文芸カドカワ2016年9月号購入~古典部最新作と今村夏子~
<古典部シリーズ>最新作『箱の中の欠落』が掲載されているということで、「文芸カドカワ2016年9月号」(電子書籍)を購入しました。
前作『いまさら翼といわれても』から約8ヶ月。
前回が2年待たされただけに、まさかこんなに早く次が読めるとは思っていませんでしたが、
どうやら年内発売予定の古典部最新単行本にも収録されるそうなのですね。(米澤穂信Twitter情報)
なのでまあ、それほど慌てて買うこともなかったのでしょうが、
やっぱり三ヶ月四ヶ月お預けというのも精神衛生的によろしくないですからねw
しかも、今回は電子書籍版ですから!
『いまさら翼といわれても』が載っていた「小説野性時代」のときのように、
売り切れを気にして都内を駈けずり回らなくても、タップ一つですぐさま読めるんですから、
そりゃあ買わない手はないでしょう。
まあ私も古い人間なので、基本的には紙の本でないと、というタチなのですが、
こと、<古典部シリーズ>に関しては、今回のカドカワの判断を支持せざるをえませんね。
なにしろ、古典部が載った「小説野性時代」の変なプレミア感は異常でしたから。
あれはやっぱりよくないですよ。
転売目的を減らすためにも、今後はなるべく電子版も用意して欲しいですね。
それにしても、文芸カドカワ10月号でも『わたしたちの伝説の一冊』という新作短編が載るらしいですし、
なんかここに来て、米澤穂信さんも「古典部モード」に入った感があります。
ひょっとすると、何か来年にかけて動きがあるのかもしれませんね。
(噂の実写映画版「氷菓」か?)
※『箱の中の欠落』の感想は近日公開予定です。
ところで今回、私は『箱の中の欠落』目当てで「文芸カドカワ」を購入したので、他の作品にはそれほど興味はなかったんですが、
雑誌は知らない作家さんも含めて、なるべくトータルで読むことにはしているんで、米澤さん以外の作品もざっと目を通してみたんですね。
アンソロジーものとかもそうなのですが、やっぱりそこから新たな出会いもあったりするので。
で、今村夏子氏の『父と私の桜尾通り商店街』という作品も読んでみたんですよ。
正直、純文学系はほとんど読まないので、あまり期待はしていなかったのですが、
これがもうなんだかすごく面白かったんですね。
もう自分の中の純文学(笑)への偏見が見事に打ち砕かれましたよ。
今村夏子氏についてはほとんどしらなかったんですが、なんか名前を聞いたことがあるなあと思ったら、第155回芥川賞候補作に上がっていた人だったんですね。
17年ぶりに地方出版誌からノミネートされたということで、ニュースに取り上げられていたので覚えてはいました。
(残念ながら、同じく直木賞にノミネートされていた米澤さん共々受賞はできませんでしたが)
いろいろ調べてみると、すごく寡作な方で、2010年にデビューされてから芥川賞ノミネートの「あひる」を含めてもまだ4作品しか発表していないそうなんですね。(それも中短編ばかり)
佐々木敦氏によると、三島由紀夫賞以降は、意識的に休業状態だったらしいのですが、
今年になってから再び執筆活動を始めたのでしょうか。
さて、『父と私の桜尾通り商店街』はどういう作品なのかと言われてもなんとも答えづらいんですが、
まあ題材的には、地方の商店街を舞台にした、ちょっと切ない人間模様を描いた小説です。
体裁的には“普通”の小説なんですよ。変なギミックは一切ありません。
でもなんでしょう、読み終えたあとのこの変な気持ち悪さは。
いえ、別に後味が悪いとか奇妙な味というタイプでもないんですよ。
ある意味、前向きで元気をもらえる結末ではあると思うんです。
でも、何かおかしいというか変な違和感もある。
うーん、だまし絵を見せられているような感じでしょうか。
ていうか、語り手の「ゆうこ」の言動がなんかひっかかるんですよね。
普段は常識人というか、まあ普通の人なんですけど、
ところどころ「ん?」と思わせるような箇所があったりして……
でもいやな感じにはならないんですよ。かといって共感できるタイプでもないんですが。
とにかく、最後のゆうこのセリフがなんとも不気味に感じてしまうんですよ。
こんなにもポジティブで希望が持てる言葉なのに怖いってw
本当これ、なんだろうなあ。言葉にできないのがすごくもどかしいですねw
いや、でもすごく他の作品も読みたくなりました。
どうやら、この心地よい騙され感は他の作品でも味わえそうですし。
今のところ、唯一の作品集である「こちらあみ子」はちくま文庫から出ているようです。
(なぜかkindle版が文庫よりも高い!)
第155回芥川賞ノミネート「あひる」はこちらで読めます。(kindle版でも1,000円かあ…)
いずれにせよ、古典部最新作を目当てに買った人もこれは読んでおいたほうがいいですよ。
こういう形のエンタメもあるのかと新鮮な気持ちになるはずです。
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