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古谷実が帰ってきた。

 

新連載が始まるたびに、もう何度となく思ってきたことですが、
やはり今回もこう呟かざるを得ません。

そう、古谷実が帰ってきた、と。

geregu_01.jpg 
前作「サルチネス」から3年。
今度はなんとヤングマガジンではなく、「イブニング」での新連載。
(意外にもヤンマガ以外の雑誌での連載は初だそうです。)

それにしても、なんでも「もしも古谷実がヤンマガ以外で新連載をしたら……?」というコンセプトらしいのですが、正直、「いや、別にどうもしないだろ」としか思いませんでしたねw
実際、内容はいつもの「古谷実」そのものでしたしw

いや、本当に今回も、そのままヤンマガに載っていてもまったく違和感ないような作品なんですよ。
40歳のむさくるしい独身オヤジが恋をする、とか完全に平常運転じゃん!
(ちなみに私“なりそこない”も、40代の冴えないじじいですが…今回の主人公にもちょっと似ているのでかなり複雑です)



それはさておき、古谷実って、今の若い人にとってはどういう感じなんでしょうね。
デビュー作であり、大出世作でもある「行け!稲中卓球部」からもう20年ですからねえ。
ギャグ漫画家というイメージも、もはやないのかもしれませんね。
「日常の中に潜む狂気を描くサイコパス漫画家」といった印象の方が、もはや一般的なのかもしれません。

まあ、「いいかげん、うだつのあがらない男と美女、平和に見える日常、そこへ密かに忍び寄る狂気……といったパターンばかりじゃねーか」と言われれば、ファンとしても返す言葉もないんですがw

個人的にも「シガテラ」「わにとかげぎす」「ヒメアノ~ル」はどうもイマイチはまれなかったことは否めません。(でも「ヒミズ」までは大好きです)
だから、“ワンパターン漫画家”という意見も少しはわかります。

ただ、前作の「サルチネス」は割と好きなんですよ。
ギャグも少しずつ冴えてきているように思えましたし、キャラクターたちも魅力的でした。
まだ、吹っ切れていないというか、「リハビリ中」という感はありましたが、
「古谷実復帰間近!」という予感がしたのも事実です。

今回の「ゲレクシス」(この意味不明なタイトルからしても「いつもの古谷実」臭がしますw)も、初っ端からなかなか笑わせてくれます。
やっぱり、言語感覚というか、会話がうまいんですよね。
「人ホメる時に さらし首って言葉出て来ねえよ!」とかw

はっきり言って、まだ何も話は動いていませんが、
主人公の店長とバイトの女の子のやりとりだけで、どうしても期待してしまう自分がいますね。
ギャグ寄りなのか、やっぱり、哲学とバイオレンスの方にいくのか、まだなんとも判断できませんが、
いずれにせよ、これからしばらくイブニングを買うはめになりそうです。(「いぬやしき」とか「少女ファイト」、そして「レッド」と、何気にすごい漫画が多いんですよね、この雑誌)


なお、漫画界からの応援コメントとして、何人かの漫画家さんがコメントを寄せていますが、
geregu_02.jpg 
やっぱり、平本アキラさんは強烈ですねw


以前にも触れたことがありましたが、「うる星やつら」以降、私がもっともハマったギャグマンガです。


「稲中」の後のせいか、なぜか過小評価されていますが、個人的に古谷さんの中で最も好きな作品です。


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tag : 古谷実

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comment

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No title

僕といっしょ(あとグリーンヒル)は自分も稲中後のせいか
当時はイマイチと思ってましたけど
改めて読み返すと古谷作品の良いとこどりな感じがして凄く良い作品ですよね
個人的にはシガテラが一番好きだったりするんですけど

古谷さんの作品って、漫画によくある「都合の良い美女あげたよ」、
じゃなくて「都合の良い美女あげたけど、そこから君はどうすんの?」を描いてる気がして、
そこで冴えない自分としては「うぉー!これは俺の物語だ!」と毎回痛い思いをしながら読んでるんですけど、
ただやっぱり如何せんワンパターンすぎて…
これ前のと何が違うのよ?っていう…

自分は単行本派なのでまだ読んでないんですけど、
40歳、独身、恋
もうそのフレーズだけでやっぱり期待しちゃうんですよねえ
でもここ何作品かちょっとアレだからなあ、
でもやっぱり期待しちゃう、っていうことの繰り返し

毎回出出しは期待するんですけねえ…
出版社が違うから今度こそはと思ってますけど

No title

Ooさん、コメントありがとうございます。

「僕といっしょ」いいですよね!
古谷さんって、「ヒミズ」からいきなりダーク路線にシフトチェンジしたわけじゃなくって、「稲中」中盤以降から、すでにその芽があったと思うんですよ。
「稲中」も後半になると、シュールを超えて「哲学的」とでもいうようなギャグが目立つようになってきましたからね。
きっと、あのころから「ヒミズ」以降のようなテーマをいつか描きたいと思っていたような気がするんです。

で、私は「僕といっしょ」(それと「グリーンヒル」も)があったおかげで、それほど戸惑わずにすんなり「ヒミズ」の世界に入って行けたんですね。
「いいとこ取り」というか、仮に「稲中」から「ヒミズ」へと続くグラデーションがあったとしたら、その真ん中部分に相当するのが「僕といっしょ」と「グリーンヒル」、という気がします。

要するに、「稲中」が「ヒミズ」の世界につながるんだ、ということを、すごくわかりやすく見せてくれたのが「僕といっしょ」だったんです。(もちろんこれは、後々、「ヒミズ」が始まったときに気がついたわけですが)
そういった意味でも、個人的にすごく思い入れがある作品ですね。

それにしても、「シガテラ」が一番好きって人、多いですね。
特に漫画眼に長けている人に多い気がします。
自分はどうも「シガテラ」がよくわからなかったので、ちょっとコンプレックスがありますね。

ダーク路線では「ヒミズ」が一番好きなんですよ。
主人公が闇、というか、“怪物”に取り込まれていく過程にすごく共感できましたし、わかりやすかったんですね。
それ以降の作品にはない「怖さ」と「悲しさ」が、あの作品にはあふれていた気がします。

「都合の良い美女あげたけど、そこから君はどうすんの?」とは言い得て妙ですねw
すごくわかりやすい例えだと思います。
だぶん、同じようなテーマで同じような展開を繰り返すのは、古谷さん自身、「どうすんのか」まだわからない所があるからなんじゃないでしょうかねえ。
だから、何度も何度も問い直すんじゃないかと。

あ、あと期待に水を差すようで申し訳ないんですけど、
「イブニング」ってヤンマガと同じ講談社ですw

No title

>同じようなテーマで同じような展開を繰り返すのは、
>古谷さん自身、「どうすんのか」まだわからない所があるからなんじゃないでしょうかねえ

なるほどぉ…
ものすごく腑に落ちました
少なくとも自分がワンパターンだと思いつつ離れられないのって、
絶対そこの部分なんだって気づきました
真摯に「まだ答え出てねーぞ」っていう

そう言われてみれば、自分がシガテラが好きなのって、
「都合の良い美女あげたけど、そこから君はどうすんの?」
に対しては一番、真に迫ってるところなんですよね
暴走したり空回りしたりしながら一番そこを考えてる作品

シガテラって一番好きって言いながらも、
話としてはちょっとグダってると思うんですよねw
色々詰め込みすぎで、あっちゃこっちゃ散漫なような…

話としての完成度とかバランスで言えば、
ヒミズのが好きだったりします
時点でグリーンヒルか僕といっしょ

シガテラ好きって多分そこら辺のテーマがジャストミートした人なんじゃないですかね
あと単純に南雲さんが可愛いからとかw
ヒロインとして一番可愛い気がしますw

てかイブニングって講談社なんですね
雑誌はあまり読まないのでお恥ずかしいかぎりです

No title

ああ、なるほど。
確かに「シガテラ」って、「都合の良い美女あげたけど、そこから君はどうすんの?」そのものですね。
ヒロインが主人公に惚れる流れも、こういっちゃあなんですがもっともご都合主義(笑)的でしたし、
そういった意味でも「ヒミズ」以降、もっともテーマに忠実な作品と言えるかもしれません。

たぶん、自分には何より「シガテラ」の主人公が馴染めなかったんだと思います。
よくもわるくも私にはあまりに「普通」すぎたんですね。

古谷作品の主人公って、どこかみんな社会から外れてしまった人たちじゃないですか。
やっぱり自分は、稲中の「前野」や「井沢」から離れられない人間なので、どうしても常軌を逸しているキャラばかり気になってしまうんですよ。
だから一番好きなキャラは「僕といっしょ」のイトキンだったりするわけです。(「グリーヒル」に彼が再登場した時はマジで泣きそうになりました)
そう考えると「シガテラ」のテーマ自体、私には合わなかったのかもしれません。

もちろん、「シガテラ」以降、「普通」に生きるとは何か、というテーマがすごく重要になってきているので、
荻野という普通の少年が主人公なのもわかりますし、ああいうラストになったのも作品としては正しいのかなとも思うんですけど……
まあ頭ではわかっていても気持ちがついていけてないんでしょうね。

「シガテラ」もそうですし、そのあとの作品もそうなんですが、どうも終わり方が腑に落ちないというか、何かもっと他に道があったんじゃないの?という気持ちが拭えないんです。

「ヒミズ」のラストは衝撃的でしたが、同時にすごく心の奥にストンと落ちる感じがしたんですよ。
ああ、悲しいけれど、こういう終わり方しかないよな、というか。要するに「納得」できたわけです。
(余談ですが、個人的には単行本よりも雑誌掲載当時のエンディングの方が好きなんです。古谷作品は雑誌時と単行本収録とでは大幅な書き直しが多いので、雑誌から追いかけてしまうくせがついているんですね)

「僕といっしょ」が一番好きな理由も、やっぱり終わり方が大きかった気がします。
絶望的な状況下の中で、「人生って何?」という問いに対してしっかり答えてくれたあのラスト。
他の作品では感じることができなかった「強さ」と「優しさ」が、あそこには確かにありました。

私と古谷実の思い出

いずれ語りたいと以前言っておりましたし、わたモテもまた延期となりましたので書かせていただきます。


古谷実の稲中卓球部を読んだのは、中学の時友人に貸してもらったの始まりですね。うる星やつらを読んだのは高校のときでしたから、こっちのほうが早いけど、すでに完結していたと思います。兄も稲中にははまりまして、一緒に読んでいましたね。単行本も買いましたし。


稲中といえば下ネタと何気にスケールのでかいネタですが、スケールのでかいネタの最初は、顔が超でかい外人教師っぽい人に、「地球は宇宙人にずっと監視されていたけど、不要になった」どうこうでしょうかね。で前野とかが生き延びるために赤ん坊の恰好をして、糞尿を垂れ流して餓死しかけるオチでしたがw


私にとって衝撃的だったのは、竹田と京子との修羅場で前野が「このような問題なぞ地球に迫っている些事に比べればどうでもない」と思ったあと「でもそれってデブのおばはんが『私は太っているけど小錦ほどじゃないわ』と言っているのと同じことじゃないか!」と考え直すところは吹きましたw


地球たちが雀荘で麻雀をして、人間という牌を切り捨てるネタとか、過去に戻れるならヒトラーを説得しに行くとかお題を出す回とか後半になると、無駄に壮大になっていきましたね。壮大以外にも前野井沢田中が女子バレー部に売られて女子の恰好して、色々葛藤する回とか、一概にお笑いだけの回じゃないのも特徴ですね。



基本的に前野たちはクズ扱いで本人たちの性格もよくないのですけど、うんこの被り物を頭に乗せる回とかで、クラスの男女間のもめごとで振られた男のために怒った男が振った女子とくっつくのを見て、3人が自分たちはあいつらよりくそじゃないわって、うんこを押し付けて去っていく爽やかな回もありました。


最終回は急に終わったように見えて、何かやりつくした感じはしたので納得しました。とグダグダ語ってみましたけど、単行本が手元にないので間違っていたらすんません。しかし高橋留美子先生もはまっていたのは、当然というか意外というか。田辺が好きというのはそれは得心がいきましたw



ちょっと話がズレますけど、90年代中盤に小林よしのりがヤンマガで新連載していたのですけど、稲中を読んだけど「わしにはこれが若者になぜ受けているのかわからない」ってなんかのインタビューで言っていましたね。で「次元冒険記」って漫画を描くのですけど、下ネタが稲中と違って滑りまくった挙句、今度はグロに突き進んで2巻で打ち切りという惨状で終わりました。


あと余談になるのですけど、小林よしのりは高橋留美子先生とも対談していたりするのですけど(コロコロでおぼっちゃまくんが受けていたから)、少年サンデーで「高橋留美子に甘え切った読者を目覚めさせる」とかよくわからないことをスローガンに、読み切り作品を4作書いたのですけど、人気がでずにサンデーから離れてしまいました。


なんでこんな余談をしたのかというと、小林よしのり自体は、ゴー宣とかで世を席巻しているので決して才能がない漫画家ではないのですけど、この二つの失敗はギャグが古かったのと、読者の胸倉をつかんで読めというスタイルがこのたびは不発で終わったのでしょうね。全力暴投しちゃった投手みたいに。


私は中学時代ゴー宣にはまっていたせい(今は読んでいないです)で、彼の著作を古本で集めて読んでいたのですけど、当時でもまあしょーもないと思う確率が非常に高い。おそらくなのですが、ただ勢いに任せて死ぬつもりで常に全力だったからヒットしたこともあったのでしょうと。ある意味高橋作品や古谷作品と対極だなと感じました。


ずいぶんずれてすいません。古谷実作品に話を戻しまして、「僕といっしょ」がなりそこないさんのなかでも評価が高いというのは、よくわかります。この辺から悲しみとギャグの配分みたいなのが天才的にうまくなっているなと、感じました。


実母の男に捨てられた兄弟と住所不定無職の少年からスタートって、地獄のような環境なのに、笑いが絶えない。ホームレスに身ぐるみはがされたあとに、弟の服を無理やり着て、タマキンが飛び出ていて「どう?」って「俺が殺人犯だったらついでに殺している」とかいう名言も飛び出しますし。


ホームレスから奇特な散髪屋の親子に拾われるのですけど、2巻もせずに出ていく展開が早くも感じなかったのは、読者も納得するニュアンスだなと。で回りに回って、憎い男との対決でさんざんいいところもなく敗北するのですけど、これで友を得たんだなと思ったところで完結と。短期連載としては完璧の塩梅でした。


その次のグリーンヒルとヒミズはヤンマガで現行のを読みながら、単行本買っていたけど、稲中と僕といっしょほどははまれなかったです。リーダーが自業自得な悲惨なように見えて、実はそうでもなかったのかなと。リーダーを見ても共感性羞恥はわきませんし、なんかただただ悲惨だなってくらいで


ヒミズのほうは、なりそこないさんが言われるように、描いているテーマが行きつけばまあこういう漫画になるよね、と思ったけど、面白いとは言えなかったです。毎回読んでいて辛かったかなー最終回まで読みましたけど。で以降の作品は一切触れていないのでわからんです。


以上なのですが、書評というか感想以下の文章でしたが、暇なので書いてみました。ではまた。

Re: 私と古谷実の思い出

>かわずやさん

稲中について書いていただき、ありがとうございます!
私のリクエストに応えていただいたんでしょうか。大変興味深く読ませていただきました。
なんだか懐かしくなって、稲中のコミックスを引っ張り出して読むふけってしまいましたよw それで少し返信が遅くなってしまいました、どうもすみません。

なるほど、かわずやさんの世代だとむしろ稲中の方が先になるんですね。もしかしたらお兄さんは連載中に読まれていたのかもしれません。
私は当時、ゴリラーマン目当てでヤンマガを毎週買っていたのでリアルタイムで連載が始まった時のことを覚えています。なんやらすごい絵の下手なやつが始まったなという印象でしたねw しばらくは気にも留めずに飛ばし飛ばし読んでいたような気がします。

私が最初に心をつかまれたのは、卓球部顧問の教師の策略で万引き少女に美人局をやらせて前野を退部させようとした話でした。女の子との交際と卓球部とでどちらを取るかという選択を迫られた彼が、最後に卓球部を選んだ姿に心を鷲掴みにされましたね。マジで前野がいかにすごいかをノートに書き残そうかと思ったくらいw
彼の最後の言葉「やっぱ日頃からウソ八百の方が人生楽チン♡」にはなんだか奇妙な感動すら覚えましたよ。決して泣きの話しになっておらず、あくまでギャグマンガなのに、そこにはバカ中学生なりの矜持がしっかり描かれていたことに衝撃を受けました。
「前野、ひと皮むける」というタイトルでしたが、今思うと、稲中もあれでひと皮むけたんだと思います。
うる星における「君待てども…」にあたる話といってもいいでしょう。少なくとも当時の私にとってそのくらいの衝撃でした。そして次の回には、あの神谷ちよこが登場するのですから。

そうそう、井沢と神谷が付き合うことになって、それが前野にばれて「俺の方がボロ物件だけど楽しいぜえ!」と言われて葛藤する話なんかは一番好きかもしれない。
電柱にぶつかって前に進めないよーとやる前野をほっとけない井沢になぜかむちゃくちゃ共感しましたね。中二くらいって、女の子よりも一緒にバカをやる悪友の方が好きだったりするあの感覚をこんな形で表現するのかと思いましたよ。あれはうる星でいえば「君去りし後」にあたりますw

前野って、ときどきすごく哲学的な発想をしますよね。しかもそれがギャグとして破壊力を持っているのがすごいw
地球麻雀もそうですけど、視点が独特なんです。サメはたまたまそこに人がいたから食べただけでいつも人ばっか食ってるわけじゃないのに人食いザメとか言われてるとかw ああいう発想って下手するとやばい活動家になりかねないんですけど、中二のあの時代だからこそギャグとして成り立っている微妙なバランスがクセになるんですね。

基本彼らはバカで自己中で残酷だったりするんですけど、その中に奇麗ごとじゃない人の「本質」みたいなものがあるんですよね。だからギリギリギャグとして受け入れられるんです。時には彼らの友情?や優しさに胸を熱くさせたりするんです。性格悪いやつにだって心はあるんだぞ!みたいなw

後半の話だと、キクちゃんの話なんかはすごく好きでしたね。古谷さんお得意のブスいじりネタなんですけど、かなり「本音」のところを突くネタなんです。性格がよければ本当に顔がどうであれいいのかという問題をあそこまで真摯に突き詰めた話を私は知りません。
あそこでの前野の葛藤は今でも私の胸をかき乱しますよ。彼が最後に見せた涙を私は決して忘れません。

最終回は本当に突然だったのでヤンマガで見たときは本当にびっくりしましたけど、どこか納得している自分もいました。終盤になると、なんだかギャグも極限まで突き詰めた上での笑いになってきていたんですよね。
もしもタイムマシンがあったら人類を繫栄させないとかまでならまだしも、そこから「猿止め部」を作っちゃうんですからw 「お前に小麦をつくらせないぜ!」とか、あれは描いている方にもダメージをこうむる笑いですよw あんなんばっかり描いていたら絶対に心が病みます!
たぶん、これ以上続けたら危ないと自分で悟ったんじゃないかと勘繰っていますw

高橋留美子先生はこういう作品が好みなんですよw うる星だってがきデカの影響が大ですからね。ああいう不条理なギャグは彼女の基本にあるんだと思います。
でも、田辺が特に好きというのがなんかすごくらしいでしょw 優しきモンスターみたいなところがたぶんよかったんじゃないかと思うんですけどね。
その田辺を前野や井沢さえも彼らなりに気を遣っていることが嬉しかったともコメントで書いています。文庫版4巻の帯コメントには「どれだけハメをはずしても、他人にたいするギリギリの優しさを彼らは知っている。」という言葉を残していますが、まさに「ギリギリの」というところにこの作品のキモがあるんだと思いますね。

小林よしのりのヤンマガ作品は覚えてないなあ…そのころはまだ買っていたと思うんですけど、記憶にないです。
ただ、小林よしのり自体は昔けっこう好きでしたよ。
ゴーマニズム宣言の原型である「おこっちゃまくん」というのをSPA!か何かで描いていたんですけど、それがすごくおもしろかったです。ガキ使トークの松ちゃんみたいな怒りの難癖をギャグにするスタイルで、後の思想強めのオピニオンマンガとは違っていましたね。薬害エイズ問題にかかわってから徐々におかしくなっていった感じがありましたが、ギャグマンガとしてのゴーマニズムは今でも好きです。(ギャグとかいうと、本人は怒るかもしれませんがw)

サンデーで高橋留美子先生と対談した話もゴーマニズムで読みましたね。留美子が母性でわしが父性でちょうどいいんだ!とか、これまたわけのわからないことを描いていましたw あれも私はギャグとして受け取っていたので無邪気にけらけら笑ってましたよw たぶん本人は本気なんでしょうけど、傍から見るとギャグになっているという構図でしたね。その後、戦争論とかにまで行きついて、ああこれはもう笑いにはならないなと思いましたが。

よしりん自体は才能あふれる漫画家だと思いますよ。実はおぼっちゃまくんはけっこう好きだったりしますしw
あと、昔ヤングサンデーに「厳格に訊け!」というチェリーみたいな変な坊さんが説教を垂れるギャグマンガがありまして、それも好きでしたね。当時まだ存命だった尾崎豊を批判したり、かなり危ないネタもありましたが。もしかしたらあれもゴーマニズムにつながる一要素だったのかもしれません。

「僕といっしょ」はもう究極だと思いましたね。笑っていられるどころじゃないところから始まって、最後までシャレにならない状況なのに、ずっと笑いが成立しているのには、本当感心させられました。稲中を終わらせた意味があるマンガだなと思いましたよ。稲中では描けない笑いがそこにはありました。
最後の締めも最高でしたよね。どうしようもない絶望の中でも笑えることはあるんです。
彼らの下した決断はどうであれ、決して間違っていなかったと思います。

グリーンヒルも決して悪くはないんですけど、僕といっしょが素晴らしすぎただけにこんなものかなという印象になってしまいましたね。リーダーのキャラが今一つはじけなかったのが大きかったのかもしれません。イトキンが再登場してくれたのはよかったんですけど。

ヒミズはなんていうか、腑に落ちたんですよね。僕といっしょの世界を容赦なくシビアに描写すればああなっていたかもしれないんです。そういった意味で、すごく誠実なマンガだなと思いました。ギャグとして描いてきたことへの落とし前をつけたかったのかなとも。
最終回は単行本で描き直されてしまったのは残念でしたね。ヤンマガ上ではヒロインの「何それ」という“ツッコミ”が入るんですけど、私はあれを見た瞬間、なんか壮大な冗談を見せられてきたような気がしたんですよ。そして、それこそがヒミズの本当のテーマのように思えたんですよね。
確かにあれがあるとラストの絶望感が薄れてしまうんでしょうけど、私は彼が最後に下した決断を対象化することでそれを払しょくしてほしかった。そんなの、何の意味があるんだと笑い飛ばしてほしかった。
それはある意味ハッピーエンドにもなりえたはずですから。

ヒミズ以降の作品は正直あまり薦められませんね。ここでとりあげた「ゲレクシス」も、最後でとんでもないちゃぶ台返しをやってがっかりさせられましたし。それ以降、古谷さんは沈黙を保っているようなので、描きたいものがなかなか見つからない状態なのかもしれませんね。

いやホント、非常に面白い感想でしたよ。懐かしくて単行本を引っ張り出して読むふけってしまいましたしw
いろいろ考えるところもありました。本当ありがとうございます。
また、何か思うことがあったらいつでも書いてくださいね。それでは。

返信です

非常に面白い感想だと言っていただきありがとうございます。


>>なるほど、かわずやさんの世代だとむしろ稲中の方が先になるんですね。もしかしたらお兄さんは連載中に読まれていたのかもしれません。


すいません、私達兄弟は中高時代に漫画誌を読む習慣がなくて、古本で完結したのを基本的に読んでいたのです。私も友人から稲中を借りたときはすでに完結していましたし、現行を読んでいたのはグリーンヒルからなのです。


何故兄がゴリラーマンを愛読していたかといいますと、兄は大変野球漫画が好きで、水島新司先生のドカベンから始まって野球漫画を結構集めていまして、ヤンマガで連載していたストッパー毒島を見つけて、この作者の過去作も読もうと探したら、ゴリラーマンを読むことになったのです。


>>私が最初に心をつかまれたのは、卓球部顧問の教師の策略で万引き少女に美人局をやらせて前野を退部させようとした話でした。


この回は覚えていますね、井沢が乳首を吸わせるのもわかるわけです。なかなか気色悪いホモ的行動も笑いに変えるのも、バランス感覚がすごいなと


>>そうそう、井沢と神谷が付き合うことになって、それが前野にばれて「俺の方がボロ物件だけど楽しいぜえ!」と言われて葛藤する話なんかは一番好きかもしれない。


この回も好きですけど、クリスマスの回で前野がモグラの着ぐるみを着て酒?飲んでいて、神谷の父親に拾われて退屈していた井沢と感動の愛の再会とかもくっそ吹きましたwバカな男子は女子との恋愛よりバカ騒ぎしたいんだなと。


>>前野って、ときどきすごく哲学的な発想をしますよね。しかもそれがギャグとして破壊力を持っているのがすごいw


ただ井沢曰く「あいつはどれだけ深く考えてもすぐに忘れる」とか言っていたので、まあそのあとタマキン狩りとか言い出すけど、井沢のタマを揉むことで結局落ち着くと。逆に言えば前野が孤独に追い込まれれば、竹田達が言うように教祖誕生でもするのでしょうか?



>>もしもタイムマシンがあったら人類を繫栄させないとかまでならまだしも、そこから「猿止め部」を作っちゃうんですからw 「お前に小麦をつくらせないぜ!」とか、あれは描いている方にもダメージをこうむる笑いですよw あんなんばっかり描いていたら絶対に心が病みます!


完全に忘れていたけど、今思い出すと強烈なネタでしたね、猿止め部wしかし本当に思い出すと笑いとかいろいろな思いとかいっぱいでますね。



>>小林よしのりのヤンマガ作品は覚えてないなあ…そのころはまだ買っていたと思うんですけど、記憶にないです。


1996年くらいですかねー薬害エイズ問題が終わったあたりで単行本が出たそうです。小林よしのり本人が自分の描いたSF漫画の世界に放り込まれるという発想は面白かったのですけど、終盤はエログロに走りまくる悪癖が暴走してしまって。


>>ゴーマニズム宣言の原型である「おこっちゃまくん」というのをSPA!か何かで描いていたんですけど、それがすごくおもしろかったです。


この辺はゴー宣1巻で読みましたね、おぼっちゃまくんでの連載でのコロコロでも書いていましたし。おぼっちゃまくんも私は好きでしたけど、2000年代にわしズムで再連載していたのは、ちょっとって感じで。しかしゴー宣1巻第1回で麻原彰晃が小さく出ているって、本当に運命みたいなのがあるとは・・・


好きなギャグは新ゴー宣での、「小林よしのり暗殺?!」からの「わしはケネディか!?わしはリンカーンか!?わしは坂本龍馬か?!」の流れるように、よしりんの三者三様の暗殺死体が出てくるコマは笑いました。しかし漫画家が暗殺未遂されかけていたって、そうそう起きることじゃないですよ。



>>あと、昔ヤングサンデーに「厳格に訊け!」というチェリーみたいな変な坊さんが説教を垂れるギャグマンガがありまして、それも好きでしたね。当時まだ存命だった尾崎豊を批判したり、かなり危ないネタもありましたが。もしかしたらあれもゴーマニズムにつながる一要素だったのかもしれません。


『厳格に訊け!』は再録された大判で全部読みましたね。尾崎豊に関しては「奴は悩むことで歌を歌う、だからそのままでいいんじゃ」はそれまでの過程をおちょっ喰っているように見えて、実は評価しているようにも思えました。終盤の暴力教師に、怒涛に説教を重ねるだけで精神を折るシーンは、彼の漫画のパワーが説得をもたらしたんだなと思いました。


ただ小林よしのり作品は優れているのは多数あるけど、有名になっていない作品まで読むと後悔する漫画家だなーとは思います。青年漫画誌系だとなぜかエログロが暴走しまくるのが難点でした。女キャラのレイプとか惨殺とか筆が滑ると読者がドン引きする展開になるのです。



稲中また集めようかなと思ったりしましたけど、うる星やつらと違ってアニメリメイクはいいかなと思ったりします。アニメは関東だけで放送されたみたいですがどうだったのかわからんですけど、あの独特のギリギリさを再現するのはかなり難しいと思いますので。


ではまた。

Re: 返信です

>かわずやさん

返信ありがとうございます。

> 私達兄弟は中高時代に漫画誌を読む習慣がなくて、
なるほど、そうなんですね。その辺も世代というか、環境の違いでしょうか。私の周りはどちらかというと、雑誌だけで完結している人の方が多かったですね。単行本まで買うのはマニアックみたいなw

ゴリラーマンは毒島からさかのぼったんですか。それもカルチャーショックだなあ。私の中でははるかにゴリラーマンの方が有名なイメージなんですけど、世間では毒島かベックかもしれませんね。
まあ野球漫画と思って読むと、かなり肩透かしになると思いますがw

> 井沢が乳首を
そこは忘れててもいいかもw
でも、前野と井沢の関係って本当絶妙ですよね。確か二人ができてるという噂が立って、二人で開き直ってやってまーす!と練り歩く話もありましたw でも、決して嫌悪感を感じさせないんですよね。むしろさわやかな印象すらあります(え?それはないって?)

クリスマス回も名作ですよね!あれは神谷の父親も最高でしたw 何意気投合してるんだとw
あと、神谷が泣きながら岩下に電話するところも大好きですw

> タマキン狩り
あったあったw なんか八つ墓村みたいな恰好をしてましたよねw
彼が井沢と別れたらやばいかもしれない。そうならないためにも、あの二人は永遠の伴侶でいてくれないと困りますねw

猿止め部は忘れられませんね。爆笑しながらも、なんかやばい領域に入りつつあるんじゃないかと内心心配になりました。案の定、それからしばらくして最終回を迎えましたからね。今思うと、あれがきっかけで終わったんじゃないかという気がしますw

> 1996年くらいですかねー薬害エイズ問題が終わったあたりで単行本が出たそうです。
そうなんですね。私はそのあたりからなんとなくよしりんから離れていったんですよね。川田龍平氏と揉めはじめりして、なんか笑えなくなってきたなと思うようになって、しんどくなりました。
彼は間違いなく発想などは天才なんですけど、途中から本当暴走しだすんですよね。真面目に社会にコミットしだすと別のやばさが出てきてしまう感じがあります。

> この辺はゴー宣1巻で読みましたね、おぼっちゃまくんでの連載でのコロコロでも書いていましたし。
あ、そうだったんですか。じゃああの面白さは知ってるわけですね。
おぼっちゃまくんの再連載は見ていないです。なんかそういうのは違う気がしたんですよね。麻原彰晃のことは覚えてませんでした。ちょっとぞくっとしますねそれ。

> しかし漫画家が暗殺未遂されかけていたって、そうそう起きることじゃないですよ。
本当そうですよね。現実がマンガを追い越してる感じがあって、いろんな意味で稀有な才能の持ち主なんだなと思います。時代が時代なら革命家かテロリストかw

> 『厳格に訊け!』は再録された大判で全部読みましたね。
そうでしたか。相当小林よしのりは網羅しているんですね。私なんかの出る幕じゃないw
尾崎に関しては確かにそうだったかも。ただ、あれが最初に出た当時は尾崎ファンの怒りを買ったとは聞きます。

小林よしのりはけっこう勢いで描くので、作品の出来不出来が極端に出るタイプかと思います。それも含めて彼の世界なんでしょうね。デビュー作の東大一直線もラストが超暴走で終わりましたし、元々そういう資質の人なのでしょう。

稲中のアニメは正直ひどかったです。
ていうか、古谷実さん当人が当時ぼろくそ書いていたんですよw
たしか作中でもラグビーをやる話で「アニメ見てた?」「ああ最低だなありゃ」なんて会話があったじゃないですか。あれは稲中のことですからねw
あと、当時ヤンマガの目次では作者の一言コメントが載っていたんですけど、「久しぶりにアニメを見た。相変わらず最低だった。早く終わんないかなあ」とまで書いていましたよ。相当腹が立っていたようです。
原作者があそこまでアニメをぼろくそに言うって相当なことですよ。

今、YouTubeで見れるようなので(8月20日まで)、
TVアニメ「行け!稲中卓球部」全26話を限定無料公開、古谷実の画業30周年記念
https://natalie.mu/comic/news/533662
よかったら見てみてください。
まああのノリをアニメで再現できると思う方が間違っていましたねw
リメイクは絶対ないといえるでしょう。まず古谷さんが許すわけがないw
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プロフィール
ぬるく切なくだらしなく。 オタクにも一般人にもなれなかった、昭和40年代生まれの「なりそこない」がライトノベルや漫画を主観丸出しで書きなぐるところです。 滅びゆくじじいの滅びゆく日々。 ブログポリシーはこちら

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