うる星やつら パーフェクトカラーエディション下巻レビュー
うる星やつらカラー版!
コミックスでは見られない漫画本文のカラー原稿を全て集め、上下2冊の豪華本にしました! 少年サンデー掲載時に、ただ一度だけ誌面を飾った美麗なカラーページが、30数年の時を越え、最新の印刷技術で蘇ります! その数なんと約600ページ! 当時の熱気が伝わってきます!
【編集担当からのおすすめ情報】
巻末には高橋先生のインタビューも掲載。ファン必携の逸品です!
というわけで、この度小学館から刊行されたファン垂涎必死の「うる星やつらパーフェクトカラーエディション」。
ここでは下巻のレビュー&感想を進めてまいります。
(上巻のレビューはこちら)

下巻の収録作品は以下の19作品。
●おれのツノがない!?(新装版コミックスでは11巻PART7)
●所持品検査だ!(新装版コミックスでは12巻PART4)
●惑わじのバレンタイン!!(新装版コミックスでは12巻PART6)
●面堂兄弟!!=その2=(新装版コミックスでは12巻PART9)
●テンからの贈り物!!(新装版コミックスでは12巻PART11)
●ダメッ子武蔵、男やないか!!(新装版コミックスでは13巻PART3)
●化石の僻地(新装版コミックスでは13巻PART6)
●クラマ再び!!(新装版コミックスでは14巻PART1)
●セーラー服よ、コンにちは!!(新装版コミックスでは15巻PART2)
●愛♥ダーリンの危機!!(新装版コミックスでは16巻PART5)
●花見デスマッチ!!(新装版コミックスでは17巻PART7)
●あこがれを胸に!!=その2=(新装版コミックスでは18巻PART6)
●愛は国境を越えて(新装版コミックスでは20巻PART5)
●夢で逢えたら:現実編(新装版コミックスでは25巻PART1)
●オデンに秘めた恋(新装版コミックスでは25巻PART4)
●ハートブレイクCrossin':前編(新装版コミックスでは25巻PART10)
●お祓三すくみ(新装版コミックスでは26巻PART11)
●母の心、子の心(新装版コミックスでは27巻PART4)
●愛と勇気の花一輪(新装版コミックスでは33巻PART4)
これ以外に巻末特典として
●高橋留美子インタビュー「高橋留美子先生と『うる星やつら』」
●高橋留美子先生全カラー回一言コメント
●連続エピソード解説
が載っています。
やはり、後半はカラーが少なくなってきていますね。
特に、20巻の次は25巻、27巻の次が33巻と一年以上ブランクがあったりするのが目立ちます。
逆に言えば、25巻で突然カラーが増えるのも不思議といえば不思議ですね。それまで一年くらいなかったのが急に増えたり、時期によってムラがあるのも興味深いです。12巻なんかは4話もあったりするしなぁ。
この頃になると、確かにラブコメ色も強い印象がありますが、一方では、かなり過激な話もあるんですよね。特に面堂了子(今考えても凄いネーミングセンスw)や藤波竜之介などが登場するバイオレンス&アブノーマルテイスト満載(笑)の話は初期にはなかった“過激”さかなと。
まあ、話によって振り幅が大きくなったというか、「調整」している感はありますね。前回は暴力的だったから今回はちょっと泣きの話にしよう、みたいな。
きっと、ただがむしゃらに描いていた時期を過ぎて、全体を見通せる余裕ができたというか、バランスをとるようになったんでしょう。
あとこうしてみると、タイトルにやたら「!!」がつくようになったなあ。
『うる星やつら』にまつわるインタビューでは、主に連載開始当時の話が中心で、後期に関する話があまりなかったのがちょっと残念でしたが、それでもいくつか面白い話が聞けましたね。
私は昔、当初ラムは1話のみのゲストキャラの予定だったのが、ラムをもう一度出してくれという読者からの要望が殺到したため、急遽3話での再登場になった、というような話を聞いたことがあったのですが、
このインタビューによると、どうやら「3話までは」最初からの予定通りだったらしいんですよ。
私の記憶違いか、それともガセ情報だったのか、今となってはよくわかりませんが、高橋先生の話によれば、ラム再登場というのは最初からの既成路線だったんですね。
「うる星やつら」という作品を改めて考える上で、かなり貴重な話が聞けたかなという気がします。
アニメの話で「メガネ」というキャラが素晴らしすぎて、とべた褒めしていたのも新鮮でした。ここまでアニメに関して絶賛しているのってあんまり見たことがなかったので、なんだかうれしくもなりましたね。
私もメガネというキャラがいたからこそ、アニメは見れるものになったのだと思っていたので、我が意をいたり、といった感じですw
あとは「ラムは孝行娘」という言葉も印象深かったですね。
私の名前は知らなくても、『うる星やつら』を読んでなくても、「ラムちゃん」って言えばみんな分かってくれたりとか。そういうのはとっても嬉しいことですよ。
私が「高橋留美子主義者」と名乗るのは、「作品」だけではなく、こういう高橋先生の“言葉”のファンでもあるからなんですね。
いつだったかうる星連載当時、「ハッピーエンドはお好きですか?」という問いに対して、「大好きです。私はハッピーエンドしか描いたことがありません」と答えたことは、いまだに忘れられないくらい強烈な印象を私に残しました。それ以来、ずっと「高橋留美子主義者」であり続けています。
“なりそこない”の一言コメント
●おれのツノがない!?
4色+2色という、当時としてはかなり贅沢な作りの回。うる星の中でもフルカラー+2色というのは、この回と「クラマ再び!!」の2話しかありません。
実はこの話、「ランちゃん復活」シリーズのひとつでもあるんですよね。
ランちゃん好きとしては、それだけで大歓喜だった記憶がありますw
●所持品検査だ!
個人的に「大魔神」回と呼んでいる話。『友引高校』シリーズというか、教師VS生徒という構図の典型的なパターンですね。なぜか、こういう話になるとラムがすごくアホになるというか、傍観者的ポジションになるのもこのあたりからでしょうか。
●惑わじのバレンタイン!!
ラブコメ回。うる星は毎年2月になると必ず「バレンタイン」ネタをやっていましたが、意外なことにラブコメっぽいのはこの話だけだったと思います。
個人的には、甘~いラストよりもあたるがサクラ先生に悩み相談するシーンが好きですね。
●面堂兄弟!!=その2=
面堂の妹、了子登場シリーズ第2弾。今読んでもむちゃくちゃというか、アニメにも若干影響受けたかなと思うくらいのエグさですね。
電撃や炎、さらには手りゅう弾までもが飛び交い、その殺伐としたムードに少し疲れてしまうくらいですが、ひとつひとつのギャグはすごく冴えていて、かなり面白いです。了子回の中では一番好きかもしれません。
●テンからの贈り物!!
ある意味、もっとも「うる星」らしい話。
こういうお互いの認識のズレから騒動が加速していく、というのはもっとも好きな笑いのパターンの一つですね。アンジャッシュネタの元祖といってもいいかも。
●ダメッ子武蔵、男やないか!!
宮本武蔵シリーズの最終話。いわゆる「番外編」ですね。ある意味パラレルワールドというか、パロディというか、まあ好き勝手やっている回です。この手のパターンは、他に新装版コミックス8巻所収の「平安編」シリーズがあります。個人的には「平安編」の方が好きですが、この宮本武蔵シリーズも忘れがたい傑作ですね。
ちなみに、このよくわからないタイトルは、当時少年サンデーの人気連載作品のタイトルを繋げたものです。
●化石の僻地
今回のカラーエディション上下巻に収録された話の中で、個人的に一番好きな話です。
そもそも「化石の僻地」というタイトルからしてわけわかりませんw
ラムが、錯乱坊(チェリー)に負けず劣らずの「ボケ」役なのも最高です。女の子ぽいラムもいいですが、やっぱりトラブルメーカーとしてのラムが、自分は一番好きですね。
●クラマ再び!!
その名の通り、クラマ姫復活回。
当時、これを読んで言いようのないショックを受けたことを思い出しました。
自分にとっては「クラマ姫」って、まだ「あたるラムしのぶ」の三角関係が主題だったころの象徴だったんですよ。そんな面堂登場以前のいわば『旧・うる星』のキャラが、今のラム・あたる・しのぶ・面堂という4人組の中に再び姿を現したということに、なんだか焦燥感にも似た気持ちを抱いたことを覚えています。
で、この「クラマ姫復活」シリーズの直後、あの藤波竜之介が登場するのですね。
●セーラー服よ、コンにちは!!
藤波竜之介初登場シリーズ第2弾。2学期に入り、早くも竜之介が友引高校に転入してきます。
この回はとにかく、「セラコン」というフレーズがやたら気になって仕方がなかったですねw(今の人にはたしてわかるだろうか……)
●愛♥ダーリンの危機!!
この回は表紙がすごく印象的ですね。一言コメントによると、雰囲気を変えるために色鉛筆を使っているそうです。
いわゆるラブストーリー回ではありますが、実はラムとランちゃんの友情?回でもあるんです!ランちゃんファンとしては、その点を特に強調しておきたいですねw
●花見デスマッチ!!
数ある「うる星」の中でも特に“狂っている”話といってもいいでしょう。そもそもこのタイトルだけみて、どんな話か想像できます?w
今読むと、「ダウンタウンのごっつええ感じ」のコントに出てきそうなシチュエーションだなあとも感じましたね。
あと、あたるの「おれは女と闘う趣味はな~い!!」というセリフが、不思議な感動を呼び起こしますw
●あこがれを胸に!!=その2=
「うる星」史上もっとも“変態”なシリーズといってもいいかもしれない……。あの「飛鳥シリーズ」にもまけていないかも?まあとにかく「ひどい」回ですw
このころはなんというか、しのぶというキャラの扱いに試行錯誤していたような気がしますね。
●愛は国境を越えて
おそらく、「うる星」がラブコメと認識されるようになった「決定打」とでもいうべき話でしょう。
でも改めて読むと、意外にギャグも冴え渡っているんですけどね。こういう「意思の疎通」の難しさを題材にした笑いって、昔からすごく惹かれます。
ハートウォーミングでありながらも、しっかりオチている締めといい、やっぱり名作といっていい話だと思います。
●夢で逢えたら:現実編
このあたりになると、もう普通にラブコメっぽい話がけっこうな割合で出てくるようになります。
それも、「愛は国境を越えて」のような“がっつり”ラブストーリーって感じじゃなく、“ちょい足し”ラブコメみたいな軽い感じになるんですよね。
この「夢で逢えたら」も、「現実編」ではほぼラブコメ的な要素はないんですが、次の「大決戦」で、急にイチャイチャし出しますからねw
要するに、この「現実編」におけるラムとあたるのやり取りも含め、普段のこの二人の喧嘩が、単なる彼らなりの“スキンシップ”に過ぎないことが、周りにもなんとなく「暗黙の了解」となってきているんですね。
だから特にラブストーリーを展開しなくても、いつものドタバタを描くだけで、「ラブコメ」として成立するようになるわけです。
●オデンに秘めた恋
コミックス19巻以降、あたるが登場せずにラムが主役を張る回が定期的に出てきますが、これもその一つ。
ラム、ランちゃん、弁天、お雪の4人組の話にあたるを出してしまうと、どうしても彼女らにちょっかいを出さざるを得ませんからw
そのたんびに、ストーリーが止まってしまうんで、自然にこういった形になったのでしょう。
まあそれはともかく、この話は「ランちゃん・ミーツ・コタツネコ」というコンセプトにつきるでしょう!もうそれだけで満足できますねwとにかく素晴らしい!
●ハートブレイクCrossin':前編
またしてもランちゃん回。ランちゃん好きの俺歓喜、てなもんですねw(こうしてみると、ランちゃんが登場する話にカラーが多かったというのも意外な発見でした)
ある意味、これもラムとあたるの「ラブコメ」回でもあるのですが、このころになるとランちゃんって、もはやまったく、あたるに見向きもしなくなるんですよね。「危機一髪」シリーズのころがまるで嘘のようですw
まあもちろん、レイという存在のおかげでそれほど不自然にならずにこういった関係にシフトしていったわけですが、その辺も考えた上での「レイ」復活(新装版コミックス11巻PART8「自主騒動」)だったのかなあと今更ながら考えたりもしました。
●お祓三すくみ
サクラさん回。高橋留美子お得意の民俗的なものをベースにしたドタバタですね。
しのぶがラムを見つけて、「ちょっとラム!そんなところでなにサボってんの!」と言っているシーンがすごく印象的です。もはや普通の友達じゃんw
●母の心、子の心
後期らしい心温まるお話。あたるとテンちゃんもこのころになると、喧嘩友達っぽくなるんですよね。
ぼけやのお姉さんがさりげなく再登場していたり、ラストでラムがあたるの母の肩を揉んでいたりと、意外な再発見が楽しいです。
「どないしてん、おまえ息黒いで!」というセリフで、いまだに爆笑できる自分に我ながらびっくりもしましたw
●愛と勇気の花一輪
「扉」シリーズ第2弾というか、因幡くん回ですね。ある意味、「しのぶ救済回」とも言えます。
さすがにこのあたりになると、最終回が近いことは薄々わかっていましたね。ラム、あたる、しのぶの関係もここで完全に“決着”がつくわけです。
それにしても、「運命管理局」という設定って、今読むと「境界のRINNNE」のプロトタイプかと思うくらいですね。“運命”とか“死”という重いテーマを、実にゆる~い感じに扱っている感じが、いかにも「るーみっく」ぽいです。
こうしてカラー原稿を読み直してみると、当時の興奮が蘇ってきますね。
なんていうか、「懐かしさ」よりも「ワクワク感」のほうが上回っちゃうんです。こんな作品、他にないですよ!感傷に浸る余裕さえないんですから。
改めて、とんでもない作品というか、自分の人生の「源(みなもと)」なんだなと再認識させられます。
たぶんこれからも、何度となく読み返すことになるでしょう。
「うる星やつら」を読みながら息絶えるのが、理想的な死に方ですねw
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