「クズとメガネと文学少女(偽)」1巻感想~縦スクロールだけでは味わえない面白さ~
ツイッターで毎日4コマ漫画を配信するというちょっと変わったwebマンガ誌「ツイ4」。
そこで今年の2月から連載をしている「クズとメガネと文学少女(偽)」のコミックス1巻が9月9日に発売になりました。
以前、「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」11巻を紹介した記事の終わりでちらっと紹介しましたけど、
つい先日、まさかの「わたモテ」とのコラボで盛り上がったことも記憶に新しいですよね。
(「もこっちを見守る会」さんの『喪120を読んだ4chanの反応』内でも紹介されていますのでまだ見ていない方は是非)
まず、表紙ですけど、
『綾辻行人、大推薦!』の帯には笑わせてもらいましたw綾辻さん、別に断ってもいいんですよw
ていうか、さすがに「京極夏彦」には声かけられなかったかw
裏表紙はこんな感じ。
「古今東西の名作が続々と登場する読書コメディ」とありますが、最初にはっきり言っておきます。
これ、嘘ですから!
“続々”なんて登場しませんので、まずそこはだまされないようにしてくださいw
なんでも、一部に「バーナード嬢曰く。」のパクリという声もあるようですが、まったく見当はずれな難癖としか言いようがありませんね。
つーかある意味、「バーナード嬢曰く。」に失礼ですよw
あっちは真っ当な「読書あるあるギャグマンガ」ですからね。とても比べるような代物じゃありませんw
そもそも巻末にある「参考文献」を見れば一目瞭然です。
「バーナード嬢曰く。」1巻がこれに対して、
「クズメガネ」1巻は
これですからねwどう考えても密度というか、レベルが違うわw
そもそも、「サンリオSF文庫」がどうのだの、「ディックが死んで30年、今更初訳される話が面白いわけないだろ」だの、思いっきりマニアックなネタがバンバン出てくるようなガチマンガなんですよ、「バーナード嬢曰く。」は。
さわ子としおりのコメディチックな百合テイストは、あくまでそれらを中和するためのエッセンスとして機能しているだけなんです。
「クズメガネ」は違いますからね。
“クズ”こと古河と“メガネ”こと守谷、そして“文学少女(偽)”の織川(おーり)のトライアングルが織りなす青春コメディこそが根幹になっている作品ですから。
むしろ、読書ネタはその過程における一要素に過ぎないと思いますよ。
構造的に「バーナード嬢」とは逆になっているといってもいいくらいなんです。
というわけなので、みなさんはキャッチコピーや綾辻行人さん(笑)には騙されないようにしてくださいね!
なお、「バーナード嬢曰く。」は「2016年を適当に振り返る」でもさらっと取り上げましたが、本当に面白い作品なので、おすすめです。
本に詳しくない人でもきっと楽しめるはずなので、是非どうぞ。
さて、そんな「クズメガネ」ですけど、もうむちゃくちゃ面白いです。
最初の設定からして振り切り過ぎていた「ナンバーガール」や「ライト姉妹」に比べても、始めからキャラを立ててその関係性を描いていこうという方向性がしっかり見えるので、ある意味、谷川ニコの中でもっともポップな印象がありますね。
“残念”な美少女がヒロインのラブコメちっく?ギャグという面からすると、谷川さんの処女作「ちょく!」に通じる部分があるかもしれません。
いうほど“クズ”とも思えない古河、
“(偽)”とは言いつつも、意外と読んでいる(笑)おーり、
そして、当初の「まとも」キャラが崩壊しつつある(笑)、“メガネ”こと守谷。
もう三人とも本当に魅力的です。
このブログをずっと読まれている方ならおわかりでしょうが、私はこういう「アンジャッシュ」ネタというか、勘違いが勘違いを呼ぶパターンがもう大好物なんですよ。
途中から繰り広げられるBL勘違いネタとかもう最高ですね。
腐女子に媚びてるという声もあるようですが、私に言わせれば、媚び上等!ですよ。
(余談ですけど、各ショップの特典情報でアニメイトだけ古河と守谷なのは笑いましたw)
勘違いしながらも二人を応援しているおーりはすごくかわいいです。
できればこの奇妙な三角関係がずっと続けばいいなと思っていますね。
ただ、どうしても話が三人だけで完結しがちなのはちょっと物足りない部分もあります。
当初出てきた“恋愛ゲームの友達”キャラ、田岡とか、思ったことをそのまま口にしないではいられないえっちゃんとか、他にも魅力的なキャラがいるだけに、その辺は少しもどかしいところです。
そういった意味では、最後に出てきた「文学少女(真)」の子に期待したいですね。
ところで、ツイッター上で見ていた時は気づかなかったのですが、これ、おおよそ月ごとに話がまとまっていたんですね。
つまり、2月掲載分の1話から14話までが「出会い」編になっているんです。
で、
15話から28話までが「おーり」編、
29話から43話までが「目撃」編(笑)、
44話から57話までが「三島」編、
58話から71話までが「約束編」、
72話から87話までが「デズニー」編、
そして、88話から99話までが「消えた彼女」編という感じでしょうか。
毎月14日から2週間毎日更新という変則的連載ですが、実はこういう構造になっていたんですね。(ちなみに今月は16日から更新されています。)
コミックス1巻は7部構成になっているわけです。
というわけで、ここからは各部ごとに見ていこうと思います。
第一部「出会い」編(1話~14話)
最初はまだおーりがどういう子なのか、語られていなかったのですね。
12話くらいまでは「謎の美少女」扱いなのが今となっては妙におかしいw
こうして単行本という形でまとめて読むとまた新鮮な面白さがあります。
一番笑ったシーンはこれw
おーりのおバカネタもかわいいですけど、古河がちょこちょこ繰り出すこういうネタがツボなんですよねえ。
ここで取り上げられた本は「罪と罰」(ドストエフスキー)。
おーりが見栄を張りそうなものということでのチョイスということで、これを機に谷川さんも読もうとしたそうですが、やはり登場人物の名前で挫折したそうですw
まあ、これに限らず、海外小説ってまず名前や固有名詞でつまづきやすいですけど、
ロシア文学はまた特別ですからね。
「クズメガネ」でも登場人物の名前がネタにされていましたが、読んでみると本当にすごいですよ。
主人公の名前がロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフで、母親の名前がプリヘーニヤ・アレクサンドロヴナ・ラスコーリニコワとか、もうこの時点で主人公と母親の区別がつかないですからね。
さらには、妹がアヴドーチヤ・ロマーノヴナ・ラスコーニコワときますからw声に出したら絶対舌噛むレベルw
これにくわえて、略称がでてきたりするわけですよ。主人公のあだ名はロージャで妹の愛称はドゥーニャとかw
ストーリーうんぬん以前に、キャラの区別が全然つきませんから。
まあ、はっきり言って、無理に読むことはないと思います。私も途中で挫折しましたし。
ただ、「カラマーゾフの兄弟」と並び、いろんな小説や映画、マンガなどの元ネタにもされる名作であるのは間違いないので、だいたいどういう話かは知っておいて損はないと思います。
で、私のお薦めはこれ。
『罪と罰』を読まない
三浦しをん、岸本佐和子、吉田浩美、吉田篤弘という、「小説」にたずさわる仕事をしているにもかかわらず、今まで『罪と罰』を読んだことがなかった傍若無人(笑)な4人が、「読まずに」どういう話なのかを語るというとんでもない企画本なのですが、これがもう捧腹絶倒な内容なのですよ。
前述の名前ネタ(ラスコって苗字なのか!は爆笑しましたw)はもちろんですが、いちいちこういう話なんじゃないかと予想しては、編集者からダメ出しされる流れがもう漫才かコントのノリなんです。
それでいて、基本的な時代背景や登場人物表、あらすじもしっかりしていてわかりやすいですし、笑いながら名作を追体験できるような構成になっているので、あっという間に読み終えてしまうはずです。
もうこれ一冊で『罪と罰』は読んだも同然!
その他、
手塚治虫がマンガ化した『罪と罰』も面白いですよ。
何より、絵があるのでキャラクターがわかりやすいw
第二部「おーり」編(15話~28話)
ここはやっぱり、おーりこと、織川衣栞のポンコツかわいさぶりでしょうねw
一気にキャラの魅力が爆発していて、マンガとしての面白さもますます加速していきます。
そんな中、一番笑ったシーンを選ぶとしたらやっぱり
これになってしまいますねえw
(「登場人物が日本人なら理解できるわ!!よかった!!私バカじゃないわ!!」も捨てがたいですがw)
試しに「小説家 服 顔」で検索すると、『小説家 服 顔に関連する検索キーワード』に“京極夏彦”と出てくるのですが、
これって、いつからこうなっていたのでしょうw
ここで取り上げられた本はもちろんこれ(笑)
「幽談」(京極夏彦)
『あの穴あき手袋!100頁くらいにまとめてよ!!』にも笑いましたが(つーか、マジで京極さんに怒られないのか?)、
も微妙に失礼なネタでじわじわきますw
京極夏彦は私の場合、『姑獲鳥の夏』の段階で止まっていますので谷川さんよりひどいですねw
この『幽談』は短編集とのことなので、こちらから読んでみようかなあ。
第三部「目撃」編(29話~43話)
ここからは“メガネ”こと、守谷のエキセントリックさが如実にクローズアップされていきますw
29話では守谷の家庭の様子もちらっと出てきますが、やっぱり母親はいないのでしょうか。
まあ、本のことになると多弁になるところは、「バーナード嬢」の神林しおりに通じるところがあるのかも?
というわけで、一番笑ったシーンはこれしかありませんねw
ここからこの3人の奇妙な関係は始まったとも言えるでしょう!
ここで取り上げられた本はもちろん、
「十角館の殺人 <新装改訂版>」(綾辻行人)
表紙にも描かれているこれ。
今年はミステリー界における一大ムーブメント、「新本格」から30周年とのことですが、
そのムーブメントの生んだ歴史的一冊がこれなんです。
私は横溝正史からミステリーに入ったのですが、そのころは「本格」探偵小説って古典扱いというか、まあはっきり言ってバカにされていたんですね。
そんな中、綾辻行人のデビューから始まる“本格”再評価の波というのは当時かなり衝撃を持って迎えられたんです。
それこそ京極夏彦も東野圭吾も綾辻さんがいなかったら、世に出てこれなかったかもしれないくらいなんですよ。
まあはっきり言って、現代ミステリの元祖みたいな作品です。
私が初めて読んだ頃は<新装版>じゃなく「旧版」だったのですが、そのときは守谷のいう『あの一行』はページの途中にあったので、古河のようにページを捲ったとたんに「っ!?」とはなれなかったんです。
組版にも工夫を凝らすという発想があの当時はまだほとんどなかったのですね。
今、<新装版>で新たに読める人は本当に幸せですよ。
というわけで、ブック○フとか売っている古い文庫で読むのではなく、必ず<新装版>で読んでくださいね。驚きが違いますから!
第四部「三島」編(44話~57話)
ここからはおーりの妄想が暴走していきますw
三島由紀夫はわかるか?に対して、カズレーサーよ!は最高ですねwww
あと、中学時代の友達、えっちゃんがすごくいいキャラしているんですけど、再登場しないのかなあ…
一番笑ったシーンはこれ。
なんかもう、それこそ「三島由紀夫」の小説以上に難しくて変な関係になりつつありますよwww
で、ここで出て来る本はもちろんこれですね。
「仮面の告白」(三島由紀夫)
三島由紀夫はやっぱりその独特の美的感覚というか、世界観に気後れしてしまって、今まで「潮騒」くらいしか読んだことがないのですが、今回の話でちょっと興味が湧いてきました。
本当、どれだけ「わきの毛」を描写するんだよw
第五部「約束」編(58話~71話)
少し古河とおーりがいい感じになる?ラブコメ的展開の第五部。
もうみんな可愛いとしかいいようがない話ばかりで、個人的にはこの辺が一番好きかもしれません。
一番笑ったシーンは、どれも甲乙つけがたくってすごく悩んだのですが、迷った末に
これにしましたw
なんか、三人とも知らないうちにドツボにはまりつつある感じがたまらなく面白いですね。
さて、ここで取り上げられた本は特別ないんですよ。
まあ、強いてあげれば「三年B組官能教室」とか「ドスケベ巨乳JKに俺の学園生活が侵略されている」とかになりますが、さすがにそれはここでは遠慮しておきますw(ていうか、これは実在しないのかな?w)
第六部「デズニー」編(72話~87話)
北関東の高校の遠足って本当にディ●ニーランドが多いんでしょうか。
守谷の不穏な過去がそれとなく語られていて、今後の展開にどう絡んでくるのか、けっこう気になる描写が多いですね。
虐待の話もそうですが、「初めて母親に買ってもらった本」(74話)というのも今後の伏線になりそうです。
一番笑ったシーンはこれ。
最後に、3人の間に奇妙な友情が生まれている感じが微笑ましくも笑えますw
ここで取り上げられた本は「ミッキーマウスの憂鬱」(松岡圭祐)
松岡圭祐氏はヤングマガジンに「探偵の探偵」のコミカライズが載っていたな、くらいしか知らないのですが、すごく多作な作家さんですよね。(そういえば、「万能鑑定士Qの事件簿」は1巻を買ってそのままだわ…)
谷川さんの感想によると、この「ミッキーマウスの憂鬱」は今回取り上げた本の中で一番読みやすく、読後感もよかったとのことなので、いずれ機会を見て読んでみたいと思いますね。
第七部「消えた少女」編(88話~99話)
単行本の最後で衝撃の展開が続きます。
「パクリ」ってwwwww(ここが一番笑ったシーンになりますw)
でも、この「文学少女(真)」の子も気になりますが、
この後、おーりが不登校になってしまうという、まさかの“ヒキ”で以下次巻!なんですよねえ。
しかも、9月分の連載も始まっていますが、9月18日現在、いまだ何も進行していないという……
まあ、まだまだ話は始まったばかりなのだと無理やり納得しようと思いますw
今後の展開にますます目が離せませんね!
ここで取り上げられた本は2冊。
「永遠の仔〈1〉再会」(天童荒太)
と、
「ノルウェイの森 上」(村上春樹)
ですね。(「ノルウェイの森」は今の9月分でも古河が読んでいるので、まだまだ引っ張るのかも)
「永遠の仔」は発売当時、いろんなメディアに取り上げられましたよね。
もう18年くらい前ですけど、あの当時「児童虐待」という重いテーマに真正面からぶつかったというのはやはりすごいです。
こういう言い方は失礼かもしれませんけど、「時代を先取りした」作品だったのでしょう。
恥ずかしながら私はまったく読んだことがないのですが、「このミステリーがすごい!2000年版」1位だったので、ずっと気にはなっているタイトルですね。
(内容が内容だけに、怖くて中々手を出せないんだよなあ)
村上春樹はもう今更説明不要でしょう。
まさに現代日本を代表する作家ですね。
その独特の文体から好き嫌いがはっきり分かれるタイプの作家さんですけど、
一度は読んでも損はない人だと思いますよ。
(どんな文体かは最後の方で古河がモノローグで再現しているのでチェックしてみてくださいw)
…といっても、実は私もそれほど読んでいないんですけどねw
デビュー作の「風の歌を聴け」から「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」までの三部作までは読んでいたのですが、なぜか、「ノルウェイの森」あたりからぱたっと読まなくなってしまったんですよね。我ながらよくわからないのですが。
個人的に村上春樹は、長編よりも短編やエッセイの方が好みですね。
短編集なら
「螢・納屋を焼く・その他の短編」(村上春樹)
が面白いですよ。あとは「カンガルー日和」とか。
(すみません、古いのばっかりになってしまいますがw)
あと、95話で古河が言及していた「一般人の質問に答えてるHP」は書籍にまとまっています。
「村上さんのところ」
すべての質問と答えを網羅した完全版は電子書籍版のみで。
「村上さんのところ コンプリート版」
これがなかなか面白いんです。はっきりいって、小説よりお薦めw
さて、ここまで見てきましたが、本当にこのコミックスはマストアイテムですよ。
全話ウェブで読めるからいいや、なんて絶対もったいないです。
「ライト姉妹」1巻のときは書き下ろしやおまけが一切なかったのがすごく不満でしたが、今回は違います。
おまけ3コマ漫画やおーりの書き下ろしファッション、巻末おまけマンガにあとがきマンガ、さらには谷川ニコの読書コラムと、
ライト姉妹のあれはいったい何だったんだ(笑)と思わざるを得ないくらい充実の内容!
特に巻末おまけマンガはなかなか叙情的な感じで読ませますよ。いつもは4コマなだけに、通常のコマ割りがなんだか新鮮なんですよね。
ただ、曲がりなりにも「読書コメディ」と銘打つからには、取り上げる本やコラムの数をもう少し充実させてもいいんじゃないかとは思いますけどねw
99話分もあって、コラムが5つ、参考文献が10冊はあまりに少なすぎるでしょう。
「バーナード嬢曰く。」までとはいいませんけど、次はその辺のところも期待したいところですね。
いずれにしても、単行本を買う価値は十分にあります。
縦スクロールだけでは味わえない面白さを是非あなたも体験してみてください!
そこで今年の2月から連載をしている「クズとメガネと文学少女(偽)」のコミックス1巻が9月9日に発売になりました。
以前、「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」11巻を紹介した記事の終わりでちらっと紹介しましたけど、
つい先日、まさかの「わたモテ」とのコラボで盛り上がったことも記憶に新しいですよね。
(「もこっちを見守る会」さんの『喪120を読んだ4chanの反応』内でも紹介されていますのでまだ見ていない方は是非)
まず、表紙ですけど、

『綾辻行人、大推薦!』の帯には笑わせてもらいましたw綾辻さん、別に断ってもいいんですよw
ていうか、さすがに「京極夏彦」には声かけられなかったかw
裏表紙はこんな感じ。

「古今東西の名作が続々と登場する読書コメディ」とありますが、最初にはっきり言っておきます。
これ、嘘ですから!
“続々”なんて登場しませんので、まずそこはだまされないようにしてくださいw
なんでも、一部に「バーナード嬢曰く。」のパクリという声もあるようですが、まったく見当はずれな難癖としか言いようがありませんね。
つーかある意味、「バーナード嬢曰く。」に失礼ですよw
あっちは真っ当な「読書あるあるギャグマンガ」ですからね。とても比べるような代物じゃありませんw
そもそも巻末にある「参考文献」を見れば一目瞭然です。

「バーナード嬢曰く。」1巻がこれに対して、
「クズメガネ」1巻は

これですからねwどう考えても密度というか、レベルが違うわw
そもそも、「サンリオSF文庫」がどうのだの、「ディックが死んで30年、今更初訳される話が面白いわけないだろ」だの、思いっきりマニアックなネタがバンバン出てくるようなガチマンガなんですよ、「バーナード嬢曰く。」は。
さわ子としおりのコメディチックな百合テイストは、あくまでそれらを中和するためのエッセンスとして機能しているだけなんです。
「クズメガネ」は違いますからね。
“クズ”こと古河と“メガネ”こと守谷、そして“文学少女(偽)”の織川(おーり)のトライアングルが織りなす青春コメディこそが根幹になっている作品ですから。
むしろ、読書ネタはその過程における一要素に過ぎないと思いますよ。
構造的に「バーナード嬢」とは逆になっているといってもいいくらいなんです。
というわけなので、みなさんはキャッチコピーや綾辻行人さん(笑)には騙されないようにしてくださいね!
なお、「バーナード嬢曰く。」は「2016年を適当に振り返る」でもさらっと取り上げましたが、本当に面白い作品なので、おすすめです。
本に詳しくない人でもきっと楽しめるはずなので、是非どうぞ。
さて、そんな「クズメガネ」ですけど、もうむちゃくちゃ面白いです。
最初の設定からして振り切り過ぎていた「ナンバーガール」や「ライト姉妹」に比べても、始めからキャラを立ててその関係性を描いていこうという方向性がしっかり見えるので、ある意味、谷川ニコの中でもっともポップな印象がありますね。
“残念”な美少女がヒロインのラブコメちっく?ギャグという面からすると、谷川さんの処女作「ちょく!」に通じる部分があるかもしれません。
いうほど“クズ”とも思えない古河、
“(偽)”とは言いつつも、意外と読んでいる(笑)おーり、
そして、当初の「まとも」キャラが崩壊しつつある(笑)、“メガネ”こと守谷。
もう三人とも本当に魅力的です。
このブログをずっと読まれている方ならおわかりでしょうが、私はこういう「アンジャッシュ」ネタというか、勘違いが勘違いを呼ぶパターンがもう大好物なんですよ。
途中から繰り広げられるBL勘違いネタとかもう最高ですね。
腐女子に媚びてるという声もあるようですが、私に言わせれば、媚び上等!ですよ。
(余談ですけど、各ショップの特典情報でアニメイトだけ古河と守谷なのは笑いましたw)
勘違いしながらも二人を応援しているおーりはすごくかわいいです。
できればこの奇妙な三角関係がずっと続けばいいなと思っていますね。
ただ、どうしても話が三人だけで完結しがちなのはちょっと物足りない部分もあります。
当初出てきた“恋愛ゲームの友達”キャラ、田岡とか、思ったことをそのまま口にしないではいられないえっちゃんとか、他にも魅力的なキャラがいるだけに、その辺は少しもどかしいところです。
そういった意味では、最後に出てきた「文学少女(真)」の子に期待したいですね。
ところで、ツイッター上で見ていた時は気づかなかったのですが、これ、おおよそ月ごとに話がまとまっていたんですね。
つまり、2月掲載分の1話から14話までが「出会い」編になっているんです。
で、
15話から28話までが「おーり」編、
29話から43話までが「目撃」編(笑)、
44話から57話までが「三島」編、
58話から71話までが「約束編」、
72話から87話までが「デズニー」編、
そして、88話から99話までが「消えた彼女」編という感じでしょうか。
毎月14日から2週間毎日更新という変則的連載ですが、実はこういう構造になっていたんですね。(ちなみに今月は16日から更新されています。)
コミックス1巻は7部構成になっているわけです。
というわけで、ここからは各部ごとに見ていこうと思います。
第一部「出会い」編(1話~14話)
最初はまだおーりがどういう子なのか、語られていなかったのですね。
12話くらいまでは「謎の美少女」扱いなのが今となっては妙におかしいw
こうして単行本という形でまとめて読むとまた新鮮な面白さがあります。
一番笑ったシーンはこれw

おーりのおバカネタもかわいいですけど、古河がちょこちょこ繰り出すこういうネタがツボなんですよねえ。
ここで取り上げられた本は「罪と罰」(ドストエフスキー)。
おーりが見栄を張りそうなものということでのチョイスということで、これを機に谷川さんも読もうとしたそうですが、やはり登場人物の名前で挫折したそうですw
まあ、これに限らず、海外小説ってまず名前や固有名詞でつまづきやすいですけど、
ロシア文学はまた特別ですからね。
「クズメガネ」でも登場人物の名前がネタにされていましたが、読んでみると本当にすごいですよ。
主人公の名前がロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフで、母親の名前がプリヘーニヤ・アレクサンドロヴナ・ラスコーリニコワとか、もうこの時点で主人公と母親の区別がつかないですからね。
さらには、妹がアヴドーチヤ・ロマーノヴナ・ラスコーニコワときますからw声に出したら絶対舌噛むレベルw
これにくわえて、略称がでてきたりするわけですよ。主人公のあだ名はロージャで妹の愛称はドゥーニャとかw
ストーリーうんぬん以前に、キャラの区別が全然つきませんから。
まあ、はっきり言って、無理に読むことはないと思います。私も途中で挫折しましたし。
ただ、「カラマーゾフの兄弟」と並び、いろんな小説や映画、マンガなどの元ネタにもされる名作であるのは間違いないので、だいたいどういう話かは知っておいて損はないと思います。
で、私のお薦めはこれ。
『罪と罰』を読まない
三浦しをん、岸本佐和子、吉田浩美、吉田篤弘という、「小説」にたずさわる仕事をしているにもかかわらず、今まで『罪と罰』を読んだことがなかった傍若無人(笑)な4人が、「読まずに」どういう話なのかを語るというとんでもない企画本なのですが、これがもう捧腹絶倒な内容なのですよ。
前述の名前ネタ(ラスコって苗字なのか!は爆笑しましたw)はもちろんですが、いちいちこういう話なんじゃないかと予想しては、編集者からダメ出しされる流れがもう漫才かコントのノリなんです。
それでいて、基本的な時代背景や登場人物表、あらすじもしっかりしていてわかりやすいですし、笑いながら名作を追体験できるような構成になっているので、あっという間に読み終えてしまうはずです。
もうこれ一冊で『罪と罰』は読んだも同然!
その他、
手塚治虫がマンガ化した『罪と罰』も面白いですよ。
何より、絵があるのでキャラクターがわかりやすいw
第二部「おーり」編(15話~28話)
ここはやっぱり、おーりこと、織川衣栞のポンコツかわいさぶりでしょうねw
一気にキャラの魅力が爆発していて、マンガとしての面白さもますます加速していきます。
そんな中、一番笑ったシーンを選ぶとしたらやっぱり

これになってしまいますねえw
(「登場人物が日本人なら理解できるわ!!よかった!!私バカじゃないわ!!」も捨てがたいですがw)
試しに「小説家 服 顔」で検索すると、『小説家 服 顔に関連する検索キーワード』に“京極夏彦”と出てくるのですが、
これって、いつからこうなっていたのでしょうw
ここで取り上げられた本はもちろんこれ(笑)
「幽談」(京極夏彦)
『あの穴あき手袋!100頁くらいにまとめてよ!!』にも笑いましたが(つーか、マジで京極さんに怒られないのか?)、

も微妙に失礼なネタでじわじわきますw
京極夏彦は私の場合、『姑獲鳥の夏』の段階で止まっていますので谷川さんよりひどいですねw
この『幽談』は短編集とのことなので、こちらから読んでみようかなあ。
第三部「目撃」編(29話~43話)
ここからは“メガネ”こと、守谷のエキセントリックさが如実にクローズアップされていきますw
29話では守谷の家庭の様子もちらっと出てきますが、やっぱり母親はいないのでしょうか。
まあ、本のことになると多弁になるところは、「バーナード嬢」の神林しおりに通じるところがあるのかも?
というわけで、一番笑ったシーンはこれしかありませんねw

ここからこの3人の奇妙な関係は始まったとも言えるでしょう!
ここで取り上げられた本はもちろん、
「十角館の殺人 <新装改訂版>」(綾辻行人)
表紙にも描かれているこれ。
今年はミステリー界における一大ムーブメント、「新本格」から30周年とのことですが、
そのムーブメントの生んだ歴史的一冊がこれなんです。
私は横溝正史からミステリーに入ったのですが、そのころは「本格」探偵小説って古典扱いというか、まあはっきり言ってバカにされていたんですね。
そんな中、綾辻行人のデビューから始まる“本格”再評価の波というのは当時かなり衝撃を持って迎えられたんです。
それこそ京極夏彦も東野圭吾も綾辻さんがいなかったら、世に出てこれなかったかもしれないくらいなんですよ。
まあはっきり言って、現代ミステリの元祖みたいな作品です。
私が初めて読んだ頃は<新装版>じゃなく「旧版」だったのですが、そのときは守谷のいう『あの一行』はページの途中にあったので、古河のようにページを捲ったとたんに「っ!?」とはなれなかったんです。
組版にも工夫を凝らすという発想があの当時はまだほとんどなかったのですね。
今、<新装版>で新たに読める人は本当に幸せですよ。
というわけで、ブック○フとか売っている古い文庫で読むのではなく、必ず<新装版>で読んでくださいね。驚きが違いますから!
第四部「三島」編(44話~57話)
ここからはおーりの妄想が暴走していきますw
三島由紀夫はわかるか?に対して、カズレーサーよ!は最高ですねwww
あと、中学時代の友達、えっちゃんがすごくいいキャラしているんですけど、再登場しないのかなあ…
一番笑ったシーンはこれ。

なんかもう、それこそ「三島由紀夫」の小説以上に難しくて変な関係になりつつありますよwww
で、ここで出て来る本はもちろんこれですね。
「仮面の告白」(三島由紀夫)
三島由紀夫はやっぱりその独特の美的感覚というか、世界観に気後れしてしまって、今まで「潮騒」くらいしか読んだことがないのですが、今回の話でちょっと興味が湧いてきました。
本当、どれだけ「わきの毛」を描写するんだよw
第五部「約束」編(58話~71話)
少し古河とおーりがいい感じになる?ラブコメ的展開の第五部。
もうみんな可愛いとしかいいようがない話ばかりで、個人的にはこの辺が一番好きかもしれません。
一番笑ったシーンは、どれも甲乙つけがたくってすごく悩んだのですが、迷った末に

これにしましたw
なんか、三人とも知らないうちにドツボにはまりつつある感じがたまらなく面白いですね。
さて、ここで取り上げられた本は特別ないんですよ。
まあ、強いてあげれば「三年B組官能教室」とか「ドスケベ巨乳JKに俺の学園生活が侵略されている」とかになりますが、さすがにそれはここでは遠慮しておきますw(ていうか、これは実在しないのかな?w)
第六部「デズニー」編(72話~87話)
北関東の高校の遠足って本当にディ●ニーランドが多いんでしょうか。
守谷の不穏な過去がそれとなく語られていて、今後の展開にどう絡んでくるのか、けっこう気になる描写が多いですね。
虐待の話もそうですが、「初めて母親に買ってもらった本」(74話)というのも今後の伏線になりそうです。
一番笑ったシーンはこれ。

最後に、3人の間に奇妙な友情が生まれている感じが微笑ましくも笑えますw
ここで取り上げられた本は「ミッキーマウスの憂鬱」(松岡圭祐)
松岡圭祐氏はヤングマガジンに「探偵の探偵」のコミカライズが載っていたな、くらいしか知らないのですが、すごく多作な作家さんですよね。(そういえば、「万能鑑定士Qの事件簿」は1巻を買ってそのままだわ…)
谷川さんの感想によると、この「ミッキーマウスの憂鬱」は今回取り上げた本の中で一番読みやすく、読後感もよかったとのことなので、いずれ機会を見て読んでみたいと思いますね。
第七部「消えた少女」編(88話~99話)
単行本の最後で衝撃の展開が続きます。

「パクリ」ってwwwww(ここが一番笑ったシーンになりますw)
でも、この「文学少女(真)」の子も気になりますが、
この後、おーりが不登校になってしまうという、まさかの“ヒキ”で以下次巻!なんですよねえ。
しかも、9月分の連載も始まっていますが、9月18日現在、いまだ何も進行していないという……
まあ、まだまだ話は始まったばかりなのだと無理やり納得しようと思いますw
今後の展開にますます目が離せませんね!
ここで取り上げられた本は2冊。
「永遠の仔〈1〉再会」(天童荒太)
と、
「ノルウェイの森 上」(村上春樹)
ですね。(「ノルウェイの森」は今の9月分でも古河が読んでいるので、まだまだ引っ張るのかも)
「永遠の仔」は発売当時、いろんなメディアに取り上げられましたよね。
もう18年くらい前ですけど、あの当時「児童虐待」という重いテーマに真正面からぶつかったというのはやはりすごいです。
こういう言い方は失礼かもしれませんけど、「時代を先取りした」作品だったのでしょう。
恥ずかしながら私はまったく読んだことがないのですが、「このミステリーがすごい!2000年版」1位だったので、ずっと気にはなっているタイトルですね。
(内容が内容だけに、怖くて中々手を出せないんだよなあ)
村上春樹はもう今更説明不要でしょう。
まさに現代日本を代表する作家ですね。
その独特の文体から好き嫌いがはっきり分かれるタイプの作家さんですけど、
一度は読んでも損はない人だと思いますよ。
(どんな文体かは最後の方で古河がモノローグで再現しているのでチェックしてみてくださいw)
…といっても、実は私もそれほど読んでいないんですけどねw
デビュー作の「風の歌を聴け」から「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」までの三部作までは読んでいたのですが、なぜか、「ノルウェイの森」あたりからぱたっと読まなくなってしまったんですよね。我ながらよくわからないのですが。
個人的に村上春樹は、長編よりも短編やエッセイの方が好みですね。
短編集なら
「螢・納屋を焼く・その他の短編」(村上春樹)
が面白いですよ。あとは「カンガルー日和」とか。
(すみません、古いのばっかりになってしまいますがw)
あと、95話で古河が言及していた「一般人の質問に答えてるHP」は書籍にまとまっています。
「村上さんのところ」
すべての質問と答えを網羅した完全版は電子書籍版のみで。
「村上さんのところ コンプリート版」
これがなかなか面白いんです。はっきりいって、小説よりお薦めw
さて、ここまで見てきましたが、本当にこのコミックスはマストアイテムですよ。
全話ウェブで読めるからいいや、なんて絶対もったいないです。
「ライト姉妹」1巻のときは書き下ろしやおまけが一切なかったのがすごく不満でしたが、今回は違います。
おまけ3コマ漫画やおーりの書き下ろしファッション、巻末おまけマンガにあとがきマンガ、さらには谷川ニコの読書コラムと、
ライト姉妹のあれはいったい何だったんだ(笑)と思わざるを得ないくらい充実の内容!
特に巻末おまけマンガはなかなか叙情的な感じで読ませますよ。いつもは4コマなだけに、通常のコマ割りがなんだか新鮮なんですよね。
ただ、曲がりなりにも「読書コメディ」と銘打つからには、取り上げる本やコラムの数をもう少し充実させてもいいんじゃないかとは思いますけどねw
99話分もあって、コラムが5つ、参考文献が10冊はあまりに少なすぎるでしょう。
「バーナード嬢曰く。」までとはいいませんけど、次はその辺のところも期待したいところですね。
いずれにしても、単行本を買う価値は十分にあります。
縦スクロールだけでは味わえない面白さを是非あなたも体験してみてください!
- 関連記事
-
- 「クズとメガネと文学少女(偽)」2巻感想~彼らの毎日は続いていく~
- 「クズとメガネと文学少女(偽)」1巻感想~縦スクロールだけでは味わえない面白さ~
- ライト姉妹1巻感想〜「設定」は狭いが「キャラ」の広がりに期待ができる王道マンガ〜
スポンサーサイト
tag : 谷川ニコ