私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!14巻 感想~先を急ぐ「焦燥感」がもの悲しさを呼び起こす~
1月22日に「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」14巻が発売されました。
前巻が「遠足編」なら、今回の14巻は「GW編」。
こうして字面だけ見ると、なんだか賑やかで楽しそうな雰囲気ですよね。
3年生編が始まって随分たちますが、わたモテの世界はいまだ春、浮かれた空気が漂っているかのようです。
でも実際に読んでみると、なんだかもの悲しい印象を受けました。個々の話はそれほどでもないのですが、なぜか全体を通してみるとそんな気持ちになってくるんです。どの話がどうということではなく、ひとつひとつの話の連なりがそれを形作っているように感じましたね。この感覚は単行本ならば、という気がします。
というわけで、遅くなりましたが今回も14巻の感想を綴っていきたいと思います。よろしくお付き合いのほどを。
※各話(喪133から喪142)の感想は、以下の各エントリーを参照してください。
喪133「モテないしつながっていく」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-261.html
喪134「モテないし周りは騒がしい」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-262.html
喪135「モテないし仮面をかぶる」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-263.html
喪136「モテないし漫画を薦める」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-264.html
喪137「モテないしGWを迎える」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-265.html
喪138「モテないし大学に行く」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-266.html
喪139「モテないし大学に行く理由」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-268.html
喪140「モテないしオープンキャンパスに参加する」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-270.html
喪141「モテないしきーちゃんと高校に行く」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-273.html
喪142「モテないしきーちゃんの進路も決まる」
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-276.html
●「目線」と「日付」が焦燥感を駆り立てる
まずはいつものように、表紙からチェックしていきましょう。

前巻同様、今回も「黒木智子とゆかいな仲間たち」的な楽しい雰囲気のものになっています。表紙では初お披露目となる、よそゆき姿(?)のもこっちも新鮮に映りますね。
初お披露目といえば、加藤さんも表紙初登場!彼女がいるだけでなんだかパッと華やかに見えますよね。
しかし、どこか引っかかります。これだけうら若き乙女たちがみんなおしゃれに着飾っているというのに、いったいどういうことなんでしょう。
それはやっぱり、「もこっちの目線」なんですね。
12巻で初めて前を向き、13巻でもしっかり正面を見据えていた彼女が、ここにきて再び視線を逸らしているんです。
加藤さんに伺いを立てるかのような自信なさげなその目は、かつてのもこっちさえも彷彿とさせるような頼りなさを感じさせます。ゆりちゃんの不安そうなまなざしがさらに拍車をかけますね。
「遠足編」で加藤さんが本格的に参入してきた波紋が、ここにきて大きく広がり始めているようでもあります。
そんな中、ネモだけは正面を向いているのがまた面白いですね。
今後の展開のヒントが、ここにも隠れているような気がします。
あと、気になったのは、特殊印刷モチーフ。
これは電子書籍版ではわからないと思いますが、わたモテのコミックスにはそれぞれ巻を象徴するモチーフやアイテムが光の加減で浮き出るようなあしらいが施されているんです。これは、どの巻にも入っていますので確認してみてください。
例えば13巻ですと、“モーさんのMilkハットキーホルダー”“クマさんのポシェット”“うさぎのぬいぐるみ”ですね。
最初の頃はハートマークや音符などの、もっとシンボリックなものでしたが、6巻あたりから具体的なアイテムをアイコン化したものに変わってきていて、なかなか興味深いですよ。
で、今回のモチーフなんですけど、なんと「日付」なんです。
具体的には、“4/28”“4/29”“4/30”のみっつなんですけど、なんか不思議な感じがしませんか?
最初は、一緒に大学見学しに行ったキャラと日付がリンクしているのかなとも思ったのですが、ゆりちゃんのそばに4/29とあるところを見ると、さすがにそんなことはなさそうですね。単にランダムに配置しているだけのようです。
まあそれはともかく、この282930の「連なり」が14巻をよく表しているような気がしたんですよ。なんていうか、かけがえのないこの日常が少しずつカウントダウンされていく感覚。
私が全体を通して感じた「もの悲しさ」は、そんなところにあるのかなという気がしましたね。
各キャラクターたちの目線も含めて、楽しいようでどこか焦燥感を駆り立てられる表紙になっていたと思います。
●偶数と奇数とでは息の入りかたが変わる
本編を読んでいてもこの焦燥感は常に付きまとってきて、それが今回の「もの悲しさ」に繋がっているわけですが、
いったいそれはどこからくるのかと考えてみると、どうも各話間の「息の入りかた」が影響しているような気がしたんですよ。
要するに、一話のページ数が偶数か奇数かで一拍の入り方が変わるんです。
これは普段スマホで読んでいるとあまり意識しないことだとは思いますが、見開き状態で読んでいると、右ページで話が終わる場合と左ページで終わる場合がありますよね。
つまり、一話が8ページとか10ページのように偶数だと右ページで終わるし、9ページのように奇数だと左ページで終わるんです。
で、偶数だと、2ページ分のブランクがあって次の話に進むわけですが、奇数だと、1ページしか間が空かないんですよ。
ちょっとした差ではありますが、この一拍のリズムは単行本単位で読む際には意外と重要だと思うんです。
前の話の余韻を残したまま次に行くか、いったん切り替えて次に行くかという違いがそこに生まれるですね。
で、14巻は圧倒的に「奇数」ページが話が多いんですよ。10話中7話が左ページで終わるんです。
特に、喪138(4/28)・喪139(4/29)・喪140(4/30)の一連の流れはノンストップで一気に読ませるものになっていて、息をつく暇もないほどです。それこそ、GWがあっという間に過ぎていく感覚をシミュレーションしているかのようでしたね。おそらく、そういった日々の流れを体感できる構成が、「もの悲しさ」を呼び起こす装置になっているのかなという気がしました。
そういえば、喪141「モテないしきーちゃんと高校に行く」の時、オチの唐突さに戸惑いを感じたものでしたが、あれも奇数ページで終わっていたことが影響していたような気がします。
ほら、右ページで終われば「次号へ続く」などがなくっても、アへ顔もこっちのアンケートページが隣にあるので、すぐに話の区切りがわかるじゃないですかw
左ページだと、次のページをめくらないと続きがあるのかどうかわかりませんから。
元々わたモテって、オチなのかよくわからない変な余韻を残す終わり方も多いんですよね。喪51「モテないし同性を意識する」(コミックス6巻所収)のオチなんかも当時は随分あっけにとられたものでしたが、あれも右ページで終わっていたからこそまだそういうものかと受け入れられたんですよ。仮に左ページで終わっていて、なおかつ今のように「次号へ続く」もなかったら、次のページがまだあるものと勘違いしていたと思いますね。
他のマンガならともかく、わたモテのようなテイストの作品では、偶数か奇数かという問題は作品の味わいにも大きく関わってくるわけなんです。
●実は11巻の構成と似ていた14巻
試しに、これまでの単行本で左終わりと右終わりのどちらが多かったのかを確認してみました。
そうすると、興味深いことが見えてきます。
↓以下は、各巻の「左終わり(奇数ページ)」の話をカウントしたもの。
1巻 9話中2話
2巻 9話中1話
3巻 9話中1話※
4巻 10話中1話
5巻 10話中1話
6巻 10話中3話
7巻 11話中2話
8巻 12話中5話
9巻 12話中4話
10巻 11話中7話
11巻 12話中9話
12巻 13話中4話
13巻 10話中1話
総話数は「特別編」を含む。ただし、友モテの特別収録は除く。
※(ただし、この喪22「モテない文化祭に参加する」は、例外的に右ページから始まり右ページで終わる構成となっている)
どうですか、なかなか面白いでしょう。
そう、5巻くらいまでは、「右ページ終わり」の偶数話が基本だったんですよ。左ページで終わるのはせいぜい1巻につき、1話か2話程度だったんです。
3巻の喪22「モテないし文化祭に参加する」なんて、奇数話にも関わらず、あえて前の話とのブランクを1ページにしてまで右終わりになるように調整されていますからね。(ここは本当に面白くって、喪21からの流れがスムーズに進めるように工夫されています)
それが、修学旅行が始まる8巻辺りから急に「左ページ終わり」が増えてくるんですね。
その勢いのまま10巻と11巻では、左終わりが右終わりを逆転するまでになるんです。
その後12巻ではやや落ち着いて13巻では再び初期のバランスに戻るのですが、今回、左終わりが多かったのは、むしろ11巻辺りのテンポに近いとも言えるわけです。
そう考えると、14巻の「もの悲しさ」もなんとなく腑に落ちるような感じがしたんですよ。
これは、2年時の秋から冬に移っていく中で感じていたあの気持ちと、どこかでリンクしたんですね。話の内容というより、読み終えたときのフィーリングが似ているんです。
どの話が右終わりでどれが左終わりなのかに注目しながら読んでみると、また違った面白さに出会えますよ。なぜか「きーちゃん回」は「左終わり」が多いとかw
こうしたことも、単行本ならばの楽しさだと思います。
●喪137と喪138の間に流れる大きな川
物語の構成としては4つに分かれるかと思います。
喪133と喪134の「学食編2」。
喪135と喪136のGW前の「日常編」。
喪137から喪140までの「大学見学編」。
喪141と喪142の「きーちゃん来襲編」。
ここで面白いのは、左ページで終わる話の配置ですね。
喪133と喪134とでは話が繋がっているのにも関わらず、133が右ページ終わりのために2ページ分のブランクが空くんです。
で、喪134から喪136までは左終わりが続き、喪137で一旦切れます。
そして再び、4/28、4/29、4/30と話はつながっていき、それは喪141の5/1のきーちゃん来襲まで繋がっていくんですね。
この構成のおかげで、喪137の「モテないしGWを迎える」を境にして、前半と後半の流れがくっきり分かれるんです。
で、大学見学からきーちゃんまで一気に読ませてしまうんですね。
喪137と喪138の間に挟まっているたった2ページの空白。
そこには大きな川が横たわっているような気がしました。
●たまにはショート回も恋しくなります
あと、もうひとつポイントをあげるとすれば、「長編」が増えたことでしょうか。
この場合の「長編」とは、おおむね10ページ以上のものを指して呼んでいるわけですが、ちょうど他の連載が立て続けに終了した7月から、ページ数が一気に増えました。
この巻でいえば、ちょうど喪137「モテないしGWを迎える」からですね。
ここから、去年の最後を飾る喪147「モテないし一人(ぼっち)で寄り道」まで、なんと12話連続ですよ。しかも、10ページどころか、14~16ページがもはやデフォルトとなっていますからね。中には、喪140のように19ページという超大作まで!
この辺も前半と後半との大きなブランクを感じさせますね。
その圧倒的ボリュームも、読後感に大きな影響を与えたような気がします。
まあそのこと自体には、特に何かあるというわけでもありません。それだけ読み応えもあるわけですし、個人的には質が落ちているとも思いません。
ただ、これだけ長い話ばかりになると、少しばかり食傷気味になりますね。
昔のような5ページ、6ページといった話が恋しくなるんですよ。
特に今回の14巻では、前半の喪135「モテないし仮面をかぶる」や喪136「モテないし漫画を薦める」といった(比較的)ショート回に優れた作品があるだけに、よけいにそう感じてしまいますね。
話の内容だけではなく、ページ数でも「バランスの谷川」の本領発揮といきたいものです。
●特典の冬仕様の意味は
そろそろいつものように、各ショップの特典をおさらいしておきましょう。(すでに配布は終了している場合があります)

今回もバリエーションに富んだものになっていますね。
「学食編2」ではなぜか雫ちゃんがピックアップされているのが面白いw
「きーちゃん編」ではあのもこっち犬の夢の(?)競演w なかなかマニアックなところを突いてきますよねw
電子書籍版の特典はこちら。

これは喪135の「せめた格好のネモ」なのかな?w
で、私が今回選んだのはこのふたつ。


左の虎の穴さんのは、もう説明不要ですよねw
ちびキャラにうっちーというだけで、私がこれを選ばないわけがありません!
右のアニメイトさんのもやっぱり外せません。
この二人の醸し出す空気感は、GW編におけるひとつのオアシス的な役割も果たしていたと思います。
ただ、ちょっと気になるのは、二人とも冬支度をしているところですね。
つまり、これはGWのモチーフというより、我々の今の季節感に合わせているわけですよ。
で、良く見ると、きーちゃんの特典もなぜかマフラーをしています。
なぜ、このふたつだけがGW仕様ではなく、冬仕様なのか。
もしかするとこれは、受験シーズンあたりの未来予想図的な意味もあるのかもしれませんね。
さて最後に、単行本ならばのネタを見ていきましょうか。
まずは、裏表紙の「理想と現実」ですが……

まさかの、もこっちへの回帰!
毎回キャラを変えてくるかと思いきや、早くもネタギレかよw
ていうか、これ、喪135の使いまわしじゃねーかw
正直、これは単行本派にとってはネタばれになるんじゃないかなあ…
そして、恒例の巻末おまけマンガ。
今回はふたつとも“別視点”になっていたわけですが、特に「喪140」の内容は大きな反響を呼んでいるようですね。
その多くは、「感動した」とか「最高だった」という反応でしたが、中には「興ざめ」「卒業式の感動が台無し」といった声もいくつかあったようです。
で、私はというと、これがどちらでもないんですね。
喜びに興奮するわけでもなく、かといって、特に失望することもありませんでした。
我ながら不思議なくらいに、良くも悪くも何の感慨も受けませんでしたね。
せいぜい、「ああ、最新話の喪149に引きずられて思わず描いちゃったのかな?」くらいなものでした。
GW編が始まる頃のコメント返信では、彼女と再会するのはあの卒業式の話が台無しになるのではといった趣旨のことを残していた記憶があるのですが、こうしてファンサービスの一環としての「おまけ」なら、それほど本編に影響はないように感じました。別に“再会”もしていませんしね。
ただ、ひとつ気になることがあります。
それは、「これって、ネタバレじゃね?」ということです。
確かに「大学見学3部作」を通して読む限りでは、もこっちの進路は青学でほぼ決まりのように見えます。
でも、私はまだ一波乱二波乱あると思っているんですね。喪144や喪146の流れを踏まえると、そんな気がしてならないんです。
それなのに、あの人に「待ってるね」とやられた日には、え、やっぱりこれで確定なの?という気分にさせられるんですよ。そこだけはちょっと興ざめかなあ。
裏表紙の「理想と現実」といい、少しその辺の詰めの甘さも感じられたのは確かですね。
それよりも、個人的には「喪135」の“別視点”のほうが、圧倒的に好きです。
それはもう、本編以上に笑わせてもらいましたよw
むしろ、なんでこっちの方をみんな騒がないのか不思議です。絶対こっちのほうが面白いのに…(あくまで個人的な感想です)
ていうか、“別視点”なのにギャグなんですよ?
てっきり、“その後…”は「笑い」路線で、“別視点”は「叙情」路線なのかと思いきや、そうでもなかったんですね。
笑いもアリなら、今後もより多彩なネタが期待できそうです。これは次巻が楽しみになってきました!
カバー裏はまた別の意味で、“別視点”になっていましたね。
特に裏表紙裏には、「いよいよくるか…」という緊張感が走りましたよ。
そんな中、やっぱり「あとがき」だけは安心できますw
このいい意味での自虐的なゆるさがある限りは、大丈夫だなと思わせますね。
全体的にはとにかく、なんだか「先を急いでいる」感があって、それが「もの悲しさ」に繋がっていたような気がします。
ネタバレを疑うようなおまけもそうですし、冬仕様の特典にもそれを感じましたね。
個々の話はそんなことはなく、どれも実に面白かっただけに、そこだけは少し気になります。
私が感じた「もの悲しさ」はいうなれば、時の流れの無情さ。とどのつまり、「わたモテ」が終わるその日が来ることに胸を痛めているわけです。
でも、まだまだ先は長いんです。これから夏を迎え、そして文化祭だって待っているはずじゃないですか。
もう少し余裕というか、もっとゆっくり楽しませてくれよという気持ちにもさせられた14巻でしたね。
どの話も最高ですが、個人的には喪135から喪136が特に好き!
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