私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!16巻 感想~目に見えて動き始めたわたモテという「物語」~
11月12日に「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」16巻が発売されました。
15巻が5月ですから、ちょうど半年ぶりになりますね。前回は3か月半というかなり短いスパンでしたが、今回は通常のスパンに戻ったようです。まったく、15巻の時に「これからも刊行ペースは早まるでしょう」と予想したとたんにこれですよw 本当恥ずかしいw
そもそも、考えてみたら当然なんですよね。ページ数が以前より増えたとはいえ、1巻につき9話なら単行本分たまるのにおおよそ4か月半かかるわけですから。3〜4か月ペースで出していたらすぐに追いついてしまいますよ。それにあまり連載と単行本との差が縮まると、単行本収録時に作画ミスやネームの間違いなどを直す作業にも影響がでますし。より良い作品を残すためにも、ある程度連載と単行本の時間差は空けておく必要があるのだと思います。
それは読むほうも同じですよね。やっぱりある程度、連載とのタイムラグはあったほうがいいような気がしますよ。実際、今回は初読時から割と間が空いたせいか、15巻の時よりも新鮮な気持ちで読む事ができましたし。
というわけで、少し遅くなりましたが、今回も16巻の感想を綴っていこうと思います。よければお付き合いのほどを。
※各話(喪151から喪159)の感想は、以下の各エントリーを参照してください。
喪151「モテないし勝利する」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-293.html
喪152「モテないし(・_・)と」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-294.html
喪153「モテないし2度目の球技大会」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-295.html
喪154「モテないし球技大会を終える」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-296.html
喪155「モテないしもむ」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-297.html
喪156「モテないし噂になる」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-299.html
喪157「モテないし謹慎するってよ」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-302.html
喪158「モテないし謹慎する」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-303.html
喪159「モテないしまだ謹慎中」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-304.html
●もこっちの「葛藤」がそのまま16巻を象徴していた
まずはいつものように表紙から。

一部では、もこっち美少女過ぎだろwという声もあがった今回の表紙ですが、それは別としても今回も15巻の時同様、意外な印象を受けました。
15巻が「GW編」と「球技大会編」との狭間の巻なら、16巻は「球技大会編」と「謹慎編」が合わさった巻になるわけですが、どちらをその巻のカラーにするかといえば、やはり「謹慎編」だと思うんですよ。
前巻の表紙では(一応)「球技大会」が選ばれたわけですし、販促帯の売りも「黒木智子、謹慎するってよ!!」のほうがはるかにインパクトがありますからね。当然「謹慎編」をモチーフにした表紙になるんだろうと思っていたんです。
例えば、もこっちと吉田さんが席を並べている絵とか、いっそのこと、それとは逆に「もこっち不在」の表紙とか、そういうイメージを抱いていたんですね。(喪157をモチーフにした、あえてもこっちのいない表紙というのは今でもアリだったんじゃないかと思っています)
でも、これって、「謹慎編」の表紙じゃないですよね?
大学案内を持っているもこっち+それを少し離れたところから見つめているヤンキー三人組というのは、どう見ても「謹慎編」ではなく、喪155「モテないしもむ」でしょう。つまり、谷川さんはメインとなるシリーズどちらも「核」として選ばなかったわけです。
ただ、16巻を通して読んでみると喪155と喪156って、「謹慎編」の前日談みたいなところがあるんですよね。ある意味、この二つも「謹慎編」と言えるような気がするんです。そもそも、なぜ「謹慎」になったのかということを突き詰めれば、当然バイクの話になるわけですし。
そう考えると、やはりこの構図こそが16巻を象徴しているのでしょう。
もこっちが手にしている「大学案内」と麗奈が抱えている「メット」。
この二つの対比が今のもこっちの葛藤を表しているわけですから。
あと気になるのは、やっぱり「もこっちの目線」。
14巻、15巻と視線を逸らしてきたもこっちが、13巻以来久々にこちらを向いたと思いきや、表情はどこか物憂げです。というより、生気がないというほうが近いかな?
まるでこちらの視線にはたと気づいて、「こんなところ見られたくなかった」と言わんばかりじゃないですか。
もしかすると、私たちは見てはいけないもこっちの姿を見てしまったのかもしれません。
●謹慎編は喪157と喪158で完結していた?
今回の構成としては3つに分けられます。
喪151から喪154までの「球技大会編」。
喪155と喪156の「噂編」(もしくは謹慎編エピソード0)
喪157から喪159までの「謹慎編」。
で、もはや恒例と化した「偶数と奇数」ですけど、これがまた全体の流れを考える上で興味深いことになっているんですね。
今回は9話中3話が「偶数」ページとなっていて、割合的には15巻とそれほど変わらないと言えるかもしれません。
でも、注目すべきはその「右ページ終わり」のタイミング。
喪156、喪158、そして喪159。
こうして見ると、後半ばかりに集中していることがよくわかると思います。
つまり、「球技大会」から喪156ラストの「黒木智子 吉田茉咲 謹慎」まで一気に読ませるような構成なんですね。実際、読み進めてみると、このシーンで一瞬え!?となりますからw
ここで一旦、世界が止まったかのような感覚になるんです。
で、喪158をもって「謹慎編」に一区切りつけるんですよ。
本当の意味で「謹慎編」と言えるのは、もしかしたら喪157と喪158だけなのかもしれない。そんな気すらさせられるんです。誤解を恐れずにいえば、最後の喪159はいわば「おまけ」みたいな印象を受けましたね。(それこそ「その後…」みたいな)
そう、たぶん「謹慎編」って、「もこっち不在」の喪157と「謹慎側視点」の喪158でいったん完結しているんです。
2ページ分のブランクでこの二つの話を挟んだということは、そういう意味があるような気がしてなりませんでしたね。
●喪159を描いた意味とは
そうなると、気になるのは喪159の存在です。
さきほど「おまけ」と称しましたが、やっぱり喪157喪158の後だと、この話の意味が今ひとつしっくりこないんですよ。まあ蛇足とまでは言いませんが、「謹慎編」の本編というよりサイドストーリー的なニュアンスを感じてしまうんです。
当時、感想記事をめぐってプチ炎上(笑)したのも今となってはいい思い出ですが、私自身、この回をうまく受け止められていなかったのかもしれません。
でも、そもそもなぜ谷川さんは喪159で「謹慎編」を終わらせなかったのでしょう?
今考えると、喪158の次に喪160「モテないし謹慎最終日」が来てもあまり違和感がないようにも思えるんです。
ていうか、そのほうが、16巻できれいに「謹慎編」が収まるじゃないですか。ページ数的にはこの回で16巻の収録話が埋まるということはわかっていたはずですし。
まあ確かに15巻でも「球技大会」の途中で終わっていますから、シリーズ全体を単行本内に収めるということに特別こだわっているわけではないでしょう。
でも、「球技大会」はまだ全然始まったばかりでしたよね。むしろ16巻収録分こそがメインといえるわけで、前巻のそれはある意味、予告編だったとも考えられるわけです。
他にも、9巻の「体育祭編」、13巻の「遠足編」そして14巻の「GW(+きーちゃん)編」と、意外なほどにどのシリーズも単行本内でまとまっているところを見ると、実はそれなりに話数を含めて調整しているんじゃないかという気もするんですよ。(8巻9巻にまたがっていた「修学旅行編」はある意味例外かも。でもこれも当初は3話くらいの予定だったらしいです)
こう考えると、どうも16巻で「謹慎編」を終わらせないために、あえて、喪159「モテないしまだ謹慎中」を描いたんじゃないかという疑念が湧いてくるんです。いわば「帳尻あわせ」回だったんじゃないかと。
喪160「モテないし謹慎最終日」のラストシーンは、ある意味「大団円」でした。本当にこれで「わたモテ」は終わったんじゃないかと思わせるような、実にきれいな終わり方でした。
だからこそ、16巻をあの場面で終わらせたくなかったのではないか。そんな気がしてきたんです。
もちろん、これは私の考えすぎかもしれません。
でも、ひとつ思い出したのは、12巻のことなんですね。
あの時も、喪122「モテないし3年生になる」まで収録した意味がすごく気になりました。
「2年生編完結」巻で、「3年生スタート」で終わらせる意味。
そこに、谷川さんの矜持があるように思えたんです。
単行本を読んでいる人によけいな不安を抱いてほしくない。
喪159が単独話であるかのように2Pブランクで前後を挟まれていたことには、そんな作者の思いが隠されているかもしれません。
●「短編」から「長編」、そして「ギャグ」から「ストーリー」へ
それとは別に、「球技大会編」と「謹慎編」、どちらもシリーズをまたいでいることが妙に気になりましたね。なんていうか、ずっと物語が続いている感じ?途中から始まって途中で終わる感覚が、今までにないものだなというふうに思いました。
しかも、意外と内容的に波乱万丈じゃないですか。
うっちーの件あり、バイクの二人乗りあり、そして謹慎ありと、ああこの頃はいろいろあったんだなあと変にしみじみしてしまいましたよw
今のわたモテが比較的落ち着いてきているだけに、この「物語」の濃さはちょっと意外にすら感じましたね。
もしかしたら、各話のページ数が増えて「短編」から「長編」への移行とともに、作品全体の性質もギャグからストーリー重視になりつつあるのかなという気もしました。シリーズものがまたいでいるというのも、そういうところからきているのかもしれません。
なにより、各話における「締め」にそれが表れているような気がします。
いわゆる「オチ」があまりないんですよ。しんみり終わっている「謹慎編」はともかく、喪153にせよ喪154にせよ、、はたまた喪155にせよ、笑いで落としているかといえばちょっと微妙じゃないですか?どこかふわっとした感覚が残るんです。
わかりやすい形で落としているのは、せいぜい喪152くらいなものじゃないでしょうか。
まあ、これは3年生編に入る少し前からなんとなく言われていたことですが、この巻からそれが顕在化したと言えるのかもしれませんね。
●今回の特典はわかりやすい分、逆に悩む
ここでいつものように、各ショップの特典をおさらいしていきましょう。(すでに配布は終了している場合があります)
今回はなぜか最新話扱いのように「[16巻発売記念フェア情報]公開!」となっていましたけど、まあそれはあえて考えないことにして、以下の通りになっていました。




今回はどれがどの話をモチーフにしているかわかりやすいですね。やはり「謹慎編」が中心になるせいか、吉田さんとのシチュエーションがふたつあるのが目に付きます。
あ、あと、デジタル版の特典が

こんなんなんですけど、未だに「NOW PRINTING」なのはいかがなものかw(本当に「こういうデザイン」の特典絵だったら笑うw)
…まあこれは、谷川さんのツイッターに情報がありますので、気になる方はそちらをチェックして見てください。(この夏メディコスで描いたメイド服加藤さんVerのリメイク版のようです)
今回はどの特典にするかかなり悩みましたねー。
まあ、ちびキャラ好きとしては、

メロンさんのだけは確定だったのですがw
どちらにせよ吉田さんとバイク二人乗りというシチュエーションは、16巻をもっとも象徴している構図だと思うので、これを外すということはまず考えられませんでしたね。
さて、特典は二つまでと勝手に自分ルールを課している私としては、あと一つなわけですが、これが悩みどころなんですよ。
謹慎中の吉田さんともこっちという絵も魅力的ですし(本編と位置関係が異なるのもレアっぽいw)、今回からレギュラー化(?)した加藤さん4人組の並びも捨て難いですよね。
本当、かなり迷ったんですけど、けっきょく、

こちらにしました。
まあ、うっちーはいないんですけど、やっぱり喪152の衝撃は忘れ難いものがありますから。ある意味、記念として残しておきたいという気持ちが勝ちましたね。
あと、彼女たちの手元がよくわからなかったんで、それも確認したいというのもありました。(シュシュをみんなで合わせていたんですね)
なつがいないのが少し気になりましたけど、彼女はソフトに行きましたからね。これは卓球参加の4人組ということなんでしょう。(でも、なぜか一番影が薄い存在…やっぱり彼氏持ちというのがあるのかな?)
…でもやっぱり、うっちーがいなかったのは残念でしたね。
最後は、単行本恒例のネタチェック。
まずは裏表紙の「理想と現実」ですけど…

なんと風夏さん!まさに今、旬のキャラといってもいいかもしれませんね。
それにしても、なんだこの「理想」w どういうことなんだよw “ごく”じゃねーよw
「現実」の被せ気味で発言を遮られているのも笑うw なんかループ入ってません?お前がそれを言うのはもう前のルートで知ってるから!みたいなw
巻末おまけマンガは「喪151その後…」と「喪156おまけ」。
ここ最近のおまけはいろんな意味で波紋を呼ぶようなものが目立っていましたが、今回は二つとも割と平穏だったと言えるかな?
……いや、「喪156おまけ」はある意味危険なネタと言えるかも?w(マガ●ンに怒られないかちょっと心配w←本編と伏字の位置を変えているのがまたw)
でも「その後」でも「別視点」でもない、単なる「おまけ」というのも随分久しぶりですよね。むしろ、昔のノリにもどったおまけと言えるのかもしれません。
あと、「喪151その後…」にはむちゃくちゃ笑いましたw まあ、ゆりちゃんファンは「またこういう…」と思われる向きもあるかもしれませんが、個人的には本編以上に笑わせていただいたのでオッケーです!(ていうか、表情筋0ってwwwなくなってんじゃねーかw)
そうそう「あとがき」ですけど、15巻の時に「次の16巻では原画展のネタに事欠かないでしょう」と予想したのに、今回原画展のげの字もありませんでしたよ。楽しみにしていたのに…
でもその代わりといってはなんですが、今年5月にあった「ラジオ出演」の裏話がすっごく面白かったですw 人間的な成長w(←読んだ人だけわかるw)
それと、もうひとつの「あとがき」はかなり衝撃的でしたよ。これはもう言ってしまっていいと思うのですが、要は「謹慎」の話はほぼ実話だったというのですから!
当時、「自宅謹慎」か「学校内謹慎」かで、コメント欄でちょっとした議論?がありましたが、自分は確か最近の主流として「学校内謹慎」のようだと主張していたんですよね。話にリアリティを持たせるために今の高校事情をリサーチしてのことだと思っていたのですが、まさか、谷川さんの実体験だったとは……
ある意味、この上なくリアリティのある話だったわけですw
これ以上の具体的な内容は伏せますので、ぜひ単行本を買って確かめてください。自分の実体験をもこっちに託した谷川さんの本意がなんとなく読み取れるかもしれませんよ。
あと、カバー裏!
むちゃくちゃ意味深じゃないですか?
ここ最近のカバー裏イラストは、何気ない日常を切り取りましたみたいな感じで、まあ今回もそれに類するものとも言えるんですけど、描かれているキャラの表情がねー。
台詞はなくとも目で会話している感があって、すっごく気になります。これは今後の本編につながってほしいなあ。
17巻の予告がまた妙に興味をそそられる構成になっていて、逆に笑えますねw
これは言っておいたほうがいいかな?えー単行本派の人には本当申し訳ないんですけど、「合宿編」まだ始まってません!w
16巻は「球技大会編」と「謹慎編」が合わさった巻と冒頭でいいましたが、一方、実はけっこうバラエティに富んだ巻でもあったなという気がします。
ゆりちゃんの「変化」を描いた喪151。
うっちーと雌猫組との友情を描いた喪152。
伊藤さんと小宮山さんとの出会いを描いた喪153。
二木さんとみんなの交流を描いた喪154。
進路問題に揺れるもこっちの心の揺らぎを描いた喪155。
1巻に必ずひとつはある鉄板のオムニバス回の喪156。
ここまででも、毎回違ったテイストになっていることに感心させられますが、
この後の「謹慎編」にしても、いきなり「もこっち不在」で驚かされますからね。
表紙のカラーからすると、どことなく落ち着いた静かなイメージがあったのですが、意外と動きがあって飽きさせない内容になっていたと思います。
動きといえば、キャラクターの心情や関係性にも見えましたね。
うっちーの件はもちろんですが、ゆりちゃんとネモの関係も喪151から喪157につながったと考えると、感慨深いものがあります。
わたモテという作品は、「とある女の子のどうでもいい日常の物語」として始まりました。
そして「物語」の必然として、「球技大会」や「謹慎」というイベントを経て、それまでの人間関係や心にも変化が訪れようとしています。
それは静かなように見えて、確実にわたモテという世界を大きく動かし始めているような気がしてなりません。
どの話も甲乙つけがたいですが、強いて2つ選ぶなら、喪152と喪156かな。
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