2017年を適当に振り返る~ラノベ・ライト文芸を中心とした個人的回顧録~
いつの間にやら2017年ももう終わりですが、
今年は昨年以上に後悔ばかりが募るというか、何もできなかった年だったなあという気がしています。
けっきょく、昨年暮れにあれこれ述べたこともほとんど書けず仕舞いでしたし、かろうじて『いまさら翼といわれても』の感想を形にしたくらいだけだったのがなんともはがゆいですね。
というわけで今回は、ライトノベルやライト文芸を中心にしたエンタメ界を個人的な思いとともに振り返っていきます。
要するに去年もやったような簡易感想集……いや、あれよりももっと個人的な感じかな?
まあ言ってみれば、本来の意味での「Web-log」(ウェブログ)でしょうか。まさにWeb日記ですね。
自分への戒めも込めた備忘録という形で、思うがままに進めていこうかと思います。
そんなチラシの裏的なものをネット上に挙げるとか、我ながらどうなのかという気もしないでもないのですが、「公共」の場にさらけ出した「個」の思いというのは、また違ったものになるはずだと思うんですね。
ネット上に乗せた段階でそれは自分ではない、また別の何かなんです。
それに、自分の恥ずかしい部分を世間に晒すことである種のセラピー(?)にもなるはずなので、どうか笑ってご容赦ください。
さて、今年をざっと振り返るとまず思うのが、シリーズものばかり追いかけていたなあということです。
特に心に残るのは、「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズですね。
ビブリア古書堂の事件手帖7~栞子さんと果てない舞台~(三上延)
今年2月に7巻をもってついに完結したわけですが、まあはっきり言って待たされました。
6巻がでてから2年以上ですよ。正直、前回までの流れも半分忘れていましたからねw
で、私はこういうのは気持ち悪いんで、シリーズ始めから読み直してしまうんです。だからなかなか完結編まで進まないw
今年、感想記事がわたモテ以外あまり書けなかったのは、そういう事情もあるんですよ。
しかも今年は久々に出たシリーズものの新刊が多かったですから。
まず「ハルチカ」シリーズの最新刊「惑星カロン」と番外編の「ひとり吹奏楽部」が立て続けに出ましたけど、
これも前作「千年ジュリエット」から3年以上経ってますからね。
(※なお、私は基本的に文庫派なので、特に記述がない限り、出版日は文庫での換算になります)
基本各巻で話が独立しているシリーズとはいえ、そこはやっぱり「青春成長物語」ですから、それまでの彼女らの歩みをおさらいしておかないと、なかなか世界に没入できないんですよ。
それまでは一年に一冊のペースで出ていたので、割とすぐに入って行けたんですが、さすがに3年も開くとねえ……。
思いっきり、「退出ゲーム」から順に読み直してしまいましたよw
あと、今年は「サクラダリセット」が実写映画&TVアニメ化した関係で、角川文庫から新装版が出たんですよね。
これもスニーカー版完結から5年たっての刊行ですよ。そりゃあ、1巻からまた順に読むってものでしょう!
で、これまた悪い癖で、スニーカー版との違いを読み比べてしまうんですね。
この春は、全7巻+7巻で実質14巻分をずっと読んでいたようなものですよw
映画にもアニメにもいろいろ思うことがあっただけに、よけい原作の方を読みふけってしまいましたね。
原作者の河野裕氏ですけど、今年は「サクラダリセット」以外にもいくつか新作を出しました。
2月には創元推理文庫から「最良の嘘の最後のひと言」が出ましたし、
9月には角川文庫から「ベイビー、グッドモーニング」の新装版、そして、スニーカー文庫から待望のラノベ新作シリーズ「ウォーター&ビスケットのテーマ1 コンビニを巡る戦争」が出ています。(「ウォーター〜」は河端ジュン一氏との共著)
ただ、「ベイビー」の新装版はともかく、完全新作のふたつはどちらも設定が凝りすぎていて、正直、作品世界に入り込めなかったですね。
こういってはなんですが、どちらも「サクラダリセット」の良くないところばかりを集めたような印象を持ってしまいました。
ミステリ的などんでん返しや叙述トリックといった「テクニック」ばかりをこねくり回した結果、肝心なものが見えなくなってしまったというか……。
本質的に私はミステリ読みには向いていないんでしょうね。
去年も似鳥鶏の「家庭用事件」で同じような感想を持ちましたが、あまり凝った構造だとそちらのほうばかり気がいって、物語そのものを楽しめなくなる傾向があるようです。
……ということで、この夏から秋にかけては「階段島シリーズ」ばかり読み直していました。
「サクラダリセット」の良さがうまく継承されているシリーズものとして、なんだか恋しくなってしまったんですね。
アニメや映画の「サクラダリセット」しか知らない人たちに向けて、
アニメ「サクラダリセット」視聴者のための「階段島」シリーズのススメ
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-234.html
こんな記事も書いてしまったくらいですw
けっきょく、今年は5作目が出ませんでしたけど、こちらもなるべく早く出して欲しいですね。
そうでないとまた、1巻目(「いなくなれ、群青」)から読み直すはめになりかねませんw
さて、久しぶりのシリーズといえば、これを忘れてはいけません。
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。12(渡航)
こちらも前回の11から2年3ヶ月ぶりの新作ですよ。
しかも、今巻が最終巻になるかと思いきや、まさかの続刊ですよ!
もうこんなの感想なんか書けませんよ!
そもそもこれも11巻までの流れなんか忘れてしまっていますからね。
さすがに1巻から読み直すのもなんですけど、すくなくとも9巻くらいからはおさらいしたいじゃないですか。
そうしないと、今さら比企谷の気持ちなんてわかりませんよ。
いやあ、これこそ、間が空きすぎたシリーズものの弊害だと思いますね。
少なくとも昨年中に出ていればもっと気持ち的にも盛り上がったと思うんだけどなあ。
まあ、これだけ空いたというのは「ビブリア」同様、人気作ゆえのプレッシャーというのも大きかったのでしょう。
それでもしっかり新刊を届けてくれたことは素直に感謝したいですね。
ただ、12巻で完結するとばかり思っていたので、どうにもまだ気持ちを持っていけません。
この作品はいろんな意味で「今」の気分を大事にしたいので、自分の中である程度形が見えてから語りたいなと考えています。
もうひとつ、この秋に久々に出たシリーズものがありました。
それは北村薫氏の<円紫さんと私>シリーズ。
このシリーズは、は北村さんのデビュー作である「空飛ぶ馬」から始まる、「日常の謎」ミステリの草分け的存在なわけですが、
こちらは前作「朝霧」からなんと13年と半年ぶり!
太宰治の辞書(北村薫)
そりゃあ<私>も女子大生から一児の母になるってものですよ!
あまりに懐かしいんで、もうこの秋から冬はずっとシリーズを読み返していました。
(個人的には第二作目「夜の蝉」が一番のお気に入り。ていうか、何十年ぶりにまた泣いてしまった…)
ついでに昨年でた文庫「八月の六日間」まで再読してしまいましたよ。
これはミステリというよりも「登山小説」なんですけど、ヒロインがどこか<円紫さんと私>シリーズとイメージが重なって、すごく好きな作品なんです。(まあ逆にいえば、あの文学少女臭が鼻につく人にはオススメできませんけどw)
<円紫さんと私>シリーズでも蔵王や会津磐梯山へ学友と遊びに行くシーンがあって、その旅情あふれる描写が印象深かったんですよ。だから、よけいにシリーズとだぶらせてしまいますね。
いつの日か、「八月の六日間」の主人公と<私>が文学論議をするスピンオフが書かれることを密かに期待していますw
それにしても、このシリーズ新作が出るたびに過去作から遡ってしまうという悪い癖は、いろんなところに影響を与えてしまっていますね。
『いまさら翼といわれても』の感想がすごく遅れたのも、時間があいたせいで改めて〈古典部〉シリーズを読み返さなければ、ということころから始まっていますし、
『この恋と、その未来。』シリーズの最終巻の感想もそんな感じで放置状態になってしまっています。
そしてなにより、竹宮ゆゆこ!
去年『あしたはひとりにしてくれ』の感想を書けないまま、年を越してしまったと思いきや、
その半年後には『おまえのすべてが燃え上がる』が発売。
あわてて途中報告の記事をアップしたものの、それ以降は放置プレイ。
挙げ句の果てには、さらなる新作『応えろ生きてる星』が文春文庫から出る有様。
これじゃあ、ゆゆぽ信者なんて名乗るのも恥ずかしいですね。
今は懺悔の意味も込めて、合間をみては「知らない映画のサントラを聴く」からのゆゆこ一般レーベルシリーズを読み返している毎日です。(余談ですけど、新潮文庫Nexでは女性主人公、文春文庫では男性主人公とレーベルによって変えているんですね)
竹宮ゆゆこに関しては、もう感情ばかりが先走って、まともな考えがついてこない感じがずっと続いているので、いい加減なんとかしないとなあと思案しているところです。
まあなんにせよ、竹宮ゆゆこは最高です!
はっきり言って、電撃文庫時代より今のほうが面白いですよ!もうほんとバカみたいですけど、これだけは声を大にして言いたいですね。
…なんだか、本当に過去作ばかりを読みふけっていたような感じになってしまったので、
いくつか今年新たに読んだ文庫の中で特に印象的だったものをざっと挙げていくことにします。
少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語(一肇)
よくある「ボーイミーツガール(オカルト風味)」かと思いきや、ある種の熱い芸術論にもなっている異色作。
登場するキャラクターも千鳥風にいうなら「クセが強い」人たちばかりで、読んでいて変な影響を受けそうで怖いですw
特に主人公の「暴想」ぶりはエスカレートしていく一方で、ラストまで止まることを知りません。
ある意味ジェットコースター小説といってもいいかもしれませんね。
販促帯の「乙一が感涙し、綾辻行人が嘆息した迷走系青春ミステリー」に惹かれて購入したのですが、なるほど、これは納得です。
乙一氏は死んだらこの本を棺桶に入れてほしいとも書いていましたが、読めばその気持ちがなんとなくわかると思いますよw
なお、作者の「一肇」氏は、“にのまえ はじめ”と読みます。本職はゲームメーカー「ニトロプラス」所属のライターのようですね。(なんでも「魔法少女まどか☆マギカ」の虚淵玄氏もいる有名なメーカーさんだとか)
おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱(オキシタケヒコ)
サブタイトルに「あるいは~」とつく作品って名作が多いような気がするんですけど、どうでしょう?w
まあそれはともかく、個人的に今年一番の当たりといってもいいくらいの衝撃的な作品でしたね。
民俗ホラーかと思いきや、とんでもないところに連れて行かれますよ、マジで。
ていうか、途中からガチでSFになるんです。(宮内悠介氏が帯に推薦文を載せている時点で気がつくべきなのかもしれませんがw)
しかもそれがまったく破綻しておらず、物語構造的にむしろ至極当然とまで思わせる展開を見せるのですから驚愕ですよ。
それでいて、すごく切ない「縁」の物語でもあるんですよね。
最後はもう号泣必至で、それこそ放心状態になりましたから。
いやあ、今年はこれを読めただけでも良かったなとすら思えたほどでした。
この人もゲームプランナー、シナリオライターとしての顔もある作家さんで、創元SF短編優秀賞も受賞されているらしいのですが、恥ずかしながらまったく知りませんでしたね。(ガガガ文庫でも書いている人なんですよね…)
一肇さんもそうですし、なんでしょう、ゲームライターの人って、今きてるんですかね?
もはや、ゲームには疎いんでと言い訳できない時代がやってきたのかもしれません。
裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル(宮澤伊織)
くねくね、八尺様、きさらぎ駅、時空のおっさんなど、ネット界隈のオカルト都市伝説をそのままエンタメSFにしてしまったという、まさに「その手があったか!」なコロンブスのたまご的小説w
それこそ、オカルトスレを読んでいるような不思議な面白さが味わえます。まさにネット時代ならばの異色SFですね。
完全な異世界モノではなく、日常生活を送りながら時々非日常の世界を探検するという設定がすごく好みです。
ただ、作者自身が公言しているように、百合風味なところも売りのひとつのようですが、個人的にはそこはあまり惹かれませんでしたね。(うっちー好きなお前が何をいうかというツッコミはなしの方向でw)
キャラクターそのものはむしろ少しまえのラノベっぽくってけっこう好きなんですけど、関係性萌えまではいかない感じでしょうか。
要するに私は百合うんぬんというより、もっと狂った激情が欲しいんでしょうね。
彼女たちは微笑ましいというか、健全すぎるところがどうももの足りませんw(そういった意味で「ふたりモノローグ」はまさにドンピシャだったのですがw)
けっこう売れたのか、早々と続編「裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト」も出ましたし、なんとコミカライズも予定されているそうです。
来年以降ブレイクするシリーズものになるかもしれませんね。
作者の宮澤伊織さんはラノベ出身のSF作家で、この方も創元SF短編賞を受賞されている実力派。
なんだか、ますますラノベと一般エンタメといった区別の不毛さを感じますね。
この「裏世界ピクニック」なんか完全にラノベといってもいいくらいの痛快な面白さがありますよ。
それが今や「ハヤカワ文庫」から出るというのですから、もうなんでもいいじゃんという気にさせられます。
風ヶ丘五十円祭りの謎(青崎有吾)
〈裏染天馬シリーズ〉第三弾。青崎有吾といえば、「平成のエラリークイーン」ですけど、今回はもうタイトルからしてクイーンをなぞっているところにニヤリとしてしまいます。
〈裏染天馬シリーズ〉というのは青崎有吾のデビュー作「体育館の殺人」からはじまるシリーズで、
青春ミステリを装った本格パズルミステリといった趣向でしょうか。
第二弾が「水族館の殺人」で第四弾が「図書館の殺人」という、タイトルからしてあの綾辻行人の「館シリーズ」をおちょくったような作品で、その性格の悪さ(褒め言葉)がすごく魅力になっています。
そもそも探偵役の主人公がガチのアニメオタクで、親に勘当されて学校に内緒で住み込んでいるという設定からして、あまり深刻な顔でうんうん唸るような作品ではないことは明白ですよねw
いかにも漫画的なキャラクターたちのドタバタを楽しみながらも、繰り広げられる推理はことごとくロジカルで本格、というそのギャップを楽しむシリーズなんです。
今回は短編集ということで、“殺人事件”も起きず、いわゆる「日常の謎」ミステリとしてよくできたものになっています。
少しずつ裏染天馬の過去も見え始め、青春物としても面白くなりつつありますね。
ただ、最近の流行りなのか、ここでも妙な“百合テイスト”がけっこう顔を出すのがちょっと気になりますけど(笑)
まあ主人公のキャラがあまりに特殊なので、正直かなり人を選ぶシリーズではあると思います。
個人的には供述トリックのような変則技ではなく、あくまで論理的で綺麗な解決を見せるところが気に入っていますね。(その反面、犯人像というか動機に首を傾げてしまうことも多々ありますが)
君を一人にしないための歌(佐藤青南)
「往年のロックの名曲も謎にからむ日常ミステリー」という宣伝句に惹かれて購入。
ボーカル、ベース、ドラムの3人が集まってバンドを始めたのはいいけれど、どうしてもギターが決まらない。
いくらメンバー募集をかけてもなぜかすぐにギタリストだけやめてしまう……
果たして、彼らはいつになったら演奏できるのか?
…とまあ、こんな感じの青春バンド物なわけですが、
正直、ミステリ的には目新しいところはありません。キャラクターも平凡で、どこかで見たような定番キャラという感じは否めません。
ただ、なんか心に残ったんですよね。主人公がロックの知識がまったくないところが初々しくってなんだか好きなんです。初めて「ロック」を聴いた時の新鮮な思いがよみがえるようなそんな作品だと思います。
出てくるロックも基本中の基本すぎて逆に好感が持てますよ。
ビートルズ、セックスピストルズ、ニルヴァーナ、ヴァンヘイレン、そしてエリッククラプトン。
なんか、脈略がありそうななさそうな、とりあえず有名どころ、という感じがいいじゃないですか。(つーか、おっさんホイホイかw)
読んでいて、中学生の頃の気持ちになれること請け合いです。(まあ主人公たちは高校生なわけですがw)
ただ、これ、「だいわ文庫」と、あまりにマイナーレーベルすぎるんですよねえ。とても続編が出るとは思えない!
でもぜひ続きを出して欲しいですね。だって、これ、けっきょくギターが決まらないままなんですよ。
つまり、主人公たちは一度もステージに立てないまま終わってしまうんです!
読み終えて、そんな殺生な!と思いましたよw何にも始まってもいねーじゃねーか!
ここから面白くなっていくだろうというところで終わっているのが、なんとも勿体無く感じた作品ですね。
美の奇人たち ~森之宮芸大前アパートの攻防~(美奈川護)
美奈川護は電撃文庫出身のラノベ作家なんですけど、主にメディアワークス文庫でいわゆる「お仕事小説」で小ヒットを飛ばしていた人なんですよね。「特急便ガール!」シリーズ、「ドラフィル!」シリーズといえば分かる人もいるのではないでしょうか。
個人的に「ドラフィル!」がむちゃくちゃ好きだったんですけど、それ以降、どうもどれも似たり寄ったりという印象が強かったんですね。
もちろん、どれもそれなりに面白いんですけど、あくまで「それなりに」なんですよ。
盛り上げどころ、泣かせどころが見えてしまうというか、またこの感じかあという思わせてしまう部分があったんです。
その後、集英社文庫に活躍の場を移して、「ギンカムロ」「弾丸スタントヒーローズ」といった作品を残すんですけど、今回またメディアワークスに戻ってきたようです。
「ギンカムロ」はわりと一般小説を意識した感じで少し新鮮なところもあったんですけど、やはりうまくいかなかったんでしょうか。
で、今回の「美の奇人たち」。
正直、かなり楽しめました。面白さ的には「ドラフィル!」以来のものを感じましたね。
ぶっちゃけ、話の内容は何も変わっていません。「夢」や「情熱」をどこかで見失った人たちへの応援歌的な人情話というスタンスはずっとぶれないままですね。
でも今回は、キャラクターたちが今までよりも生き生きとしている感じがしたんです。
特にヒロインの朱里のキャラクターがすごく魅力的でした。父親への複雑な思いを抱きながらも生きることに必死な姿に、思わずエールを送りたくなるような主人公なんです。冷めているようで本当はとても情に厚い、なんともかわいい女性でしたね。
ただ、このタイトルだけはいただけません。
なんですか、この親父ギャグみたいなダジャレは。
担当編集者のアイディアなのかもしれませんが、これだけで作品の雰囲気を壊しています。これじゃあ、売れるものも売れませんよ。
「君を一人にしないための歌」とはまた違う意味で、すごく勿体無いなあと感じた作品ですね。
マンガ方面は例のごとく、「わたモテ」三昧(笑)でしたのであまりないのですが、一応挙げていきましょうか。
今年は「わたモテ」以外にも谷川ニコ作品が印象に残った年でもありましたね。
まず4月には、
ライト姉妹 1巻
が発売になりました。
詳しくはこちらの感想記事から↓
ライト姉妹1巻感想〜「設定」は狭いが「キャラ」の広がりに期待ができる王道マンガ〜
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-221.html
そして、9月には
クズとメガネと文学少女(偽) 1巻
が。
こちらも、感想記事が↓にまとまっていますので、よろしければどうぞ。
「クズとメガネと文学少女(偽)」1巻感想~縦スクロールだけでは味わえない面白さ~
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-239.html
その他ですと、やはり
ふたりモノローグ 1巻
これですね。
わたモテ感想のコメントから教えてもらったのですが、もう大ハマリですよ。
いかに私が熱をあげているかは↓こちらの記事でw
「ふたりモノローグ」1巻発売~国が保護すべき(?)尊い「狂気」~
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-233.html
10月にはコミックス2巻も発売になっています。新キャラも増えて、ますますカオスな状態にw
いわゆる“萌え”を前面に出しているわけではないので、百合が苦手な人も大丈夫だと思いますよ。
ふたりモノローグ 2巻
あとは、昨年も紹介したこの人の新作かなあ。
終わった漫画家 1巻
まあ、タイトルからして、もうこういう芸風としかいいようがない人ですけど、やっぱり好きですね。
これまでのエッセイマンガのエッセンスをストーリー物として昇華するという趣向はなかなか興味深いですよ。
相変わらず「本編」より「あとがき」のほうが面白いところも含めて、妙にクセになる味です。
何を隠そう、私のこの拙い文章も彼から多大な影響を受けていますからw(もちろん、彼独特の面白さは到底真似できないのですが)
そして、もう一人。
月曜日の友達 1巻
「ちーちゃんはちょっと足りない」の阿部共実が放つ、久々の長編新作がこれです。
この人の作品は感想が書きづらいんですよね。
なんていうか、理屈ではなく、「絵」から感じ取ったものが自分の心の奥底で熟するのをただ待つしかないんです。
ただ、表現方法はあきらかに「ちーちゃん」から進化していますね。
「死に日々」で培った何かが、ここで花開いたような印象を受けました。
阿部共実に関しては一度感想記事を書いていますので、興味があればぜひ。
「死にたくなるしょうもない日々(以下略)」感想~つまりは「死にたくない」日々~
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-88.html
その他、「実は私は」「境界のRINNE」「監獄学園」といった、個人的に思い入れがあるギャグマンガやコメディが終了したということでも、印象に残る年になりましたね。
ギャグマンガの終わらせるタイミングというのは、ストーリーマンガ以上に難しいと思うんですよ。
そういった意味でもいろいろ考えさせられました。
長々と綴ってきましたが、まあ今年はこんなところでしょうか。
来年は、より多くの素晴らしい作品たちに出会いたいものです。
今年は昨年以上に後悔ばかりが募るというか、何もできなかった年だったなあという気がしています。
けっきょく、昨年暮れにあれこれ述べたこともほとんど書けず仕舞いでしたし、かろうじて『いまさら翼といわれても』の感想を形にしたくらいだけだったのがなんともはがゆいですね。
というわけで今回は、ライトノベルやライト文芸を中心にしたエンタメ界を個人的な思いとともに振り返っていきます。
要するに去年もやったような簡易感想集……いや、あれよりももっと個人的な感じかな?
まあ言ってみれば、本来の意味での「Web-log」(ウェブログ)でしょうか。まさにWeb日記ですね。
自分への戒めも込めた備忘録という形で、思うがままに進めていこうかと思います。
そんなチラシの裏的なものをネット上に挙げるとか、我ながらどうなのかという気もしないでもないのですが、「公共」の場にさらけ出した「個」の思いというのは、また違ったものになるはずだと思うんですね。
ネット上に乗せた段階でそれは自分ではない、また別の何かなんです。
それに、自分の恥ずかしい部分を世間に晒すことである種のセラピー(?)にもなるはずなので、どうか笑ってご容赦ください。
さて、今年をざっと振り返るとまず思うのが、シリーズものばかり追いかけていたなあということです。
特に心に残るのは、「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズですね。
ビブリア古書堂の事件手帖7~栞子さんと果てない舞台~(三上延)
今年2月に7巻をもってついに完結したわけですが、まあはっきり言って待たされました。
6巻がでてから2年以上ですよ。正直、前回までの流れも半分忘れていましたからねw
で、私はこういうのは気持ち悪いんで、シリーズ始めから読み直してしまうんです。だからなかなか完結編まで進まないw
今年、感想記事がわたモテ以外あまり書けなかったのは、そういう事情もあるんですよ。
しかも今年は久々に出たシリーズものの新刊が多かったですから。
まず「ハルチカ」シリーズの最新刊「惑星カロン」と番外編の「ひとり吹奏楽部」が立て続けに出ましたけど、
これも前作「千年ジュリエット」から3年以上経ってますからね。
(※なお、私は基本的に文庫派なので、特に記述がない限り、出版日は文庫での換算になります)
基本各巻で話が独立しているシリーズとはいえ、そこはやっぱり「青春成長物語」ですから、それまでの彼女らの歩みをおさらいしておかないと、なかなか世界に没入できないんですよ。
それまでは一年に一冊のペースで出ていたので、割とすぐに入って行けたんですが、さすがに3年も開くとねえ……。
思いっきり、「退出ゲーム」から順に読み直してしまいましたよw
あと、今年は「サクラダリセット」が実写映画&TVアニメ化した関係で、角川文庫から新装版が出たんですよね。
これもスニーカー版完結から5年たっての刊行ですよ。そりゃあ、1巻からまた順に読むってものでしょう!
で、これまた悪い癖で、スニーカー版との違いを読み比べてしまうんですね。
この春は、全7巻+7巻で実質14巻分をずっと読んでいたようなものですよw
映画にもアニメにもいろいろ思うことがあっただけに、よけい原作の方を読みふけってしまいましたね。
原作者の河野裕氏ですけど、今年は「サクラダリセット」以外にもいくつか新作を出しました。
2月には創元推理文庫から「最良の嘘の最後のひと言」が出ましたし、
9月には角川文庫から「ベイビー、グッドモーニング」の新装版、そして、スニーカー文庫から待望のラノベ新作シリーズ「ウォーター&ビスケットのテーマ1 コンビニを巡る戦争」が出ています。(「ウォーター〜」は河端ジュン一氏との共著)
ただ、「ベイビー」の新装版はともかく、完全新作のふたつはどちらも設定が凝りすぎていて、正直、作品世界に入り込めなかったですね。
こういってはなんですが、どちらも「サクラダリセット」の良くないところばかりを集めたような印象を持ってしまいました。
ミステリ的などんでん返しや叙述トリックといった「テクニック」ばかりをこねくり回した結果、肝心なものが見えなくなってしまったというか……。
本質的に私はミステリ読みには向いていないんでしょうね。
去年も似鳥鶏の「家庭用事件」で同じような感想を持ちましたが、あまり凝った構造だとそちらのほうばかり気がいって、物語そのものを楽しめなくなる傾向があるようです。
……ということで、この夏から秋にかけては「階段島シリーズ」ばかり読み直していました。
「サクラダリセット」の良さがうまく継承されているシリーズものとして、なんだか恋しくなってしまったんですね。
アニメや映画の「サクラダリセット」しか知らない人たちに向けて、
アニメ「サクラダリセット」視聴者のための「階段島」シリーズのススメ
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-234.html
こんな記事も書いてしまったくらいですw
けっきょく、今年は5作目が出ませんでしたけど、こちらもなるべく早く出して欲しいですね。
そうでないとまた、1巻目(「いなくなれ、群青」)から読み直すはめになりかねませんw
さて、久しぶりのシリーズといえば、これを忘れてはいけません。
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。12(渡航)
こちらも前回の11から2年3ヶ月ぶりの新作ですよ。
しかも、今巻が最終巻になるかと思いきや、まさかの続刊ですよ!
もうこんなの感想なんか書けませんよ!
そもそもこれも11巻までの流れなんか忘れてしまっていますからね。
さすがに1巻から読み直すのもなんですけど、すくなくとも9巻くらいからはおさらいしたいじゃないですか。
そうしないと、今さら比企谷の気持ちなんてわかりませんよ。
いやあ、これこそ、間が空きすぎたシリーズものの弊害だと思いますね。
少なくとも昨年中に出ていればもっと気持ち的にも盛り上がったと思うんだけどなあ。
まあ、これだけ空いたというのは「ビブリア」同様、人気作ゆえのプレッシャーというのも大きかったのでしょう。
それでもしっかり新刊を届けてくれたことは素直に感謝したいですね。
ただ、12巻で完結するとばかり思っていたので、どうにもまだ気持ちを持っていけません。
この作品はいろんな意味で「今」の気分を大事にしたいので、自分の中である程度形が見えてから語りたいなと考えています。
もうひとつ、この秋に久々に出たシリーズものがありました。
それは北村薫氏の<円紫さんと私>シリーズ。
このシリーズは、は北村さんのデビュー作である「空飛ぶ馬」から始まる、「日常の謎」ミステリの草分け的存在なわけですが、
こちらは前作「朝霧」からなんと13年と半年ぶり!
太宰治の辞書(北村薫)
そりゃあ<私>も女子大生から一児の母になるってものですよ!
あまりに懐かしいんで、もうこの秋から冬はずっとシリーズを読み返していました。
(個人的には第二作目「夜の蝉」が一番のお気に入り。ていうか、何十年ぶりにまた泣いてしまった…)
ついでに昨年でた文庫「八月の六日間」まで再読してしまいましたよ。
これはミステリというよりも「登山小説」なんですけど、ヒロインがどこか<円紫さんと私>シリーズとイメージが重なって、すごく好きな作品なんです。(まあ逆にいえば、あの文学少女臭が鼻につく人にはオススメできませんけどw)
<円紫さんと私>シリーズでも蔵王や会津磐梯山へ学友と遊びに行くシーンがあって、その旅情あふれる描写が印象深かったんですよ。だから、よけいにシリーズとだぶらせてしまいますね。
いつの日か、「八月の六日間」の主人公と<私>が文学論議をするスピンオフが書かれることを密かに期待していますw
それにしても、このシリーズ新作が出るたびに過去作から遡ってしまうという悪い癖は、いろんなところに影響を与えてしまっていますね。
『いまさら翼といわれても』の感想がすごく遅れたのも、時間があいたせいで改めて〈古典部〉シリーズを読み返さなければ、ということころから始まっていますし、
『この恋と、その未来。』シリーズの最終巻の感想もそんな感じで放置状態になってしまっています。
そしてなにより、竹宮ゆゆこ!
去年『あしたはひとりにしてくれ』の感想を書けないまま、年を越してしまったと思いきや、
その半年後には『おまえのすべてが燃え上がる』が発売。
あわてて途中報告の記事をアップしたものの、それ以降は放置プレイ。
挙げ句の果てには、さらなる新作『応えろ生きてる星』が文春文庫から出る有様。
これじゃあ、ゆゆぽ信者なんて名乗るのも恥ずかしいですね。
今は懺悔の意味も込めて、合間をみては「知らない映画のサントラを聴く」からのゆゆこ一般レーベルシリーズを読み返している毎日です。(余談ですけど、新潮文庫Nexでは女性主人公、文春文庫では男性主人公とレーベルによって変えているんですね)
竹宮ゆゆこに関しては、もう感情ばかりが先走って、まともな考えがついてこない感じがずっと続いているので、いい加減なんとかしないとなあと思案しているところです。
まあなんにせよ、竹宮ゆゆこは最高です!
はっきり言って、電撃文庫時代より今のほうが面白いですよ!もうほんとバカみたいですけど、これだけは声を大にして言いたいですね。
…なんだか、本当に過去作ばかりを読みふけっていたような感じになってしまったので、
いくつか今年新たに読んだ文庫の中で特に印象的だったものをざっと挙げていくことにします。
少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語(一肇)
よくある「ボーイミーツガール(オカルト風味)」かと思いきや、ある種の熱い芸術論にもなっている異色作。
登場するキャラクターも千鳥風にいうなら「クセが強い」人たちばかりで、読んでいて変な影響を受けそうで怖いですw
特に主人公の「暴想」ぶりはエスカレートしていく一方で、ラストまで止まることを知りません。
ある意味ジェットコースター小説といってもいいかもしれませんね。
販促帯の「乙一が感涙し、綾辻行人が嘆息した迷走系青春ミステリー」に惹かれて購入したのですが、なるほど、これは納得です。
乙一氏は死んだらこの本を棺桶に入れてほしいとも書いていましたが、読めばその気持ちがなんとなくわかると思いますよw
なお、作者の「一肇」氏は、“にのまえ はじめ”と読みます。本職はゲームメーカー「ニトロプラス」所属のライターのようですね。(なんでも「魔法少女まどか☆マギカ」の虚淵玄氏もいる有名なメーカーさんだとか)
おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱(オキシタケヒコ)
サブタイトルに「あるいは~」とつく作品って名作が多いような気がするんですけど、どうでしょう?w
まあそれはともかく、個人的に今年一番の当たりといってもいいくらいの衝撃的な作品でしたね。
民俗ホラーかと思いきや、とんでもないところに連れて行かれますよ、マジで。
ていうか、途中からガチでSFになるんです。(宮内悠介氏が帯に推薦文を載せている時点で気がつくべきなのかもしれませんがw)
しかもそれがまったく破綻しておらず、物語構造的にむしろ至極当然とまで思わせる展開を見せるのですから驚愕ですよ。
それでいて、すごく切ない「縁」の物語でもあるんですよね。
最後はもう号泣必至で、それこそ放心状態になりましたから。
いやあ、今年はこれを読めただけでも良かったなとすら思えたほどでした。
この人もゲームプランナー、シナリオライターとしての顔もある作家さんで、創元SF短編優秀賞も受賞されているらしいのですが、恥ずかしながらまったく知りませんでしたね。(ガガガ文庫でも書いている人なんですよね…)
一肇さんもそうですし、なんでしょう、ゲームライターの人って、今きてるんですかね?
もはや、ゲームには疎いんでと言い訳できない時代がやってきたのかもしれません。
裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル(宮澤伊織)
くねくね、八尺様、きさらぎ駅、時空のおっさんなど、ネット界隈のオカルト都市伝説をそのままエンタメSFにしてしまったという、まさに「その手があったか!」なコロンブスのたまご的小説w
それこそ、オカルトスレを読んでいるような不思議な面白さが味わえます。まさにネット時代ならばの異色SFですね。
完全な異世界モノではなく、日常生活を送りながら時々非日常の世界を探検するという設定がすごく好みです。
ただ、作者自身が公言しているように、百合風味なところも売りのひとつのようですが、個人的にはそこはあまり惹かれませんでしたね。(うっちー好きなお前が何をいうかというツッコミはなしの方向でw)
キャラクターそのものはむしろ少しまえのラノベっぽくってけっこう好きなんですけど、関係性萌えまではいかない感じでしょうか。
要するに私は百合うんぬんというより、もっと狂った激情が欲しいんでしょうね。
彼女たちは微笑ましいというか、健全すぎるところがどうももの足りませんw(そういった意味で「ふたりモノローグ」はまさにドンピシャだったのですがw)
けっこう売れたのか、早々と続編「裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト」も出ましたし、なんとコミカライズも予定されているそうです。
来年以降ブレイクするシリーズものになるかもしれませんね。
作者の宮澤伊織さんはラノベ出身のSF作家で、この方も創元SF短編賞を受賞されている実力派。
なんだか、ますますラノベと一般エンタメといった区別の不毛さを感じますね。
この「裏世界ピクニック」なんか完全にラノベといってもいいくらいの痛快な面白さがありますよ。
それが今や「ハヤカワ文庫」から出るというのですから、もうなんでもいいじゃんという気にさせられます。
風ヶ丘五十円祭りの謎(青崎有吾)
〈裏染天馬シリーズ〉第三弾。青崎有吾といえば、「平成のエラリークイーン」ですけど、今回はもうタイトルからしてクイーンをなぞっているところにニヤリとしてしまいます。
〈裏染天馬シリーズ〉というのは青崎有吾のデビュー作「体育館の殺人」からはじまるシリーズで、
青春ミステリを装った本格パズルミステリといった趣向でしょうか。
第二弾が「水族館の殺人」で第四弾が「図書館の殺人」という、タイトルからしてあの綾辻行人の「館シリーズ」をおちょくったような作品で、その性格の悪さ(褒め言葉)がすごく魅力になっています。
そもそも探偵役の主人公がガチのアニメオタクで、親に勘当されて学校に内緒で住み込んでいるという設定からして、あまり深刻な顔でうんうん唸るような作品ではないことは明白ですよねw
いかにも漫画的なキャラクターたちのドタバタを楽しみながらも、繰り広げられる推理はことごとくロジカルで本格、というそのギャップを楽しむシリーズなんです。
今回は短編集ということで、“殺人事件”も起きず、いわゆる「日常の謎」ミステリとしてよくできたものになっています。
少しずつ裏染天馬の過去も見え始め、青春物としても面白くなりつつありますね。
ただ、最近の流行りなのか、ここでも妙な“百合テイスト”がけっこう顔を出すのがちょっと気になりますけど(笑)
まあ主人公のキャラがあまりに特殊なので、正直かなり人を選ぶシリーズではあると思います。
個人的には供述トリックのような変則技ではなく、あくまで論理的で綺麗な解決を見せるところが気に入っていますね。(その反面、犯人像というか動機に首を傾げてしまうことも多々ありますが)
君を一人にしないための歌(佐藤青南)
「往年のロックの名曲も謎にからむ日常ミステリー」という宣伝句に惹かれて購入。
ボーカル、ベース、ドラムの3人が集まってバンドを始めたのはいいけれど、どうしてもギターが決まらない。
いくらメンバー募集をかけてもなぜかすぐにギタリストだけやめてしまう……
果たして、彼らはいつになったら演奏できるのか?
…とまあ、こんな感じの青春バンド物なわけですが、
正直、ミステリ的には目新しいところはありません。キャラクターも平凡で、どこかで見たような定番キャラという感じは否めません。
ただ、なんか心に残ったんですよね。主人公がロックの知識がまったくないところが初々しくってなんだか好きなんです。初めて「ロック」を聴いた時の新鮮な思いがよみがえるようなそんな作品だと思います。
出てくるロックも基本中の基本すぎて逆に好感が持てますよ。
ビートルズ、セックスピストルズ、ニルヴァーナ、ヴァンヘイレン、そしてエリッククラプトン。
なんか、脈略がありそうななさそうな、とりあえず有名どころ、という感じがいいじゃないですか。(つーか、おっさんホイホイかw)
読んでいて、中学生の頃の気持ちになれること請け合いです。(まあ主人公たちは高校生なわけですがw)
ただ、これ、「だいわ文庫」と、あまりにマイナーレーベルすぎるんですよねえ。とても続編が出るとは思えない!
でもぜひ続きを出して欲しいですね。だって、これ、けっきょくギターが決まらないままなんですよ。
つまり、主人公たちは一度もステージに立てないまま終わってしまうんです!
読み終えて、そんな殺生な!と思いましたよw何にも始まってもいねーじゃねーか!
ここから面白くなっていくだろうというところで終わっているのが、なんとも勿体無く感じた作品ですね。
美の奇人たち ~森之宮芸大前アパートの攻防~(美奈川護)
美奈川護は電撃文庫出身のラノベ作家なんですけど、主にメディアワークス文庫でいわゆる「お仕事小説」で小ヒットを飛ばしていた人なんですよね。「特急便ガール!」シリーズ、「ドラフィル!」シリーズといえば分かる人もいるのではないでしょうか。
個人的に「ドラフィル!」がむちゃくちゃ好きだったんですけど、それ以降、どうもどれも似たり寄ったりという印象が強かったんですね。
もちろん、どれもそれなりに面白いんですけど、あくまで「それなりに」なんですよ。
盛り上げどころ、泣かせどころが見えてしまうというか、またこの感じかあという思わせてしまう部分があったんです。
その後、集英社文庫に活躍の場を移して、「ギンカムロ」「弾丸スタントヒーローズ」といった作品を残すんですけど、今回またメディアワークスに戻ってきたようです。
「ギンカムロ」はわりと一般小説を意識した感じで少し新鮮なところもあったんですけど、やはりうまくいかなかったんでしょうか。
で、今回の「美の奇人たち」。
正直、かなり楽しめました。面白さ的には「ドラフィル!」以来のものを感じましたね。
ぶっちゃけ、話の内容は何も変わっていません。「夢」や「情熱」をどこかで見失った人たちへの応援歌的な人情話というスタンスはずっとぶれないままですね。
でも今回は、キャラクターたちが今までよりも生き生きとしている感じがしたんです。
特にヒロインの朱里のキャラクターがすごく魅力的でした。父親への複雑な思いを抱きながらも生きることに必死な姿に、思わずエールを送りたくなるような主人公なんです。冷めているようで本当はとても情に厚い、なんともかわいい女性でしたね。
ただ、このタイトルだけはいただけません。
なんですか、この親父ギャグみたいなダジャレは。
担当編集者のアイディアなのかもしれませんが、これだけで作品の雰囲気を壊しています。これじゃあ、売れるものも売れませんよ。
「君を一人にしないための歌」とはまた違う意味で、すごく勿体無いなあと感じた作品ですね。
マンガ方面は例のごとく、「わたモテ」三昧(笑)でしたのであまりないのですが、一応挙げていきましょうか。
今年は「わたモテ」以外にも谷川ニコ作品が印象に残った年でもありましたね。
まず4月には、
ライト姉妹 1巻
が発売になりました。
詳しくはこちらの感想記事から↓
ライト姉妹1巻感想〜「設定」は狭いが「キャラ」の広がりに期待ができる王道マンガ〜
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-221.html
そして、9月には
クズとメガネと文学少女(偽) 1巻
が。
こちらも、感想記事が↓にまとまっていますので、よろしければどうぞ。
「クズとメガネと文学少女(偽)」1巻感想~縦スクロールだけでは味わえない面白さ~
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-239.html
その他ですと、やはり
ふたりモノローグ 1巻
これですね。
わたモテ感想のコメントから教えてもらったのですが、もう大ハマリですよ。
いかに私が熱をあげているかは↓こちらの記事でw
「ふたりモノローグ」1巻発売~国が保護すべき(?)尊い「狂気」~
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-233.html
10月にはコミックス2巻も発売になっています。新キャラも増えて、ますますカオスな状態にw
いわゆる“萌え”を前面に出しているわけではないので、百合が苦手な人も大丈夫だと思いますよ。
ふたりモノローグ 2巻
あとは、昨年も紹介したこの人の新作かなあ。
終わった漫画家 1巻
まあ、タイトルからして、もうこういう芸風としかいいようがない人ですけど、やっぱり好きですね。
これまでのエッセイマンガのエッセンスをストーリー物として昇華するという趣向はなかなか興味深いですよ。
相変わらず「本編」より「あとがき」のほうが面白いところも含めて、妙にクセになる味です。
何を隠そう、私のこの拙い文章も彼から多大な影響を受けていますからw(もちろん、彼独特の面白さは到底真似できないのですが)
そして、もう一人。
月曜日の友達 1巻
「ちーちゃんはちょっと足りない」の阿部共実が放つ、久々の長編新作がこれです。
この人の作品は感想が書きづらいんですよね。
なんていうか、理屈ではなく、「絵」から感じ取ったものが自分の心の奥底で熟するのをただ待つしかないんです。
ただ、表現方法はあきらかに「ちーちゃん」から進化していますね。
「死に日々」で培った何かが、ここで花開いたような印象を受けました。
阿部共実に関しては一度感想記事を書いていますので、興味があればぜひ。
「死にたくなるしょうもない日々(以下略)」感想~つまりは「死にたくない」日々~
http://horobijiji.blog.fc2.com/blog-entry-88.html
その他、「実は私は」「境界のRINNE」「監獄学園」といった、個人的に思い入れがあるギャグマンガやコメディが終了したということでも、印象に残る年になりましたね。
ギャグマンガの終わらせるタイミングというのは、ストーリーマンガ以上に難しいと思うんですよ。
そういった意味でもいろいろ考えさせられました。
長々と綴ってきましたが、まあ今年はこんなところでしょうか。
来年は、より多くの素晴らしい作品たちに出会いたいものです。
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