「クズとメガネと文学少女(偽)」2巻感想~彼らの毎日は続いていく~
今年の5月に惜しまれつつ終了した「クズとメガネと文学少女(偽)」。
その最終巻となるコミックス2巻が7月12日に発売になりました。
終わってしまったことは本当に残念でした。
同時期に「ライト姉妹」も終了してしまったのですが、そちらの最終2巻は8月27日発売予定だそうです。
なんだかこう立て続けだと、谷川ニコはこれからどうなるんだろうと不安にもなってきますが、今回のあとがきを読むと「またお会いできるかもしれません」とあったので、少しほっとしました。どうやら、わたモテ以外にもまだ描く意欲はあるようです。
ホント、お願いしますよ、谷川さん!
なお、1巻の感想はこちらからどうぞ↓
「クズとメガネと文学少女(偽)」1巻感想~縦スクロールだけでは味わえない面白さ~
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-239.html
さて、まずは今回の表紙を見ていきましょう。
『乙一、大推薦!』
綾辻行人の次は乙一かよw
相変わらず、帯だけは豪華なんだよなあ。
もうどうせなら、又吉直樹氏に推薦文をお願いしてもらいたかったですね。(作中で「火花」も取り上げられています)
今の出版界において、彼に取り上げてもらえばまず売れることは間違いないですから。(ゲス発想)
おーりが持っているのはわたモテ喪136でも出てきた「GOTH」ですね。
作中で取り上げた「夏と花火と私の死体」でないところが、かえって印象的です。
それはさておき、どうやら完結に対しては乙一氏もお怒りのようですね。
一体どういうことかというと……
裏表紙
やっかみかよw
でもまあ、わかりますけどね。
何しろ彼は、16歳の時に「夏と花火と私の死体」でデビューしているわけですから、
高校生の夏はすでに作家としての多忙な日々に追われて普通の甘酸っぱい青春など無縁だったのでしょう。
今回の最終巻はほぼ、高校1年の夏という人生で最も輝いている季節の話になっています。そりゃあ、あまりに眩し過ぎて「ふざけんなよ」と言いたくなりますよねw
一番いい時を見せて終わるって、ある意味青春の勝ち逃げじゃないですか。
できれば、彼女たちのこれからの3年間を一緒に過ごしてみたかったです。
まあそれはさておき今回の内容ですが、最終巻とはいえ基本的には1巻とそれほど変わりません。限られた人間関係の中で繰り広げられるラブコメテイストの青春4コマギャグ、といったところですね。
ただ、1巻と比べて大きな違いがひとつあります。
1巻最後に突如登場した「文学少女(パクリ)」。この子が全体を通して、作品に新たな風を吹き込むことになるわけです。
今回も掲載月ごとに話がまとまっています。
2巻は第八部から第十五部の8部に分けられますね。
100話から109話までが「おーり不登校」編、
110話から123話までが「おーり復活」編、
124話から135話までが「いないものたち」編、
136話から147話までが「衣替え」編、
148話から159話までが「ここにいる理由」編、
160話から173話までが「期末テスト」編、
174話から185話までが「夏休み」編、
そして、186話から195話までが最終章の「毎日は続く」編でしょうか。
というわけで前回同様、ここからは各部ごとにざっと見ていこうと思います。
第八部「おーり不登校」編(100話~109話)
1巻のラストでいきなり登場した「文学少女(パクリ)」w
ここでは、彼女の正体は実は「図書委員長」で、一学年上の先輩だということが守谷の口から語られます。
なんか、当初のイメージと違い、割と普通の先輩キャラだったのが意外でしたね。もう少し何を考えているかわからないミステリアスなタイプだと思っていたので。
ズバズバ遠慮のない語りというのもえっちゃんと被る気がしますし、この頃はまだキャラがこなれていない印象は否めません。(8部と9部の間にあるおまけマンガのえっちゃんの方がむしろ笑えましたw彼女もいいキャラだったのになあ…)
一番笑ったシーン
やっぱり、おーりのアホ可愛さには敵いませんw
まあこのメール、もしかしたらP.S以外は図書委員長が書いたものなのかもしれませんがw
ていうか、「ノルウェイの森」に出てくる手紙もこんな内容なのかw
というわけで、ここで取り上げられている本はもちろんこれ。
「ノルウェイの森 下」(村上春樹)
村上春樹については、1巻の感想の時にある程度触れましたのでここでは割愛。
最近では、
「村上春樹の100曲」(栗原裕一郎編著)
こんなガイドブック(?)が出ています。
なんと、村上春樹作品に登場する全音楽リスト付きですよ!
読書ガイドであると同時にディスクガイドでもあるという画期的な本です。
クラシックやジャズだけでなく、意外にポップスやロックにも造詣が深いことに改めて驚かされますよ。
村上春樹と音楽は切っても切れない重要な要素です。
もちろん、「ノルウェイの森」というタイトルはザ・ビートルズの名曲からきていますし、村上自身、あるインタビューで「音楽は僕に強い影響を与えてきました。(中略)僕は本当はミュージシャンになりたかったんだろうと思う」と答えているくらいなのですから。
村上ファンでなくとも、実に興味深い内容になっている一冊だと思います。
あ、あと、
「バーナード嬢曰く。2巻」(施川ユウキ)
「バーナード嬢曰く。」の2巻では、「村上春樹をどーいうスタンスで読んだらいいか」が分かりますので、気になる方は是非w
第九部「おーり復活」編(110話~123話)
一週間にもおよぶ不登校からようやく脱したおーりですけど、すっかり心が病んでしまい、「人がいっぱい死ぬ本が読みたい」と云うようになります(笑)。
そんな彼女がいつもアホ可愛さを取り戻すまでの、ちょっぴり感動の話になっているのですが、おーりと守谷がちょっといい雰囲気になるのがここでの大きなポイントですね。その反動で、古河と図書委員長の仲も気になりだした頃でした。
というわけで、一番笑ったシーンはこちら。
妙にかっこいいw(ていうか、クマがあると、ちょっともこっちっぽいw)
ここで取り上げられた本は、けっこう多いんですよね。
「「心が凹んだとき」に読む本」(心屋仁之助)
「ストレス、パニックを消す!最強の呼吸法システマ・ブリージング」(北川貴英)
でもまあ、以上の2冊は書名が出てきただけのようなものですからあまり関係ありませんw(少なくとも、おーりにはあまり効かなかったようですしw)
で、
「悪の教典〈上〉」(貴志祐介)
「人がいっぱい死ぬ本が読みたい」というおーりが選んだ本がこれ。
京極夏彦並に厚くてしかも上下巻ということで、はじめは
「インシテミル」(米澤穂信)
こちらを選ぶつもりだったのですが、高校生が死ぬ方がいいということで却下されましたw(「インシテミル」は大学生が主人公)
正直、よねぽファンとしてはインシテミルを選んでほしい気持ちもありましたw
でもまあ、こちらはメタミステリ的な構造もあるので、ちょっと題材的にずれるかもしれませんね。
「悪の教典」は未読。ていうか、なんかグロそうでなかなか読めないですね。
でも、おーりの反応を見ていたらなんだか興味が湧いてきましたw(谷川さんもバトルロワイヤルを初めて読んだときと同じ興奮を覚えたと書いていました。わたモテのもこっちがバトロワ好きなのはイッコゆずりなのねw)
第十部「いないものたち」編(124話~135話)
古河とおーり、そして守谷の心情に微妙な変化が生じてきます。そしてここにきて、図書委員長のキャラクターもしっかり見え始めて、ようやく4人の関係性も固まってきましたね。
図書委員長の「リアルいないもの状態よ」は笑いながらも胸が痛みました…
一番笑ったシーンは
これですねwやっぱり、勘違いおーりはアホ可愛いw
ここで登場するのは、その図書委員長が古河に勧めた「人が大量に死ぬ話」の
「Another(上)」(綾辻行人)
と、
「Another エピソードS」(綾辻行人)
これw
谷川さん、ホント綾辻さん好きだなw
「Another」はそのうち読もうと思っているので、アニメも実写もあえて見てません。ネタバレを喰らいたくないので。
前回の「十角館の殺人」同様、ここでも「映像不可能」なネタを使っているそうなのですが、実際どういう内容になっているのか気になりますね。守谷によると、アニメはよくできていたという話ですが……
第十一部「衣替え」編(136話~147話)
ここはもう、おーりの可愛さばかりが際立っていましたねw
もう、一番笑ったシーンも選びきれないくらいですよ。
定番のわき毛ネタも捨てがたいですし、
ここなんか、図書委員長のツッコミも冴えまくっていて最高ですねwww
でもやっぱり、最後の
これかなあw
(なんとなく、バーナード嬢のさわ子っぽいネタだけどw)
あと、「図書室で漫画読んでたらバカだと思われるじゃない」(その発想がバカっぽいw)は、「ライト姉妹」のおねいちゃんぽかったですし、
このおーりは、奏愛ぽいw
ここでの本は、
「漫画 君たちはどう生きるか」(吉野源三郎(原作), 羽賀翔一(漫画))
と、
「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎)
これ。おーりたちが読んだのは、漫画版のほうですね。
これはもう、売れすぎちゃって逆に読みづらいってやつですね。
ブームが過ぎ去った後にこっそり読んでみたいなあと考えていますw
第十二部「ここにいる理由」編(148話~159話)
ある意味、最終章より感動的でしたね。
図書委員長の「なぜ文学少女がここにいるのかわからないの?」はマジで名セリフ!
実は2巻でこの12部が一番すきかもしれません。
でも、一番笑ったシーンはこんなのw
まあなんにせよ、笑えるけど泣けるシーンということでw
「火花」(又吉直樹)
今、出版界においてもっとも影響力があると言っても過言ではないでしょう。
お笑いコンビ「ピース」の…というより、もはや芥川賞作家といったほうがいいでしょうか、又吉直樹氏のデビュー作になります。
谷川さんのコラムによると、「面白いとしか言いようがなかった」とのことで、本当に笑えて泣ける作品になっているようです。
(余談ですがイッコさんは若いころお笑い芸人を目指していて、オーディションにも行ったことがあるそうです)
まあ、又吉さんに限らず、お笑いの人って元々お話を作るのがうまいとは思うんですよね。漫才やコントのネタを書いている人は特にそうだと思います。
最近では、インパルスの板倉俊之さんの小説がすごく気になっていますね。
最新作の「月の炎」なんかは重松清氏も絶賛していますし、道尾秀介氏も当初から一目を置いていたそうです。
なんか、どちらも相方がどっか行っちゃっているところも似ているかも……w
第十三部「期末テスト」編(160話~173話)
学園漫画の定番ですね、「期末テスト」。
もう、おーりのバカ可愛さだけでお腹いっぱいですw
あとこの辺から、おーりと図書委員長がなんだかんだで仲良くなり始めているのがいい感じw
一番笑ったシーンは
これですねwww確かに某芸人をほうふつとさせますwww(でもネタよりも「美人過ぎる芸人」という扱いしかされなさそうw)
あと、
これも「ライト姉妹」の奏愛ぽくって好きw
ここでの本は、
「こころ」(夏目漱石)
こちらは「青空文庫」にて無料で読めます。
もちろん、おーりが言っていたような「マンガよめるやつの小説版」みたいなやつではありませんので、安心してお読みくださいw
(スマホでもPCでもプラットフォームに依存しない形で読むことができますよ)
第十四部「夏休み」編(174話~185話)
季節は夏休み。でも、舞台はずっと学校wしかもほとんど図書室というのがポイントですね。
ここにこの作品の最大のテーマが隠されているといってもいいでしょう。
個人的には補習にいた塩崎という女の子がけっこう好きでしたね。
秋以降も話が続けば、彼女の出番もあったのではと想像してしまいます。
一番笑ったシーンは
はこれかなw
ていうか、単純にかわいいw
おーりも図書委員長もツンデレというか、素直じゃない体(てい)ではあるんだけど根が素直、という感じがたまらなく好きですね。
かわいいといえば、こちらも捨てがたいw
というわけで、おーりが死体の真似をしていた本はこれ
「夏と花火と私の死体」(乙一)
今回、私が唯一読んでいる本ですね。(他に「インシテミル」と「こころ」は読んでいますが別枠みたいものですしね)
まあ、とはいっても、この話から興味を持って初めて読んだわけですがw
おーりも言っていましたが、まず設定が斬新というか、要するに殺された女の子の「死体」が主人公なんですね。
「死体」が主人公といってもピンときます?幽霊目線でもないんですよ。本当に死体の一人称で、自分の死体が見つからないように右往左往する兄妹(妹は殺した犯人)を描写していくんです。もうこれだけでも尋常じゃない物語設定です。しかもそれを書いたのが当時16歳の高校生だったというのですから、そりゃあセンセーショナルだったでしょう。
とにかく、不思議な読後感が味わえる面白い作品だと思います。
描き下ろしコラムによると、谷川さんは相当の乙一ファンのようですね。
彼が作るキャラの中にも何人か影響を受けているそうなので、わたモテファンにとっても要チェックかと。
(コラムでやたら妹キャラが苦手だと書いていたのには笑いましたw奏愛の立場は?w ていうか、おーりにも妹いたよね?w)
第十五部「毎日は続く」編(186話~195話)
これが最終章になるわけですが、正直、まったく最終回っぽくありません。
え、本当にこれで終わり?と思われた方も多いことでしょう。
まさに「なにもなく毎日は続く」という最後のタイトル通りの内容でしたね。
ここではあまり笑ったシーンはなかったのですが、強いてあげるならこれでしょうか。
いつの間にか、委員長とおーりの立場が逆転しているのがおかしいですが、さりげなく、「おみやげなにがいい?」と聞いているところがなんかいいですよねw
あと、
委員長のこの強がりっぷりも好きw
素直じゃないなあと言いたいところだけど、よく見ると実は素直というw
なお、最終章で取り上げられている本はなし。
なんともすっきりしない終わり方ではありましたね。
ただ、単行本としては、前回同様おまけは充実しています。
特に巻末の描き下ろしは素晴らしい内容になっていて、ある意味、これこそが最終話と言えるものになっています。
これだけでも、買う価値はありますよ!
後は何といっても谷川さんの読書コラムですね。この人、エッセイなんかも面白いと思うので、文章ももっと書けばいいのになあと思いますよ。(取り上げた本すべてのコラムがあるわけじゃないのが唯一の不満)
乙一氏についてのコラムは特に興味深い内容になっています。
わたモテ喪136でも出てきた「GOTH」に出てくる主人公と森野夜に影響を受けたキャラが自分の漫画に何人かいるそうですし、
乙一の中でも一番好きなのは、「失はれる物語」という短編集内の「しあわせは子猫のかたち」なんだそうです。(いつかパクリにならない程度に思いっきり影響を受けた漫画を描くかもとまで言っていますw)
わたモテ喪136を読んだファンにとっては、これまたいろいろ考えたくなる情報ですよねw
「GOTH 夜の章」(乙一)
「失はれる物語」(乙一)
私もようやく「GOTH 夜の章」を読み始めたのですが、むちゃくちゃ面白くってあっという間に読んでしまいました。
元々はラノベレーベルから出ていたようですごく読みやすいですし、これは本当にお勧めですね。猟奇殺人を扱っているとはいえ、それほどキツイ描写はないのでそういうのが苦手な人でも大丈夫だと思いますよ。(かな?)
森野夜に影響受けたキャラは確かに何人かいそうだなあw
それにしても、返す返す残念です。
もっと面白くなるはずだったのに、すごく消化不良感がしてしまいますね。
そもそも、4コマで毎日更新という連載スタイルが向かなかったんじゃないかと今更ながら感じてしまいます。
4コマという制約がキャラクターたちの世界を狭くし過ぎていたような気がするんですよ。
そのせいで、田岡とかえっちゃんというキャラも活かせなかったように思えてならないんです。
図書委員長のキャラも4コマという括りではなく、普通の連載形式ならもっとはじけたキャラになりえたんじゃないかなあ。
巻末の描き下ろしが素晴らしい出来だっただけに、よけいにそんな気がしてしまうんですよね。最初からああいう5~6ページくらいの読み切り連載だったら、また違った展開もあり得たかもと考えてしまいます。
なんにせよ、まだ彼らの毎日は続いているんです。
いつかまたどこかで彼らと彼女に出会えることを願ってやみません。
ホント、「完結って嘘だろ!?」「ふざけんなよ!」ですよ!
そうそう、「クズメガネ」と違って、真っ当な読書コメディ(笑)である「バーナード嬢曰く。」の4巻が7月27日に発売になったので、こちらも是非!
「バーナード嬢曰く。4巻」(施川ユウキ)
今回のクズメガネにも登場した「君たちはどう生きるか」も取り上げられています。
クズメガネとはまた違った切り口の笑いが楽しめますよ。
その最終巻となるコミックス2巻が7月12日に発売になりました。
終わってしまったことは本当に残念でした。
同時期に「ライト姉妹」も終了してしまったのですが、そちらの最終2巻は8月27日発売予定だそうです。
なんだかこう立て続けだと、谷川ニコはこれからどうなるんだろうと不安にもなってきますが、今回のあとがきを読むと「またお会いできるかもしれません」とあったので、少しほっとしました。どうやら、わたモテ以外にもまだ描く意欲はあるようです。
ホント、お願いしますよ、谷川さん!
なお、1巻の感想はこちらからどうぞ↓
「クズとメガネと文学少女(偽)」1巻感想~縦スクロールだけでは味わえない面白さ~
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-239.html
さて、まずは今回の表紙を見ていきましょう。

『乙一、大推薦!』
綾辻行人の次は乙一かよw
相変わらず、帯だけは豪華なんだよなあ。
もうどうせなら、又吉直樹氏に推薦文をお願いしてもらいたかったですね。(作中で「火花」も取り上げられています)
今の出版界において、彼に取り上げてもらえばまず売れることは間違いないですから。(ゲス発想)
おーりが持っているのはわたモテ喪136でも出てきた「GOTH」ですね。
作中で取り上げた「夏と花火と私の死体」でないところが、かえって印象的です。
それはさておき、どうやら完結に対しては乙一氏もお怒りのようですね。
一体どういうことかというと……
裏表紙

やっかみかよw
でもまあ、わかりますけどね。
何しろ彼は、16歳の時に「夏と花火と私の死体」でデビューしているわけですから、
高校生の夏はすでに作家としての多忙な日々に追われて普通の甘酸っぱい青春など無縁だったのでしょう。
今回の最終巻はほぼ、高校1年の夏という人生で最も輝いている季節の話になっています。そりゃあ、あまりに眩し過ぎて「ふざけんなよ」と言いたくなりますよねw
一番いい時を見せて終わるって、ある意味青春の勝ち逃げじゃないですか。
できれば、彼女たちのこれからの3年間を一緒に過ごしてみたかったです。
まあそれはさておき今回の内容ですが、最終巻とはいえ基本的には1巻とそれほど変わりません。限られた人間関係の中で繰り広げられるラブコメテイストの青春4コマギャグ、といったところですね。
ただ、1巻と比べて大きな違いがひとつあります。
1巻最後に突如登場した「文学少女(パクリ)」。この子が全体を通して、作品に新たな風を吹き込むことになるわけです。
今回も掲載月ごとに話がまとまっています。
2巻は第八部から第十五部の8部に分けられますね。
100話から109話までが「おーり不登校」編、
110話から123話までが「おーり復活」編、
124話から135話までが「いないものたち」編、
136話から147話までが「衣替え」編、
148話から159話までが「ここにいる理由」編、
160話から173話までが「期末テスト」編、
174話から185話までが「夏休み」編、
そして、186話から195話までが最終章の「毎日は続く」編でしょうか。
というわけで前回同様、ここからは各部ごとにざっと見ていこうと思います。
第八部「おーり不登校」編(100話~109話)
1巻のラストでいきなり登場した「文学少女(パクリ)」w
ここでは、彼女の正体は実は「図書委員長」で、一学年上の先輩だということが守谷の口から語られます。
なんか、当初のイメージと違い、割と普通の先輩キャラだったのが意外でしたね。もう少し何を考えているかわからないミステリアスなタイプだと思っていたので。
ズバズバ遠慮のない語りというのもえっちゃんと被る気がしますし、この頃はまだキャラがこなれていない印象は否めません。(8部と9部の間にあるおまけマンガのえっちゃんの方がむしろ笑えましたw彼女もいいキャラだったのになあ…)
一番笑ったシーン

やっぱり、おーりのアホ可愛さには敵いませんw
まあこのメール、もしかしたらP.S以外は図書委員長が書いたものなのかもしれませんがw
ていうか、「ノルウェイの森」に出てくる手紙もこんな内容なのかw
というわけで、ここで取り上げられている本はもちろんこれ。
「ノルウェイの森 下」(村上春樹)
村上春樹については、1巻の感想の時にある程度触れましたのでここでは割愛。
最近では、
「村上春樹の100曲」(栗原裕一郎編著)
こんなガイドブック(?)が出ています。
なんと、村上春樹作品に登場する全音楽リスト付きですよ!
読書ガイドであると同時にディスクガイドでもあるという画期的な本です。
クラシックやジャズだけでなく、意外にポップスやロックにも造詣が深いことに改めて驚かされますよ。
村上春樹と音楽は切っても切れない重要な要素です。
もちろん、「ノルウェイの森」というタイトルはザ・ビートルズの名曲からきていますし、村上自身、あるインタビューで「音楽は僕に強い影響を与えてきました。(中略)僕は本当はミュージシャンになりたかったんだろうと思う」と答えているくらいなのですから。
村上ファンでなくとも、実に興味深い内容になっている一冊だと思います。
あ、あと、
「バーナード嬢曰く。2巻」(施川ユウキ)
「バーナード嬢曰く。」の2巻では、「村上春樹をどーいうスタンスで読んだらいいか」が分かりますので、気になる方は是非w
第九部「おーり復活」編(110話~123話)
一週間にもおよぶ不登校からようやく脱したおーりですけど、すっかり心が病んでしまい、「人がいっぱい死ぬ本が読みたい」と云うようになります(笑)。
そんな彼女がいつもアホ可愛さを取り戻すまでの、ちょっぴり感動の話になっているのですが、おーりと守谷がちょっといい雰囲気になるのがここでの大きなポイントですね。その反動で、古河と図書委員長の仲も気になりだした頃でした。
というわけで、一番笑ったシーンはこちら。

妙にかっこいいw(ていうか、クマがあると、ちょっともこっちっぽいw)
ここで取り上げられた本は、けっこう多いんですよね。
「「心が凹んだとき」に読む本」(心屋仁之助)
「ストレス、パニックを消す!最強の呼吸法システマ・ブリージング」(北川貴英)
でもまあ、以上の2冊は書名が出てきただけのようなものですからあまり関係ありませんw(少なくとも、おーりにはあまり効かなかったようですしw)
で、
「悪の教典〈上〉」(貴志祐介)
「人がいっぱい死ぬ本が読みたい」というおーりが選んだ本がこれ。
京極夏彦並に厚くてしかも上下巻ということで、はじめは
「インシテミル」(米澤穂信)
こちらを選ぶつもりだったのですが、高校生が死ぬ方がいいということで却下されましたw(「インシテミル」は大学生が主人公)
正直、よねぽファンとしてはインシテミルを選んでほしい気持ちもありましたw
でもまあ、こちらはメタミステリ的な構造もあるので、ちょっと題材的にずれるかもしれませんね。
「悪の教典」は未読。ていうか、なんかグロそうでなかなか読めないですね。
でも、おーりの反応を見ていたらなんだか興味が湧いてきましたw(谷川さんもバトルロワイヤルを初めて読んだときと同じ興奮を覚えたと書いていました。わたモテのもこっちがバトロワ好きなのはイッコゆずりなのねw)
第十部「いないものたち」編(124話~135話)
古河とおーり、そして守谷の心情に微妙な変化が生じてきます。そしてここにきて、図書委員長のキャラクターもしっかり見え始めて、ようやく4人の関係性も固まってきましたね。
図書委員長の「リアルいないもの状態よ」は笑いながらも胸が痛みました…
一番笑ったシーンは

これですねwやっぱり、勘違いおーりはアホ可愛いw
ここで登場するのは、その図書委員長が古河に勧めた「人が大量に死ぬ話」の
「Another(上)」(綾辻行人)
と、
「Another エピソードS」(綾辻行人)
これw
谷川さん、ホント綾辻さん好きだなw
「Another」はそのうち読もうと思っているので、アニメも実写もあえて見てません。ネタバレを喰らいたくないので。
前回の「十角館の殺人」同様、ここでも「映像不可能」なネタを使っているそうなのですが、実際どういう内容になっているのか気になりますね。守谷によると、アニメはよくできていたという話ですが……
第十一部「衣替え」編(136話~147話)
ここはもう、おーりの可愛さばかりが際立っていましたねw
もう、一番笑ったシーンも選びきれないくらいですよ。

定番のわき毛ネタも捨てがたいですし、

ここなんか、図書委員長のツッコミも冴えまくっていて最高ですねwww
でもやっぱり、最後の

これかなあw
(なんとなく、バーナード嬢のさわ子っぽいネタだけどw)
あと、「図書室で漫画読んでたらバカだと思われるじゃない」(その発想がバカっぽいw)は、「ライト姉妹」のおねいちゃんぽかったですし、

このおーりは、奏愛ぽいw
ここでの本は、
「漫画 君たちはどう生きるか」(吉野源三郎(原作), 羽賀翔一(漫画))
と、
「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎)
これ。おーりたちが読んだのは、漫画版のほうですね。
これはもう、売れすぎちゃって逆に読みづらいってやつですね。
ブームが過ぎ去った後にこっそり読んでみたいなあと考えていますw
第十二部「ここにいる理由」編(148話~159話)
ある意味、最終章より感動的でしたね。
図書委員長の「なぜ文学少女がここにいるのかわからないの?」はマジで名セリフ!
実は2巻でこの12部が一番すきかもしれません。
でも、一番笑ったシーンはこんなのw

まあなんにせよ、笑えるけど泣けるシーンということでw
「火花」(又吉直樹)
今、出版界においてもっとも影響力があると言っても過言ではないでしょう。
お笑いコンビ「ピース」の…というより、もはや芥川賞作家といったほうがいいでしょうか、又吉直樹氏のデビュー作になります。
谷川さんのコラムによると、「面白いとしか言いようがなかった」とのことで、本当に笑えて泣ける作品になっているようです。
(余談ですがイッコさんは若いころお笑い芸人を目指していて、オーディションにも行ったことがあるそうです)
まあ、又吉さんに限らず、お笑いの人って元々お話を作るのがうまいとは思うんですよね。漫才やコントのネタを書いている人は特にそうだと思います。
最近では、インパルスの板倉俊之さんの小説がすごく気になっていますね。
最新作の「月の炎」なんかは重松清氏も絶賛していますし、道尾秀介氏も当初から一目を置いていたそうです。
なんか、どちらも相方がどっか行っちゃっているところも似ているかも……w
第十三部「期末テスト」編(160話~173話)
学園漫画の定番ですね、「期末テスト」。
もう、おーりのバカ可愛さだけでお腹いっぱいですw
あとこの辺から、おーりと図書委員長がなんだかんだで仲良くなり始めているのがいい感じw
一番笑ったシーンは

これですねwww確かに某芸人をほうふつとさせますwww(でもネタよりも「美人過ぎる芸人」という扱いしかされなさそうw)
あと、

これも「ライト姉妹」の奏愛ぽくって好きw
ここでの本は、
「こころ」(夏目漱石)
こちらは「青空文庫」にて無料で読めます。
もちろん、おーりが言っていたような「マンガよめるやつの小説版」みたいなやつではありませんので、安心してお読みくださいw
(スマホでもPCでもプラットフォームに依存しない形で読むことができますよ)
第十四部「夏休み」編(174話~185話)
季節は夏休み。でも、舞台はずっと学校wしかもほとんど図書室というのがポイントですね。
ここにこの作品の最大のテーマが隠されているといってもいいでしょう。
個人的には補習にいた塩崎という女の子がけっこう好きでしたね。
秋以降も話が続けば、彼女の出番もあったのではと想像してしまいます。
一番笑ったシーンは

はこれかなw
ていうか、単純にかわいいw
おーりも図書委員長もツンデレというか、素直じゃない体(てい)ではあるんだけど根が素直、という感じがたまらなく好きですね。
かわいいといえば、こちらも捨てがたいw

というわけで、おーりが死体の真似をしていた本はこれ
「夏と花火と私の死体」(乙一)
今回、私が唯一読んでいる本ですね。(他に「インシテミル」と「こころ」は読んでいますが別枠みたいものですしね)
まあ、とはいっても、この話から興味を持って初めて読んだわけですがw
おーりも言っていましたが、まず設定が斬新というか、要するに殺された女の子の「死体」が主人公なんですね。
「死体」が主人公といってもピンときます?幽霊目線でもないんですよ。本当に死体の一人称で、自分の死体が見つからないように右往左往する兄妹(妹は殺した犯人)を描写していくんです。もうこれだけでも尋常じゃない物語設定です。しかもそれを書いたのが当時16歳の高校生だったというのですから、そりゃあセンセーショナルだったでしょう。
とにかく、不思議な読後感が味わえる面白い作品だと思います。
描き下ろしコラムによると、谷川さんは相当の乙一ファンのようですね。
彼が作るキャラの中にも何人か影響を受けているそうなので、わたモテファンにとっても要チェックかと。
(コラムでやたら妹キャラが苦手だと書いていたのには笑いましたw奏愛の立場は?w ていうか、おーりにも妹いたよね?w)
第十五部「毎日は続く」編(186話~195話)
これが最終章になるわけですが、正直、まったく最終回っぽくありません。
え、本当にこれで終わり?と思われた方も多いことでしょう。
まさに「なにもなく毎日は続く」という最後のタイトル通りの内容でしたね。
ここではあまり笑ったシーンはなかったのですが、強いてあげるならこれでしょうか。

いつの間にか、委員長とおーりの立場が逆転しているのがおかしいですが、さりげなく、「おみやげなにがいい?」と聞いているところがなんかいいですよねw
あと、

委員長のこの強がりっぷりも好きw
素直じゃないなあと言いたいところだけど、よく見ると実は素直というw
なお、最終章で取り上げられている本はなし。
なんともすっきりしない終わり方ではありましたね。
ただ、単行本としては、前回同様おまけは充実しています。
特に巻末の描き下ろしは素晴らしい内容になっていて、ある意味、これこそが最終話と言えるものになっています。
これだけでも、買う価値はありますよ!
後は何といっても谷川さんの読書コラムですね。この人、エッセイなんかも面白いと思うので、文章ももっと書けばいいのになあと思いますよ。(取り上げた本すべてのコラムがあるわけじゃないのが唯一の不満)
乙一氏についてのコラムは特に興味深い内容になっています。
わたモテ喪136でも出てきた「GOTH」に出てくる主人公と森野夜に影響を受けたキャラが自分の漫画に何人かいるそうですし、
乙一の中でも一番好きなのは、「失はれる物語」という短編集内の「しあわせは子猫のかたち」なんだそうです。(いつかパクリにならない程度に思いっきり影響を受けた漫画を描くかもとまで言っていますw)
わたモテ喪136を読んだファンにとっては、これまたいろいろ考えたくなる情報ですよねw
「GOTH 夜の章」(乙一)
「失はれる物語」(乙一)
私もようやく「GOTH 夜の章」を読み始めたのですが、むちゃくちゃ面白くってあっという間に読んでしまいました。
元々はラノベレーベルから出ていたようですごく読みやすいですし、これは本当にお勧めですね。猟奇殺人を扱っているとはいえ、それほどキツイ描写はないのでそういうのが苦手な人でも大丈夫だと思いますよ。(かな?)
森野夜に影響受けたキャラは確かに何人かいそうだなあw
それにしても、返す返す残念です。
もっと面白くなるはずだったのに、すごく消化不良感がしてしまいますね。
そもそも、4コマで毎日更新という連載スタイルが向かなかったんじゃないかと今更ながら感じてしまいます。
4コマという制約がキャラクターたちの世界を狭くし過ぎていたような気がするんですよ。
そのせいで、田岡とかえっちゃんというキャラも活かせなかったように思えてならないんです。
図書委員長のキャラも4コマという括りではなく、普通の連載形式ならもっとはじけたキャラになりえたんじゃないかなあ。
巻末の描き下ろしが素晴らしい出来だっただけに、よけいにそんな気がしてしまうんですよね。最初からああいう5~6ページくらいの読み切り連載だったら、また違った展開もあり得たかもと考えてしまいます。
なんにせよ、まだ彼らの毎日は続いているんです。
いつかまたどこかで彼らと彼女に出会えることを願ってやみません。
ホント、「完結って嘘だろ!?」「ふざけんなよ!」ですよ!
そうそう、「クズメガネ」と違って、真っ当な読書コメディ(笑)である「バーナード嬢曰く。」の4巻が7月27日に発売になったので、こちらも是非!
「バーナード嬢曰く。4巻」(施川ユウキ)
今回のクズメガネにも登場した「君たちはどう生きるか」も取り上げられています。
クズメガネとはまた違った切り口の笑いが楽しめますよ。
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