やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。10 感想 ~それは誰の独白だったのか。~

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。10 (ガガガ文庫 わ 3-16)やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。10 (ガガガ文庫 わ 3-16)
(2014/11/18)
渡 航

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まずはお詫びと訂正から。

前に10巻の表紙の娘のことを「一色いろは」であると書きましたが、
実際は“はるのん”こと「雪ノ下陽乃」でした。
申し訳ありませんでした。この場を借りてお詫びと訂正をさせていただきます。

つーか、あとがきでしっかり作者が触れていましたね……。

うひょう! 邪悪なお姉さん陽乃ちゃんが表紙だよ!(「あとがき」343ページより引用)

ていうか、イラストのぽんかん⑧は確かに神ですが、ときどきキャラの区別が付かなくなるんですよねー。
まあ、私が単にオヤジ化して最近の絵についていけなくなっているだけかもしれませんが。

というわけで。

※以下、多少ネタバレ的なものも含むかもしれません。


●主役は葉山

今回の主役はまあ、葉山ですね。
終盤における比企谷と葉山のやりとりなんて、まさにはやはち!そりゃ海老名さんも捗るってもんです。

話の筋はいたってシンプル。
ひょんなことから葉山隼人と雪ノ下雪乃の間柄が「噂」となる。
そんな中、奉仕部にある人物から葉山の進路を調べてほしいと依頼を受ける……。

これだけです。

いや、本当に葉山の進路は文理どちらか、を調べるだけなんですよ。
それだけで340ページ!ってある意味すごいですよねw

「葉山は文系理系どちらを選ぶのか」
これだけのことに皆が皆、振り回されるのですから、
正直年寄りには、若いっていいなあ! という感想しか出てきませんw

●「3巻毎でセット」構造

よく言われることですが、「俺ガイル」は3巻毎でセット、という説があります。
たとえば、1,2,3巻で3人の「奉仕部」結束の成り立ちを描き、4,5,6巻で比企谷の「ダークヒーロー」ぶりを描き、7,8,9巻で比企谷によるやり方の挫折と再生を描いている、といった感じですね。

図にするとこんな感じでしょうか。
「起」1,2,3巻(序破急)→「承」4,5,6巻(序破急)→「転」7,8,9巻(序破急)

で、10巻を含めて残り3巻で完結するのではないかというわけです。
つまり、「結」10,11,12巻(序破急)?
ですね。

ただこれも7.5巻やら6.5巻があったり、5巻は実質、短編集だったりもするので、こじつけっぽい部分もあるかもしれませんが。

でもそう考えると、全体の流れがわかりやすくなるのは確かなんですね。
特にキャラクターの関係性などを踏まえる上でこの構造を元にすると、いろんなことが見えてきます。

●それは4巻から始まった

思えば葉山というキャラクターは、常に主人公・比企谷と対比されるポジションとして、ある意味“ライバル”的な存在でした。

例えば1~3巻での「起」の段階。
1巻のテニス対決や2巻のチェーンメール問題においては、葉山というキャラに「人間味」はあまり感じられず、単なる「ライバル装置」というか、比企谷の屈折した才能に対する引き立て役に過ぎなかった感があります。

それが、「承」の段階で一気に化けるんですよね。
具体的には4巻のボランティアキャンプで。

キャンプでは、前半こそ「ヒキタニくん」をさりげなくフォローしたり“さわやかイケメン”に徹していましたが、中盤辺りから徐々に比企谷のことを妙に意識しだすんですよね。

「それだと、問題は解決しないんじゃないか」
確かに、葉山の言うとおりだ。これは正解じゃない。間違いだなんてことは重々承知だ。
「でも、問題の解消はできる」
俺が、顔を上げると、葉山は真正面から俺の瞳を覗きこんでくる。(4巻本文227pより引用)


「そういう考え方か……。彼女が、君を気にかける理由が少しわかったよ」(4巻本文2228pより引用)

彼は“彼女”、つまり雪ノ下雪乃をきっかけにして、「比企谷八幡」という存在を認識し始めます。
そして、比企谷自身も単なる“リア充”のボスとしてではなく、「葉山隼人」という個人を知る事になります。

俺はこのとき初めて葉山隼人という存在を正しく認識したのかもしれない。葉山が比企谷八幡という存在を正しく認識したのと同様に。(4巻本文277pより引用)

そういえば、4巻で葉山は初めて「比企谷君」と呼んだんでしたよね。やはり4巻から葉山というキャラクターは変わった、と考えるべきなんでしょう。

●世界は本当に変わってしまっていた

本当に世界を変えるってことを教えてやる。(6巻本文P201より引用)

そして、6巻。「俺ガイル」を一気に人気作にした「文化祭」編ですが、ここで葉山は単なる人畜無害イケメンから、一気に「実はいろんなことがわかっている」キャラへと変貌を遂げます。

「……どうして、そんなやり方しかできないんだ」(6巻本文328pより引用)

あまりにも有名なこの台詞。つまり、比企谷のやり方(真意)を見抜いているということをはっきりと言わせているわけです。

「転」の段階に入ると、葉山だけではなく、三浦や海老名さんも「実はいろんなことがわかっている」感じに描かれていきます。

「結衣はまぁ、ああやって空気を読んで合わせる子っしょ? 最近は言いたいこと言ってくれるようになったけど」
(中略)
「海老名も同じ。同じなんだけど逆っつーか」
(中略)
「あいつは空気を読まないで合わせんの」(7巻本文213pより引用


9巻になるともっと露骨です。一色いろはも折本かおりもみんな、比企谷八幡のことを「実はわかっている」かのように描かれていきます。

そして、葉山は比企谷によってみんなが変わっていっていることに気が付いているんですね。

「……君はすごいな。そうやって周りの人間を変えていく。……いろはも、たぶんそうなんだろうな……」。(9巻本文P356より引用)

なぜなら、彼自身も比企谷八幡によって変えられてしまったその一人だったからです。

●誰が比企谷を動かしたのか

正直、ここまで比企谷の“理解者”が増えてしまうと、ちょっと……と思わなくもないです。
小町や戸塚はまだしも、戸部ですらそれなりに「察するように」なってきていますからね。

今回でも、海老名さんの「私わかっているの」感はちょっと鼻につきますね。

「あのさ、あんまり意味ないと思うよ」
そして、開口一番そう言った。それはまるで俺が追いかけてくるのを予期していたかのような口ぶりだ。(本文230Pより引用)


そんな中、三浦は逆に比企谷を動かすきっかけになっていきます。

「知りたい。……それでも知りたい。……それしかないから」
(中略)
「わかった。なんとかする」
今度は俺が即答する番だった。(本文178Pより引用)


三浦はある意味、今回の“裏”主役かもしれませんね。彼女が「それでも知りたい」と言わなけば、話は進まなかったわけですから。

思わせぶりなセリフが多い中、三浦のストレートさこそが、一番主人公の心を動かしたという点に今回の“肝”があるような気がします。

●過敏ゆえに本物を求める

比企谷八幡という男は常に『本物』にこだわってばかりいます。

「それでも、俺は……」
(中略)
「俺は、本物が欲しい」(9巻本文255Pより引用)


この9巻のあまりに痛々しいセリフは有名ですが、
実はこれに限らず、ずっーと彼は『本物』という言葉をやたら使っているのですね。

「……けど、そうやって偽物だってわかってて、それでも手を差し伸べたいって思ったなら、そいつは本物なんだろ、きっと」(4巻本文265pより引用)

おそらく、彼が今回三浦の依頼を受けたのもこうした考えがあったからなのでしょう。

思えば、2巻の
優しさは嘘だ。
とか
優しい女の子は嫌いだ。
も『本物』を欲しがることの裏返しなわけで、彼の言動は常に『嘘』を嫌い、『本物』ばかりを追い求めることから始まっているような気がします。

別に鈍感なわけじゃない。むしろ敏感だ。それどころか過敏ですらある。そのせいでアレルギー反応を起こしてしまう。(2巻259Pより引用)


本人も自覚しているようですが、要するに他人に神経質になりすぎなんですよね。

ところで、最後に雪ノ下雪乃が「変わった」ことに対して、葉山と陽乃は『本物』ではないと言います。

「やっぱり、彼女は少し変わったな……。もう陽乃さんの影は追っていないように見える」
(中略)
「……けど、それだけのことでしかない」(本文333Pより引用)


「それを本物とは呼ばない……。君の言葉だったね」
確かに言った。自分で意味も意義も掴めないままの、概念のない、信念だけの言葉。
(中略)
「本物なんて、あるのかな……」(本文341pより引用)


雪ノ下陽乃はそもそも『本物』などあるのかと問います。
なるほど、陽乃さんはずっとそういう考えで、ゆきのんや比企谷のことをからかっていたんですね。

●それは誰しもの独白でもある。

陽乃さんの言う、「君の言葉」は何を指すのかを調べていたら、
8巻でかつて告白した女の子についてからかわれてた時の受け答えでの言葉にありました。

「あれを好きだったとは言わないですよ」
『どれを好きだったとは言わないのかな?』
(中略)
「ただ一方的に願望を押しつけてたというか、勘違いしていただけで、それを本物とは呼ばない」
(中略)
『君はまるで理性の化け物だね』(8巻本文146Pから147Pより引用)


いやあ、この潔癖症ぶりは正直、怖いと思ってしまいます。
でも、この作品に出てくるキャラクターたちにも言えるんですよね。
みんな他人との些細な事柄にすごく過敏です。
そして誰もが自分の感情に対して自信が持てない。

雪ノ下雪乃もそうですが、葉山もきっとそうです。
みんな少しずつ似ていて、でも似ているからこそ、些細な違いが許せない。
なんともめんどくさい作品だと思います。


さて、10巻では3つの手記が挟まれています。
第一の手記「或いは、それは誰の独白でもない。」
第二の手記「もしくは、それは誰しもの独白でもある。」
第三の手記「であるならば、それは誰の独白だったのか。」


その独白はきっと、
比企谷であり、雪乃であり、葉山であり、そして、陽乃さんだったような気がします。
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tag : やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

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