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やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。10.5 感想 ~本編に挟まれた、正しい“.5”~

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。10.5 (ガガガ文庫)やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。10.5 (ガガガ文庫)
(2015/03/18)
渡 航

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また、“.5”かよ! あからさまにアニメ販促目当ての“つなぎ”じゃねーか!

えー、そう心の中で毒づきながらもようやく購入致しました、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。10.5」。
今回は6.5巻のようなことはなく、正しい“.5”でした。

つまり、本編では有りません。番外編というか、まあ「サービス巻」ですね。
なので、特にこれを読まなければ、11巻以降を読むのに支障がでるということはないでしょう。

もちろん、「読まなくていい」ということではないです。
読んでいた方が、今後の展開を理解する上で意味があるんだろうなあと思わせる出来ではあると思います。


●7.5巻的でもあり6.5巻的でもある10.5巻

どちらかというと、7.5巻と6.5巻の中間的な意味合いがある“.5”ですかね。


7.5巻は7巻と8巻をつなぐというより、ほとんど「アウトトラック集」的な意味合いが強い内容で、これを読まなくても8巻以降についていけなくなるということはほとんどありません。
一方の6.5巻は感想でも書きましたが「実質7巻」といってもいい内容でした。とても番外編とは思えない重要な巻です。

10.5巻は7.5巻と同じ「短編集」の形をとっています。ただ、7.5巻とは違い、連作短編というか、それぞれの短編がひとつの流れになっているんですね。完全に独立した短編ではないんです。

時系列もそうです。7.5巻は6月から11月あたりまで、語られる時期がそれぞればらばらですが、10.5巻は10巻のマラソン大会が終わった直後から約一ヶ月くらいの時期の話で、まさに10巻と11巻の間を埋める形になっています。

つまり、形式としてはまったくの番外編の7.5巻の形をとっていますが、
中身的には6.5巻のように「本編」的な意味合いも含めているわけです。


●主役はいろはす

いろはす~。いろはが表紙でこの巻はいろは尽くしいろはす100%な感じの巻でした!(「あとがき」231ページより引用)

というわけで、表紙を見てもわかるように今回の主役は「一色いろは」と言っていいでしょう。
最初の話は材木座が主役じゃないか?って声も有るかもしれませんが、実はあれも「フリーペーパー」の前フリに過ぎませんからね。

※余談ですが、材木座だけはぶれませんね。彼だけが、未だに「人間味」のない「装置」でありつづけているのはある意味凄いです。
願わくば、彼だけはずっと「ネットには真実が書いてある!」と叫びながらヘタレワナビのままでいてもらいたいものですw


さて、その「一色いろは」。おそらくアニメ2期でも重要なポジションとなるであろうこの後輩キャラを、ここで主役に抜擢したのは単なる気まぐれやファンサービスとは思えません。
おそらく、今後の展開においても彼女が大きな鍵となってくるのではないでしょうか。

本当はここで「一色いろは」というキャラについて深く掘り下げたいところなのですが、
それをやっているととんでもない長文になりそうなので、
それは別の機会にゆずるとして、今回は一話ずつ、ざっくりと見ていくことにします。


●そのうち、材木座義輝にも簡単なお仕事がたぶん見つかる。

えー、こんなタイトルですが、主役はいろはです(実質的な意味で)。

ここでは、材木座がラノベ作家をあきらめ、編集者になるべく、まずは同人誌を作って実績を積もう、と奉仕部に相談する話なのですが、
まあぶっちゃけ、どうでも良い話ですw

この話に意味があるとすれば、いろはに「フリーペーパー」を作ろうと思わせるだけですね。
つまり、2話3話へのプロローグに過ぎないというわけです。

というか、当たり前のようにいろはが部室にいること自体、いろいろとおかしいんですが……。
もはや、4人目の奉仕部部員と化しています。

あとは、なんといっても『ケンケン』ですかねw
9巻といい、意識高い系ネタを随分引っ張りますよね。よっぽどなんかあったのかw

私から皆さんにこの言葉を送ります。
『深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ』(ニーチェ)


この、お前から送っちゃうのかよ、感がツボでしたw


●きっと、一色いろははお砂糖とスパイスと素敵な何かでできている。

デート回です。
いろはと比企谷ががっつりデートを楽しむだけの話です。

正確には、10巻での、葉山とのデートコースを考えてくれという相談を受けての今回の“予行”デートなわけですが、もちろん、いろはの思惑は別にあるようで……。

というわけで、この話の“肝”は比企谷といろはの「めんどくささ」合戦ですね。

「めんどくさくない女の子なんていませんよ」
(中略)
「……そうだろうな、めんどくさくない人間がそもそもいないし」
「うっわ、先輩めんどくさっ」(本文122ページより引用)


この掛け合いがすべてを物語っていますね。

今日は参考になりました、といいつつ、「先輩もちゃんと参考にしてくださいね」といたずらっぽく笑ういろは。

たしかにその笑顔には、お砂糖とスパイスだけではなく、
それはそれは面倒くさい『素敵な何か』が隠れていそうですよね。

そして、それはひょっとすると、比企谷八幡という男がずっとこだわっている『本物』と関係しているのかもしれない。
そんなことを思わせる佳品でした。


●絶対に破れない締め切りがそこにはある。

で、1話2話をふまえて、いろは編集長率いるフリーペーパーが企画されていくわけですが、
まあ、半分「メタフィクション」的なノリでしたねw
ところどころ作者の魂の叫びを交えつつ、入稿間際の修羅場をおもしろおかしくエンタメ化している、といった印象でした。

あとは、後半のいろは、由衣、そしてゆきのんのそれぞれの「背中の押し方」ですかね。

「予算がー決算がー」と呟き震えながらもその瞳にはあざとさはなく、素顔のままで「お願い」するいろは。

「あたしはずるい」と誤魔化したい感情もすべて伝えようと、真摯な面差しとあいまいかつ現実味のある言葉で「頑張ろう!」と元気な声で言う由衣。

お互いの「甘さ」を認め反省しつつ、最後の手段として「甘さ」を用意していた雪乃。

どれも彼女らしさと意外性が交じった励まし方で、面白かったですね。

最後には、この奉仕部の三人の写真を一色いろはが撮るシーンがあります。

この写真にはあの時なんて書けばいいのかわからなかった、奉仕部の在り方、俺たちの在り方が、描かれているように思えた。(本文219ページより引用)

ここで、比企谷は言葉では食い違ってしまう「思い」を見出すわけですが、それを伝えたのは一色いろはなんですよね。

「はい、先輩。……いい写真ですよ」
そう言って、一色は少し大人びた笑みを見せた。その言葉の意味を問うような真似はしない。きっとそのままの意味でしかないだろうし。(本文218ページより引用)


比企谷は「そのままの意味」でしかないと言っていますが、
いろははきっと、その写真の中にある『素敵な何か』に気づいていたのだと思います。
ただ、それは「言葉」の意味を問えるようなものじゃないんですよ。だからこそ『素敵な何か』なのです。


●こうして比企谷家の夜は更けてゆく。

後日談、というより、小町サービス回かも。

ただ、3話の「締め切り回」では、最後の夕陽が印象的でしたが、ここでは星が瞬く冬の夜が意味深ですね。

冬来たりなば春遠からじ。いずれこの夜空も見納めとなる。(本文228ページより引用)

ここでは、あと一年もせずにあの部室も失うことになることを、比企谷の語り口で綴られていくわけですが、
思えば結構前からずっと、こんなことばかり延々語ってきたような気がしますね。
8巻のプロローグとか「失われるからこそ美しいものもある」とかうそぶいていましたし。

彼がそういう“理屈”をこねまわすときって、たぶん極度に“感傷的”になっているときなんですよね。



今回はどの話も他愛もないものです。
ひとつひとつはネタ回といってもいいかもしれません。
ただ、そんなどうでもいい日常もあと一年とたたずに終わりを告げるのです。
だからこそ、彼は今だけは空を見上げていようと思うわけです。

あるいは、こんなどうしようもない、ただ寒々しい空を見上げている時間でさえ、価値はあるのかもしれない。
だからこそ、今しばらくはこの、乾いた綺麗な寒空を見上げていようと思う。(本文63ページより引用)


だから、今しばらくは。傍らのぬくもりとともに。
星空を見上げて歩こう。(本文228ページより引用)


「本編」と「本編」に挟まれた“.5”として、
そんな日々の「日常」への思いが溢れた名作だったと思います。
(「アニメ販促目当ての“つなぎ”」なんて言ってごめんなさい!)
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ぬるく切なくだらしなく。 オタクにも一般人にもなれなかった、昭和40年代生まれの「なりそこない」がライトノベルや漫画を主観丸出しで書きなぐるところです。 滅びゆくじじいの滅びゆく日々。 ブログポリシーはこちら

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