この恋と、その未来。 -一年目 冬- 感想~多くの“爆弾”を抱えて、季節は春へ~
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※この恋と、その未来。 -一年目 夏秋-の感想はこちら。
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前回の感想のときに、これは「嵐の前夜」だの「次回は穏やかではすみそうにない」だのほざいていましたが、
今回も終わってみれば全体的にはほぼ平穏というか、
四郎と未来の関係が大きく変わるわけではなく、かといって三好との仲が事態をかき乱していく、といったこともありませんでした。
そういった意味では、若干拍子抜けというか、「もっとドロドロした展開を期待していたのに!」という気持ちもなくはありませんw
ただ、これまでと同じようなことを焼き直ししていたわけでもないんですね。
では、いったい今回の「-一年目 冬-」はどういう話なのか。
それは冒頭に引用されたこの言葉に全てがつまっています。
―好きだからこそ離れよう、そう思った。
それが俺にできる、せめてもの抵抗だから。
帯の宣伝文句にも引用されている四郎のこの独白。
「-一年目 冬-」 は、彼がこう決心して、それを実行するまでの話なんです。
要するに今回、四郎が「―好きだからこそ離れよう、そう思った。」までに行き着く過程をすごく丁寧に描いているんですよ。だから逆に、全体的には基本フラットというか、「怒涛の急展開!」みたいな読者を手っ取り早く引き付けるようなものがないわけです。
そういった意味では、今回はかなりストレスがたまる展開かもしれません。
でも、よく読んでみると、次回以降への“爆弾”的なものも所々用意しているんです。
とりあえず、「帰省」、「新しい寮」、そして、「バレンタイン」。
この三つがキーワードです。
※すみません、今回もネタバレ要注意です。
●人の気持ちに鈍感
「-一年目 夏秋-」のラストで、付き合うことになった四郎と三好。
未来と和田だけにはそのことを伝えていた二人ですが、
どうやら三好は和田に愚痴をこぼしていたようです。
それを聞いた和田いわく、四郎は「鈍感すぎる」とのことで、
追い討ちをかけるように未来も、三好のことをもっと気にしてあげろよ、と軽い調子で言ってきます。
でも、四郎に言わせれば、
「俺が人の気持ちに鈍感だと言うけど、それはお前も同じじゃん」
なんですね。
そりゃそうです。
この場合、一番「人の気持ちに鈍感」なのは未来なんですよ。
少なくとも四郎の「想い」にはまったく気付いていないわけですから。
というか、むしろ四郎は「人の気持ちに敏感」すぎるのではないか、ぐらいに思いますけどね。
彼は鈍感じゃないんです。逆にいろいろ「人の気持ち」を先回りして考え過ぎてしまう。
そうでなきゃ、「俺は一生、死ぬまで、永遠に、この恋を表に出したりは、しない」なんて、思うはずがありません。
だからこそ、周りのことを気にせずに好きなことをやっている父親に対して、
愛憎交わるというか複雑な思いを抱いてしまうわけですから。
●父親への“期待”
今回は今まで以上に、「父親」の存在が大きく四郎にのしかかってきます。
今の俺の気持ちを分かってくれる人間というものが、親父しかいないんじゃないかと、俺は心のどこかで思い始めていた。(本文16ページより引用)
未来への想いを秘めたまま、その葛藤を忘れたいがために三好を利用している自分。
四郎は、そんな自分の非道さも、父親なら笑って「好きにしろ」といってくれるのではないかと、期待してしまうんですね。
また、四郎は、未来が自分の父親に憧れている理由も、その非道さゆえなのではないかと思っています。
つまり、破天荒でまともな父親ではないからこそ、
GIDという問題も、世間の常識にとらわれずにそのまま認めてくれるのではないかというわけです。
未来の両親がGIDという問題に対して、あまりに「世間体」という価値観からでしか対応できていないだけに、それは大きな説得力を持っています。
父親の世間の常識から外れた非道さこそが、逆に、未来を救えるのではないかというジレンマ。
この辺で、徐々に彼の中の父親への感情も変わっていくわけですね。
●同じクズとして
さて、冬休みに入り、不本意ながら未来とともに帰省することになった四郎ですが、
ここで、実家の環境に変化が現れます。
それは、姉たちの態度。
クズである父親のようにならないために今まで厳しくしてきたけれども、
独り立ちした広島でそれなりにうまくやっていることで、
もうそんな心配はないかもしれないと、長女の壱香はそう語りかけてきます。
普通なら当然、これで奴隷のような扱いから解放される、と浮かれるはずですよね。
ところが、四郎は姉の告白に泣きそうになりながら、こう思ってしまうのです。
だけど今の俺にそんな資格はないことを、俺はわかっていた。(本文45ページより引用)
四郎は壱香の前で必死に涙をこらえながら、
心の中でごめんと誰かに謝ります。
それは、父親のようにクズにさせまいと「しつけ」てきた母や姉に対してなのか、
それとも最低な告白を受け入れてくれた三好に対してなのか、四郎にもわかりません。
ただ、最近父親に対しての気持ちが和らいでいたのは、なんてことない、自分も同じクズとして認めてくれるのではないかと期待していただけなのだと呆然としてしまうわけです。
いやあ、ここは序盤のクライマックスと言ってもいいくらい胸にきたシーンですね。
で、そんなクズな自分に反吐が出そうになりつつも、
三好への連絡よりも未来との約束を心待ちにしてしまう四郎。
表面上は平穏に見えても、
こういった心情描写が、なんとも不穏な匂いを掻き立ていくわけです。
●二つの“爆弾”
ところで、四郎の涙ぐむ姿を見て、このとき壱香はどう思ったんでしょうね?
四郎は愛情に感激してか、今までの仕打ちに対する怒りの涙かと想像していましたが、
どうも彼女は、実はあの時、ちゃんとその意味を理解していたのではないかと疑ってしまいます。
つまり、「自分にそんな資格はない」という意味での涙として。
だって、壱香があの話をしだしたのって、三好と付き合っているかどうかの話のあとですからね。
父親のようなクズと同じようなことをしているからこその、狼狽ぶりと考えても不思議じゃないと思うんです。
この辺りも、なんだか次回以降への“爆弾”になりそうな気がするんですよね。
まあ、壱香も確信があるわけではないですから、今の段階ではどうということはないでしょうが……。
で、“爆弾”といえば、もうひとつ。
そう、何と言っても二胡ですよ!
彼女の未来への純情乙女ぶりはネタとしても面白かったですが(「ぐぬぬ」は笑いましたw)、
彼女も次回以降、大きな鍵を握りそうなんですよね~。
あそこまで未来に本気で惚れるというのはかなりやばいですよ。
意外と彼女から未来の秘密がバレる、という展開もあるかもしれません。
なにげに、クズな父親を一番嫌っているのも彼女なんですよね。この辺も今後の展開に影響を与えそうな気がするんですよ。
で、そんな彼女に四郎の未来への気持ちや三好のことがばれたときのことを考えると……。
さらには、それが壱香に伝わったとき……。
ああもう想像するだけで、怖い怖いw
●松永正樹という人間性
さて、もはやファンサービスの域を超えて、がっつり世界観がリンクしている「東雲侑子」シリーズ関連ですが、もちろん今回も大きく関わってきます。
ていうか、前シリーズの主人公とヒロインである三並英太と東雲侑子本人が、ついにリアルで登場します!
まあ、東京で父親である松永正樹に会うわけですから、当然そういう展開になるわけですが、
もはや、続編に近いですね、これ。
-一年目 夏秋-のあとがきSSとはまた違いますからね、意味が。
まあそれはともかく、父親主催の年越しパーティーに四郎と未来が呼ばれるわけですが、
帰りのタクシーで、前シリーズ主人公主人公の英太と現シリーズ主人公・四郎は言葉を交わします。
そこで、四郎は、英太や東雲侑子みたいな「基本物静か」な人が親父みたいな人間と付き合っているのは不思議だと問いかけます。
それに対して、英太はこう答えるのです。
俺は俺で、東雲は東雲で、松永さんのことが、好きなんだよ。人としてね。(本文134ページより引用)
四郎は、飲み会にいた他の「ノリが良い」人たちとはどこか違う三並英太に親近感を持ちます。
それは、どこか自分と似ているのではないか、といった感じでしょうか。
そんな人がなぜ、「クズな父親」を人として好きだというのか、彼にはわからないわけです。
「東雲侑子」シリーズの二人が認める松永正樹という人間性。
これもそのうち、伏線になりそうな気がしますね。
特に今回は四郎の父親への複雑な思いが、かなりクローズアップされていますし。
「四郎君は、松永さんの……お父さんのこと、嫌いかい?」
考えているうちに、三並さんがまた、俺に尋ねてくる。
「よく、分からないです」(本文138ページより引用)
●黙って聞いてくれた広美さん
さて、正月三が日も終わり、広島に戻ってきた四郎ですが、
ここで彼は「大人」の人に悩みを打ち明けます。
そう、広美さんに。
いつも朗らかな広美さんが、そんな風に真面目に話をしている様を、俺は初めて目にしたと思う。当たり前の話だけど、この人は、俺なんかよりずっと大人なんだなと、感じた。(本文187ページから188ページまで引用)
これは、四郎にとって本当に良かったと思います。
俺はクズだ、最低だと一人で抱えたままでは、かなり精神的にやばくなっていった可能性がありましたから。
相手が友達や家族ではなく「大人」の女性であったことも、逆に救いになったのではないでしょうか。
黙って四郎の話を聞いてくれた広美さんは、かっこ良かったです。
聞き上手というか、相談したくなる人ですね。
ここで、四郎は答えをもらったわけではないですが、何かのきっかけをもらうことにはなったわけです。
●四郎にとっての西園幽子はどちらなのか
さて、「大人」な人はもう一人出てきます。
そう、三並英太です。
フリーライターをしている彼は広島に取材しにやってくるわけです。
四郎と英太は平和公園の近くで落ち合い、いろいろと話をします。
それこそ、英太と西園幽子(東雲侑子)との馴れ初めを丁寧に話してくれるわけですw
確かに、三並さんの話は、俺の境遇に似ている。他に好きな人がいるのに、別の女性と付き合っているあたりなんて、特に。(本文225ページ)
彼の話は広美さん以上に、今の自分の境遇と重なる部分がありました。
そこで、四郎は考えるわけですね。自分にとっての西園幽子は誰なのかを。
三並さんと彼女の関係は、何だか、俺の今の境遇と似ている。けれど、じゃあ、俺にとっての西園幽子は、果たして、どちらなのだろう。
未来か、三好か。(本文233ページより引用)
この辺からも「この恋と、その未来。」シリーズは、
普通に「東雲侑子」シリーズの続編なのでは、と思ってしまいますねw
●「どうにもならない人」のレベルが違う
それにしても、英太が、
「四郎君は……ひょっとしてだけど、未来君のことが、好きなんじゃないかと思って」(本文226ページより引用)
と言い出した時は、むちゃくちゃびっくりしました。
この「秘密」に気づいた人は、シリーズ3巻目にして彼が初めてですからねw
それにしても彼が、自分もどうにもならない人のこと好きだったからと呟いたときの、
四郎の心情描写はもう胸が締め付けられるようで辛かったですね。
違うんだ。
俺は、心の中で、叫んでいた。
違うんだ、そうじゃない。そんな気持ちじゃ、ない。(本文228ページより引用)
そうなんですよ。
英太がいう「どうにもならない人」と、四郎にとっての「どうにもならない人」は、まったく違いますからね、それこそ次元が。
ここは単に否定しなきゃ、という以上の「違うんだ」だと思いましたね。
兄嫁レベルの「どうにもならない」と比べるのは、いくらなんでも酷というものです。
英太が四郎の動揺を見て、どう感じたかはわかりません。
仮にそうだとしても否定することはない、と言っているところをみると、
彼はそのまま、同性愛的なニュアンスとして、彼を肯定しようとしたのかもしれません。
いくら、彼が四郎のことをよく見ていて、その想いに気がついたとしても、
さすがに未来の「秘密」まではわかるはずもないですからね。
でも、はっきり言って、男同士でも好きなら否定することはない、だったらまだマシなんですよね。
だってそれなら、ハッピーエンドの芽はまだあるじゃないですか。
それに比べ、四郎と未来のハッピーエンドはまったく見えないんですもん。
もっと過酷な状況に置かれているわけです、彼は。
しかも、そこまでのことは誰にも絶対に、相談できないわけですよ。
それは未来への裏切りになってしまうわけですから。
ほんっと、エグい設定を考えるなあと、改めて森橋さんの意地の悪さに感服してしまいますw
●好きだからこそ、離れよう
二人の大人に相談したことで、彼は決心します。
翌日、俺は第二寮へ移転する申請を提出した。
好きだからこそ、離れようと、そう思った。
それが俺にできる、せめてもの抵抗だから。(本文244ページより引用)
広美さんの柔らかな感触。
そして、英太の「長く一緒にいすぎたんだと思う。」という言葉。
彼は、一緒にいた時間が、未来との触れ合いが、自分をこんな気持ちにさせてしまったのだと結論付けます。
それを断ち切るために、そしてその分、三好との時間を作るために、彼は未来から離れることを決断するのです。
時間が必要なのだ。俺たちには。俺には。
俺が未来に恋をしてしまったのは、未来とあまりに長い時間を共有し過ぎたせいもあるように、最近は感じていた。
これから、もっと、もっと、三好に会おう。俺の、未来に対する気持ちが、三好の色で塗り替えられるように。(本文175ページより引用)
まさに「抵抗」ですよね。自分の恋心への抵抗。
でも、ちょっと遅すぎた気もします。
だって、高校一年という一番多感な時期を、一年間同じ時を過ごしたわけですからね。
しかも、離れるといっても実際は部屋を出るだけで、同じ高校生活をこれからも過ごしていくわけです。
そんな簡単に塗り替えられるか、少し疑問ですね。
●あんな顔、反則だ
新しい寮への移転申請を出した四郎は、校長に呼び出され、
まずは織田未来に合意を得てくれと告げられます。
そりゃそうです、学校としては、未来の状況が他の人にばれる危険性を考慮しないといけませんからね。
で、四郎から話を打ち明けられた未来は烈火のごとく、怒り出します。
未来にとっては、自分だけ今の部屋に残るという選択肢はなく、必然的に自分も出なければならないわけですから当然でしょう。
そんな未来に自分も負けないようにと、必死で目を逸らさない四郎。
すると、未来は長い沈黙のあと、こう呟きます。
「……俺、そんなに迷惑かけてたか」(本文256ページより引用)
そう、未来はここで、初めて“本音”を漏らすんです。
いつもちょっと上から目線で、小さな迷惑をかけることがあったって笑って済ませるような未来ですが、
実は自分の「事情」が四郎の負担になっていないか、ということをずっと気にかけていたわけですね。
そして、そんなに迷惑をかけていたかという未来に対して、四郎は
むしろ逆で、自分はもっとしっかりしたいからこそ、出て行きたいんだと「嘘でもないけど真実でもない言葉」を必死で伝えるのです。
ああもう何、このいじらしさ!
題材こそ、GIDという特殊なものを扱っていますが、
そこで繰り広げられる青春模様は実にまっとうというか、普遍的な屈託を描いているんですよね。
で、けっきょく未来は、そんな四郎のお願いをようやく受け入れるのですが、
ここのシーンがまた、泣かせるんですよね。
「何だろうな……別に、何でもねえことなのにな」
強がった笑みでそう言った未来の瞳が、ほんの少しだけ、潤んでいるように見えて、今まで目にしてきた、どんな女よりも、綺麗だと思った。(本文257ページから258ページより引用)
どんな女よりも、ですよ。
そして彼は、その抱き締めたい衝動を、腕に爪を立てて、奥歯が折れそうになるくらい食いしばって、必死で抑えるんですよ。
あんな顔、反則だ。こっちがようやく、いろんな思いを振り切ろうとしている時に、あんな顔しやがって。(本文258ページより引用)
まさに反則です。こんなの泣くに決まっているじゃないですか!
16歳そこそこの男の子にこんな思いをさせるなんてほんと、ひどい話ですw
●第3の“爆弾”?「梵七施」
さて、新たな寮ができるということは、新入生が入ってくることでもあります。
第二寮移転に有利になるということで、四郎は入学試験の手伝いのボランティアをやることになります。
ここで、ひょんなことから、彼は梵七施という受験生と知り合います。
正直、彼女とのエピソードがどういう意味があるのか、現時点ではさっぱりわかりません。
ただ、なんらかの形で二年目の春以降、彼女が関わってくることは確実でしょうね。
部活をやっているわけでもない四郎と下級生になるであろう梵との接点がどうなるのか、まったく見えてきませんが、
まさか、先輩好き好き的なうざい後輩キャラみたいなベタなことじゃないでしょうね……
まあ、この「梵七施」エピはなんだか急に不自然な形で挿入されているので、かえって気になりましたねw
ひょっとすると、彼女も第3の“爆弾”的な存在なのかもしれません。
●最大の“爆弾”、三好
さて、時は流れて、二月十四日。
バレンタインデートを楽しんだ四郎と三好ですが、
別れ間際に四郎は三好にこう語りかけます。
「もうちょっとだから。もうすぐ、きっと、全部なかったことにして、三好さんのことだけ、見れるから」(本文308ページ)
この言葉は、彼なりの精一杯の誠意だと思うのですが、三好はそんな発言にも表情ひとつ変えずに、目を細めるだけです。
そして、
「……それだけ?」
と問いかけるのです。
いやあ、怖いですね。
私はどうも、この三好という女の子が怖いです。いや、かわいいとは思うんですけどね。
でも、こういう子は純粋なだけに思い込みも激しいんですよね。
父親からの電話を無視するところとか、芯の強さを感じさせますし、
デート中、ふと、
「松永君、まだ、他の人のことが好きじゃと思うけェ」(本文304ページより引用)
と言うあたり、かなりの勘の鋭さも持っています。(女性なら誰もが持っているものかもしれませんが)
そして、何より、最後にに彼女がとった行動!
「じゃけェ、ちょっとだけ、先に払ォて貰う」
その言葉と同時に、三好の唇が俺の唇に触れた。俺が事態を把握するよりも先に、すぐさま俺から体を離した三好は、笑っていた。妖しげな、大人びた微笑み。(本文308ページ)
こええ。
いや、マジで怖いですよ。
松永君のこと信じてる、と言いながら、「先に払って貰う」と“担保”を得るわけですよ?
何このホラー。
いやあ、彼女は一見、大人しくて控えめで男に都合のいい女の子ですが、実は一番やばいタイプではないでしょうか。
もし、彼女が、四郎にとっての「もっと、遠くにいる人」が織田未来であるということを知ったらどうなるのでしょう。
さらには“彼”の事情を知ることになったとしたら……。
やっぱり、このシリーズ最大の“爆弾”は彼女ですね。
●寂しさばかりはどうしようもない
悔しいことに、その顔は、まだ鮮明に俺の脳裏に、焼き付いている。俺の未来への想いも、まだ、心の中で確実に燻っていた。
けれど、それでも、、俺は未来への想いを、忘れなくてはいけない。寂しくても。どれだけ、寂しくても。
その寂しさばかりは、もはやどうしようもなかった。(本文314ページより引用)
最終的に、二人とも、新しい寮への移転が認められます。
そして、二人で過ごす最後の夜。
四郎は泣きそうになっているのを、未来に気づかれないように背を向けつつ、
こんなことは大したことではないんだと自分に言い聞かせます。
泣きそうになっているのは、こんなにも寂しさを覚えてしまうのは、
きっと、ずっと一緒に住んでいた「親友」だからそう感じてしまうだけだ、と。
冬が終わり、春になれば、きっと、全てがうまくいく。
そう信じて、無理やり眠りにつく四郎。
でも、本当に春になれば、時間が経てば、うまくいくのでしょうか?
壱香。二胡。梵七施。そして、三好。
あまりに危険な“爆弾”が、爆発寸前の状態であちこちに置かれているわけです。
次回、-二年目 春夏-。
いつ爆発してしまうのか、ドキドキしながら、待ちたいと思います。
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