不戦無敵の影殺師

不戦無敵の影殺師 (ガガガ文庫)不戦無敵の影殺師 (ガガガ文庫)
(2014/03/18)
森田 季節

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ライトノベルでは珍しい社会人が主人公の作品。
題材自体は「異能力バトル」とでもいうべきものですが、
いわゆる「俺TUEE」的なものではありません。

なにしろ「不戦無敵」なのですから。

これは痛い主人公が勝手に
「やればできるけどやらないだけさ」とうそぶいているわけではありません。
この世界では「異能力」は法律によって規制・制限されているため、
主人公・朱雀はその能力を使う機会がない。というか許されていないのです。
なぜなら彼の能力は「暗殺」だから。

社会が異能力を危険視する世界観というのはそんなにめずらしくはありません。
メジャーなところだと「絶対可憐チルドレン」などもそうですし、
悩めるヒーローや強すぎるゆえの孤独、
社会から孤立した異端集団たちの戦いといったモチーフは
むしろSFやファンタジーでも王道的なものと言ってもいいかもしれません。

だが、この作品のそこを少しひねっています。

(↓以降一応ネタバレ注意)

この世界の異能力者は「芸人」です。
つまり、エンタテインメントとして芸として職業として成り立っています。
だから火を使ったり風を巻き起こしたりするようなマジシャン的能力者は
むしろ人気者として引っ張りだこになっていたりします。

異能力は届け出制になっており、基本的に使用は許可制。
異能力者で生きていくなら「事務所」に所属して営業をかけなければなりません。
まさに芸人残酷物語としての構造も持っている作品でもあるのです。

だから「暗殺技術」として無敵な主人公は
『小説やマンガの異能力者が嫌い』だと訴えかけます。

現実の異能力者の仕事はもっと損得勘定で成り立っているのに
フィクションのやつらは「誰かを守る」ために戦っている。

平和な現代社会において異能力者は決してヒーローにはなり得ないのに。
単なる人殺しにしかすぎないのに。

こういった“真理”を噛みしめつつ主人公は
いったんは異能力者としてのすべてを諦めようとするのですが…


なんとも苦い話です。
ヒロインたちはかわいいし、ダメ人間あるある的なネタも楽しく
表面的にはライトな雰囲気をまぶしてはいます。
クライマックスは熱い展開で一見してハッピーエンド的ではあったりもしますが、
根底にあるものは相当に暗いものがあります。

なんでもあとがきによると、
もともとは出版する予定はなく、
作者が個人的な趣味として書いていたものを
商品価値を付加してライトノベル化したとのこと。

原作者の森田季節は一風変わった味わいの作品がある一方、
典型的なラノベ作品もノリノリで書いていたり、
どうにも掴みどころのない作家という印象が強いです。

この作品も本人のライトノベル作家としての忸怩たる想いを託した
メタ的自伝小説と深読みすることもできますが、それも勘ぐり過ぎかもしれませんね。


なおこれを楽しめた人には
デビュー作であるビター・マイ・スウィートシリーズ
同じガガガ文庫のつきたまシリーズ(こちらは公務員が主人公!)、
淫靡でダークな雰囲気が通じる部分がある魔女の絶対道徳シリーズあたりもお勧めです。
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tag : 森田季節

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