「死にたくなるしょうもない日々(以下略)」感想~つまりは「死にたくない」日々~

死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々(1)(少年チャンピオン・コミックス・タップ! )死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々(1)(少年チャンピオン・コミックス・タップ! )
(2014/12/10)
阿部共実

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阿部共実。

以前、触れた時にもちらっと書きましたが、この人の作品って「ジャンル分け不可能」ですよね。

本人のインタビューを読むと、あずまきよひこさんや施川ユウキさんに影響を受けているそうですが、確かに「萌え」の文脈を使って人間のリアルな部分をあぶり出していく姿勢は通じる部分があります。

ただ、私はこの作者を知ってからまだ時が浅いというか、「ちーちゃんはちょっと足りない」から入った“にわか”なので、どうしても「ちーちゃん」を基準に考えてしまう部分があるのですが、読み終わった後、なんとも形容しがたいもやもや感が残るんですね。
単なる鬱でも絶望感でもないし、かといって希望でもない。こういった「ちゅうぶらりんな感覚」を残して行く作風というのは、やっぱり、ちょっと他にはない才能かと思います。

空が灰色だから」などを読んでも(まあオムニバスということもあるのでしょうが)、本当にテイストが様々で、安易なカテゴライズを許さない強い空気があるんですよね。

で、現時点での最新作である「死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々 第1巻」。


WEB連載という性格もあるのかもしれませんが、「空が灰色だから」以上にバラバラです。1話ごとにまったく違う顔をみせるので、読んでいてどんどん不安になってきます。そして、その不安感は、話がたとえハッピーエンドだろうとバッドエンドだろうと決してぬぐい去ることはできない代物なんです。

●簡単に「鬱」を楽しませてはくれない

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第1話の「お前がどんな姿、形をしてようとも」。
そういった意味では、この話が今作品集を一番象徴しているのかもしれません。

たぶん、第1話をすんなり楽しめるかどうかで、今作の評価は別れるでしょう。

Amazonのレビューでも賛否両論といった感じですが、1話の13ページまではいい感じだったのに、という感想があって、なんとも言い得て妙ですね。

自殺した弟を降霊儀式で呼び寄せようとする兄。「どんな形で化けてこようともう一度抱きしめる」と誓う兄の耳に、「ズリズリ」と不気味な這うような音が聞こえる……、といった感じで、いかにもホラーテイスト満載なのですが、これが最後の“オチ”でとんでもないところにもっていかれるわけですよ。まあある意味、「兄と弟」という設定がキモになっているんですね、これは。

でも、1話のオチそのものははっきり言ってドタバタに近いんですが、じゃあ笑えるかというと、とてもそんな気分にもなれないんです。
で、あれ、これはどうとらえたらいいんだろう?と答えがでないまま、次の話を無理矢理読まされる。そして次の話もこれまた答えがでないような読後感。それが整理できないまままた次の話が……。
まあ、そんな作品集なんですよ。だから読んでいて疲労感がハンパないです。

話がホラーだとかコメディとかほっこりとか、もう関係ないんですよ。
ただ、そう簡単に「鬱」を楽しませてやらないよ、とばかりの作者の底意地の悪さ(笑)がひしひしと伝わってくるので、話の方向性さえもどうでもよくなってくるわけです。

ただ、ただ、形容しがたい、混沌としたもどかしい気持ちを味わうために読むべき作品と言っていいでしょう。

●「死にたくなる」なんて「しょうもない」

まあ考えてみれば当たり前なんですよね。

「死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々 」

そもそもタイトルからしてこんなわけのわからないものなんですから。
はじめから「わけわからん」ものを出していくよとことわっているわけです。

それにしても、けっきょくどうなのよと、このタイトルを見るたびに思うんですが、
よ~く読むと、最後には「死にたくない」と持ってきているんですね。
最終的には「死にたくない」んですよ、これ
つまり、「死にたくなるようなしょうもない日々」が「死にたくなるほどしょうもない」ので、「死にたくない」と言っている訳です。

どうしても“死ぬほど死にたくない”という文言のレトリックに引っ張られて、ひたすら「絶望」しかないように錯覚してしまう訳なんですが、
このタイトルの意味するところは、「死にたくなる」ことさえ「しょうもない」と断罪していることにあると思うんです。

思春期の痛さや醜さをとことん描きながら、どこかカラッとしているというか、ウェットな方向に流れないのは、そういった“容赦のなさ”が大きいのではないでしょうか。
また、それでいて冷たい感じもしないというか、どこか妙な明るさがあるのも、同じ理由なのかもしれませんね。「絶望」さえ、させてくれないというか。

●各話ひと口感想

最後に各話ごとに一言触れていきましょうか。

第1話「お前がどんな姿、形をしてようとも」
ダークかと思うでしょ?そんな作者の声が聞こえてきそう。

第2話「一旦だけ一旦だけでも」
ラスト1ページの「落ち」にもやもや。決して「オチ」ではない。

第3話「ネコネコココネコネコネネコ」
かわいい。

第4話「がんばれメガネ」
タイトルが秀逸。メガネは主役じゃない。すごく好き。

第5話「え」
読んでいてまさに「え」

第6話「それがだよ」
ラブコメ!まさかのラブコメ!こんなタイトルなのに!ホラーっぽいのに!

第7話「10時間」
救いがあるとかないとかどうでもいい。別に間違っててもいいじゃないか。

第8話「アルティメット佐々木27」
萌えマンガ。でも佐々木さんのような人は個人的に苦手です。

第9話「お願いだから死んでくれ」
おそらく、今巻で一番“痛い”話。ある意味、「サービス回」かも。でもすごく好き。

第10話「深い悲しみ」
哲学。考えれば考えるほどどつぼにはまりそう。

第11話「1/4黒ニーソメガネ児童液」
最後にふさわしいカオスさ。「空が灰色だから」にもなかった不安。


個人的には、第4話「がんばれメガネ」第9話「お願いだから死んでくれ」が特に好きです。
どれか一つでも気に入った話があれば、それでOKな気もしますね。こういった作品集は。

※第1話と最新話は「Champion タップ!」にて無料で観覧できますので、興味のある人は是非。

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