながら垣間見れるところもいいじゃないですか。
このやりとりの中に、作品の肝となる部分がすべて詰まっているような気がしますね。もう本当に大好きなシーンです。
二人の表情が一貫して変わらないところも大好きw
本当にどこまでも「真面目」なんですよね、彼らは。
●第2章
1章と同時掲載だった第2章ですが、いきなりナレーションがついたことにまずびっくりしましたねw
でも、まるでドキュメンタリー映像を見ているかのような感じで違和感なく入り込むことができました。
とにかく、こういう特殊なマンガにおいては舞台設定が何より重要になってくると思うので、変にキャラに語らせるよりはよかったような気がします。
ていうか、この回はナレーションがツッコミ役としてすごく重要な役目を果たしているんですよね。
一番笑ったシーン(好きなシーン)は、なんといっても

これですしw
「大げさではないかと感じる読者もいるのではないか? しかしそうではない。」
とか
「カップラーメンオナニーを経験した読者ならわかると思うが、」
とか、もう何度見ても笑えますw
絶対にないでしょうけど、映像化されたら是非田口トモロヲ氏でお願いしたいw
星くんが何事かとすぐに駆けつけてくるのも好きw
ちょっとBL系もほんのり期待しちゃえそうな微妙なさじ加減がいいんですよね。
彼がまとめたGノートの完成型も見たかったなあ…(残念ながら彼の登場はここまで)
そういえば、カップ麺をくれた彼もいいキャラでしたよね。
ある意味、この作品における唯一の良心ともいうべき存在でしたw
衝撃的なオチも最高でしたが、「そうだが。」「そうだが!?」も最高w
きっと、星くんとはまた違った味のあるツッコミ役になれただろうに……
●第3章
3話目にして初の「教師」登場。
彼もまたいいキャラでした。続いていればきっとレギュラー化していたことでしょう。
冷徹なようでけっこう懐の深い先生でもあるんですよね。
ていうか、普通あんな場面に遭遇したら発狂したかの如く怒鳴りつけるわw
「ことがことだけに答えることが恥ずかしいのはわかる。」とか、
「できれば恥じてほしかったがまあいい。」とか、(いいのかよw)
「教職に携わって8年間……それなりに生徒に向き合ってきたつもりだ。」とか、
見た目によらず、意外と人情味のある先生なんだなと思いましたよ。
彼に限らず、シロイハルのキャラって実はみんなすごくいい奴らですよね。
狂った環境で狂ったことをやっているのにもかかわらず、人としての大事なところはちゃんとしてるんです。
だからこそよけいにおかしくもあるし、どこかあたたかい気持ちにもさせられます。
やっぱり、その辺のバランスはさすがだなと感心せざるを得ませんね。
オチも最高じゃないですか。
形だけの反省に意味はないとか言っておきながら、親の話が出た途端カリカリカリというw
第1章でもありましたが、親だけには迷惑を掛けたくないという気持ちがあるんでしょうね。
ギャグの裏側にこういう人間味を潜ませておくところはまさに谷川ニコの真骨頂といった感じがします。
まあそれにしてもあの反省文は最高でしたw
「陰茎(ちんこ)」もさることながら(わざわざ補足するなw)、最後が「私も被害者と言う〜」となってるところなんて本当最高すぎるwww
いったいどういう理屈で自分も被害者だとほざいてるんだかw
あれを提出して厳重注意で済んだんだろうかwだとしたら、けっこう甘い学校だなw
ある意味、もこっちの高校よりゆるいだろw
個人的に一番笑ったシーンもあの「反省文」でもよかったんですけど、ここはあえて

これをチョイスしたいw
こういう低温度ながらのハイパーギャグはむちゃくちゃ好みなんですよねえ。
「出していたらここにいない」
もう最高のワードだわw
●第4章
棗さん登場。
当時はもう「男の娘」登場かよwと思ったものでしたが、そんなレベルじゃありませんね。
ツッコミ役としても先輩役としても、そして女装役としてももうすべてが適役としか言いようがないw
どう考えてもここがシロイハルという作品の最高潮だったなあと今となっては思います。
本当だったら、この回から本格的に話が始まるはずだったと思うんですよね。
冒頭の「海浜秀学院」という説明もここからなくなりますし、一対一の会話劇から複数のキャラによる掛け合い劇に移行していくわけです。
キャラの表情もここからすごく豊かになってきますよね。
棗さんの明るく、それでいて少し得体の知れない怪しさが作品を彩りを与えています。
当時、Twitterなどで棗さん祭りが巻き起こったのを懐かしく思い出しますよ。
実際、ここから大きく展開が動きそうな予感がしていたんですよね。
棗さんと叶くんとの関係性やオチの「引き」など、なんか一気に世界が広がった感じがあったんです。
先輩後輩のタテの線もそうですが、「演劇部」(ぶかつ)という組織(?)の影が見えてきたことで作品に奥行きが生まれたような気がしました。
もし、このまま続いていたらどんな物語が待っていたことだろうと想像せずにはいられませんね。
ああ本当にもったいない!
個人的に一番笑ったシーンは悩みますね。
棗さんのツッコミやたかゆきのお母さん(笑)とか、この回はもうほんと全てのコマが面白いんでw
いっそのこと「全部!」と言いたいくらいですよw
とにかくまあいろいろ悩みましたけど、最終的にはやっぱり、

これですかねw
「お母さんごとヌいてしまえば問題ない」というパワーワードがいまだに耳に張り付いて離れませんw
その後の「まだ中学生……それは酷か……」という謎の優しさも最高w
ちゃんと共用PCのルールに順守する姿勢も含めて彼の人間性が根底にあるからこそ、よけいになんだかおかしいんですよねw
●第5章
ある意味、この回こそが「最終回」だったのかもしれません。
当時も「今回で第一部完」という感想を呟いたんですけど、なんかここで叶くんの本当の「目的」が見えてきたような気がしたんですよね。
彼が棗さんに協力してほしかったこと。
俺はオナニーのやり方は教えられますが、オカズは提供できません。
棗さんにはああいう奴らにこれからもオカズを与えてもらいたいと思ってます。
そこにあるのは単なる己の快楽の追求ではなく、むしろ慈愛の精神ですよね。
彼なりに恵まれない人たちに「与えよう」としているわけです。
そして、それで性癖が歪んでしまったら……と返すなつめさんに対して彼は
オナニーに歪みなんかありません。
と答えます。
ここにこそ彼の信条というか、人生観が込められているのではないでしょうか。
本当に真面目なんですよね。ストイックと言ってもいいでしょう。
そこには一切浮ついた考えはないんです。本気でオナニーの可能性を広げようと日々精進しようとしている。その姿勢があるからこそ、実際の行動の落差に私たちは笑えるんです。
なにしろ

これだけぶちまけておいて、最後のオチが
「つーか、お前の話じゃねーか。」ですからw
感動がそのまま笑いと直結している稀有な漫画だと思います。
個人的に一番笑ったシーンは

ここしかありませんw
連載が続いていたら、彼のこの憎めない調子の良さがもっと見れたかと思うと、
なんだか悔しい気持ちでいっぱいになりますね。
●第6章
「外出編」ということもありますが、
今回コミックスの中で読むと、最終回というよりむしろ「番外編」のような印象を持ちますね。
ただ、再び冒頭で
「海浜秀学院」
「全寮制男子高校」
と入る感じに戻るのはちょっと最終回っぽいかもw
最終回にして初の「外」というのに、まったく女性が出てこないところもストイックさを醸し出していていいw
オカズを選ぶ際の「エロ本はないから男性週刊誌」とか、「スパイスで少年漫画のエロもいれる」あたりの論理も、実にわかりみが深いものがありました。(特に少年漫画のエロを“スパイス”と表現するところに共感しまくりw)
個人的に一番笑ったシーンは

これw
なんか突然、敵役っぽい感じを出してるけど、お前も相当おかしいからなw
なんでカラオケ屋のにいちゃんが読唇術をマスターしてんだよw
「一体どういうつもりだ!こちらに対する挑発か!?」とか、いちいちかませ犬っぽい雰囲気なのも笑えるw
お前がいかに主人公の前に立ち塞がる強キャラを演出しようとも、今回で終わりだってのw
おまけに最後の最後での一言がひどいんですよねw
前回あれだけ崇高なオナニー精神を見せておきながら、そんなオチかよというw
でも叶くんは最後の最後まで立派だったと思いますよ。
まさに「礼に始まり、礼に終わる」、彼のオナニー道の精神をそこに見たような気がしました。(そんな締めかよ)
いやあ、何度読んでも最高ですね。
こんなに攻めた設定のギャグ漫画にもかかわらず、まったく独りよがりなところがなく、気持ちよく笑えてなおかつ爽やかな気持ちにさえさせてくれる作品はそうそうありませんよ。
と、同時に、つくづくもっと続いていたらと今更ながら悔しさがこみ上げてきます。
ワトソン役の星くんにももっと出てきて欲しかったですし、Gノートの編纂される過程も見たかった!
その過程の中で次第に仲間が増えていき、「性徒会」という組織が学園を脅かすくらいの規模になっていくのも見たかったし、棗さんの艶姿はもっと見たかった!
そしてできれば「演劇部」での活動も見てみたかったなと心から思いますね。けっきょく「ぶかつ」の話は出てきませんでしたけど、もし続いていたらその辺の構想もあったんじゃないかと。
まあ今となっては、何を言っても虚しいだけです。とにかく、こうして「作品」として残ることができただけでもよしとしましょう。
でも、いつか。
そう、いつの日か、彼らに再び会える日が来ることを願わずにはいられません。
それがたとえ奇跡に等しいことだとしても。
どうしてもその奇跡を信じたくなってしまいます。
なぜなら、この「海浜秀学院のシロイハル」という作品がこの世に生み出されたこと自体がもう奇跡だったのですから。
そして電子書籍という形ではありますが、こうしていつでも彼らに会えるようになったのですから。
そんな奇跡が2度も起こるならば、もう一度信じてみてもいいんじゃないか。
私は今、そんな馬鹿げた希望を抱き続けています。
まだこの奇跡に出会えていないあなた!たった220円で奇跡が買えますよ!
こちらもいつか再連載してほしいなあ…(古河と守谷の二人は、叶くんと星くんを彷彿とさせるものがあります)
「クズとメガネと文学少女(偽)」
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